お米価格の現状
- スーパーでのお米の値段、最近ちょっと気になりますよね。
- えー、そうですね。
- 5キロで4,000円以上とかって、去年と比べると何か倍近い感じがします。
- うーん。
- で、政府が備蓄米を出すって言ってるのに、なかなか価格が落ち着かない。
これ一体、裏側で何が起きてるんでしょうか。
- えー。
- 今日はですね、あなたからお預かりした資料を元にして、
このお米の価格を巡る、まあちょっと複雑な状況を一緒にひも解いていきたいなと思ってます。
- はい。
- あの、備蓄米はどこへ行ったのか、卸し用者は本当に貯め込んでるの?とか、
あと農家の方々の本音とか、いろいろな角度から深掘りしていきましょう。
- えー、ぜひ。
- まずはその、備蓄米の話から。
政府が放出したはずなのに、私たちの食卓にはなかなか届きにくいと。
- うーん。
- 資料を読むと、いくつか理由が見えてきますね。
- えー、そうなんです。
まずあの、立ちはだかるのが物流の壁ですね。
- 物流ですか?
- はい。備蓄米って、その倉庫の奥に長期間保管されてたり、
まあ少し古いものも含まれてたりするんですね。
- あー、なるほど。
- なので、いざ運び出すとなると、結構手間も時間もかかるんです。
- はいはい。
- 加えて、最近よく言われるトラック運転手不足、これも追い打ちをかけてますね。
- うーん。
- ある卸し売り業者の話だと、発注してから手元に届くまで、
なんと2ヶ月もかかったなんて話もあるようです。
- 2ヶ月?それはちょっと時間かかりすぎですね。
- えー、それに放出された量自体もですね、
国内の月間消費量がだいたい60万トンくらいなんですけど、
- はい。
- それと比べると、その放出量だけでは、市場価格を一気に押し下げるほどの、
まあ規模ではないという側面もあります。
- あー、量のインパクトとしてもそこまでではないと。
- そうなんです。
で、卸し売り業者は、どうしても年間契約してる外食産業とか、
そちらを優先しがちで。
- まあ、そうですよね。
- えー、なので、スーパーみたいな小売店まで、
十分に行き渡りにくいっていう事情もあるみたいですね。
JA全農と卸売業者の影響
- なるほど。物流の問題に加えて、その流通の仕組みというか、
そっちにも課題があるわけですね。
- そうですね。
- 資料では備蓄米の多くを、あのJA全農が落札した点も触れられてますよね。
これはどう影響してるんですか?
- えー、これについて、近畿大学の増田純教授が分析されてるんですが、
JA側にもちょっと複雑な事情があるようなんです。
一つは入札の条件ですね。
1年以内に同じ品質、同じ量を政府に返すっていうルールがあるんですよ。
- あ、そういう決まりが?
- えー、これがもしかしたら大量放出をためらわせる要因になってるんじゃないかと。
まあ、下手に放出して相場を崩すリスクも考えますよね。
- なるほど。返す時のことも考えないといけないんですね。
- そういうことです。
で、もう一つ。
JAの落札価格自体が玄米60キログラムあたり約2万1000円と、
まあ、もともと高めだったということもあります。
- あー、仕入れ値が素度に高い。
- えー、ですから、これより安く卸売業者に売るっていうのはなかなか難しい。
- うーん。
- なので増田純教授は、もっと消費者に近い卸とか小売に、
直接早く放出するリュートがあれば、状況は違ったかもしれないと指摘してるんですね。
- なんというか、最初のボタンの掛け違いみたいな感じがあったのかもしれないですね。
- えー、そういう見方もできますね。
- なるほど。
うーん、一方で卸売業者が亀をため込んで儲けてるんじゃないか、みたいな声も聞かれますよね。
- 聞きますね。
- 実際に大手卸の利益が増えたなんて報道もありましたし、
この点、卸売業者の側からはどういう声が上がってるんでしょう?
- えーとですね、資料に出てくる卸売業者の主張としては、
うちは基本的には薄利多倍ですよ、ということのようです。
- はい。
- ため込んでも保険コストがかさむだけだから、むしろ早く売りたいのが本音だと。
- まあ、それそうか。
- ええ。で、利益が増えたっていう点については、その品不足を見越して事前に仕入れた分が結果的に高値で売れたこと。
それから、例年なら必要になる古いお米の値引き処分が今年は不要だったこと。
これが大きいと説明しているようです。
- ああ、なるほど。特別な要因があったということですね。
- ええ。そもそも市場価格を左右できるほどの力を持つ卸っていうのは少なくて、
むしろ品不足に備えて普段より少し多めに在庫を持つ動き、
これをため込みって言われるのはちょっと侵害だみたいな声も紹介されてますね。
- そう聞くとまたちょっと見方が変わってきますね。
農家と消費者の視点
- では、生産者である農家の方々、こちらはどうなんでしょう?
