ブク美
ノト丸
ブク美
ノト丸
そこがすごく重要なポイントで、移動手段が自分で運転するものから、自律的に移動してくれるサービスに変わることで、利用者は運転から解放されるわけですよね。
つまり、移動中の時間の使い方が根本的に変わる可能性があるんです。仕事をしたり、エンタメを楽しんだり、あれはただ景色を眺めてリラックスしたりとか、移動時間の質が変わることで新しい体験価値が生まれる。ここにすごく大きな可能性があると思いますね。
ブク美
移動時間の価値変容ですか?なるほど、それは大きいですね。地上だけじゃないと、空の移動、EVTOLっていう言葉も資料にありましたけど、これは一体?
ノト丸
市場予測を見ると、このeVTOL(イーブイトール)を使った都市型航空交通、アーバンエアモビリティ、UAMって言ったりしますけど、この市場が2030年から2035年くらいにかけて本格的に立ち上がってくるだろうと見られてますね。
ブク美
空のタクシー、まさに未来って感じですけど、本当に実現するんですかね?
ノト丸
特に中国なんかは、もう数年内にかなり大規模な空飛ぶ車の導入を検討しているなんていう報道もあるくらいですから。
もしこれが実現したら、地上の渋滞とか道路みたいなインフラの制約を受けずに、都市内を文字通り3次元で移動できるようになるわけですよ。
ブク美
3次元移動?
ノト丸
移動の選択肢と都市のネットワークっていうのが、これまでにない形で拡張される可能性があるんです。
ブク美
なるほど、人の移動だけじゃなくて物の移動も進化していると。
ドローン配送はどうでしょう?これももうSFの話じゃない感じですか?
ノト丸
まさに実用段階に入ってきてますね。
調査によると消費者の認知度とか、使ってみたいっていう意欲も高まってますし、
あと物流の分析なんかでは、2024年の時点で既に毎日1万4000件以上の企業から消費者へのドローン配送が行われているなんて試算もあるんですよ。
ブク美
毎日1万4000件もそんなに飛んでるんですか?
ノト丸
ええ。将来的にはこれが数億件規模に拡大する可能性もあるなんて指摘もされてますね。
ブク美
すごい数ですね。これはどういう意味を持つんでしょうか?
ノト丸
これは配達っていう移動の価値が再定義されつつあるってことだと思います。
重要なのは移動の対象が人から物になった時にその価値がどう変わるかっていう視点ですよね。
移動の価値っていうのは必ずしも自分自身が物理的に動くことだけじゃないんだっていうことが、よりはっきりしてきてると言えるんじゃないでしょうか。
ブク美
なるほど。世界の潮流。すごくダイナミックですね。ではちょっと視点を、日本国内に移してみましょうか。
資料にはいくつか興味深い切り口が提示されてますが、まずはエンカウンターデザイン。これは偶然との遭遇をデザインする移動ですか?
ノト丸
はい。これはですね、移動を単にA地点からB地点への移動って捉えるんじゃなくて、その移動のプロセスを通じて、新しい人とか情報、体験との出会いを意図的に設計しようじゃないかっていう考え方ですね。
ブク美
移動で出会いをデザインする。
ノト丸
例えばさっきも名前が出ましたけど、Waymo が日本交通さんと連携して都心の7区で国際テストを開始したんですね。
これは単に技術の検証だけじゃなくて、ロボタクシーみたいなサービスが都市の中での出会いの密度みたいなものをどう変える可能性があるのか、そういうデータを集めて将来のサービス設計に生かそうっていう狙いがあるんだと思います。
ブク美
面白いですね。移動が出会いを誘発すると、日産の動きもこれに関連しますか?
