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こんにちは、横浜で15年以上犬の保育園の先生を行っている、なおちゃん先生と申します。
少し間が空いてしまったんですけれども、今回は私の人生を変えた男、ドッグトレーナージョン・ロジャーソンのお話の続きをしていきたいと思います。
英国最大級の動物保護施設バタシードッグ&キャットホームで行われた、ジョン・ロジャーソンによる18日間のプロ向けセミナーの内容を前回からお話をしました。
その続きをお話ししていこうと思います。
このプロ向けセミナーの内容は、今思い返してもものすごく特殊で、とても素晴らしい内容だったと思います。
あらゆる犬のお仕事を垣間見ることができたことが、私にとって非常に貴重な経験となっています。
未だにあの記憶は全く色褪せることがないなと実感していますよ。
その中でも座学中心の講義、そして実践的なトレーニング、そして見学、体験と内容は多岐にわたっていましたが、
私は英語が不出来だったので、プロ向けの座学ではかなり苦戦しましたし、参加された他のメンメンもなんであの子来たんだろうと思ったと思います。
その苦労した座学の中でも印象に残っているものの一つ、これには良いブリーダーの選び方がありました。
イギリスではペットショップで犬、猫など生体が販売されているということはないんですね。これは皆さんもよくご存知だと思います。
犬をどこから迎えるのかというと、基本的にはブリーダーさんになります。
そしてこういったバタシなどの動物保護施設から迎えるということも非常に多いです。
保護された犬たち、保護施設から来た犬たちはレスキュー犬とかレスキューと呼ばれることもあります。
日本のペットショップは比較的叩かれがちな存在ですが、それではイギリスのブリーダーが全てとても有料で人道的で動物福祉に則っているのかというと、必ずしもそうではないんですよね。
ちょうど私がこのセミナーに参加した頃は、動物のネット販売が始まった頃で、ペットショップという店舗を持たないイギリスのブリーダーたちもネット販売に参戦して、
そのために問題が吹き荒れていた頃でもありました。
それでは有料なブリーダーをどのように選んだらいいのか、見分けたらいいのかということを、
どのポイントを見るのか、どのように問い合わせをするのか、クレームを入れたときの対応はどうなのかなどを、
実際に問い合わせや電話をかけて検証するというものすごい企画だったんですよね。
本当は買う気ないのに、実際にブリーダーに電話をかけたり、メールをしてちょっと難しい問題、
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例えば遺伝学や病理に関すること、行動学や栄養面についてなどを質問してみたり、
迎えるにあたって少し無理なんだよ、ふっかけてみたり。
例えば、迎えた子が気に入らなかったら返品したいのですが、その場合はいつまでなら返金してくれるのかなど、
これ大丈夫なのかなと思ったのをよく覚えています。
それでも、こういう基準や信念を持っているブリーダーはいいとか、
この質問に答えられないようなブリーダーはちょっととか、
この国のプロフェッショナルたちがどういう基準でブリーダーの良し悪しを判断しているのか、
という基準を知ることができたことは、とても有益な時間でした。
実際、日本ではペットショップでもブリーダーでも、そこまで突っ込んで質問するという方は少ないと思いますが、
これはイギリスでも一般の方は同じであるということもわかりました。
また、犬絡みの事故や事件の再裁判についての座学は非常に驚きでした。
イギリスでは犬絡みの事故が起きた際、
法廷にドッグトレーナーやビヘイビアリスト、これは行動学に特化した動物行動学の権威、
動物行動学者というふうには言われるんですけど、ビヘイビアリストと呼ばれます。
また、獣医さんなどが呼ばれることがあります。
この時点で驚きですよね。
法廷にそういった犬の行動学や獣医学やそういったトレーニングにプロフェッショナルの方が呼ばれることがあるということなんですね。
つまり、犬の生態に反した扱いをされたのではないのかということや、
飼い主や動物取扱業者が行動学や犬の生態、健康に反して動物福祉に対して、
適切な対応を行った上で起きた事故なのかどうかを、専門家を交えてきちんと検証するということがあるんですね。
実際には、犬が噛みついたことで人を死にいたらしめたり、重大な事故になった場合には、犬は殺処分の対象となりますが、
犬のための弁護人のような立場で犬のプロフェッショナルが法廷に立つことがあるわけなんですね。
このような場に、ジョンは専門家として何度も登壇したことがあり、既に決着のついている事例ですが、
参加者は過去の事故の概要、そして判決を聞いた上で、自分ならどんな弁護を行うのか、
どのような決着に至るかを予想して、チームごとにプレゼンをしていくというものがありました。
こちらは在学ですね。
当然、動物に関する法律、民事に関わる法律も知っていないとならないので、私にとっては苦行そのものでしたが、
