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2026-01-01 1:29:15

193エドガー・アラン・ポー「モルグ街の殺人事件」(朗読)

193エドガー・アラン・ポー「モルグ街の殺人事件」(朗読)

かなりダルメシアン。

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サマリー

エドガー・アラン・ポーの「モルグ街の殺人事件」が朗読され、作品の背景や魅力が紹介されます。このエピソードでは、ポーの分析力と推理小説のスタイルが巧みに描かれています。「モルグ街の殺人事件」では、奇妙な殺人事件が発生し、主人公がその謎を解くために奮闘します。物語は緊迫した状況と複雑な人間関係を描きながら、独自の分析力を持つキャラクターが登場します。「モルグ街の殺人事件」では、恐ろしい殺人事件が起こり、憲兵たちが現場を捜索します。レスパネー夫人とその娘の遺体が発見され、さまざまな証言が集まる中で、謎がいっそう深まります。「モルグ街の殺人事件」では、パリで発生した不可解な殺人事件が描かれ、数人の証言に基づいてさまざまなディテールが浮かび上がります。この事件に関心を持つリュパンが自ら調査する姿勢も強調され、被害者の状態や証言が重要な要素となります。「モルグ街の殺人事件」では、凶悪な殺人事件が発生し、捜査官たちがその真相を追求します。話の中で、証人たちの異なる証言や怪しい声、運命的な犯人の影が描かれ、緊迫したサスペンスが展開されます。「モルグ街の殺人事件」では、謎めいた殺人事件が展開され、犯人の逃走経路が推理されていく様子が描かれています。物語では、窓や釘、バネといった重要な手がかりが鍵を握り、主人公が真相を解き明かす過程が描かれています。「モルグ街の殺人事件」では、残酷な手法で殺された女性が発見され、凶悪な犯人の特定に向けて推理が進められます。警察が手がかりを見逃し、真相を突き止めるための手がかりが探られる様子が描かれています。「モルグ街の殺人事件」では、リュパンが事件の真相を突き止める過程が描かれています。物語は、獣と人間の恐怖を交えながら進展し、ついには殺人事件の背後に隠された真実が明らかになります。「モルグ街の殺人事件」では、恐ろしい殺人事件が描かれ、劇的な展開が展開されます。登場人物の恐怖と驚愕は、この事件の衝撃を一層引き立てます。

ポッドキャストの概要
寝落ちの本ポッドキャスト。
新年明けましておめでとうございます。
本日1月1日配信予定となっております。
こんばんは、Naotaroです。
今年も一年どうぞよろしくお願いいたします。
このポッドキャストは、あなたの寝落ちのお手伝いをする番組です。
タイトルを聞いたことがあったり、実際に読んだこともあるような本、
それから興味深そうな本などを淡々と読んでいきます。
作品は全て青空文庫から選んでおります。
ご意見・ご感想・ご依頼は、公式エックスまでどうぞ。
寝落ちの本で検索してください。
別途投稿フォームをご用意しております。
リクエストなどをお寄せください。
それから、まだフォローしてないよというそこの方、
ぜひ番組のフォローをよろしくお願いします。
そして最後に、お日にりを投げてもいいよという方、
エピソードの概要欄のリンクよりご検討いただければ幸いです。
どうぞよろしくお願いします。
新年の投票の呼びかけ
さて、新年一発目の前に、
1月4日までが期限の
第7回ポッドキャストアワードのリスナー投票というのが
1月4日で期限なんですよ。
これ皆さんぜひ投票してください。
僕の番組を押してくださいという意味ではなくて、
普段皆さんが聞いている番組をぜひ投票してみてくださいという
喚起をしたいなと思っています。
決して僕の番組を押してくださいというつもりは全くないんですけど、
ちなみに僕は投票を済ませましたが、
もう普段聞いているやつですね、
どんぐりFM、だからサウンズバイ・モノリス、
そしてラジオ系になりますが東京ポッド許可局ということで、
すべておじさんたちがやっている番組を、
1人3つまで押せるんですよ番組を。
投票できるんですよ。
ぜひ皆さんも参加してみてください。
投票しないまま終わっちゃうと寂しいじゃないですか。
後に対象発表ですってなった時に、
自分が投票した番組、してない番組とか
気にもかけられないとなると寂しいと思うので、
ぜひ投票してみてください。
モルグ街の殺人事件の紹介
本日お読みするのは、
江戸川アランポー・モルグガイの殺人事件です。
令和も8年になりましたしね。
こういうのがふさわしいのではないかと。
なぜこれなんだという感じもしますけど。
これを読んでこうかと思います。
文字数は37000字。
1時間半かな。1時間半いかないかな。
くらいの想定です。
名前は知ってるんだけどな。
モルグガイの殺人事件。
佐々木直次郎役となっております。
新年一発目ということでね。
どうかお付き合いください。
それでは参ります。
モルグガイの殺人事件。
サイレーンがどんな歌を歌ったか。
また、アキリースが女たちの間に身を隠した時、
どんな名を名乗ったかは難問ではあるが、
皆々推理をしかねることではない。
トマス・ブラウン卿。
分析的なものとして論じられている精神の諸作用は、
実はほとんど分析を許さぬものなのである。
ただ結果から見てそれらを感知するに過ぎない。
その中でも分かっていることは、
精神の諸作用を過分に身につけている人にとっては、
これこそ何よりも生き生きとした楽しみの源泉であるということだ。
ちょうど強健な人が筋肉を働かせる運動を
喜んで自分の肉体的能力を誇るのと同じように、
分析家は物事を解き明かす知的活動に熱中する。
彼はこの才能を発揮できることなら、
どんなつまらない仕事でも楽しんでやるのだ。
彼は謎や難問や小型文字が好きで、
凡人の理解力では超自然とも見えるほどの明敏さで、
それらを解き明かす。
しかしも彼がありとあらゆる方法を尽くして得た結論は、
実のところまるで直感にしか見えないのだ。
分析の能力は数学の研究によって、
大きく大いに活躍させられるだろう。
ことにその最高の部門であって、
ただ逆行的なやり方をするというだけで、
不当にも特に解析学と呼ばれているものによってだ。
しかし計算することはもともと分析することではない。
例えばチェスを指す人は、
計算はするが分析しようとはしない。
だからチェス遊びが心的性質に与える効果などは
ひどい誤解だということになる。
私は今何も論文を書いているのではない。
ただ大変勝手なことを述べて、
いささか風変わりな物語の序文にしようとしているだけである。
ここでついでに手が込んでいるわりに
つまらないチェスなどよりは地味な
ドラフツの方がもっと確実に、もっと有効に、
試作的知性の高い力を働かせるものだと断言しよう。
チェスは駒が色々と奇妙な動き方をするし、
その価値も様々で、しかも変わるものだから、
ただ単に複雑というだけで、
よくある語尾だが、何か信仰なもののように謝られる。
この場合、注意力こそ強く要求されるのだ。
ちょっとでも注意が緩むと、
しくじって往生するか負けになる。
しかも駒の動きがまちまちで入り組んでいるために、
しくじりのチャンスはますます大きくなる。
そして10中の9までは、
鋭敏な人よりも集中力の強い人の方が勝つ。
その反対に、ドラフツでは動きがユニークで変化が少なく、
しくじるリスも少ないし、
割合に注意力も働かされずに済むので、
利益は全てどちらかの優れて鋭敏な方が得ることになる。
もっと具体的に言えば、
ドラフツのゲームで駒が盤面にキング4つだけとなった場合を想像してみよう。
もうこうなれば、むろんしくじりの起こるはずはない。
するとこの場合の勝負は、
両方の競技士が全く互角として、
注意力を強く働かせた結果としての、
念入り、
ルシェルシェな駒の動かし方だけで決まることは明らかである。
普通の手がみんな尽きてしまうと、
分析家は相手の心の中に自信を投げ込み、
すっかり相手の心になりきって相手を誘ってしくじらせたり、
せき立てて誤算させたりする唯一の方法、
時には実にバカバカしいほど簡単な手なんだが、
を一目で発見することがよくある。
ホイストは、
いわゆる計算力を養う者として早くから知られていて、
最高力の知力を持つ人々は、
チェスをつまらない者とけなして、
ちょっと不思議なほどホイストに凝った者だ。
確かにこの種の者では、
ホイストほど分析能力を働かせる者は他にない。
キリスト教国中で一番のチェスの名人だと言っても、
つまりはただチェスの名人だというにすぎない。
ところが、ホイストの上手ということになると、
心と心とが戦う全てのもっと重大な事業にも成功できるということを意味する。
この上手というのは、
正当な利益をもたらす全ての壺を、
それぞれちゃんと知り抜いているといった、
技の完全な精通を意味するのである。
これらの壺は多種多様で、
しかも多くの場合、
普通の理解力では全然近づき難い思考の奥深くに隠れているのだ。
注意深く観察するということは、
明瞭に記憶することであって、
そこまでなら集中力の優れたチェスの棄却も、
ホイストは十分上手くやるだろうし、
またホイルの法則だって、
それがゲームの単なるメカニズムに基づいたものである以上、
誰にでも十分に理解できるものなのだ。
だから良い記憶で、
方式通りにやるということが上手く勝負をする秘訣だと一般的に考えられている点である。
ところが分析家の腕の見せ所は、
単なる法則の限界を超えたところにあるのだ。
彼は黙っていながら多くの観察や推理をする。
また多分彼の仲間もそうする。
それでそうして得られた知識の範囲の違いは、
推理の正しさよりも観察の質にあるのだ。
必要な知識は何を観察すべきかを知ることなのである。
我が分析的競技者は決して自分だけの中に閉じこもることをしないし、
またゲームが目的だからといって、
ゲーム以外の物事からの推定を拒んだりはしない。
彼はまず味方の顔つきをよく見てから、
それを敵方の一人一人の顔つきと念入りに比較する。
一人一人の手にあるカルタの揃え方を考え、
時々持ち主が一枚一枚を眺める目つきから、
一つ一つの切り札や絵札を数える。
彼は競技の進行中ずっと顔のあらゆる変化に注意し、
確信や驚きや勝利や悔しさなどの表情の違いから、
シーンの材料を集める。
打ち出された札を集める様子から、
その人がその組でもう一度やれるかどうかを判断する。
テーブルの上に札を投げ出す態度から、
イカ様の手などはすぐ見破ってしまう。
それとうっかり喋った一言、
どうかして札を落としたり、
表を見せたりして慌てて引っ込めたり、
平気でいたりする態度、
または札を数えることやそれを並べる様子、
淘汰したり、ためらったり、
焦ったり、慌てたり、
といった全てのことは、
見たところ直角のような彼の知覚能力に、
ちゃんと事の真相を示しているのである。
だから初めの二、三回が済むと、