関係してくると思います。日産は2027年目標でロボタクシーサービスの開始を目指していて、横浜での試験から将来的には地方への展開も視野に入れてるんですね。
ノト丸
これは移動を社会のインフラとして捉えて、地域の活性化にもつなげようっていう意図が見えるかなと。
ふむふむ。
あともう一つ注目なのが、自動運転ソフトウェアのスタートアップのTier4さんですね。
彼らは東京でのロボタクシー実証とか、幹線物流の自動運転化を進めてるんですけど、特徴的なのはオープンソース戦略なんです。
オープンソース。
これを活用して日本独自の運行設計領域、オペレーショナルデザインドメイン、略してODDって言いますけど。
ブク美
ODD、はい。
ノト丸
つまり、自動運転システムが安全に機能できる地理的な範囲とか、気象条件とかを定義して、それをどんどん広げていこうとしてるんです。
ここにもなんか多様な出会いとかビジネスチャンスを生む土壌を作ろうみたいな意思が感じられますよね。
ブク美
ODD、なるほど。自動運転が安全に走れる条件設定のことですね。
うん。
各社のアプローチが違うのが面白いですね。
次は、Mobility as Culture 。移動を文化として捉える、ですか?
ノト丸
はい。これは、移動をもっと楽しく豊かな体験にしようとか、移動すること自体を文化を育てていこうじゃないかという動きですね。
象徴的なのは、ジャパンモビリティショー2025、10月30日から11月9日ですけど、これです。
これは、単なる自動車のショーじゃなくて、多様なモビリティとその可能性を体験できるモビリティの祭典として位置づけられてるんですね。
ブク美
モビリティのお祭りですか?トヨタのWovenCityもこの文脈で捉えられますか?
ノト丸
まさにそうですね。静岡県の園市で建設中の実感都市、Woven City。
2025年の秋に初期の入居が始まる予定です。
ブク美
上空の生活動線が非常時にも役立つ可能性を示しているのかなと。
ノト丸
なるほど。そして最後はMaaS Presence。物理的な移動を超える体験とはどういうことでしょう。
MaaS。モリティアザサービスはいろんな交通手段を連携させてシームレスな移動を提供するという概念ですけど、これがさらに進化しているんですね。
単に移動を便利にするだけじゃなくて、物理的な移動を補完したり代替したりするようなプレゼンス、存在感とか臨場感と訳せますかね、そういうものの提供へと向かっているんです。
ブク美
存在感、臨場感。
ノト丸
例えばJR東日本さんは東北MaaSとか旅コネクトみたいなサービスを展開してますし、スイカアプリも大型の更新を予定してるみたいで、移動のユーザー体験、UXを進化させ続けてるんですね。
ブク美
政策レベルでも重視されてるんですか。
ノト丸
政府のソサイエティ5構想とかデジタル庁のロードマップなんかを見ると、移動が福祉とかケア、地域の維持といった社会課題解決の鍵として位置づけられてます。
あと最近大きく"15分都市"みたいなコンセプトも、単に便利さだけじゃなくて、高齢者とか支援が必要な人の移動をどう支えるかとか、誰もが移動によって社会に参加できる、包摂性みたいな観点から議論が深まってるんですよね。
ブク美
包摂性。
ノト丸
近場で用事が済む便利さと、遠投まで自由に行ける稼働域の確保、この両立がテーマになってきてる感じです。
ブク美
本当に多岐に渡る動きがあるんですね。整理するだけでもちょっと大変なくらいです。
さて、そんな最新動向が集結するであろう、ジャパンモビリティショー2025、10月30日から11月9日ですが、特に何に注目すべきでしょうか。
ノト丸
そうですね。まずは主要企業の発表でしょうね。
ホンダさんは、さっきの0シリーズの新しいコンセプト、トヨタさんはWoven Cityの進捗とか、eパレットの実装事例、日産さんはソーラールーフみたいなサスティナビリティへの取り組みとか、自動運転実験の成果、この辺りが注目点かなと。
ブク美
はい。
ノト丸
それから、スカイドライブさんは、鉄道との連携によるeVTOL展示で、より具体的な運用イメージが見えてくるかもしれませんね。
ブク美
大企業だけじゃなくて、スタートアップもカギになりそうですか。
ノト丸
まさに、JMS内のスタートアップフューチャーファクトリーというプログラムは要チェックだと思います。
ここでは、移動×ケアとか、移動×地方創生、移動×観光みたいに、多様なテーマでスタートアップが斬新なソリューションを提案してきます。
大企業とはまた違う視点からの未来のモビリティの種が、ここから生まれる可能性は高いでしょうね。
ブク美
なるほど。スタートアップフューチャーファクトリーですね。覚えておきます。
未来を考える上で、文化的な視点、つまり映画とか書籍からのインスピレーションも重要ですよね。
モビリティの価値を問い直すような作品って何かありますか?
