2023-11-26 54:41

20231126

4 Comments

Summary

2023年11月26日、今日は特に書くことがないので、私は昔書いた日記を読んでいます。もしよろしければ、こちらにご署名とご連絡先をお願いします。メールアドレスでも電話番号でもかまいません。団体「徒歩」の代表である島さんと、対話の様子について話されています。島さんはサラリーマンのような風貌であり、個別対話に応募した主人公が質問をし、島さんが回答する様子が描かれています。就活の順調さを心配される川崎さんと、就活の苦労を共有する話もあります。

日記の読み返し
2023年11月26日、今日は特に書くことがないので、昔書いた日記を読みます。
お疲れ様でした。もしよろしければ、こちらにご署名とご連絡先をお願いします。
メールアドレスでも電話番号でも結構です。
それは参加者名簿といったものだった。
こういうものは普通、始まる前に書くものだと思っていた。
ここの趣旨としては、内容を聞いた上で、署名したい人だけ署名してもらうというものらしく、
こうやって最後に名前を募っている。
帰りがけについ、さらさらと記入してしまい、間違いに気づいた。
これはとある団体のセミナーだった。
僕は頼まれてきていたんだ。
自分の名前を書いてどうする?
ああいう名簿は参加申し込みと称号して、出席を確認したりするものに使うはずだ。
僕は自分の名前で申し込みをしていないから、出席だけしていたらおかしなことになるんじゃないか。
この時はそんなどうでもいいことを考えていた。
セミナーの参加要請
お前暇だろ。
暇なわけないだろ。
分かってって言ってるだろ。
時間ぐらい作れるだろ。
お前も時間作れるだろ。
それがタイミング悪いんだよ。
ちょうどこの日は空いてないか?
空いてても行かない。
なんで、なんで行くんだよむしろ。
興味ないか。
やばそうだろこれ。
いや、意味わからないから。
就職活動の合間、代わりにセミナーに参加するように頼まれた。
本人が行きたかったけど都合が悪く、
概要でいいから参加してメモを取ってきてほしいと言われ、もちろん断った。
その日は閃光があり、それどころではない。
僕は彼とは違って普通に就職活動をしている。
石上という男は大学のサークルで参加しているウェブメディアで取材のようなことを行っていた。
そのウェブメディアには他のサークルや個人も登録されており、
それぞれの活動を吸い上げ、厳選されたものを公開している。
石上は卒業してからも活動を続けるつもりらしい。
セミナーに参加しようとしていたのも活動の一環であり、
セミナーに参加できないのもまた活動の一環が重なったためだった。
就職活動中の僕よりも忙しそうにしている。
セミナーの経験
石上からFacebook経由で送られてきたイベントの広告にはセミナーの日時や説明が書かれていた。
徒歩代表島徹郎講演会明日への歩み2月29日木曜日14時から15時予定。
石上の予定としては参加したついでに代表にアポイントを取り、
その後インタビューめいたことをやりたかったらしい。
このどこに惹かれたのか、彼が何をやばそうと言ったのかわからない。
しかしそういったものを見つけてくることで、彼の活動は今までもこれからも続いているのだろう。
そうか、残念だな。俺はいけないけど気が変わっていくことができれば後で教えてほしい。
石上は僕に頼み込むわけでもなく、あっさりと引き下がった。
僕は彼とそんな話をしたことも忘れていた。
グループディスカッションでは議題を与えられ、問題解決へ導くための模擬会議を行った。
初対面の就活性同士、ぎこちない愛想笑いを浮かべながら、
引いたカードの議題について話し合う。
グループディスカッションを何度か受けて気づいたことは、
議題が曖昧であること、正解がないこと、答えを導くまでの筋道を整える過程を見られていること、
そしてそれらをまとめ上げた人間が次の選考過程に進めるということだった。
ここで必要とされるのはアピールではなく、ロジックでもなく、コミュニケーションでもない、
同時にそれらが全てが求められているともいえる。