彼は一人一人の手にある札をすっかり知ってしまい、
あとはまるで他の連中が
持ち札の全部を晒してでもいるみたいに、
絶対的な確信を持って、
自分の札を切り出すのである。
分析力と単なる工夫力とを混同してはならない。
なぜなら、
分析家は工夫が上手いと決まっているが、
工夫の上手い人でも恐ろしく
分析力のない人が時々あるからである。
この工夫力が普通現れるのは、
構成力とか結合力によってであって、
骨葬学者たちはこの力を本源的能力と想像して、
別の機関を懲りに割り当てている。
これは誤っていると私は信ずる。
のであるが、
この力は他の点ではまるで
白痴に近い知力を持つ人々に
実にしばしば見られるので、
今までにも倫理学者の間に
広く注意を引いたぐらいである。
工夫力と分析力の間には
非常によく似通った性質のものではあるが、
空想と想像の間の相違よりも
実にもっと大きな相違があるのである。
これから起こす物語は、
今まで語った明大の注釈のように
読者諸君には見えるであろう。
1800××年の春から夏にかけて
パリに住んでいたとき、
私はC・オーゲスト・デュバン氏という人と知り合いになった。
この若い紳士は両家の××、
実際に名家の手であったが、
いろいろ不運な出来事のために貧乏になり、
そのために気力もくじけて
世間に出て活動したり、
財産を挽回しようとする元気もなくしてしまった。
それでも債権者たちの好意で
親譲りの財産の残りがまだ少しあったので、
それから上がる収入で
ひどい節約をしながらどうかこうか
生活の必需品を手に入れ
余分なもののことなど思いもしなかった。
唯一の贅沢といえば
実に書物だけで、
これはパリで容易く手に入った。
我々が初めて会ったのは
モンマルトル街の何もない図書館で、
そこで二人が偶然にも
同じ大変貴重な記行書を探していたことから
一層親しくなったのであった。
二人は度々会った。
フランス人が自分のことを語るときには
いつも示すあの率直さで、
彼が詳しく話してくれた
彼一家の小歴史は非常に面白かった。
私はまた、
彼の読書の範囲の大層を拾うのに驚いた。
そしてことに彼の想像力の奔放な激しさと
ハツラツたる精神さとは
私の魂を燃え立たせるように感じた。
その頃、私は求めるものがあって
パリで探していた。
不気味な屋敷の生活
で、こういう人と待ち合うことは
何にも勝る宝であろうと思い、
この気持ちをはっきり彼に打ち上げた。
でとうとう私のパリ滞在中は
一緒に住もうということになった。
そしてちょうど、
どんな迷信か問題にもしなかったが、
とにかく迷信のために
長いこと住み手のなかった
フォーヴール・サンジェルマンの
偏僻な寂しいところにある
崩れかけた古い怪しげな屋敷を借りた。
その家賃や、
また二人に共通した気質である
いささか空想的な憂鬱に
ふさわしいように家具を備え付ける費用を
私の方が彼よりいくらか
暮らしめきが楽だったので
私が受け持つことにした。
ここでの我々の日常生活が
世間に知れたなら
最も多分害のない狂人と思われたに違いない。
我々のイントンは完全なものであった。
訪問者は一人も寄せ付けなかった。
実際、我々の隠れ家は
私の以前の仲間たちには
注意深く秘密にしておいたし、
リュバンがパリで世間と交渉を
立ってからよほど年が経っていた。
我々はただ二人だけで暮らしていた。
夜そのもののために
夜を出来合いするというのが
私の友の気まぐれな好み。
というより他に何と言えよ。
で、あった。
そしてこのビザルリーにも
他の全ての彼の癖と同様に
私はいつの間にか落ち入って
全く投げやりに
彼の騎士外人みたい気まぐれに
身を任せてしまった。
漆黒の夜の女神はいつも我々と
一緒に住んでいるというわけにはいかない。
が、我々は彼女を模造することはできる。
ほのぼのと夜が明けかかると
我々はその古い建物の
重々しい鎧をみんな占めてしまい
強い香りの入った不気味に
ほんのかすかな光を放すだけの
ろうそくを二本だけ灯す。
その光で二人は読んだり書いたり
話したりして無双にふけり
時計が本当の暗黒の来たことを
知らせるまでそうしている。
それから一緒に町へ出かけ
昼間の話を続けたり
夜更けるまで遠く歩き回ったりして
賑やかな都会の
くしき光と影との間に
静かな観察が与えてくれる
デュパンの鋭い分析力
無限の青春的興奮を求めるのであった。
そうした時に私は
デュパンの特殊な分析的能力を
認めたり感嘆したりせずにはいられなかった。
彼の豊富な想像力から
十分に期待していたことだが
彼はまたその能力を働かせることを
何もそれを見せびらかすことではないとしても
大層喜ぶらしく
またそのことから生ずる愉快さを
私にあす白状もした。
彼は低い含み笑いをしながら
大抵の人間は自分から見ると
胸に窓を開けているのだと
私に向かって自慢し
そういうことを言った後では
いつも私の胸の中をよく知っている
実にはっきりした
驚くべき証拠を見せるのであった。
そんな時の彼の態度は冷ややかで
放心しているようだった。
目には何の表情もない。
声はいつも豊かなテナーなのが
最高音になり
発音が落ち着いていてはっきりしていなかったら
まるで感触を起こしているように聞こえたろう。
こんな気分になっている彼を見ていると
私はよく二重霊魂という
昔の哲学について深く考え込み
二重のリパン
想像的なリパンと分析的なリパン
ということを考えて面白く思うのであった。
今言ったことから
私が何か神秘的なことを語ったり
何かロマンスを書いたりしようとしているなどとは
思ってはならない。
私がこのフランス人について語ったことは
単に興奮した
もしかすると一種の病的な知性の結果に過ぎないのだ。
だがこんな時の彼の言葉の調子については
例を挙げるのが一番よくわかるだろう。
ある夜のこと
我々はパレ・ロアイアール付近の
長い汚い街をブラブラ歩いていた。
二重とも何か考え込んでいたらしく
少なくとも15分間は
どちらからも一言も物を言わなかった。
と全く突然にリパンがこう話しかけた。
いやー全く
あいつは子男さ。
そりゃテアトル・バリエテの方が向くだろうよ。
確かにその通りだね。
と私は思わず返事をしたが
はじめは私が心の中で考えていたことに
それからしてがちゃんと調子を合わせていた
不思議なやり方に気がつかなかった。
それほど私は考えに夢中になっていたので。
それからすぐ我に返って
酷くびっくりした。
リパン
と私は真面目に言った。
これは僕にはちっともわからないね。
あっさり白状するが僕はびっくりしたよ。
自分の感覚は信じられないくらいだ。
どうして君にわかったんだい?
とここで私は
彼が本当に私の考えていた人間のことを知っているかどうかを
はっきり確かめるためにちょっと言葉を切った。
シャンティリのことだろ?
と彼は言った。
なぜ君は後を言わないんだ?
君はあの男は小柄で悲劇には不向きだと
腹の中で言っていたじゃないか。
これはまさしく私の考えていたことだった。
シャンティリというのは
あとサンドニー以外の靴直しだったが
芝居きちがいになり
クレビオンの悲劇のクセルクセスのロールをやって
散々悪評を受けたのであった。
どうか話してくれたまえ。
と私は大声で言った。
どんな方法で
もし方法があるならだよ
僕の心の中を見抜くことができたのかということを
事実私は口で言うよりももっとびっくりしていたのだ。
あの果物屋さ
トトモは答えた。
クセルクセスとかすべてそういった役をするには
あの靴底直しでは寸が足りないという結論を君にさせたのはね。
果物屋だって?
驚くねえ。果物屋なんて僕は一人も知りやしないよ。
僕たちがこの通りへ入った時に君にぶつかったあの男さ
もう十五分も前だったろ
そう言われて私は思い出した。
いかにも我々がシーガイからこの通りへ曲がった時に
頭に大きなリンゴカゴを乗せた果物屋が
誤って危うく私を突き倒しそうになったのだった。
だがそれがシャンティリーとどんな関係があるのか
私にはどうしてもわからなかった。
リパンの様子にはホラフキ
シャルラトゥヌリーのようなところはちっともなかった。
じゃあ説明しようと彼が言った。
君にはっきりわかるように
まず僕が君に話しかけた時から
あの果物屋と衝突した時までの
君の考えの経路を逆にたどってみることにしよう。
鎖の大きな輪はこう繋がる。
シャンティリー
オリオン星座
ニコルズ博士
エピキュロス
ステリオトミー
往来の宝石
果物屋
まあ自分の生涯のある時期に
自分の心がある結論に到達した道順を
遡ってみることを面白いと思わない人はあまりないだろう。
この仕事は時々実に興味のあるもので
初めてそれを試みる人は
出発点と到着点との間に
ちょっと見ると
無限の距離と無連絡とのあることに驚くのだ。
だからこのフランス人が今言ったことを聞いて
それが真実であることを認めるほかなかった時の
私の驚きはどんなであったろう。
彼は続けて言った。
もし僕の記憶が間違っていなければ
市以外を出るすぐ前に
僕たちは馬のことを話していたんだ。
それが僕たちの最後の話題だったね。
この通りへ曲がった時
頭に大きなカゴを乗せた果物屋が
急いで僕たちとすれ違って
歩道を修繕しているところに集めてあった
宝石の積み山の上に君を押し合った。
君はそのバラバラの石ころを踏んで滑り
くるぶしをちょっとくじいたので
ムカッとした不機嫌な様子でブツブツ言って
住んである石を振り向いてみたが
あとは黙って歩き出した。
僕は何も君のすることに
特に注意していたんじゃない。
が近頃どうも観察ということをせずに
はいられなくなっているんだね。
君はずっと地面に目を落としていた。
むっとした表情をしたまま
宝石の穴や輪立ちをチラリチラリと眺めながらね。
だから君がまだ石のことを考えていることが
僕にはわかったんだ。
そのうちに僕たちは
ラマルティーヌという小道へやってきた。
そこには重ねてむくぎを打った霧石が
試験的に敷いてあるんだ。
ここへ来ると君の顔は晴れやかになった。
そして君の唇が動いたのできっと
ステリオトミーという言葉を呟いたのだなと
僕は思った。
俺はこういった宝石にひどく気取って
用いられる子だからね。
君がステリオトミーとつぶやけば
必ずアトミーのことを考え
ついでにエピキュロスの学説を考えるようになることを
僕は知っていた。
そしてついこの間
僕たちがこの学説について論じ合ったとき
僕がこの高貴なギリシャ人の
漠然とした推測が
なんと君よりも、まあほとんど世人に注意されなかったが
近世の星雲宇宙解明論によって
確かめられたということを
君に話したから
君がきっとオリオン星座の大星雲を
見上げるだろうと思って予期していたんだ。
すると話して君は見上げた。
で、僕は、自分が今まで君の考えに
ちゃんと正しくついてきたことを確信したんだ。
ところで
昨日のミューゼイに出たシャンテリーに対する
辛辣な悪口の中で
その風刺家は、靴直しが悲劇を演ずるために
名前を変えたことを皮肉に当てつけて
僕たちがよく話していた
ラテン語のシークを引用した。