価格が上がっているなら、うるおっているんでしょうか?
- あのですね、収入が増えているのはこれは確かなようです。
資料によると、北海道の農家の方なんかは前年比で5割増し、
今年はさらに上がりそうで、ようやくこれで生活できるっていう結構切実な声も上がっていると。
- 5割増しは大きいですね。
- 大きいですよね。
JAを通さずにもっと高い値段で買い付ける業者が現れたりもしているとか。
ただ、これがじゃあ手放しで喜ばしり状況かっていうと、うーん、そうでもないみたいなんです。
- と言いますと?
- この高値がいつまで続くかわからないっていう不安とか、
あとやっぱり消費者の米離れが進むことへの懸念、これは強いんですね。
- ああ、値段が上がりすぎると、かえって食べてもらえなくなると?
- ええ、特に高齢の農家さんの中には、今回の増収をですね、
例えば農機具のリース代の返済とか、そういうのにあててこれを機にも廃業を決めるという人もいるそうです。
- ええと、増収なのに廃業ですか?
- ええ、米価が上がっても下がっても、結局続けるのは厳しい。
これがまあ、ねっさらざる本音なのかもしれないですね。
- うーん、生産現場も本当に複雑な状況なんですね。
この高値、いつ頃まで続くと見られているんでしょうか?
何かこう、打つ手はあるんでしょうか?
- そうですね。元農水官僚の山下人和さんという方が、
一部のJAが生産者への全払金、いわゆる外産金ですね、
これを高めに設定している点を指摘しています。
一度示した手前、その価格水準を維持しようとするだろうから、
少なくとも2026年の秋に春米が出回るまでは、高値が続くんじゃないかと予測してますね。
- 2026年秋まで、結構長いですね。
- ええ。で、じゃあ輸入前で補正ればいいじゃないかという考え方もありますけど、
- はい、ありますね。
- これがですね、1キロあたり341円っていうかなり高い関税が壁になってるんです。
- ああ、関税が高い。
- ええ。だから輸入で価格が劇的に下がるっていうのは、ちょっと期待しにくいと山下さんは見ています。
- なるほど。
- さらに、東京大学の鈴木教授は、食料安全保障という観点から、
安易な輸入頼みには軽傷ならしていますね。
日本の米の時給率ってほぼ100%じゃないですか。
- そうですね、確かに。
- これを維持する価値は大きいんだとそういう主張です。
- うーん、安全保障の観点も重要ですね。
では、国内でできる対策っていうのは何かあるんでしょうか。
- 鈴木教授が提案しているのは、今輸出用の米を作る農家への補助金があるんですけど、
これを国内向けの増産に振り向けるべきじゃないかという考え方ですね。
- なるほど。補助金の使い道を変える。
- ええ。一方で、先ほど名前が出た増田純教授は、例えば消費者が農家から直接買うとか、
そういう生産者と消費者がお互いに納得できる価格での新しい取引の形、
これを探っといくことが日本の食を守る道じゃないかと述べています。
- 製作レベルの話と市場での新しい関係づくりの話、両方のアプローチがあるってことですね。
- そういうことですね。
- いやあ、こうして見てくると、お米の価格一つ取っても、
本当に物流、卸し、農家、国の政策、そして私たち消費者の動向まで、
いろんな要素が複雑に絡み合っているのがよくわかりますね。
- ええ、本当にそう思います。
ですから、単純に誰かが買い占めてるとか、便所値上げだとか、
そういう言葉だけでは片付けられない、もっと構造的な問題として捉える必要がありそうですね。
- そうですね。
最後にちょっとだけあなたにも考えてみてほしいことがあります。
私たちにとって一番身近な主食であるお米、
今起きているこの状況は、これからのお米との付き合い方、
そして日本の農業をどう支えていくべきか、
私たち一人一人に何か問いを投げかけているのかもしれません。
あなたはこの状況をどう考えますか?
今日の話が少しでもそのヒントになれば嬉しいです。