ノト丸
いくつか挙げるとしたら、例えば映画だと「Snowpiercer」、これは極限状況下で走り続ける列車が舞台なんですけど、移動することイコール生きることっていうすごく根源的な価値を突きつけてきますね。
ブク美
移動イコール生存。
ブク美
ええ。あるいはドキュメンタリーの「Living in the Age of Airplanes」。これは飛行機がいかに世界を結びつけて人々の視野とか文化交流を劇的に変えたかを描いていて、移動イコール出会いの拡張なんだなっていう価値を再認識させてくれます。
ブク美
ふむふむ。
ブク美
あと古典ですけど、「Blade Runner」。あの描かれる未来都市では空飛ぶ車、スピナーが当たり前ですけど、じゃあ誰がそれに乗れるのかっていう格差も描かれていて。
ノト丸
ああ、確かに。
ブク美
ええ。移動の自由と格差っていう普遍的な問いを投げかけてくるんですよね。
ブク美
なるほど。フィクションとかドキュメンタリーが未来への創造力をかきたててくれるわけですね。書籍ではどうでしょう?日本語で参考になるものはありますか?
ノト丸
MaaSを軸にして移動と都市の未来を考えるなら、「Beyond MaaS」、日本から始まる新モビリティ革命とか、もっと広く移動の意味そのものから捉え直すなら、「モビリティサービス」、「モビリティサービス―モビリティイノベーションシリーズ1」、この辺りが参考になるかなと思います。
ブク美
はい。
あとちょっと海外の議論に目を向けると、例えばKarel Martens(カレル・マルテンス)っていう人の「Transport Justice: Designing Fair Transportation Systems」、これは翻訳まだ出てないんですけど、交通システムを公平性とかアクセス機械の均等っていう視点から問い直している本なんです。
ブク美
公平性ですか?
ブク美
ええ。単に早く便利になるだけじゃなくて、誰にとっての移動価値なのかを考える上で、すごく示唆に飛んでますね。
ブク美
それは重要な視点ですね。研究の世界では、特にコロナ禍を経て何か変化はありましたか?
ブク美
それは大きな変化がありましたね。パンデミックによる移動制限っていうのは、図らずも移動できることの価値を改めて問い直すきっかけになったんです。
研究論文でも、Human Mobility Behavior in COVID-19みたいに、パンデミックが移動パターンとか意識に与えた影響を分析するものとか、あるいは、Valuing Mobility in a Post-COVID-19 Worldのように、移動の価値そのものを再評価しようみたいなものが増えています。
ブク美
移動が当たり前じゃなくなったからこそ、その本質的な価値が見えてきたと、そういうことですかね?
ブク美
まさにそういうことだと思います。移動しない、移動が制限されるっていう経験を通して、逆説的に移動できることが持つ経済的な側面だけじゃない、心理的とか社会的な価値の重要性みたいなものが浮き上がってきた。これが最近の研究トレンドの一つですね。
ブク美
非常に興味深いですね。さて、資料の最後には、個人的な仮説として、歴史観からの考察も書かれていましたね。これはどういう視点なんでしょう?
ブク美
これは少し大胆な見方かもしれないんですけど、例えば江戸時代の日本って、参勤交代なんかを除けば、庶民の長距離移動って比較的限られてましたよね。
ブク美
そうですね。