そもそも日本語でも公民なのかよく分かっていないので、このシステム自体は非常に面白いなと思いました。
動物の権利を守るということも踏まえて行われるこのような裁判の制度というのは、
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まさに動物福祉の考え方が行き渡っている国ならではだなと感じます。
その他、トレーニングとして大変興味深かったのは、ヒースロー空港ですね。
イギリス最大の空港、日本で言えば成田空港とか、関空とかそういう感じでしょうか。
ヒースロー空港の麻薬探知研チームが、私たちのセミナーのためにわざわざヒースロー空港から出港してくれました。
この時、私は生まれて初めて麻薬成分を持つことになりました。
まあ、といってもデモのためですよ。
麻薬成分を薄めてコットンに染み込ませたものを小さな瓶の中に入れ、
一列に並んだ参加者の中の一人にも出せます。
そのうちの一人に私が選ばれたわけです。
犬とハンドラーは部屋の外に出て、四、五人並んだ人たちの中から瓶を持っている人を見つけ出します。
私は自分が悪いことをしたわけではないんですが、
大きなジャーマンシェパードに匂いを嗅がれる前からこんなに緊張したことは多分なかったと思います。
実動で活躍しているシェパ君たちの鼻は素晴らしく、私は一瞬で犯人だとバレてしまいました。
その後は麻薬探知研のトレーニング方法。
最初の導入部から実動のシェパ君のレベルまで、どのように段階を踏んでトレーニングを積んでいくのかを見せてもらい、
導入レベル、一番最初のレベルですね、これを自分の担当研で行いました。
もちろんこの時は麻薬成分ではなく、リンゴ酢など無害な成分を使って行います。
今でもたまにノーズワーク、お鼻を使ってエクササイズの一つとして、犬の保育園でも取り入れるこの導入部分というのは、
犬にとってこの匂いに反応したらいいことがあるということを教えることからスタートします。
私は実際にはクリッカーを使ってトレーニングをすることが多いです。
これはお家でも簡単にできますよ。
犬の鼻を使ったお仕事の別バージョンとしては、災害救助犬のワーク、担当研での実践トレーニングも同じように災害救助犬のワークも導入を行いました。
また、警察犬の臭気追跡にあたる匂いを追いかけるという課題もありました。
こちらは耳が垂れたセントハウンド系の子たちが得意で、デモンストレーションには両犬でもあるバセットハウンド君が来てくれました。
臭気追跡というのは、特定の匂いを追いかけて探す、たどるというものですが、
セントハウンド系、垂れ耳の足の短い子たちが多いのですが、そういった子たち以外の犬種でもある程度は行うことができます。
私たちは担当研で臭気追跡の導入トレーニングを行いました。
これは非常に面白いトレーニングで、匂いを追わせたいものを事前に地面に這わせて、匂いの道筋をつけてから行います。
一気に匂いの元にたどり着くことはNGで、一瞬でもその道筋の匂いを嗅いだときにはたくさん褒めて、匂いの道をたどっていくということを教えていきます。
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こうした作業犬たちのお仕事のトレーニングを行うことで、犬たちにとってはお仕事のためのトレーニングは遊びの延長、ハンドラーとのコミュニケーションの時間であり、
犬たちは心からトレーニングを楽しむんだということを身をもって知ることができたのはとても良い経験でした。
そもそも、お仕事をすることが犬たちは大好きです。
与えられている課題に取り組む意欲とクリアしたときの誇らしげな顔、
ご褒美をもらったときの満足そうな様子は、犬たちが生き生きする瞬間だなと思います。
私は、全ての犬にはトレーニングというお仕事を飼い主さんと行った方が良いと考える理由がここにあるんですよね。
ただし、向き不向きはもちろんあって、それをハンドラーさんや飼い主さんがきちんと理解した上で、
犬自身がモチベーションを持って取り組めるような課題を犬に導入してあげることは、犬たちの持っているポテンシャル、可能性を引き出すことにもなり、
逆に、不向きなことを無理やり押し付けることは、その犬の可能性を潰すことになる。
そう痛感したのも、これらの実践講座からでした。
なので、私は強制トレーニングで、やっぱり自分はあまりやらないんですよね。
無理やりやらせるということは、あまり好きではないんですよね。
それでは、次回は、私ドッグ&キャットホームのプロモケセミナーの最終回。
犬の持つ可能性を最大限に引き出すリフォーミングプログラムを物語にした、
ボーダーコリー専用のリフォームプログラムのお話をしたいと思います。
これは本当に驚きの体験でした。
日本でも、こういった機会が与えられるといいなと思った出来事の一つです。
そして、この18日間のプログラムの中で、最も私が印象に残ったプログラムでもあるので、
ぜひ皆さんにも聞いていただけたらなと思います。
それでは、今回も最後まで聞いていただき、ありがとうございました。