というのは、あの
ペルデディットアンティケウムリティルラプリマスナム
はじめの文字は
昔の音を失えり
というシークのことさ。
これは、元ウリオンと書いたのを
今ではオリオンとなっていることを
言ったものだと話したことがある。
で、この説明に関してある辛辣な皮肉から
君がそれを忘れるはずがないのを僕は知っていたんだ。
だから君が
オリオンとシャンテリーという二つの観念を
必ず結びつけるだろうということは明らかだった。
果たして君がそうしたということは
君の唇に浮かんだ微笑の様子でわかった。
君はあのかわいそうな靴直しが
やっつけられたことを考えたんだ。
それまでは君はこごんで歩いていたが
その時カードをぐっと十分に伸ばした。
そこで僕は君がシャンティーの小柄なことを
考えたということを確信したよ。
で、その時に君の目想を遮って
本当にあいつは
あのシャンテリーは小男だから
寄せの方が向くだろうと言ったのさ。
それからしばらくたった頃
ガゼットでトリビューノの
夕刊に目を通していると
次のような記事が我々の注意を引いたのである。
控えなる殺人事件
今行3時頃
サンロック区の住民は
レスパネー夫人とその娘
カミーユ・レスパネー嬢との居住する
モルグ街の一軒の家屋の
四階より漏れたらしい
連続して聞こえる恐ろしい悲鳴のために
夢を破られた。
通常の方法で入ろうとしたが不可能だったので
少し遅れ
金手庫で門口を打ち壊して
近隣の者8、9人が
恐ろしい殺人事件
2名の憲兵で共に入った。
この時には叫び声は止んでいた。
が、一堂が最初の階段を
立ち上がっていた時
激しく争うような荒々しい声が
二言三言聞き取れた。
それは家の上の方から聞こえたものらしかった。
第二の踊り場に着いた時には
この音も止んでしまい
辺りは全く静かになった。
一堂は手分けして
部屋から部屋へと走り回った。
四階の大きな裏側の部屋へ行くと
その扉は
内側から鍵をかけてあったので
無理に押し開けたんだが
そこに合わせた全員を驚愕させるというよりも
むしろ戦慄させる光景が
現実したのである。
室内は実に乱雑を極め
家具は打ち壊され四方に投げ散らされている。
寝台はただ一個あるだけで
その寝具は取り除けられ
床の中央に投げ出されていた。
椅子の上には血にまみれた髪とりがある。
炉の上には
やはり血に染まった長い
フサフサした人間の灰色の髪の毛が
二束ばかり。
根元から引き抜かれたものらしい。
床の上にはナポレオン金貨四枚と
トバーズの耳は一個と
銀の大きなスプーン三個と
メタルダルジェの小さなスプーン三個と
金貨約四千フラン位の袋
二個とかある。
一隅にある端子の引き出しは開けてあって
沢山の品物が中に残ってはいるが
明らかに掠め取られたらしい。
鉄の小さな金庫が寝具
寝台ではなく
の下に発見された。
開けてあって鍵はまだ
縄文に刺したままになっている。
中には数通の古手紙と
モルグ街の恐怖
書類との他には何も入っていなかった。
ここではレスパネー夫人の姿は
見えなかったが
炉の中に非常に多量のススが
認められたので煙突の中を探ってみると
語るも恐ろしいことだが
頭部を下にした
娘の死体がそこから引き出された。
その狭い隙間にそうしてかなり上まで
無理に押し上げられていたのである。
体は十分温かかった。
調べてみると多くの擦り傷があったが
これは確かに手柔らく押し込んだり
引き出したりしたためにできたものである。
顔面にはひどいかき傷が多数あり
喉にも黒ずんだ傷と
深い爪の跡があって
被害者は締め殺されたようであった。
家のあらゆる部分を
くまなく捜索したが
それ以上は何の発見もなく
一度はこの建物の裏にある石敷の小さな
中庭へ出るとそこに老婦人の死体が
横たわっており
その陰光が完全に切られていたので
体を起こそうとすると頭部が落ちてしまった。
頭も胴も恐ろしく切り裂いなまれ
胴の方はほとんど人間のものとは見えないくらいであった。
この恐るべき怪事件には
今のところまだ少しの手がかりもないようである。
捜索と証言
翌日の新聞はさらに次のような
消法を付け加えた。
モルグガイの惨劇
この最も機械な恐ろしい事件
フランスでは
事件アフエルという言葉は
まだ我々の感じるような軽々しい意味を持っていない。
に関しては多くの人々が取り調べられた。
しかし本件に興味を与えるようなことは
まだ何一つ現れてこない。
以下
陳述された重要な証言を全て掲げることにする。
洗濯女
ポーリン・デュプールの証言
過去3年間
洗濯の御用を聞いていたので
被害者両人を知っていた。
老婦人と娘との仲は良く
互いに深く愛し合っていた。
代金は滞りなく払ってくれた。
二人の暮らし方や暮らし向きについては知らぬ。
レスパネ夫人は
占いを成り割りとしていたと思う。
金を貯めているという噂だった。
洗濯物を取りに行ったり
持って行ったりするときに
その家で誰にも会ったことがない。
確かに召使いは一人も使っていなかった。
その建物には
4階の他には
どこにも格がないようであった。
タバコ商
ピエール・モローの証言
今まで4年間
レスパネ夫人に少量のタバコ
および鍵タバコを売っていた。
レスパネ夫人は
北京で生まれずっとそこに住んでいる。
夫人と娘とは
その死体の見出された家に
6年以上住んでいた。
元は宝石廠が住んでいて
上の方の部屋を
色々な人にまたがししていた。
家はレスパネ夫人の所有であった。
彼女は狩屋のまたがしを嫌って
自らそこへ引き移り
どの部屋も貸さないことにした。
老婦人は子供っぽかった。
商人は
家で生活をしていて
金を持っているという噂があった。
近所の人たちの話では
レスパネ夫人は占いをしているということだった。
本当だとは思わん。
老婦人と娘
荷物運搬人が1、2回
医者が約8、9回のほかには
その家のうちに入っていくものを
見たことがなかった。
近所の多くの人々も
同様の意味の証言をなした。
さらなる謎の展開
この家、しばしば出入りするものといっては
一人もないということであった。
レスパネ夫人と娘との親戚で
生きているものがあるかどうかもわからなかった。
表の窓の鎧戸は
ほとんど開かれたことがない。
裏の窓の鎧戸は
4階の大きな裏側の部屋を除いて
いつも閉めてあった。
家は良い家であまり古くない。
憲兵
イジドルミューゼの証言
朝の3時ごろその家へ呼ばれ
戸口のところに約2、30人の人が
入ろうとしているのを見た。
ついに銃剣を持って
徹底ではなくその戸口をこじ開けた。
二枚門
つまり両開き門になっていて
下にも上にもカンヌキがかかっていないため
開けるには大して困難はなかった。
悲鳴は
門が開くまで続き
それから突然止んだ。
それは誰か一人のあるいは数人の人の
激しい苦悶の叫び声らしく
大声で長くて短い早口ではなかった。
商人が先に立って2階へやがった。
はじめの踊り場に着いたとき
声高く激しく争うような
二つの声が聞こえた。
一つは荒々しい声で
もう一つはもっと鋭い
非常に妙な声だった。
荒々しい声の方の数語は聞き取れた。
それはフランス人の言葉だった。
女の声ではないことは確かだ。
サクレ、チクショウという言葉と
ディアブル、クソという言葉と
聞き取ることができた。
鋭い声は外国人の声だった。
男の声だか女の声だかはっきりわからなかった。
何と言ったのかも感じられなかったが
国語はスペイン語だと不信ずる。
この商人の乗りた室内
及び死体の状態は
昨日本紙の記した通りである。
隣人、銀材工業
アンリ・リュバルの証言。
はじめにその家へ入った連中の一人であった。
大体のところ
ミュゼの証言を確証する。
彼らは家へ押し入るとすぐ
夜更けにもかかわらず
わっと集まってきた軍手を入れないために
扉を再び閉じた。
鋭い声というのは
この商人はイタリア人の声だと思っている。
フランス人の声でないことは確かだ。
男の声だったということは確かではない。
女の声だったかもしれん。
イタリア語に通じていない。
言葉は聞き取れなかったが
音の抑揚で言ったのは
イタリア人だと確信する。
レスパネー夫人とその娘とを知っている。
二人としばしば話し合ったことがある。
その鋭い声は
どちらの被害者の声でもないことは確かだ。
オーデン・ハイメルの証言
この商人は自分から進んで証言した。
フランス語を話せないので
通訳を通して調べられた。
アムステルダムの生まれである。
悲鳴の聞こえたときに
その家の前を通りかかった。
悲鳴は数分、確か
10分ぐらいの間続いた。
長くて大声で、実に恐ろしく
苦しげだった。
その建物へ入った連中の一人である。
一点を除いて全ての点で
前に挙げた証言を確証する。
鋭い声は
男のフランス人の声であることは確かだ。
言った言葉は聞き取れなかった。
声高く、早くて
肯定があり、明らかに怒りと恐れとから
発せられたものであった。
耳障りな声で、鋭いというよりも
身障りなものであった。
鋭い声とは言えぬ。
荒々しいの声の方は畜生、サクレ
クソ、ディアーブルとを繰り返していい
一度は
モンデューと言った。
ドロレーヌガイ、ミニョー
富士銀行の頭取、ジョールミニョー
ローミニョーの証言。
エスパネーフ人は多少の財産を
持っていた。
○○年
8年前の春から彼の銀行と
取引を始めた。
時々小額ずつ預け入れた。
死亡の3日前までは少しも払い出したことは
なかったが、その日彼女は自分でやってきて
4千フランの金額を引き出した。
この額は金貨で支払われ
一人の工員が金を
家まで届けた。
ミニョー富士銀行の工員、アドルフ
ルボンの証言。
当日の正午ごろ、彼は4千フランを
二個の袋に入れて、エスパネーフ人と
その住宅へ同行した。
扉が開くと、エスパネー嬢が現れて
彼の手から一つの袋を受け取り
老婦人はもう一つを取ってくれた。
彼はそれからお辞儀をして
立ち去った。その時路上には誰も見えなかった。
裏通りで
ひどく寂しいところである。
下手屋、ウィリアム・バードの証言。
その家へ入った者の一人であった。
イギリス人で
パリに2年住んでいる。
最初に階段を登った者の一人で
争う声を聞いた。
荒々しい声はフランス人の声であった。
すぐ分かったが、
今、全部は思い出せない。
サクレ、チクショウと
モンデュー、コラとは
はっきりと聞いた。
その時、数人の人が
格闘しているような音、
掴み合ったりする音がした。
鋭い声の方は非常に高く、
荒々しい声よりも高かった。
イギリス人の声でないことは確かだ。
ドイツ人の声らしかった。
女の声だったかもしれん。
ドイツ語は分からない。
以上の証人のうち、4名は当時を思い出して
さらに証言した。
レスパネ城の死体の見つかった
部屋の扉は、一度がそこに着いた時には
内側から城が降りていた。
全くひっそりしていて、うめき声も
何の物音も聞こえなかった。
扉をこじ開けた時には誰もいなかった。
裏の部屋も表の部屋も
窓が降りていて、内側からしっかり
閉まっていた。
その2つの部屋の間の扉は閉まっていたが、
錠がかかっていなかった。
表の部屋から廊下へ通ずる扉は