そういうことが見えてくると、選考におけるグループディスカッションは得意分野になった。
最初に議題を与えられた時点で、模範的な回答とそれに向けた筋道を描く。
そして他の就活性たちとあたかも相談しているかのように予想を得ながら、自分の筋道へと誘導する。
その筋道には根拠が明快にあり、感情で批判してくる就活性や、
ただ同意して頷くだけの人間は漏れなく落とされる。
そのまま自分が描いていた回答にまで導くことができれば、僕は次の選考過程へと進むことができた。
そして今日はそれに失敗した日だった。
後期高齢者を対象とした今までにない新しいサービスを考える。
このテーマについてどうしても筋道を描くことができなかった。
他の就活性たちと似たり寄ったりのことしか言えず、
妥協案のようなものでなんとなく話がまとまり、選考は終了した。
その日の僕は、ただ参加して頷く人間でさえなかった。
頭が働かず、何一つ発言しないでいた。
本日です。
手元のiPhoneが揺れ、画面に表示されたのは予定の通知だった。
1時間後、場所は最寄駅近くカルチャーセンター。
内容は、徒歩、代表、島、鉄楼、講演会、明日への歩み。
2月29日、木曜日。
14時から15時予定。
広告にアラートが設定されていたらしい。
僕は電車に乗った。
何度も前を通ったことがある建物だった。
こんなところで講演会のような催しが行われていることなんて今まで知らなかった。
建物には告知や看板といったものがない。
両開きのガラスドアを開け、部屋番号を確認して階段を上った。
ドアは閉まっており、表にはFacebookの告知と同じ文言をただプリンタで印刷しただけの紙が貼られている。
講演の開始時刻まで15分。
僕はドアを開けて中に入った。
部屋は予備校の教室のような折り畳み式の机とパイプ椅子が3列に並べられており、
月あたりにはホワイトボードがあった。
まばらに座る人、十数名。
みんな携帯を触って静かに佇んでいる。
若そうな人ややや年配の人もいるが、
10代のような若い人はいなかった。
男女比は少し女性の方が多く見られる。
みんな普段着で、僕のようなリクルートスーツは場違いに感じた。
どうぞお好きな席にお掛けになってください。
入口近くに立つ受付らしき女性に声をかけられた。
大学生のような服装をしているが、物越しに落ち着きが感じられる。
アルバイトだろうか。
僕はやや後ろ、右寄りの空いている席に座った。
この部屋は公園のために貸し出されたらしく、
簡素で広告や掲示というものはない。
ただ机とホワイトボードと的がある。
周りの人は一人スーツ姿の僕に目を向けるわけでもなく、
ただ時間が過ぎるのを待っているようだ。
各々が一人で来ているようであり、
並んで座っている人はいない。
会話をしている人もいない。
若い女性もいるが、こんなところに一人で来るものだろうかと不思議に思った。
端上に一人の男性が出てきた。
そろそろ時間なので始めたいと思います。
本日、私ども徒歩の講演会、
明日への歩みへご参加いただきありがとうございます。
本日、講演を務めさせていただきます島です。
よろしくお願いします。
それではまず、本日の概要についてお伝えします。
はじめに本題である、明日への歩みのお話をいたします。
その後、私ども徒歩についてご紹介いたします。
最後に質疑応答を受け付けたいと思います。
たった1時間しか予定していませんので、
どうぞくつろぎながらご参加いただければと思います。
よろしくお願いします。
それでは早速始めていきます。
この島という男性は一見して普通のサラリーマンであった。
この部屋の中で、僕以外唯一のスーツ姿が彼であり、
まっすぐな水色のネクタイと、
体にサイズのあったゴンのスーツ。
着慣れた印象を受ける。
短めだが少し伸びかかった髪。
今朝、髭が剃られたであろう。
鼻の下と顎のあたりは、
僕らイクルとスーツ姿の学生とは違う、
いかにも社会人の姿であった。
話し方は今日受けてきた会社説明会のようだ。
講演の内容はよくわからなかった。
人類の歩みと成熟に至るまでの歴史とか、
これからの歩みとその方向性というテーマであり、
話が上手いとも面白いとも思えない。
人類の歩む道とは、
