未来の仕事のテーマ
ノト丸
毎日未来創造、本日もまだ見ぬ未来のプロトキャスト、可能性を探ってみます。今週のテーマは、仕事の未来ですね。
今日は、あるリスナーの方から共有いただいた、一つの近未来SFショートショートがありまして、
オヤジギャグがアートになる時っていう、ちょっと変わったタイトルの物語です。これを深掘りしてみようと思います。
AIが社会の隅々に浸透した未来、そこでは効率とか論理が絶対的な価値を持つ、はずだった。
でも、もしですよ。あなたの何気ない一言、もしかしたら、いや、かなりくだらないと感じるジョークが、いつか美術館に飾られるとしたら。
この物語は、なんかそういう可能性を私たちに問いかけてくるんです。
AI時代の人間らしさ、特にその非効率的な側面が持つかもしれない価値、そしてそれが仕事とどう関わってくるのか、その辺りを探っていきましょう。
さて、物語の世界に少しだけちょっと入ってみましょうか。
2050年の東京です。アーティストシンジのアトリエ。壁にはですね、例えば、「蝶ネクタイと超越について」なんていうすごく短い言葉がアートとして額に収められている。
これどう見ても、うーん、オヤジギャグですよね。
で、そこにいるのが弟子のアオイさん。2025年生まれの、いわゆるAIネイティブ世代。
生まれた時からAIが最適解を示す、そういう世界で育った彼女には、師匠のこのアートが、まあ全く理解できない。
先生、なぜこんなに短いんですか。なぜそのオヤジギャグなんですか。
この素朴な疑問が、今回の探求のスタート地点になりますね。
ブク美
アオイさんの疑問は、まさにこの物語が投げかける核心部分ですね。
シンジは50歳。彼が社会に出たのがちょうど2025年頃。まさに生成AIが爆発的に普及し始めた時代。
この背景がすごく重要になります。
当時はですね、多くの知識労働とか、あるいはクリエイティブな作業でさえ、人間がAIに勝とうとして、そして何というか敗北感を味わう、そんな空気が社会全体を覆っていた感じですね。
シンジ自身も元々は企画職だったんですが、AIが提示するまあ完璧なデータ分析とか、最適化されたプランの前に自分のアイデアがいかに無力かみたいなことを痛感していた。
人間がやる意味って本当にあるんだろうか?って多くの人が自問自答していた時代です。
まあ今の私たちも少しずつ感じ始めている感覚かもしれないですね。
ノト丸
ああ、その閉塞感わかります。その中でシンジに転機が訪れるわけですね。
ある重要な会議、彼が勇気を振り絞って提案した企画がAIによって論理的矛盾ありと、ばっさり一蹴されてしかも完璧な代替案まで提示されちゃう。
もう完敗ですよね。
ブク美
ええ、まさに。
ノト丸
そのどん底の瞬間、彼が思わず漏らした一言。会議が長引いてみんな口が少なくなって"貝"になりそうですね。
ブク美
その貝という一言。場は凍りついたかもしれませんけど、シンジにとってはまさに雷に打たれたような瞬間だったわけです。
ブク美
ここでシンジが発見したのが見立ての力なんですね。
ノト丸
見立てですか。それはどういう、もう少し詳しく教えていただけますか。
ブク美
はい。ここで言う見立てというのは、一見すると全く無関係な物事。この場合は会議の硬直状態と貝の会。これを"かい"という共通の音だけで結びつけちゃう。
そして場の本質的な空気感、つまり皆が口を閉ざしている様子を極めて安直に、でもある意味的確に捉える趣向のことです。
ノト丸
論理とかデータ分析では決して到達できないような人間の思考の張躍力、アナロジーに近いかもしれないですね。
なるほど。AIは論理的に正しい答えは出せる。それは得意だけれども、こういう突飛な、でもなんか言い得て妙みたいな結びつきは苦手だと。そういうことですか。
ブク美
そういうことですね。現在のAI、例えば大規模言語モデルなんかは膨大なデータからパターンを見つけて文章を生成したり、論理的な推論は非常に得意です。
でも文脈を横断するような、あるいは全く異質な領域を結びつける深い意味での見立てとか、その場の空気感を捉えるユーモアみたいなものは、やっぱりまだ不得意とされていますね。
シンジはそこにAIにはない人間ならではの価値を見出したということなんです。
人間ならではの価値
ノト丸
その発見からシンジはとんでもなく大事なことをとんでもなく安直な言葉で伝えるっていう、ある種の修行みたいなことを始めるんですね。
周りからは寒いとか言われながらもノートに書き溜めていく。
ブク美
そうなんです。そしてその力が実際に他者の心を動かす場面が出てくる。
同僚のミカさんという方がプロジェクトで追い詰められていたときに、シンジがくだらないダジャレで励ますんですね。
ノト丸
ありましたね、そのエピソード。
ブク美
問題が山積みなら手で"揉んだ"ら"胃"が痛くなるだけだ、みたいな。
ノト丸
それはかなり寒いですね。
ブク美
最低の出来だと本人も言ってますが、でもそれがミカさんを笑わせて涙させて、物事をシンプルに捉え直すきっかけを与えた。
ここで重要なのはそのダジャレの中身そのものというよりは、AIが出すであろう複雑で論理的な解決策とは全く違うアプローチですよね。
そのたった一言のくだらない言葉がミカさんの固まった思考をフッとほぐしたという点なんです。
ノト丸
具体的なアドバイスとかじゃなくて、むしろバカバカしいくらいの言葉の方が、かえって本質的な気づきとか精神的な解放をもたらしたと。
ブク美
まさにおっしゃる通りです。論理を超えた共感とか視点の転換を促す力ですね。
言葉の見立てが持つ人の心を動かす側面が描かれている。
これは効率とか正しさだけでは測れないコミュニケーションの価値を示唆しているように思います。
ノト丸