錠がかかっていて、鍵は内側にあった。
4階の廊下の突き当たりにある
表側の小さな部屋は開かれていて、
扉が少し開いていた。
この部屋には古い寝台や箱や
その他の物が詰め込んであった。
これらは
念意に取り除けられ創作された。
家中に残る熊中丹念に
創作された。
煙突の中は煙突掃除機で
上げ下げした。
家は屋根裏部屋
マンサルドのある4階建てであった。
屋根の引き窓は
不可解な殺人事件の発生
極めて硬く釘付けにされ、
幾年も開かれなかったように見えた。
争う声の聞こえた時と
部屋の扉を押し開けた時との
間の時間については
みんなの陳述は様々であった。
ある者は3分しか経たぬといい
ある者は5分も経っていたと言った。
扉は洋々のことで開いた。
葬儀屋アルフォンゾガルシオの証言。
モルグ街に住んでいる。
スペイン生まれで
家へ入った者の一人であった。
会場へは上がらなかった。
神経質なので興奮の影響を
気づかったのである。
争う声を聞いた。
荒々しい声はフランス人の声であった。
何と言ったのか聞き取れなかった。
鋭い声の方はイギリス人の声であった。
これは確かだ。
英語はわからないが
音の抑揚でそうと判断する。
菓子製造人
アルベルト・モンターニの証言。
最初に階段を上った中の一人であった。
例の声を聞いた。
荒々しい声はフランス人の声であった。
いくらか聞き取れた。
声の主はたしなめているようだった。
鋭い声の言葉はわからなかった。
早くて乱れた調子で
喋っていた。
ロシア人の声だと思う。
一堂の証言を確証する。
この証人はイタリア人で
ロシア人と話したことはない。
再び呼び出された数人の証言したところによれば
4階のあらゆる部屋の煙突は
狭くて人間は通れない。
煙突掃除機というのは
煙突掃除員たちの使うような
煙筒系の掃除ブラシのことである。
このブラシを
家中のあらゆる煙穴に上げ下げした。
一堂が階段を上っていく間に
人の降りて行けるような通り道は
裏には一つもない。
レスパネージョンの体は
4、5人が力を合わせなければ
引き下ろすことができなかったほど
煙突の中に強く押し込んであった。
医師ポール・デュマの証言。
夜明け頃
死体を検出するために呼ばれていった。
その時死体は
2つともレスパネージョンの見つかった部屋の
寝台の浅布の上に横たわっていた。
若い婦人の死体は
ひどい打撲傷と擦り傷がついていた。
煙突の中へ
突き上げられたために
そんな風になったものに違いない。
陰光はひどくすり抜けていた。
おとがいのすぐ下には
いくつかの深いかき傷があって
明らかに指の跡である
鉛色の斑点が一続き並んでいた。
顔面はものすごく変色し
眼球は突き出していた。
舌は一部噛み切られていた。
水落ちに
膝を押し付けたためにできたらしい
大きな打撲傷が発見された。
龍馬氏の鑑定によれば
レスパネ状は誰か一人
あるいは数人によって考察されたのである。
母の方の死体は
恐ろしく切り裂い舐まれていた。
右の足と腕との骨は
どれも多少とも砕かれていた。
左の頸骨と左側の全肋骨は
ひどく折れていた。
全身が恐ろしく傷つけられ変色していた。
この障害が
どうして加えられたかはわからない。
木製の重い棍棒
あるいは鉄製の広い棒
椅子
何か大きな重い
鈍い形の狂気を
もし非常な大力の男の手で使ったなら
このような結果が起きたかもしれない。
女ではどんな狂気を用いても
こういう危害を加えることはできない。
被害者の頭部は
証人の見たときにはすっかり銅から離れて
これもひどく砕かれていた。
印鉱は明らかに何か大変な鋭利な刃物で
多分紙剃りで切られていた。
下界
アレクサンドルエティエンでは
その他数名のものが調べられたが
以上の他に重要なことは何も得られなかった。
全ての点でこんな不思議な
こんな不可解な殺人事件。
証言と状況の調査
まあ仮に
本当の殺人が
行われたものとしてだが
わ、パリでは
今まで行われたことがなかった。
警察は全く途方にくれている。
この種の事件では
珍しい出来事である。
しかも手がかりらしいものの影もない。
同志の勇敢は
サンロック区では
まだ大騒ぎが続いていること。
犯罪の行われた家が
再び念入りに捜索されたこと。
改めて証人を呼び出して
取り調べたが
何の得るところもなかったことを報じた。
しかし不気として
アドルフルボンが
起法の事実以上に何も
有罪とすべきところがないにも関わらず
逮捕されて収容されたことが記してあった。
リュパンはこの事件の進展に
奇妙なくらい興味を感じているらしかった。
彼は何も非表明いたことは言わなかったが
少なくとも私はその再度から
そう判断した。
彼がこの殺人事件について
私の意見を尋ねたのは
ルボンが収容されたという報道が
あってからのちのことだった。
この事件を解き難い開示権と考える点で
私はパリ市民と同じ意見であるに過ぎなかった。
殺人犯人を探り出す手段は
私には少しも分からなかった。
こんな見せかけだけの調査で
手段を判断してはならない。
とリュパンが言った。
パリの警察は
明賓だと褒められているが
ただ懲り子なだけなんだよ。
彼らのやり方には
行き当たりばっかりの方法以上に
方法というものがない。
彼らの手段をたくさん見せびらかすが
それが時によると
その目的にうまく合っていないのでね。
例のジュールダン殿が
音楽をもっとよく聞くために
プルミューザンタンドルラミュージック
ヘアアギ
ローブドシャンブル
を持ってこいと言ったことを思い出させるよ。
彼らの達した結果には
時には驚くべきものがある。
がその大部分は
単なる勤勉と活動とで得たものなんだ。
この二つが役に立たないときには
彼らの計画は失敗する。
例えばビドックは水量がうまくて
根気強い男だった。
しかし考えに強要がなくて
いつも調査に熱心すぎるためにしくじっていた。
彼は物をあまり近くへ持ってくるので
視力を厳じたんだ。
一二の点は多分非常にはっきり見えたかもしれん。
がそのためにどうしても
物事を全体として見失うんだね。
こういうわけであまり考えが深すぎる
ということがあるもんだ。
真理は必ずしも井戸の中にはない。
事実
重要な方の知識となると
それはいつも上辺にあるものだと僕は信じる。
深さは真理を探し求める渓谷にあるのであって
その真理が見出される山底にあるのではない。
こういった語尾の点形は
天体を観察するときのことでよくわかる。
星をちらりと見ることが
網膜の外側を
そこは内側よりも
弱い光線を感じやすいのだ。
星の方へ向けて横目で見ることが
星をはっきり見ることになる。
星の輝きが一番よくわかるんだ。
その輝きは
目を星に十分に真正面に向けるにつれて
ぼんやりしていく。
それが後の場合には実際たくさんの光線が
目に入るさ。が前の場合には
もっと安全な感受能力があるんだ。
角の深さは観護屋を惑わし
力を弱める。
あまり長く一心にあるいは
まともにじっと見ていれば
金星だって大空から消えて見えなくなるかもしれんよ。
この殺人事件について言えばだ。
それについての
僕たちの意見を立てる前に
僕たち自身で少し調べてみようじゃないか。
調査は
僕たちを楽しませてくれるだろうよ。
楽しみというのは
こんな場合に用いるには妙な言葉だと思ったが
私は何も言わなかった。
それにまたルボンには
前に世話になったことがあって
僕はその恩を忘れてはいない。
出かけて行って
僕たち自身の目でその家を調べてみよう。
僕は警視総監のGを知っているから
必要な結果を取るのは簡単だろう。
許可が得られたので
我々は早速モルグ街へと出かけた。
リュパンの興味と考察
そこはリシュリュー街と
サンロック街との間にある
見素晴らしい通りである。
この区域は我々の住んでいた区域とずっと離れているので
そこへ着いたのは午後遅くであった。
家はすぐ分かった。
まだ大勢の人が別に目的もないのに
好奇心からしまっている鎧戸を
往来の向こう側から見上げていたからだ。
普通のパリ風の家で
門があり
その片側にガラス窓のついた番小屋があって
窓に一つ滑り戸がついていて
門番小屋
ロジュ・ド・コンシェルジュと記してあった。
家へ入る前に
我々はその街を通り過ぎて行き
横町へ曲がり
それからまた曲がってその建物の裏へ出た。
その間
リボンはその家ばかりではなく
すぐに細かな注意で調べていたが
どんな目的なのか私には見当がつかなかった。
後戻りして
我々は再び家の前へ来て
ベルを鳴らし証明書を見せて
管理人に入れてもらった。
二人は階段を上り
レスパネー上の死体の見つかった被害者の
二人がまだ横たわっている部屋へ行った。
例の通り部屋の乱雑さは
そのままにしてあった。
私にはガジェットで
トリビニョーにほぜられていた
以上のことは何も見えなかった。
リボンは何から何まで
被害者の死体をも精細に調べた。
我々はそれから
他の部屋部屋を歩き回ったり
中庭へ行ったりした。
二人の憲兵がずっと突き反ってきた。
調査は暗くなるまで
かかりそれから我々は引き上げた。
家へ帰る途中で
私の連れはある新聞社へちょっと立ち寄った。
前に言ったように
友には様々な村家があって
ジェレミナジェ
私は逆らわないで
そっとしておいた。
英語にはこの文句に
ちょうど当たるものがないであった。
ところが今度は
翌日の昼頃までは
この殺人事件に関する会話は一切したくないというのが
彼の気分なのであった。
その時になると彼は突然に
教皇の現場にどんなことでも変わったことを
認めはしなかったかと私に尋ねた。
変わったという言葉に
力を入れた彼の様子には
何故か知らないが何か私を
ゾッとさせるものがあった。
いや、変わったことって
何もなかったよ
と私は言った。
少なくとも
僕たち二人が新聞で見たこと以上には
何もね。
あのガゼットはこの事件の異常な恐ろしさを
理解していないようだよと彼が答えた。
しかし
あんな新聞のくだらない意見なんぞ
相手にせずにおこう。
この会事件は解決が容易だと思われるんだが
そう思われる理由のために
つまりその外観が異様な性質なので
かえって不可解だと考えられている。
と僕には思われるんだ。
警察は動機が分からないために
殺人そのものよりも
殺人事件の発生
殺人があまりに凶暴なために討伐している。
また彼らは
あの争っているように聞こえた声と
会場には殺されたレスパネージョンの他に
誰も見当たらず
また階段を上っていく一向の者に気づかれないで
逃げる手段がないという事実との
辻褄を合わせることができないことでも
途方に暮れている。
部屋がひどく乱雑になっていたこと
煙突の中に突き上げてあったこと
老婦人の体が無事らしく
切り裂い舐まれていたことなどの事実や
さっき言ったこと
それから僕がわざわざ言うまでもない他の事実などは
警察ご自慢の明備員さんを完全に
舞い出してしまって力をすっかり
証言の分析
麻痺させてしまったんだね。
彼らは異常なことと
難解なことと混同するという
あの大きなしかしよくある過ちに陥っているんだ。
だが仮に理性が
真相を探していくとすれば