動物ひいては生物という存在からの脱却を目指す歩みであり、
その先にある姿こそが人間の完成された形であるとか、
そうなった時、人類は国家や法律、経済などの枠組み、
必要としない存在になっているとか、
サラリーマン風の代表の姿からは、
どうにも見つからしくない変な話を終始行っていた。
代表シマの語る言葉を、
時々、就活用のノートに書き留める。
石上はこんなメモが見たいだろうか。
我々徒歩は、この歩みを意識的に行っていこうという
志の下に集まった団体です。
正式なメンバーは、まだ5人ほどの小さな団体ですが、
本日ご参加いただいた方の中にも、
ご興味を持たれた方がいらっしゃいましたら、
一度、私どもの活動にご参加ご検討ください。
見学だけいただくことも可能です。
セミナーは終了した。
何かの宗教団体か、何かかとも思ったが、
特に積極的な勧誘を受けることもなく、
不安を煽るような口調でもなく、
予定の1時間を過ぎる前に終わった。
この話を理解した人がいるのだろうか、
聞いていた人たちも感化されたような様子はなく、
途中で部屋を出ていく人や、
質疑の時間になっても、
帰っていく人がばかりで、
このセミナーは失敗のように思われた。
名簿に名前を書いた時に、
僕以外に署名していたのが10人に満たず、
来たついでに名前を書いていった程度なのだろう。
帰宅後、この自己啓発ノートのような走り書きを、
石上に渡すかどうか考えながら、
メールチェックをしていた。
リクナビから山のようなメールが届いている。
その中に紛れていた一通のメールは、
今日のセミナーを主催していた徒歩からのものだった。
川崎様、本日当セミナーにご参加いただき、
誠にありがとうございました。
当セミナーいかがでしたか。
私ども徒歩は今後も引き続き、
セミナー等の活動を行っていきます。
ご興味お持ちいただけましたら、
今後ともご検討よろしくお願いします。
さて早速ですが、来月より徒歩代表である島と、
個別対話の会を実施いたしております。
徒歩からは島一人でご対応させていただくことになるため、
誠に勝手ながら先着順で人数に達した限り、
締め切りとさせていただきます旨をご了承ください。
このお知らせは、これまでセミナーにて
島との個別対話
ご署名いただけた方のみお送りしております上、
ご参加いただけることを心よりお待ちしております。
ほら、やばかっただろう。ある意味でそうかもしれない。
これ、お前行くか?
そうだな、さすがにそのメモをもらっても材料が足りないし。
直接会えるんだったら、その時にインタビューできるかもしれない。
助かったよ。ありがとう。本当に行ってくれると思わなかった。
で、実際行った感じどうだった?
あ、それ以前に、あれは何なの?
宗教?そうだな、厳密に言えば宗教じゃない。
その宗教法人という形はとっていない。
団体の徒歩に関しては法人格は持っていなくて、
クラブやサークルみたいなもの、最近できた集まりみたいなんだけど、
大掛かりなイベントや活動はしていないみたい。
たまにこうやってセミナーを開いたり、メンバーだけの勉強会を開いたりしているそうだ。
お前はそれをどうやって知ったの?
それが友達に徒歩のコミュニティにいたっていう人がいて、そいつから聞いたんだ。
そいつは旅行でアイルランドにいたんだけど、その時お世話になっていたって。
アイルランド?
そう、なんか共同生活とかやっているらしくて、
じゃがいもを作ったりしてたって。
意味わからないだろ。
こいつの話が意味わからないし、その友達がやってることもわからない。
それ以上に徒歩の活動がよくわからない。
こっちは就職活動中だから、こいつらはどういう世界に住んでるんだろう。
母体はやっぱり日本みたいで。
そうだ、お前代表に会っただろ。
どんな人だった?
もう俺よりお前の方が詳しいんだよ。
どんな人って?
サラリーマンみたいな人。
スーツってこと?
スーツだし、話し方とか。
ああそうか、本当にそうなんだ。
やっぱり俺が行きたかったかな。
でも個別セミナーに行けるから、ちょっと楽しみ。
ありがとう、本当によくやってくれた。
それでその団体は結局何なの?
