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こんにちは、横浜で15年以上、犬の保育園の先生を行っている、なおちゃん先生と申します。
犬と人の架け橋でありたい、私が犬に関する様々なお話、大好きな旅の話、子供たちとのお話などを、マイペースにお届けしています。
より具体的なトレーニング、執毛、アニマルコミュニケーション、ペットロスについては、メンバーシップでお話ししています。
前回は、災害時のペット対策と犬たちの変化についてお話ししました。今回は少し前回の続きをお話ししていこうと思います。
震災や大きな災害の後、犬たちに多く見られる症状として、過度の分離不安症、音に対しての過敏な反応、興奮不安症状からのパニック、
予期恐怖による攻撃行動などが挙げられるとお話ししました。具体的に災害時や災害の後、犬たちの変化に気がついたらどうしたらいいのか、
そういったことを少し細かくお話をしていこうと思います。今回は分離不安についてお話をします。
平常時でも犬の6割程度がある程度の分離不安を抱えていると言われています。分離不安というのは、犬が一人ぼっちで飼い主と離れたときに抱える不安そうな様子、または不安から来る行動のことを言います。
震災時に一人でいることにより、その後の分離不安傾向が強まり、分離不安症と言われる症状を呈することはよくあります。この分離不安症が激化するかどうかというのは、平常時の分離不安がどれだけその犬にあるかどうかにかかってきます。
例えば、平常時から飼い主が離れたときに強い不安症状を示すような犬の場合には、不安を感じているときに大きな強い揺れや、それと共に家具が倒れてくる、大きな音が突然するといったことで、より強い恐怖やパニック状態に陥り、その不安から逃れたいという気持ちが破壊行動や自傷行動になっていき、心理性のトラウマとして残ることになります。
なので、平常時から一人でお留守番をする、一人で飼い主さんと違う空間に落ち着いているということに対して、不安がある犬の場合には、災害時にはさらにその不安傾向が悪化していくということが容易に予想できます。
普段から不安症状がどういうタイプで出てくるのか、というのも知っておくといいでしょう。
具体例としては、家具をかじる、布製品を破壊する、疎走をする、プラスチックなど固いものをかじる、吠える、ずっと家中をうるついて立ち上がったり、床を掘る動作をして傷つける、自分の体を傷つけたり、常時よだれを垂らす、
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飼い主の衣服や個人的なものを引っ張り出して荒らす、ゴミ箱などを荒らす、特定のものを何度も壊す、などなど、その犬によって分離不安を示す行動の傾向は変わってくると思います。
常に同じ行動を示すということもあれば、2、3パターンを同時に行ったり、繰り返したり、ループしていくこともあります。
分離不安は、いろいろな症状を呈しますが、長く断続的な吠えや自傷行為、自分を傷つける行為ということは、心身に大きなストレス状態が長い間かかっていることを示します。
特に、自分の体を傷つける自傷行為は、ストレスや不安の吐け口がどこにもなく、そういった場所でも起きやすく、ケージやクレートの中、リードにつながれた状態での分離、
これは犬自身に不安の吐け口がないことで、強いストレスにさらされたときに吠えや自傷行為に陥りやすいことが知られています。
離れることに対しては、犬は幼いときから苦手な犬の方が多いです。
特にプードルやレトリーバーなど、人と共にあるように繁殖を繰り返された犬種というのは、分離が苦手で、その傾向は年齢と共に強くなっていきます。
大人になったら良くなるだろう、ということはないと言っても過言ではありません。
そのため、子犬の頃から人と離れても落ち着いて過ごすことを練習し、忘れないように繰り返し習慣づけるトレーニングが必要です。
また、人と離れても良いことがある。飼い主さんが必ず迎えに来てくれるというポジティブなイメージを繰り返し犬に与えてあげることは、分離不安の予防のためにも子犬の頃からとても大切です。
この繰り返しというのは意外とミソで、子犬の頃は大丈夫だったんだけれども、だんだんお留守番ができなくなりました、というパターンも少なくありません。
人が常時集まり、お留守番が少なくなる、この年末年始なども、通常通りの日常生活に戻った時、犬たちの分離不安の傾向が増える時期、そういうこともあります。
おすすめは、1日のうちに少しの時間でも良いので、1人でお留守番や飼い主さんと離れて1人で過ごす時間を作ること。
全く留守番をしたことがない、問題行動があって留守番ができないという犬の場合には、別の部屋に行くということをほんの3分や5分からでもいいので、してみてください。
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昔は、お留守番の時には、あまり声をかけず、出かける素振りを悟られないように、さっと外に出る、ということが犬のトレーニングとして推奨されていましたが、私はこれが最良の策とは思っていません。
その方が落ち着いて1人でいられるという犬たちもいると思いますが、多くの犬たちは、突然いなくなった飼い主さんを探して、もっと不安が煽られてしまうのではないかと思っています。
そのため、私は、お留守番のコマンドをかけることをお勧めしています。
お留守番のコマンド、または分離のコマンド、と言っています。
行ってくるね、お留守番、またね、など何でもよいのですが、この言葉をかけられたら、飼い主さんはしばらく帰ってこないけれど、絶対に帰ってくるから大丈夫、というイメージを与える言葉、これを決めておくことにしていました。