ありきたりの面から離れている点
という点こそ問題なんだよ。
我々が今やっているような調査では
どんなことが起こったかということよりも
あったことの中で今までには
全く起こったことがないのはどんなことかと尋ねなければならない。
要するにだ。
僕はこの怪事件をやがて解決するだろうが
いやもう解決してしまっているんだが
その手軽さは
警察の連中の目に解決不可能と見えるのと
ちょうど正比例しているんだね。
私はびっくりして黙ったまま
彼を見つめた。
僕は今待っているんだ。
と彼は
部屋の扉の方に目をやりながら言葉を続けた。
僕は今
たぶんこの強行の犯人ではなかろうが
その犯行にいくらか関わっているに違いない
一人の人間を待っているんだ。
この犯罪の最も
凶悪な部分にはおそらく
その男は関係がないだろう。
この推定が当たっていればいいが
と思う。
というのは僕はこの謎全体を
この推定の上に立って解こうとしているんだからね。
僕はここで、この部屋で
その男の来るのを今か今かと待ち構えている。
ことによったら
その男は来ないかもしれない。
が、たぶん来るだろうよ。
もしやってきたら引き止めなければならない。
ここにピストルがある。
必要な時には
これをどう使うかということは
二人とも知っているはずだ。
私はピストルを手にしたが
自分のしたことにはまるで気もつかず
また自分の聞いたことも信じられなかった。
その間にリュパンはまるで
一人言を言っているように話し続けた。
こういう時の彼の放信したような様子については
既に語った通りである。
彼は私に話しかけているのだった。
が、その声は決して高くはなかったけれど
誰かずっと遠いところにいるものに
話しているような欲張りがあった。
目は何の表情もなくて
ただ壁だけをじっと眺めているのだった。
階段の上にいた連中の聞いた
争うような声が
と彼は言った。
あの二人の女の声ではないということは
証言によって十分に証明された。
だから母親の方が
はじめに娘を殺し
その後で自殺をしたのではなかろうか
という疑いは一切なくなるわけだ。
僕は殺人の手段ということのために
この点を話しておくんだよ。
レスパネー夫人の力では
娘の死体をあんな風に煙突の中に
突き上げるなんてことはとてもできないし
また彼女自身の体についている傷の性質から言っても
自殺などという考えを
全然許さないものなんだからね。
とすると
殺人は誰か第三者がやったんだ。
そしてこの第三者の声が
争っているように聞こえた声だったんだ。
今度はこの声についての証言全体ではなく
その証言の中の得意な点を
注意してみようじゃないか。
君はそれについて何か妙なことに
気づかなかったかね。
私は荒々しいフランス人の声だと
推定することには
全ての証人の意見が一致しているのに
あの鋭いあるいは一人の証言というところによれば
耳障りな声に関しては
ひどい意見の相違があるということを言った。
それは証言そのものなんだ
とデュパンが言った。
だが証言の得意な点じゃない。
君は特殊なことには何も気づかなかったんだね。
しかし
何か気づくべきものが確かにあったんだ。
君に言う通り
証人たちは荒々しい声については意見が一致していた。
こう点では彼らは一人残らず
異議がなかった。
けれども鋭い方の声に関しては
その得意な点は彼らの意見が
異なっていたということではなくて
イタリア人とイギリス人と
スペイン人とオランダ人と
フランス人とがそれを説明しようとしているのに
命名がみんなそれを
外国人の声だと言っていることなんだ。
一人一人がみんな
自分の国の者の声ではなかったと信じている。
みんながそれを
自分がその国語を知っている国の人の声と思わないで
その反対に思っている。
フランス人はスペイン人の声だと思い
自分がスペイン語を知っていたなら
いくつか言葉を聞き取れたかもしれないなどと言っている。
オランダ人は
フランス人の声だと言っているが
フランス語がわからないので
オランダ語を通して調べられたと書いてある。
犯人の手掛かり
イギリス人はドイツ人の声だと考えているが
ドイツ語はわからないんだ。
スペイン人はイギリス人の声であることは
確かだと思っているが
彼は英語を少しも知らないので
全然音の抑揚で判断するんだ。
イタリア人はロシア人の声と信じているが
ロシア人と話したことはないんだ。
その上もう一人のフランス人は
前のフランス人と違って
その声をイタリア人の声だと思い込んでいるが
その国語を知らないので
その抑揚で確信しているんだ。
さて、こういう証言の得られる声というのは
本当に実に奇妙な
ただならぬものだったに違いないね。
その声の調子には
ヨーロッパの5大国の人間にさえ
聞き取れなかったところが少しもなかったんだぜ。
君はアジア人の
アフリカ人の声だったかもしれんと言うだろう。
アジア人もアフリカ人もパリにはたくさんいない。
が、その推定を否定しないで
僕は単に今3つの点を君に注意してもらいたい。
その声を一人の証人は
鋭いというよりも身に障りなものと
言っている。
他の2人は早くて肯定のあるものであったと言っている。
どの証人も
言葉、言葉に似た音を
聞き取れたとは言っていない。
僕はこれまで
とリュパノが続けていった。
君の理解力に
どんな印象を与えたかは知らない。
が、僕は証言のこの部分
あの荒々しい声と鋭い声
とについての部分
だけからの正しい推定でも
この海事件の調査の今後一切の進展に
一つの方向を与える十分な手がかりになると
はっきり言い切れるね。
今、正しい推定と言ったが、
これでは僕の言いたいところはまだ十分に表せない。
僕は
その推定は唯一の正しい推定であるということ
またその手がかりは
そのただ一つの結果として
それから必ず起こってくるものであるということを
言いたかったんだ。
だが、その手がかりというのはどんなものか
今すぐは言わないでおこう。
ただそれは僕にとっては
あの室内での僕の調査にある一定の形
ある確実な傾向を与えるに
足りるほどの力のあるものだった
ということを心に留めてもらいたい。
今仮に
二人があの部屋へ行くとしてみよう。
第一に僕たちはそこで何を探すだろう。
殺人犯人の逃走した手段さ。
僕たち二人とも
超自然的なことなど
信じはしないんだ。
ネスパネー夫人親子は幽霊に殺されたんじゃない。
殺人をやったものは実態のあるもので
その実態で逃げたんだ。
ではどうしてか。
幸いにもこの点については唯一の推理の方法があって
その方法がある一定の結論に
導いてくれるに違いない。
逃走できる手段を
一つ一つ調べてみようじゃないか。
一同が階段を登っていたとき。
ネスパネー上の見出された部屋か
少なくともその隣の部屋に被害者がいたことは明らかだ。
とすると出口を探さなければならんのは
この二つの部屋だけだね。
警察は床や天井や
壁の石を塩発泡を剥いでみた。
どんな秘密の出口があっても
彼らの目に止まらぬはずはない。
しかし僕は彼らの目に頼らないで
自分自身の目で調べてみた。
と本当に秘密の出口なんぞは
一つもなかった。
部屋から廊下へ出る扉は
二つともしっかり錠がかかっていて
鍵が内側にあった。
今度は煙突を見ようじゃないか。
これは炉の上
8、9フィートばかりは普通の広さだが
それから先はずっと
猫でも大きいのを通れはしないだろう。
今まで言った手段で逃げ出ることの
不可能なのはこれで確実だから
もう残っているのは窓だけになる。
表の部屋の窓からは
誰だって通りにいる群衆の目に止まらないで
逃げることができるはずがない。
とすると犯人は裏の部屋の窓から
出たに違いないんだ。
さてこの断定にこういうはっきりした方法で
来たからにはそれが一見不可能に見えるという
理由で修理づけるということは
僕たち推理家のすべきことではない。
この一見不可能らしく見えることが
実際はそうではないということを
証明することが僕たちに残されているだけなんだ。
あの部屋には窓が二つある。
一つは家具などの邪魔がなくて
すっかり見える。
もう一つの窓はかさばった寝台の頭が
それにぴったり押し付けてあるために
下の方が隠れて見えなくなっている。
はじめに行った窓は
内からしっかりと閉めてあった。
それを上げようとした人たちが
全力を出してみたが上がらなかった。
窓枠の左の方に大きな切り穴が開けてあって
非常に太い釘がほとんど
頭のところまで打ち込んであった。
もう一つの窓を調べると
同様な釘が同様に打ち込んであった。
そしてこの窓枠を
力を込めて上げようとしてみたが
やっぱりダメだった。
そこで警察の連中は
もうこの方面から出たのではないと
すっかり思い込んでしまったんだ。
だから釘を抜いて窓を開けてみることは
余計なことだと考えたんだよ。
僕自身の調査はもう少し寝入りだった。
それはさっき言ったような理由から
寝入りにやったんさ。
窓の謎と手がかり
つまり一見不可能らしく見える全てのことが
ないということを証明しなければならんのは
この点にあるんだということを
僕は知っていたんだから。
僕はこんな風に機能的に
あ、ポステリ寄りに考えを進めた。
犯人は
この二つの窓のどちらからか逃げたに決まっている。
そうだとすれば窓は
内側から再びあのように閉めることは
できなかったはずだ。
こいつがそれが実に明瞭であるために
警察はこの方面の調査をやめにしたわけなんだがね。
それなのに窓枠は閉まっていた。
とすると窓には
自分の力がなければならんことになる。
この段点には逃げ道がないんだ。
僕は邪魔のない方の窓のところへ歩いて行って
ちょっと骨を折って釘を引き抜き
それから窓枠を上げようとしてみた。
一生懸命にやってみたが
僕の予想していた通り
それは上がらなかった。
そこで僕は隠しバネがあるに違いないと気がついた。
そしてまたこんな風に
自分の考えが確かめられてきたんで
僕は釘に関する事情が
まだどんなに不思議に見えても少なくとも
僕の前提が正しいということが分かってきた。
念入りに探してみると
すぐに隠しバネが見つかった。
僕はそれを押してみて
この発見に満足して窓を開けることはしなかった。
そこで今度は釘を元の通りにさして
それを注意深く眺めた。
この窓から出た人間は
窓をまた閉めたかもしれない。
そしてバネはかかったろう。
が、釘はどうしても
元の通りにさせるはずがない。
この断定は明らかで
再び僕の調査の範囲は狭まった。
加害者はもう一つの窓から逃げたに違いないんだ。
そこで両方の窓枠についているバネが
同じだと想像すれば
両方の釘にあるいは少なくとも
その釘の差し込み方に相違がなければならんわけだ。
僕は寝台の朝布の上へ上がって
その頭板の上から
第二の窓を丹念に調べてみた。
板の後ろへ手を下ろしてみると
すぐバネが見つかったので押してみたが
想像していた通りそのバネは
第一の窓についていたのと同じ性質のものだった。
今度は釘を見た。
それは前のと同じく丈夫なもので
同じような具合に
ほとんど頭のところまで打ち込んであった。