勉強会とか。
どんな?
あ、興味ある。
興味っていうか、ちょっと気になるぐらいで。
だって変じゃない?
そう、変なんだよ。
だからもうちょっと調べてから。
徒歩とは何か
え、いや、何やってる団体なの?
ああうん、ざっくり言えば自己啓発セミナーみたいな。
ノートにも、お前のノートにも書いてあった通り、
今までから現在を振り返り、
自分の意識を変えて別の道を歩もうとか、そういう感じ。
それだけ?
そういうのは基本的にどの団体も同じだけど、
みんな違うのは何を基盤にするかっていうところで、
宗教だったら神様とか仏様とか、
他にもスポーツ、政治思想、団体がやってることって、
だいたい根本的には同じだよ。
集団になって一定のルールに則った活動を行い、
精進するというか、
違いって何を基盤にするかとか、
何を目指すかっていうだけじゃない?
じゃあその徒歩っていう団体は何を目指してるんだ?
それこそお前の方がよく知ってるんじゃないの。
俺はセミナーの内容ほど詳しくは知らなくて、
なんか人間の成長とか何とか、
大人になるとかっていう意味じゃなくて、
進化みたいな、
その進化って言っても、
肉体的なものとか、機能とかじゃなくて、
意識の進化。
俺はよくわかってないから、
宗教によくあるような話かな。
えっ、っていうことはやっぱり宗教なの?
宗教じゃないんだけど宗教っぽいからつい宗教って言っちゃうね。
僕は勧誘とかされなかったけど、
そこは宗教っぽくない。
金を巻き上げられたとか、そういう話も聞いたことがない。
その何を基盤にするかっていう話だけど、
どっかの投資会社が活動資金を提供してるとか。
えっ、何それ。
うん、よくわからないけど、それを確かめに行こうと思って。
一緒に行くか。
いや、いい。
石上がしまってつろうとの個別対話を応募したところ、
石上様にはご署名いただいてないため誠に申し訳ありませんが、
今回はご参加いただくことができません。
次回セミナーにご参加いただいた上で、
ご署名いただけた後に同様の機会を設けます。
改めてご来場お待ちしておりますというメールが来た。
そして、個別対話に結局僕が参加することになった。
石上は残念に思っていたが、
僕が代わりに行くということで、
質問集みたいなものを作っていた。
それで取材の代わりになるということだった。
先着順ということだったが、機会に恵まれたらしく、
場所の指定があり、一時の擦り合わせのメールを送ってきた。
僕は就活中でこんなことをやっている場合ではないけど、
時間の都合をつけて話す内容も石上が用意してくれたから、
何も他に準備することなく当日を迎えた。
就職活動の合間の日を選ぶため、
その日はスーツを着ずに普段着で向かった。
場所は前回と違い、駅近くのビルにある歌詞スペースという点では同じだった。
今回も告知や掲示はなく、
ビルのエントランスを通り抜けてエレベーターに乗り、
ボタンを押すと扉が閉まった。
この駅近くの雑居ビルは、
ブラック企業に面接に来た気分になった。
エレベーターが着くと廊下を歩いて、
ドアの前に立ち、ノックした。
拳をドアに軽く2回、
お入りください、などという声があるわけではなく、
ドアが開いた。
ドアを開けたのは、先日見た島鉄郎本人だった。
あ、どうも本日はありがとうございます。
さあどうぞ。
島は片手でドアを開け、
もう片方の手を部屋の中に差し出していた。
前回と同じくスーツ姿。
ダークグレーの上下に紺の島模様が入ったネクタイ。
はい、失礼します。
僕が中に入ると島はドアを閉め、
どうぞこちらですと僕を誘導する。
部屋は前回と違い、
事務所の待合室といった風にガラステーブルとソファー。
部屋の脇には寒葉植物と自動販売機。
扇動されるがままに歩き、
ガラス張りの個室に通された少人数用の狭い部屋。
真ん中にテーブル、事務椅子。
どうぞお掛けください。
コーヒーでいいですか。
島は微笑をたたえながら椅子を引いた後、
出口へと向かいながら僕に尋ねた。
お構いなく、紅茶の方がよろしいですか。
あ、全然大丈夫です。