美琴さんにもそうしていました。
また、日常生活の中でも、人と犬の境界線をきちっと決めておくことも、分離不安の予防に役立ちます。
日中のお留守番が長いので、家に帰ってきたら、お風呂でもトイレでもどこでもついてくる、そんな方も多いかもしれませんが、生活圏内において境界線を決めるということは、犬自身の自精神を養うためにも必要になっていきます。
まずは、家の中から、別の部屋や空間に落ち着いていられる、この練習からスタートしていきましょう。
犬と空間を隔てるときには、分離のコマンド、つまり、お留守番、待っててね、またね、などの言葉をかけて扉を閉め、その後、犬が落ち着いていられるときを見計らって部屋に戻ります。
この時、犬が大げさに喜んだとしても、飼い主さんは笑顔で一言、えらかったね、と声をかけたり、さっとひとなでするくらいのねぎらい、でもって褒めてあげましょう。
よく、帰ってきた後、犬が喜んでも無視しましょう、と書かれている情報などもありますが、無視することは難しいですし、犬は飼い主さんが帰ってきたときに自分を見てもらおうと必死にアピールするため、要求防衛など別の問題が起きてしまうこともあります。
分離のコマンドと帰宅後のねぎらいの褒め言葉のほか、分離中の特別なメリットを与えてあげるということも有効です。
具体的には、犬を一人で残すときには特別な報酬や、壊したり破壊したりしても良いものを与えてあげることで、犬の気を紛らわせることができます。
おすすめはやはり、地域玩具の中にいつもよりちょっとレベルの高いおやつを入れ、犬に与えてあげたり、そのような地域玩具をいくつか用意してあげることです。
おやつを入れた地域玩具を飼い主さんの匂いがしみついている古い衣類などにぐるんであげたり、壊したりかじったりすることが好きな子には、その子が好きなかじっても良いものをあげることで、余計な家具や大事な所持品を傷つけるということを防ぐことにも役立ちます。
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さらに、お留守番中には人の声が恋しくなりますので、ラジオやテレビを大きめの音量でかけておくことをおすすめします。
お笑い番組などもおすすめですよ。犬は人の笑い声や楽しげな雰囲気が大好きです。
分離不安症状が何かのきっかけでひどくなってしまった犬の場合には、家の中での数分の分離から再トレーニングを行いましょう。少しずつ時間を長くしていきます。
自傷行為、自分を傷つける行為が激しくなる場合や、近隣住民からクレームが入ってしまうほど、吠えが長く続く場合には、
従事士に相談することによって、鎮静剤や安定剤などが処方されることもあります。これを聞いている方の中には、薬を処方するなんてと思われることもあるかもしれませんが、
どうしてもやむを得ない場合には、犬自身の心身状態を落ち着かせる手段として考慮することも視野に入れていただきたいと思います。
その他、カモミールやバレリアンといったハーブは、香りやその成分そのものにリラックスや鎮静効果がありますので、動物にも適宜使うことができます。
人の不在中に怖い思いをした犬
強い地震や台風などを経験した犬は、少しの振動や突然の大きな音でパニックになったり、そういった刺激で恐怖反応が蘇ってきたりすることがあります。
そういう場合には、落ち着かせる触り方・接し方をぜひしてあげてください。
具体的には、小型犬なら自分の心臓のあたりに抱きかかえる。
この時、縦抱きではなく、背中と床が平行になるように、ししを包み込むように抱っこをします。
中型犬以上であれば、犬の上半身を小脇に抱えるようにし、犬の頭部を自分の胸のあたりに沿わせるようにします。
犬は、人の心臓の鼓動・体温に共鳴して安心を得ると言います。
また、体を早く、せわしなく撫でたり、声をかけたりするのではなく、体にぴったりと体をくっつけるようにして、動きを封じるような抱き方をするといいです。
犬は動きに対して興奮が煽られます。
早い動作・早い声かけというのは、犬を興奮させたり、不安な状態であれば不安を煽ります。
早い口をで、「怖かったね。もう大丈夫。大丈夫よ。落ち着いて。落ち着いて。いい子だね。怖かったね。もう大丈夫よ。」など、目を見て早い声をかけるよりも、
体に犬を抱え込んで動きを封じ、極力ゆっくりとしたストローク・ゆっくりとした声で囁くように、小さな子供さんを寝かしつけるように声をかけてある。その方が犬は落ち着きます。
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また、この時は犬の目をじっと見つめないこともポイントです。
犬は飼い主さんと目が合うと、飼い主さんが自分に何かを望んでいると思い、その思いを汲み取ろうと集中したり、期待してしまうことがあります。
人は中は眠っているように半分目を閉じ、ゆったりとした速度で話しかけ、撫でることで、犬は人のテンションに、空気感に、自分を合わせていきます。
他者のテンションに自分のテンションを合わせること、それこそが犬が最も得意としている能力の一つですからね。
さて、今回はお留守番の時などに強いショックを受けた犬が示すと言われている分離不安症状、その解説と分離不安の犬の対処方法などをお話ししていきました。
次回は音に対して過敏な反応を示す犬、興奮や不安症状からパニックに陥ってしまう犬、予期恐怖による攻撃行動が出てしまう犬に対してどのような対処方法をしていくことが良いのか、この辺りにフォーカスをしてお話をしていきたいと思います。
それでは最後まで聞いていただきありがとうございました。