僕が後方に暮れたろうと君は言うだろう。
が、もしそう考えると
君は機能的スリーということの性質を誤解しているに違いない。
量の言葉を用いて言うなら
僕は一度も書き損ないはしなかったんだ。
匂い跡がちょっとの間も失わなかったんだ。
鎖の輪は一つも切れていないんだぜ。
僕はこの秘密を
とことんの結果ままで辿っていった。
そしてその結果というのはその釘なんだ。
それは実際
あらゆる点で第一の魔女になるのと同じ様子をしていた。
が、この事実なんぞは
決定的なものに見えるかもしれないが
ここで、この点で
手がかりが終わっているという事情と比べれば全然無力なもんだよ。
釘に何か変わったことがあるに違いないと
僕は言った。
僕はそれに触ってみた。
するとその頭の方が
四分の一インチほど底芯がついたまま
ぼろりと取れて僕の指に残った。
釘身の残りは
切り穴の中にあって折れたままになっていた。
折れたのは古くのことで。
という訳は先がすっかり錆びていたからだ。
金槌で打ち込まれた時にそうなったらしい。
その金槌で
針の頭の部分は
下の窓枠の上にいくらか入ったんだ。
今度はその頭の部分を
元の穴へ注意深くはめてみた。
すると全く完全な釘と見え
折れ目は見えなくなった。
僕はバネをして窓枠を外2、3インチ上げてみた。
釘の頭は
しっかりその穴にはまったまま
それと一緒に上がった。
完全な一本の釘のように見えた。
謎は
ここまではもう解けたんだ。
殺害者は寝台に面している窓から
逃げたんだよ。
彼が出ると窓は一人でに落ちて
あるいはわざと閉めたのかもしれんが
バネでしっかり閉まってしまった。
そしてこのバネで閉まっているのを
警察は釘で閉まっているのだと思い違いをして
それ以上調査をすることは
不必要だと考えた。
逃走経路の考察
という訳さ。
次の問題は下へ降りる方法だ。
この点については
僕は君と一緒にあの建物の周りを
歩いている間に分かっていた。
例の窓から5フィート半ばかり離れたところに
飛来神が通っている。
この飛来神から窓へ直接手をかけることは
誰にだってできないだろう。
入ることは言うまでもない。
だが僕はあの4階の鎧堂が
パリの大工がフェラードと言っている
特殊な種類のものであることに目を止めた。
今では滅多に用いられないが
リオンやボルドーなどの
ごく古い屋敷によく見られる種類のもんだね。
普通の扉、両開きの扉ではなくて
一枚扉のようになっていて
ただ違うのは上半分が格子作り
すなわち格子細工になっていることだ。
だから手をかけるに
すこぶる都合がいい。
さて今の場合は
この鎧堂が幅がたっぷり
3フィート半もある。
僕たちが家の後ろから見たときには
この鎧堂は2つとも半分ほど開いていた。
つまり壁と直角になっていた。
警察の連中も僕と同様に
家の後ろを調べたろう。
でもこのフェラードを正面から見たので
格子層に違いない。
彼らは
あの幅の大きいことに気がつかなかったか
何してもそれを考えにいれなかったんだ。
実際この方面から逃げ出たはずがないと
一旦思い込んでしまって
自然ここはざっとしか調べなかったんだろうな。
しかし
僕には寝台の頭の方の窓にある鎧堂を
十分に壁の方へ押し開けば
平身から2フィート以内のところまで
届くということは明らかだった。
またごく波外れた勇気と
活動力とがあれば
平身からこうして窓の内へ入ることができたかもしれない
ということも明らかだった。
2フィート半も手を伸ばせば
今その鎧堂がすっかり開いていると想像して
強盗は
格子細工のところをしっかり掴むことができたろう。
それから平身を離し
足をしっかり壁にかけて踏ん張り
思い切ってそれを蹴ると
鎧堂は煽りを食ってバッと閉まるだろう。
そしてその時窓が開いていたと想像すれば
部屋の中へまで飛び込むことができるんだ。
こういう際どい
こういう難しい離れ技を
うまくやってのけるには
ごく波外れた活動力がいると僕が言ったのを
特に覚えていてもらいたい。
第一には
そんなこともやれたかもしれんということを君に示すのが
僕の意図だ。
第二には
そしてこの方が主なんだが
そんなことをやる微小さはごく異常な
ほとんど超自然的な性質のものだということを
君によくわかっていてもらいたいんだ。
犯行動機の探求
君はきっと
法律の述語を使って
君はこの事件に要せられた活動力を
十分に評価するよりもむしろ
それを低く評価すべきではないかと言うだろう。
法律の慣例ではそうかもしれんが
理論ではそうはいかない。
僕の最後の目的は真実だけだ。
で、さしあたっての目的は
いま言ったそのごとく波外れた活動力と
どこの国の言葉か
一人一人の意見がみなまちまちで
一言も聞き分けられなかった
あのごく得意な鋭い
あるいは耳障りな肯定のある声と
言わせてもらいたいことなんだよ。
こう言われるとリュパンの言っていることの意味の
おぼろげないくらか形を成した概念が
私の心をかすめた。
私は今にも分かりかけているようで
わからなかった。
ちょうど人が時々今にも思い出せそうで
結局は思い出せないといったことがあるように
友は話を続けた。
僕が問題を
逃げ出す手段から
と彼が言った。
入り込む手段に移したことには君にはわかっているだろう。
出るのも入るのも
僕は最初から同じ手段でやったのだということを
暗示したかったんだ。
今度は部屋の中へ戻ってみよう。
そこのありさも調べてみようじゃないか。
タンスの引き出しは
たくさんのLが中に残ってはいるが
かすめ取られていたとのことだね。
この断定はおかしい。
これは単なる推測だ。
全く馬鹿げた推測だ。
それ以上のものじゃない。
その時引き出しの中に入っていたものが
はじめから引き出しの中にあったものの
全部ではないということがどうしてわかるか。
客もなかったし、めったに出かけなかったし
たくさんの着替えの衣装もいらなかった。
青中にあったものは
この女たちが持っていそうなものの中で
一番上等なたちのものだった。
もし泥棒が何かを取っていったとしたら
なぜ一番いいのを取っていかなかったか。
なぜみんな取っていかなかったか。
要するになぜ
一掛の衣類などに手を出して
4000フランの金貨を残しておいていったか。
金貨は残しておいてあったんだぜ。
銀行がの見入しのいった
ほとんど全額が
袋に入ったまま床の上にあったんだぜ。
だから家の扉のところで
金が渡されたという証言のために
警察の連中の頭の中に浮かんだ
動機について間違った考えなどは
君には振り捨ててもらいたいね。
こんなこと、金が渡されて
それを受け取った者がそれから3日以内に
殺されたということなどよりも
十分不思議な暗号が
僕たちみんなに生涯の毎時間ごとに
ほんのちょっとした注意もひかないで起こっているんだ。
一般に暗号というものは
概然性、プロバビリティの理論。
人間の研究の最も輝かしい対象に
最も輝かしい
礼償を与えているあの理論。
を少しも知らないように教育された
失策家たちには大きな障害物なんだ。
今度の場合でも
もし金がなくなっていたんなら
3日前にそれを渡したという事実は
暗号以上のものとなったかもしれない。
動機についての例の考えを確実にするものであったかもしれない。
しかし今度の場合の
本当の事情のもとでは
金がこの強行の動機だと考えるならば
僕たちはその犯人を金も動機も
引き返してしまうような
ぐたらなバカモンだと思わなければならないことになるわけだよ。
今度は僕が今まで君の注意を引いた点
あの得意な声と
あの波外れた便称さと
こんなに珍しく残忍な殺人に
まるで動機がないという驚くべき事実と
異様な殺人現場
をしっかり心に止めておいて
強行そのものを
おざっと見てみようじゃないか。
一人の女が腕力で締め殺されて
頭を下にして煙突に突き上げられている。
普通の殺人犯は
こんな殺し方はしないね。
普通に殺した人間をこんな風に始末することはないよ。
死体を煙突へ突き上げるというやり方には
何かひどく異様
疎れなところ
たとえそれをやった奴が
人間の中で最も凶悪な奴と想像してみても
何か人間技という
普通の考え方とは
まるで相入れないものがあることを
君は認めるだろう。
また四五人もの人間が力を合わせてやっと
引き下ろすことができたほど
その隙間にそんなに強く死体を突き上げた力というのは
何と大したものか
今度は実に驚くべき力を用いた証拠が
もう一つあるのを見よう。
炉の上には人間の灰色の髪の毛の
ふさふさした束
非常にふさふさした束があった。
これは根元から引き抜いたものだった。
頭からこんな風に
二三十本の髪の毛だって
一緒にむしり取るには大した力のいることは
君も知っているだろう。
君も僕と同様その髪の毛を見たんだ。
あの根にはぞっとするが
頭の皮の肉がちぎれてくっついていたね。
まったく
二三十万本の髪の毛を引き抜くときに
出すような恐ろしい力の証拠だ。
老婦人の陰口はただ
切られていただけではなく
頭が胴からすっかり離れてしまっていた。
道具はただの紙剃りなんだぜ。
このやり方の獣的な残忍性も
見てもらいたい。
レスパネー婦人の体にある
打撲傷のことは僕は言わない。
デュマ氏とその女子のエティエン氏とは
それは何か鈍い形の道具で
やったものだと言っている。
そこまではこの方々の説は
ただし、鈍い形の道具というのは
明らかに中庭の宝石なんだ。
被害者は寝台の上にある方の
あの窓からそこへ落ちたんだよ。
この考えは今から見れば
どんなに単純なものに見えようとも
鎧の幅に気がつかなかったと同じ理由で
警察の連中には気がつかなかったんだ。
なぜかといえば
釘があんな風になっていたので
彼らは窓が開けられたかもしれんということなど
はまるで考えなかったんだからね。
今もし君が
こういうような全ての事側に加えて
部屋が変に乱雑になっていたことを
正しく考えてみるなら、僕たちはいよいよ
驚くべき臨床さ、
超人間的な力、獣的な残忍性、
動機のない残殺、
全く人間ばなりのした
恐ろしい機械の行為、
いろんな国の人たちの耳にも聞きなれない調子の
はっきり理解できる言葉が
一言も聞き取れなかったという声
などの観念を結びつけるところまできたんだ。
推理の進展
とするとどんな結果になるかね。
君の想像には僕はどんな印象を与えたかね。
リュパンがこう訪ねた時、
私は思わずゾッとしたのだった。
強人がやったんだね。
と私は言った。
だが、
近所のメゾンドさんて、
転教員から逃げ出した
狂騒性の騎士がいる。
ある点では、
と彼が答えた。
君の考えは見当違いじゃないよ。
だが、強人の声は発作の最も激しい時でも
階段のところで聞こえた
あの変な声と
決して不合するものではないね。
強人だって
どこかの国の人間だし、
その言葉はたとえ一号一号が
どんなにギレギレでも
音説はいつもちゃんとくっついているはずだよ。
その上に、強人の髪の毛は
僕が今この手に持っているような
こんなものじゃない。
僕がこの少しの束をレスパネーフ人の
固く掴んでいた指から解いたんだ。
君はこれを何だと思う?