私も飲みますけど、よかったら召し上がってください。
それではすぐに戻ります。
そう言って島は個室を出ていった。
まるで来客のような対応。
来客で間違いではないのか。
島の動作はサラリーマンのようで、
訳のわからない団体の代表だとは思えない。
島はお盆にコーヒーカップを2つ乗せて戻ってきた。
お待たせいたしました。
カップをそれぞれの席に置き、
お盆を隅にあるサイドテーブルのような棚の上に置いて、
ようやく島も席に着いた。
それでは改めまして、本日はお越しいただきましてありがとうございます。
私、徒歩の代表をしております。
島の人物像
島でございます。
はじめまして。
ではなかった。
二度目でしたね。
すみません。
あ、いえ。
近くで見ると若い。
当然自分よりは年上だけど、
30もいってないんではないだろうか。
そんな人間が代表の団体。
アイルランドの活動。
学生の僕に提出せい。
あ、ごめんなさい。緊張されてます。
これ、癖でして。
営業みたいな喋り方ってよく言われて。
もっとフランクに話した方がいいですか。
あ、いや、どちらでも。
わかりました。
もう少し話しやすいように気をつけます。
えーと、川崎さんですよね。
今回は個別対話に応募いただきまして、
もしかして何かお話しされたいこととかありました?
あ、はい。
僕は石紙に渡されたノートを思い出し、
リュックから取り出してページをめくった。
あ、ノートですか。
本当にあるんですね。
あ、いや、そんな大したものじゃないです。
ちょっと聞きたいことがあって。
わかりました。
それ見せてもらってもいいですか。
見せていいのか。
でも口頭で質問するより簡単かもしれない。
どうぞ。
島はノートを受け取った。
質問の箇所を眺め。
眺めた。
石紙の質問は二重ほどあり、
聞いてほしい順に上から並べられている。
回答例を想定した追加の質問も用意されている。
これ雑誌か何かですか。
島と目が合った。
島は微笑みをたたえている。
いや、何かインタビューというか。
これ回答を書いて渡しましょうか。
聞き取るの大変じゃないですか。
あ、できるならば。
じゃあ書いてお帰りの際にお渡しすることでいいですか。
その間お借りすることになりますけど。
あ、大丈夫です。全然何でも。
わかりました。それではお預かりしますね。
怒っているわけではなさそうだ。
インタビューも珍しくないのかもしれない。
では改めまして今回の本題である対話に入りましょう。
でも対話って何なんですか。
そうですね。よくわかんないんですよね。実は。
何を言っているんだろうこの人は。
この機会を作ったのが本人で、
この団体をまとめているのもこの人のはずなのに。
下っ端の人間が話しているような。
下さんは代表なんですか。
あ、代表っぽくないですよね。
一応代表ってことになっています。
僕が考えているわけではなくて上司もいるんですけど。
上司。代表なのに上司。
え、それって影で操られている的な。
そうですね。
侮物みたいなもんです。
よくわからない変な団体という先入観でここまで来たが、
彼には後ろめたさが何もないことのあらわれなのか。
あっさりとそんな返答を返してきた。
一般的に表に出ていないような話なのか。
この目の前の平凡なサラリーマンの風の男は何なんだろう。
そういえば前回スーツでしたよね。
就活の苦労
就職活動ですか。
あ、気づいてました。
スーツの人はあなただけでしたから川崎さん。
それが僕ってよくわかりましたね。
そうですね。来ていた人も少なかったので。
なんとなく顔を見ていて。
就活どうですか。順調ですか。
順調かと言われたらあまり順調ではないですけど。
そうですか。大変ですよね。
僕も5年ぐらい前に就活してました。
あの時はまだ今よりマシだったから。
今はもっと大変なのかと思います。
就活されてたんですか。
はい、してましたよ。
新卒で入った会社は辞めましたけど。
だからサラリーマンっぽいのか。
今もサラリーマンにしか見えない。
この訳のわからない団体で代表というのがよくわからない。