そして物語の中では、時代が進んで2030年代になると、今度は時代の方がシンジに追いついてくるような、
AIによる最適化が進んだ反動で人々が非効率で、なんか人間的な温みみたいなものを求め始める。
これはなんだか現代にも通じる感覚がありますね。
ブク美
そうですね。技術が飽和した社会で人間性の価値が見直される、あるいは揺り戻しが起こる可能性というのは、歴史を見てもしばしば見られますよね。
効率とか合理性だけでは満たされない何かへの寄与というか。
そしてシンジはついにダイレクトにオヤジギャグアーティストとして活動を始めるわけです。
彼のパフォーマンスは、例えば"愛とは何か?"というような大きな問いに対して、
哲学書にはいろいろ書いてある。でも私は目の前の相手に"あい"に行くこと、そのひと手間だと思う。
といったような世界一未理解説法みたいなことをすると。
なるほど。爆笑っていうのとは違うんでしょうね。
ノト丸
でも温かい笑いとハッとするような気づきが同時に起こる。そんな空間が生まれるんですね。
彼の仕事の本質は単に笑わせることじゃなくて、人々の固定観念、
例えばくだらないものイコール価値がないみたいな思い込みを壊して思考のバイアスから解放することにあると。
まさにその通りです。
ブク美
シンジのアートというのは、思考の転換を促す触媒のような役割を果たしているのかもしれないですね。
AIが常に正解とか最適解を示してくれる未来において、じゃあ人間独自の価値ってどこにあるのか。
この物語は、あえて論理から外れる遊び心とか、一見無関係なものを結びつける見立て、
つまりくだらなさとも言えるような非合理的な営みの中にこそ、新しい視点である。
あるいは新しい形のアートや仕事としての価値が生まれる可能性を示唆しているように思います。
なるほど。AIが効率化を進めれば進めるほど、人間はその対極にあるもの、
ノト丸
つまり非効率さとか余白、遊び、といったものの中に独自の存在意義を見出していくのかもしれない。
そういうことですか。
AI時代の新しい価値
ノト丸
そういう視点は非常に興味深いですね。
ブク美
AIが答えを出すのが得意なら、人間はむしろ問いを立てることとか、
あるいは既存の意味とか価値観を揺さぶること、
そういった役割が今後ますます重要になってくるのかもしれないですね。
シンジの活動はその未来の一つのプロトタイプと言えるかもしれないですね。
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ノト丸
物語の最後では、AIネイティブの弟子のアオイさんも、
次第にシンジの考えを理解して、見たての修行に意欲を見せるんですよね。
シンジが、次はガンバルンバに込められた労働感の変遷について考察するぞ、なんて言って、
アトリエにはまた新しい何か創造の空気が満ちていく。
いい終わり方ですね。
さて、この物語を踏まえて、ここであなたに問いかけてみたいと思います。
AIによる最適化がこれからますます進むであろう社会で、
あなたにとって人間ならではと感じるコミュニケーションとか、
創造性とは一体どんなものでしょうか。
一見無駄に見えること、非効率に思えるような営み、
例えば遠回りな会話だったり、手書きの手紙、目的のない散歩とか、
そういったものの中に未来の新しい価値が隠れているとしたら、
それはどんな価値だと思いますか。
なぜ、why、それが価値を持つのか。
どうすれば、how、それを育てていけるのか。
もし、what if、それが社会でもっと評価されるようになったら、
世界はどう変わると思いますか。
ちょっと想像を巡らせてみてください。
実験というのはどうでしょう。
ブク美
24時間以内に試せる小さな行動提案です。
何かあなたが誰かに伝えたいちょっと大事なこと、
あるいは少し複雑に感じている状況、
それをですね、あえて簡単な言葉、
少しユーモラスな見立てを使って表現してみませんか。
物語のような完璧なオヤジギャグである必要は全くありません。
ちょっとした比喩とか、意外な言葉の組み合わせを使うだけでもいいと思うんです。
それを伝えた時、相手の反応は普段とどう違うか。
そして、あなた自身の気持ちにどんな変化があるか。
ほんの少しでいいので観察してみてください。
どうでしょうか。
面白そうですね、それ。
今回の物語から見えてきた重要な洞察というのは、
AI時代の仕事とか価値というのは、
従来の効率性や論理だけではもう測れなくなるかもしれないということですね。
人間の持つ一見するとくだらないとも思えるような側面、
遊び心、ユーモア、論理を飛び越える見立ての力、
そういうものがかえって本質的なコミュニケーションを生み出したり、
人間らしさの重要性
ブク美
凝り固まった思考を解きほぐす新しい視点をもたらしたりする可能性がある、と。
うーん、効率化の先に逆に見えてくる人間らしさの価値ですか。
ノト丸
本当に考えさせられますね。
では最後にもう一つだけ、あなたに投げかけたい問いがあります。
今回は言葉の見立てという創造性に光を当てましたけれども、
これ以外にAIには真似ができそうにない、
そして非効率かもしれないけれど、
だからこそ人間的な価値を持ついとなみとは
一体何があるでしょうか?
あなたが未来に残したい、
あるいは未来においてこそ価値を持つと信じる人間らしさとは、
具体的にどんな行動や感覚、能力だと思いますか。
明日も、働くこと、仕事の未来をテーマに
まだ見ぬ未来のプロトキャストをお届けします。
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本日はありがとうございました。
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