リュパン。
私はすっかりびくついていった。
強人の髪の毛はとても変だね。
これは人間の毛じゃないよ。
うーん。
僕も人間の毛だとは言っちゃいないんだ。
と彼が言った。
しかしこの点を決める前に、
この紙に、ここに、
僕が書いておいた小さな見取り図を
ちょっと見てもらいたいな。
これは諸元にある部分に
レスパネー城の陰口にある黒ずんだ傷と
深い爪の跡と記されてあり、
また他の部分に
リュマとエティエンヌとの領主によって
この鉛色の反転と書かれているものの
模写なんだ。
君も気づくだろうが。
とトモはテーブルの上に
二人の前へその紙を広げながら続けていった。
この図を見ると
固くしっかりと掴んだことがわかる。
指の滑った様子もない。
一本一本の指が初めに掴んだ通りに
おそらく相手の死ぬまでぎゅっと掴んだままだったんだ。
今度はこれに書いてある
一つ一つの跡に君の指を
みんな同時に当ててみたまえ。
私はやってみたが
まだダメだった。
それではまだ本当に試したんじゃないかもしれないな。
と彼は言った。
この紙は平面になって広がっている。
が、人間のインコウは円筒形だ。
ここにインコウくらいの太さの棒切れがある。
この図をこいつに巻いて
もう一度やってみたまえ。
私は言われた通りにやってみた。
が、できないことは前よりも
一層はっきりした。
これは人間の指の跡じゃないよ。
と私は言った。
じゃあ今度は
一番が答えた。
キュビエのこの章を読んでみたまえ。
それは東インド諸島に住む
オオカッショクの王少女を解剖学的に
叙述的に
詳しく書いた記事であった。
この動物の巨大な身長や
非常な力と活動力や
凶猛や残忍性や
魔法性などはすべての人によく知られている
ところである。
私はあの殺人が生産を極めている訳を
すぐに悟った。
指について書いてあることは
私は読み終えると言った。
この図とぴったり一致しているね。
なるほど。
ここに書いてある種の症状でなければ
君の書いたような跡はつけられまい。
このくちば色の髪の毛の束も
キュビエの書いてある獣のと
同じ性質のもんだ。
しかし僕にはとてもこの恐ろしい怪事件の
細かいところはわからないね。
その上争っていたような声が二つ聞こえて
一つは確かにフランス人の声だったと言うんだからね。
そうさ。
これから君はその声について
証言がほとんどみんな一致してあげている言葉
あの
コラという言葉を覚えているだろう。
証人の一人。
歌詞製造人のモンターニが
これをたしなめるまたは諌める言葉だと言っているが
それはこの場合最もなんだ。
そこで僕は謎を完全に解く
自分の見込みをこの二つの言葉の上に
主として立てているんだよ。
一人のフランス人がこの殺人を知っていたんだ。
彼はその恐慌には少しも
加わっていないということはあり得る。
いや、おそらく確かにそうだろう。
少女はその男のところから逃げたのかもしれない。
彼はその後を追って
あの部屋のところまで行ったのかもしれない。
が、その後のあの騒ぎのために
とうとう捕らえることができなかったんだ。
少女はまだ捕まらないでいるんだ。
こういう推測
それ以上のものだという権利は僕にはないからね。
を、僕はこの上続けないことにする。
なぜなら
この推測の基礎になっているぼんやりした考察は
僕自身の理智で認めることのできるほどの深さを
持ってはいないのだし
またそれを他人に理解させようなんて
できることとは思えないからね。
だからそれをただ推測とみなして
言葉の手がかり
推測として話すことにしよう。
もしそのフランス人が
僕の想像どおり実際この教皇に
関係がないとするなら
先晩僕が帰りにルモンド
これは海運業専門の新聞で
水父たちのよくものだ。
社へ頼んでおいたこの広告を見て
その男はきっとこの家へやってくるだろうよ。
彼は
私に一枚の新聞を渡した。
それには次のように書いてあった。
捕獲
ボルネウシュの体層大きい
オオカシ色の少女を一匹
本月〇〇日早朝
殺人事件のあった朝
ボアド・ブローニュにて
所有者マルタ島船舶の
船員なりと判明した。
事故の所有なることを十分に証明し
その捕獲および保管に要した
若干の費用を支払われるならば
この動物を受け取ることができる。
フォーブル・サンジェルマン
〇〇海〇〇番地4階へ
来訪されたし
どうしてその男が船員で
マルタ島船舶の乗組員だということが
君に分かったかねと私は尋ねた。
ああ
僕には分かっていないんだとデュパンが
言った。
僕も確かには知らないんさ。
が、ここにリボンの切れっぱしがある。
この形や油じびているところなどから見ると
明らかにあの政府たちの好んでやる
長い弁髪を言われるのに使っていたもんだよ。
その上、この結び方は
船乗り以外の者には滅多に言われないものだし
またマルタ人独特のものなんだ。
僕はこのリボンを
平井審の下で拾ったんだ。
被害者のどちらかのものであるはずはない。
ところで
もしこのリボンから僕が
そのフランス人をマルタ島船舶の乗組員だと
推理したことが間違っているとしてもだ。
広告にああ書いても少しも
差し支えはないよ。
もし間違っているなら彼はただ
僕が何かの事情で考え違いをしたのだと思って
それについて宣議したりなどしないだろう。
ところがもしそれが当たっているなら
大きな利益が得られるというもんだ。
そのフランス人は殺人には無関係だが
それを知っているので
当然その広告に応ずることを
症状を受け取りに来ることをためらうだろう。
彼はこう考えるだろう。
俺には罪はない。俺は貧乏だ。
俺の症状は大した値打ちのもんだ。
俺のような身分のものには
あれだけで立派な財産なんだ。
危険だなんてくだらん懸念のために
あれを失くしてたまるものかい?
あれは今すぐ俺の手に入るところにあるんだ。
あの教皇の場所からずっと離れた
ボワードブローにで見つかったんだ。
知恵もない畜生があんなことをしようとは
どうして思われよう。
警察は途方に暮れているんだ。
少しの手掛かりもつかめないんだ。
あの獣のやったことを探り出したところで
俺があの人殺しを知っていることの証拠は
挙げられないし
また知っていたからって俺を
事件の発端
罪に巻き込むことはできない。
ことに俺のことは分かっているんだ。
広告主は俺をあの獣の所有者だと言っている。
彼がどのくらいのところまで知っているのか
俺のものだと分かっている。
あんな大きな値打ちの持ち物をもらいに
行かなかったら少なくとも症状に
権利がかかりやすくなるだろう。
俺にでも症状にでも注意を引く
ということは利口なことじゃない。
広告に応じて症状をもらってきて
この事件が静まってしまうまで
あいつを隠しておくことにしよう
という風にね。
この時階段を登ってくる足音が聞こえた。
ピストルを用意したまえ
とデュパンが言った。
しかし僕が合図をするまでは
打ったり見せたりしちゃいけないぜ。
家の玄関の扉は
開けっぱなしになっていたので
その訪問者はベルを鳴らさないで入り
階段を数歩登ってきた。
しかしそこでためらっているようだった。
やがてその男が
降りていくのが聞こえた。
デュパンは急いで扉のところへ歩み寄ったが
その時再び登ってくる音が聞こえた。
今度は後戻りせず
しっかりした足取りで登ってきて
我々の部屋の扉をトントンと叩いた。
おはよいなさい。
とデュパンが
快活な親しみのある調子で言った。
ひとりの男が
入ってきた。間違いもなく
スイフだ。背の高い頑丈な
力のありそうな男でどこか
無効水の顔つきをしているが
まんざらぶあいそうな顔でもない。
ひどく日焼けしたその顔は半分以上
頬ひげや口ひげに隠れている。
大きな菓子の梱包を
携えていたがそのほかには何も武器は持っていないらしい。
彼はぎこちなく
お辞儀をして
こんばんはとあいさつした。
そのフランス語の調子は多少
ヌーフシャテルなまりがあったが
それでも立派にパリ生まれであることを示すものだった。
やあ、おかけなさい。
とデュパンが言った。
あなたは
症状のことでお尋ねになったのでしょうな。
いや、たしかに。あれを持っておられるのは
うらやましいくらいだ。
実に立派なものだし、むろんずいぶん
高価なものに違いない。
あれは何歳くらいだと思いますかね。
そのセイフは何か
重荷をおろしたといったような様子で
長いため息をつき、それからしっかりした調子で答えた。
ああ、私にはわからないんですが、
せいぜい4歳か5歳くらいでしょう。
ここに置いてくださったんですか。
いやいや、ここにはあれを入れるに
都合のいいところがありません。
すぐ近所のデュブール街の貸し馬屋に置いてあるんです。
明日の朝お渡ししましょう。
もちろんあなたは自分のものだということの
証明はできるでしょうな。
ええ、できますとも。
私はあれを手放すのが惜しいような気がしますよ。
とリュパンが言った。
あなたに色々こんなお手数をおかけして
何のお礼もしないというようなつもりはありません。
とその男は言った。
そんなことは思いも
やらなかったことです。
あれを見つけてくださったお礼は
相当なことなら何でも喜んでするつもりです。
なるほど。
とともは答えた。
それはいかにも大層結構です。
おおっと、何をいただこうかな。
おお、そうだ。
お礼は
こういうことにしてもらおう。
あのモルクガイの殺人事件について
君の知っているだけのことを
一つ残らずみんな話してくれたまえ。
リュパンはこの後の方の
言葉を非常に低い調子で
静かに言った。
また同じように静かに扉の方へ歩いていって
それに錠を下ろし
その鍵をポケットに入れた。
それから彼は懐中からピストルを出し
全く落ち着き払ってそれをテーブルの上に置いた。
スイフの顔はちょうど
窒息しかけて苦しんでいるかのように赤くなった。
彼はすっくと立ち上がって
金棒を握った。
しかし次の瞬間には椅子にどっかと腰を下ろし
ガタガタ震えてまるで死人のような
顔色になってしまった。
彼は一言も口を聞かなかった。
私は心の底から
この男をかわいそうに思った。
ねえ君
とリュパンは親切な調子で言った。
君は
必要もないのにびっくついているんだ。
リュパンの策略
全くさ。
僕たちは何も悪気があってするのじゃない。
僕たちが君に何の危害を
受けられるつもりもないことを
私は紳士としてのまたフランス人としての
名誉にかけて誓う。
君があのモルグガイの強行について
罪のないことは私はよく知っている。
しかし君があれにいくらか関係があるということを
否定するのはよくない。
今言ったことから私がこの事件について
知る手段を持っていたことは君には分かるはずだ。
君には夢にも思えない手段だがね。
今問題はこんなことになっているんだ。
君は何も隠すことは何もしなかったし、
また確かに罪になるようなことは何もしなかった。
君は罪にならずに盗めるときに
盗みの罪さえ犯さなかったんだ。
君には何も隠すことはない。
隠す理由もない。
一方、君は是非とも君の知っているだけのことを
みんな白状する義務がある。
一人の罪のない男が今牢に入れられているんだが、
その男に負わされた罪の下主任を
君は察し示すことができるんだ。
リュパンがこう言っている間に
スイフはよほど落ち着きを取り戻してきた。
しかし、彼の初めの大胆な態度は
もうまるでなくなってしまった。
じゃあ、本当に?