僕は実は今も会社員のようなもので
前の会社を辞めてこの途方をやることになって
それで生きてるって感じですね。
川崎さんはもう就活されてるから
やりたい仕事とか生きたい会社の先行過程ですか。
一応そうなってます。
どんな仕事ですか。経理とか事務とか。
無理だったら営業かな。
そういうの得意なんですか。
経理?得意っていうわけじゃないけど
営業はあまりやりたくなくて
事務職に就きたくて
募金を取って先行を受けてるんですけど
なかなかうまくいかないですね。
武器を持ってるんですか。
それは有利でしょうね。
僕は採用とかやったことないから
あまりよく知らないですけど。
会社員になりたいんですか。
なりたいっていうか
そういうもんかなって。
そうなんですか。
そう思います。
僕は何かできることがあるわけでもないし
お金がいるし
なんとか会社員になるしかないかなって。
あ、大学生ですよね。
そうやってみんな就活してますもんね。
会社員になる意味
僕もそうでしたし。
はい。
親が自営とかでもないし
何かできるっていうわけでもないから。
それは才能とかって話ですか。
そうですね。
一芸とかそういうのもないです。
何をやりたいっていう願望も特になくて
今まで何もせずにここまで来たから
それで就活もうまくいってないんですかね。
どうなんですかね。
採用のことって僕はよくわからないですけど
うまくいけばいいですね。
会社員になったとしたら
それってどうなんですか。
どうっていうのは。
会社員になるっていうことは
あなたにとってどういう意味があるんですか。
意味ですか。
生活とか。
とか。
そうですね。
それぐらいですね。
生活のために会社員に。
生活か。
まあそうですよね。
生活のために仕方なく働いてますね。みんな。
実際そうだと思いますよ。
もし宝くじで5億円当たっても
仕事を続ける人ってほとんどいないでしょうし。
そんなもんじゃないんですか。
それは環境とか内容によるんじゃないですか。
世の中にはいくらお金があっても
仕事が楽しくて続けてるっていう人はいますから。
それってごく一部ですよね。
そうかもしれないですね。
川崎さんはもし5億円当たったら
就活やめるんですか。
そりゃやめるでしょう。
会社員はやりたくないんですか。
そうですね。でも5億円はないから就活します。
ないですね。
僕も5億円はないです。
でも僕は別に5億円はいらないですけど。
いらないんですか。
うん。5億円あってもね。
お金持ちなんですか。
いいえ。お金は全然持ってないです。全然。
でも代表なんでしょ。
ああ。代表って言っても会社じゃないですから。
私は会社員みたいなもんですけど。
そうですか。よくわからないですけど。
なんて説明すればいいのか。
あ、でも僕も5億円なんて大金はいらないかもしれないです。
そんな大金があっても。
え、そうなんですか。
いろんなもの買えますよ。
でも5億円も使ってほしいものなんてないから。
物欲がないってことですか。
物欲というよりは必要最低限のものがあれば十分かなって。
ほら、会社員になろうとしてるのだって。
生活ができればいいってだけなんで。
なるほど。謙虚ですね。
謙虚って言うんですか。こういうの。
あんまりそういうお金で欲しいものを買うって好きじゃないんですよ。
だから会社員とかって向いてないのかな。
競争心とかないから。
そうですか。それは大変ですね。
仕方ないと思ってます。
よかったらうちに来ませんか。
うちに来る。
あ、でもお金とかは全然ないんですよ。
ただ生活はできます。
仕事みたいなこともやらないといけないし。
僕みたいにね。
大変なことだってあるかもしれないですけど。
それって会社にいても一緒じゃないですか。
ほら、会社員みたいなもんだっていうのはそんな感じの意味で。
僕は川崎さんに5億円あげることはできないけど、
川崎さんいらないとおっしゃってますよね。
僕にできるのはこうやって徒歩に誘うことぐらいなので。
54:41

Comments

こういうのもっと読みたい!

Scroll