と、しばらく経ってから彼は言った。
あの事件について
私の知っていることをすっかりお話ししましょう。
だが、私の言うことの半分でも
あんたが信じてくださろうとは思いません。
そんなことを思うなら
それこそ私は馬鹿です。
でも、私には罪はないんです。
だから、殺されたっていいから
残らず打ち明けましょう。
この男の述べたことはだいたいこうであった。
恐怖の真実
彼は近頃、インド軍島へ航海してきた。
彼の加わっていた一行が
ボルネオに上陸し
奥地の方へ遊びの旅行で入っていった。
その時、彼と一人の仲間とが
症状を捉えたのだ。
この仲間の男が死んだので
その動物は彼一人のものになった。
そいつの手に負えない童貌さのために
帰りの航海の間中
彼は随分困ったが、とうとう
パリの自分の家に無事に入れてしまうことができた。
そして、近所の人々が
自分に不愉快な好奇心を向けないように
症状が腺中で
木片で傷つけた足の傷が治るまで
注意深く囲まっておいた。
それを潤うというのが
彼の最後の目的だったのだ。
あの殺人のあった夜。
いや、もっと正確に言えば、あの朝。
彼は船乗りたちの遊びから帰ってくると
その獣が厳重に閉じ込めておいたと思っていた
隣の小部屋から
自分の寝室の中へ入り込んでいるのを
見つけたのだった。
症状は紙そりを手に持ち
石鹸泡を一面に塗って
座って顔を揃うとしていた。
前に主人の家あるのを小部屋の鍵穴から
覗いていたものに違いない。
そんな危険な狂気が、そんな凶猛な
しかもそれをよく使うことのできる獣の手にあるのを見て
度疑問を抜かれてしまい
その男はしばらくはどうしていいか
途方にくれた。
しかし彼はそいつがどんなに荒れ狂っているときでも
鞭を使って沈めるのに慣れていたので
今度もそれをやってみようとした。
その鞭を見ると
症状はたちまち部屋の扉から飛び出し
それから運悪く開いていた一つの窓から
街路へと飛び出したのであった。
そのフランス人は
絶望しながらも後を追った。
症状はなおも
神制御を手にしたまま時々立ち止まって
振り返り、ほとんど追いつかれそうになるまで
手真似をしてみせた。
それからまた逃げ出した。
こんな風にして追跡は長い間続いた。
かれこれ朝の三時頃のことであったから
街路はひっそりと静まり返っていた。
モルグ街の裏の小道へ通りかかったとき
レスパネーフ人の家の
四階の部屋に開いた窓から
漏れる明かりに症状は注意を引かれた。
その家のほうへ走るより
左進を見に止めると想像もつかぬほどの
素早さでよじ登り、
壁のところまですっかり押し開かれていた
鎧戸をつかみ、その鎧戸で
寝台の頭板のところへ直に飛びついた。
これだけの離れ技が
一分もかからなかったのだ。
鎧戸は症状が部屋へ入ったとき
蹴り返されて再び開いた。
その間
スイフは喜びもしたが
症状の飛び込んでいった罠からは
避雷針のほかには逃げ道はほとんどないのだし
その避雷針を降りてくれば
鳥を抑えることができようから
彼は今度こそ捕まえられるという
強い希望を持った。
また一方では、家の中で何かをするという
心配が多分にあった。
この後のほうに考えから
彼はなおも症状の後を追った。
避雷針は造作なく登れるし
ことに船乗りには何でもない。
だが彼が左肩、ずっと離れたところにある窓の高さまで行きつくと
それから先を進めなかった。
せいぜいできることは
身を伸ばして部屋の中をちらりと覗くことだけだった。
そうして覗くと
彼はあまりの恐ろしさに捕まっている手を
危うく離しそうになった。
モルグ街の住民の夢を破った
あの恐ろしい悲鳴が
夜の静寂の中に響き渡ったのは
この時のことであった。
寝まけ起きたレスパネー夫人と娘とは
部屋の真ん中に引き出してある
前に述べたあの鉄の箱の中の
何かの書類を整理していたらしい。
それを開けてあって
被害者たちは窓の方へ背を向けて
座っていたに違いない。
そして症状の入り込んだ音と悲鳴のした音の間に
経過した時間から考えると
すぐには症状に気がつかなかったらしい。
鎧戸のバタバタした音は
きっと風の音だと思われたのであろう。
政府が覗き込んだ時
その巨大な動物は
レスパネー夫人の髪の毛
ちょうどすいていたので解いてあった。
を掴んで床屋の手振りを真似て
彼女の顔のあたりに髪ソリを振り回していた。
娘は倒れていて身動きもしない。
気絶していたのだ。
老婦人が悲鳴をあげ
身も大したので
その間に髪の毛が頭から
むしり取られたんだが
症状のたぶん穏やかな気持ちがすっかり
憤怒の気持ちに変わった。
恐怖の始まり
その力強い腕で思いっきりひと振りすると
彼女の頭を胴体からほとんど切り離してしまった。
血を見ると症状の怒りは凶器のようになった。
歯を食いしばり
両目から炎を放って
娘の体に飛びかかり
その恐ろしい爪を喉へ突き立てて
逃げてしまうまで離さなかった。
症状のキョロキョロしたチバシッと雨付きが
この時ふと寝台の頭の方へ落ちると
その向こうに恐怖のために
こわばった主人の顔がちょっと見えた。
確かにあの恐ろしい無知を
まだ覚えていた症状は
怒りがたちまち今度は恐怖に変わった。
罰を受けるようなことをしたと悟って
自分のやった恐慌を隠そうと思ったらしく
ひどくそわそわして部屋中を飛び回り
そのために家具をひっくり返したり壊したり
また寝台からシングを引きずり落としたりした。
とうとうまず娘の死体を掴んで
後に見つけられたように煙突の中へ突き上げ
それから老婦人の死体を掴んで
すぐ窓から真っ逆さまに投げ出した。
症状がそのきじさいなんだ死体を抱えて
窓へ近づいてきた時
政府は肝をつぶして肥大心の方に身をすくめ
その肥大心を這い降りるというよりも
むしろすべり降りて
一目散に家へ逃げ帰った。
その恐慌の結果を恐れ
また恐怖のあまり症状の運命についての
一切の懸念をすっかり捨ててしまって
階段の上で人々の聞いた言葉というのは
症状の悪気のような声と混じった
そのフランス人の恐怖と驚愕との叫び声であったのだ。
もうこの上に使い加えることはほとんどない。
症状は扉が打ち破られるすぐ前に
肥大心を伝って部屋から逃げ出したに違いない。
窓はそこから出る時に閉めていったんだろう。
その後症状は持ち主自身に捉えられ
植物園ジャンダルデ・プラントに非常な大金で売られた。
事件の解決
ルポンは我々が警察署へ行って
デュパンの多少の注釈と共に事情を述べるとすぐに釈放された。
警視総監は私の共に好意を持っていたけれども
事件のこの展開を見て自分の悔しさを全く隠しきれなくて
人はみんな自分自分のことをかまっていればいいものだ
というような嫌味を一つ二つ言うより他にしようがなかった。
何とでも言わしておくさ。
別に返事をする必要もないと言って思っていたデュパンはこう言った。
勝手に喋らせておくさ。
それでご自分の気が休まるだろうよ。
僕はヤコさんの場内でヤコさんを打ちまかしてやったんだから満足だ。
だがあの男がこの怪事件を解決するのにしくじったということは
決して彼自身が思っているような不思議な事柄じゃない。
何しろ実際我が友人の総監は少々ずるすぎて考え深くないからね。
彼の知恵には有心がないのさ。
女神ラベルナの絵みたいに頭ばかりで道がない。
あるいはせいぜいタラみたいに頭と肩ばかりなんだ。
しかしまああの男はいい人間だよ。
僕はことにあの男が利口そうな口を聞くことに
妙を得ているところが好きなんだ。
そのおかげでヤコさんは俊敏という名声を得ているんだがね。
ヤコさんのやり口というものは
ドニエスキエエデクスプリケスキネパ
あるものを否定しないものを説明する。
というのさ。
1951年発行。新庁舎。新庁文庫。
モルグガイの殺人事件。
より読了。読み終わりです。
はい。症状ってオラウータンのことかな。
だるかったですねこの文章。
すごいだるかった。
セリフ。最初のセリフの発語があってその後
なんとかなんとかさと彼は言った。
その後続きのセリフが来るんだけど
その構成もなんか最初つかめなくて
スターリーの掛け合いのときどっちが喋ってるんだろう。
いちいち
勘案する必要があったし
あとなんでもかんでも
フランス語で書いてあるんです。
植物園。漢字で植物園と書いてある上に
ジャンダルデプラントって振り金が振ってある。
だる。
これを2回読む。
症状は持ち主自身に捉えられ
ジャンダルデプラント。
植物園に非常な大金で売られた。
みたいにさ、こう
2回読まないと耳で聞いてる人はわからないだろうなと思ってやったけど
だるい。
だるい。これなに?翻訳家がだるいのか?
それとも江戸川アランポーがだるいのか?
翻訳家は佐々木直次郎役。
直次郎がだるいのかポーがだるいのかわかりませんね。
ポーがだるいそうな気がするな。
これがかの有名なモルグガイの殺人事件ですか。
オラウンタンカイ犯人。
なんかもっと手に合う文章で
リズム良い感じになったら
もうサクッと読み終わったんだろうけど
1時間半近くかかってますけどね。
完成品で。
これ読み込みは、読み上げは4日くらいかかりましたね。
これはなんか
使ったカロリーの割にっていう感じ。
手のかかる子でしたこの子は。
泉強化と、泉強化もそうだし
あのなんだっけ、あの人。
白州だっけ?白州?
そうそう、北原白州ね。
あの辺も想像以上のカロリーを使って
結果、難しくてちゃんと伝わりづらいっていう。
地面だけに気にしてる感じだからね、北原白州は。
森鴎外は読みません。
旧金塚井はもうあっぴらごめんです、本当に。
伝わらないしね、読み上げられてもみんなが
石炭オバハヤツミハテツって言われてもわからないでしょ。
やめます。読みません、そんなものは。
もしかしたら寝落ちにはいいのかもしれないけど
僕が全然楽しくないから読みません。
僕はこの、みんなの寝落ちのお手伝いをするよと言いながら
僕は読んだことのない作品を読めるという
一石二鳥みたいなところでやってますから。
森鴎外とか旧金塚井はもうほんとごめんだわ。
よっしゃ、これが新年一発目なのね。
1月1日にこれを公開するのか。
どうなんですかね。
正しかったのかな。
まあいいか。
それでは、そろそろ終わりにしてまいりましょう。
無事に寝落ちできた方も、最後までお付き合いいただけた方も大変にお疲れ様でした。
といったところで、今日のところはこの辺で。
また次回お会いしましょう。
おやすみなさい。
01:29:15

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