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- ちょっと想像してみてほしいんですけど、あなたが週末に高速道路をドライブしていて、うっかりスピード違反で捕まってしまったとしますよね。
- よくある、ちょっと最悪の週末ですね。
- ですよね。で、高い罰金を払って、ひどく落ち込むわけですよ。でも、もしあなたが、よし、これから不動産会社を立ち上げようって準備していた場合、
このスピード違反のせいで、国からお前には不動産屋をやる資格はないって免許を拒否されると思いますか?
- 結論から言ってしまうと、それは全く問題ありません。
- あ、そうなんですか。
- スピード違反の罰金くらいなら、不動産の免許は無事に下りますよ。
- なるほどですよね。でも、ここからが今日の本題なんですけど、もしあなたが、例えば居酒屋で他の客と口論になって、つい胸ぐらをつかんでしまって、暴行罪として罰金を払ったとしますよね。
- ええ、手を出してしまったと。
- そうです。するとどうなるか。あなた個人の免許がくりないのはもちろんのこと、もしあなたが何百人も社員がいる巨大な不動産会社の一人の支店長だった場合、
なんと、その大企業全体の不動産免許が、まるごと5年間も剥奪される可能性があるんですよね。
- ええ、おっしゃる通りです。一見すると、いやいや、いくらなんでも極端すぎるって感じるかもしれませんね。
- いや、本当に極端ですよ。同じ罰金じゃないですか。
- そうなんですよね。でも、日本の法律は、この2つの罰金の間に、とてつもなく深く、そして明確な境界線を引いているんですよ。
- 今回のディープダイブのテーマは、まさにその境界線ですね。
- はい。
- 宅地建物取引業法第5条第1項、不動産業者、つまり宅建業者の免許がもらえない、いわゆる欠陥自由のリストです。
- ええ。
- リスナーであるあなたが、もし今まさに宅建の試験勉強中なら、この15個もある条文の分厚い壁を前に、もうため息をついているかもしれませんね。
- まあ、数が多いですからね。
- ですよね。あるいは、これから家を借りたり、買ったりする立場として、不動産業界の厳格なルールの裏側を知りたいって思っているかもしれません。
- ええ。ただ、どちらの立場であっても、このリストをただ一番から順に丸暗記するような、そういう退屈な作業は今日で終わりにしましょう。
- お、頼もしいですね。
- というのも、この第5条第1項というのは、例えるなら、空港の超高性能なセキュリティーゲートなんですよ。
- セキュリティーゲートですか?
- はい。乗客のポケットの中の小銭から、靴底に隠した危険物、さらには一緒に旅行に来ている友人の蘇生まで。
- 友人までですか?
- ええ。何段階もの特殊なスキャナーで、徹底的に洗い出すシステムなんです。
どんな人間を不動産取引から遠ざけたいのかっていう、国の執念のリストとも言えますね。
- いや、法律の条文って分厚い壁みたいに見えますけど、実はそんなストーリーがあるんですね。
じゃあ、その空港のセキュリティーゲート、最初のスキャナーから見ていきましょうか。
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- はい、いきましょう。
- ここが弾き出そうとしているのは、お金のトラブルと行政処分への悪意ですよね。
- そうですね。条文で言うと、第1号から第4号にあたる部分です。
- まずは一番想像しやすいルールからですね。
- ええ。まず法律がチェックするのは、経済的に破綻していないか、そして過去にズルをしていないかです。
例えば第1号では、破綻手続き開始の決定を受けて、福建を得ないものを書いています。
- あの、破綻してしまうともう二度と不動産業界には戻れないんですか?
- あ、ここが面白いところなんですよ。実は破綻そのものは永久追放の理由にはなりません。
- ええ、そうなんですか?破綻って響きはすごく重いですけど。
- ええ。法律は経済的な失敗と意図的な悪意を明確に分けて考えているんです。
- なるほど。
- 条文にある福建というのは、裁判所での手続きが終わって、法的に借金が整理されて、再び経済活動ができると認められる状態を指します。
- はいはい。
- この福建さえ得られれば、その日のうちにでも免許をもらう資格が復活するんですよ。冷却期間は一切ありません。
- へえ。ビジネスでの失敗自体は、法的な生産さえ終われば、何度でもやり直せるってわけですね?
- その通りです。
- でも、その後の第2号から第4号って、ちょっと毛色が違いますよね?
- ええ、かなり違います。
- なんか不正な手段で免許を取り消されたりとか、あるいは取り消されそうになって、自分で廃業の手続きをして逃げたりした連中の話ですよね?
- はい。彼らに対する国の待望は、破産者に対するものとは全く異なります。
- 厳しいわけですね。
- ええ。不正による取り消し処分、これが第2号ですね。それから処分逃れの廃業、これが第3号と第4号ですが、これを行った者には問答無用で5年間のペナルティ期間が課されます。
- うわあ、5年ですか。でも、この第3号と第4号の処分逃れって本当に戸足ですよね?
- ええ、悪質です。
- なんていうか、テレビゲームで自分が負けそうになった瞬間に、負けの記録を残さないために、ゲーム機の電源をバチッと切るようなものじゃないですか?
- ああ、まさにその電源ぶち切りの例えがぴったりですね。
- あ、国から免許を取り消されそう。じゃあその前に自分で会社を畳むから、ペナルティはなしね、みたいな。
- そうそう。かつては、そうやって行政処分が下る直前に、自ら免許を返納して、ほとぼりが冷めたらすぐに別会社で免許を取り直すっていう、悪質な業者が後を絶たなかったんですよ。
- うわあ、逃げ毒ですね。
- ええ。だから国は、この逃げ毒の抜け道を完全に塞いだんです。
- なるほど。
- 電源を切って逃げたやつも、結局ゲームオーバー扱いにして、5年間は絶対にプレイさせないぞという強力なルールを作ったわけです。法人の役員だった人間も含めてですね。
- キーワードですね。
- そうですね。とても重要です。
- ルール違反をしたやつとか処分から逃げたやつには、最低5年は業界の敷居を拒なせないぞと。この数字、この後のスキャナーでも何度も登場しますからね。
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- はい。では次のセキュリティスキャナーに進みましょうか。ここから法律の目はさらに冷徹になります。
- へえ、ドキッとしますね。
- 第5号から第7号、そして少し飛んで第14号。ターゲットは犯罪と暴力団です。
- ここが冒頭でお話ししたスピード違反と暴行罪の分かれ道ですね。
- ええ。まず第5号では、交金刑以上の刑に処せられたものがはじかれます。
- 交金刑ってことは、つまり刑務所に入るような重い刑罰を受けた人間ってことですよね?
- はい、そうです。これは非常にシンプルで、犯罪の種類を一切問いません。
- あ、何をやったかは関係ないんですか?
- ええ。詐欺だろうが過失の事故だろうが、刑務所に入った人間は刑を終えてから5年間は不動産ビジネスに参加できません。社会的な信用を著しく失っているからです。
- なるほど。重い罪を犯したんだから当然だろってことですね。
- そうです。でも問題はその次の第6号、罰金刑です。
- ここですよ。刑務所には入らずにお金を払って済んだケースですね。
- ええ。ここでは全ての犯罪がアウトになるわけではなく、特定の犯罪で罰金を受けた人だけが5年間はじかれるんです。
- ちょっと待ってください。第5号の交金刑はどんな犯罪でもアウトなのの、第6号の罰金は特定の犯罪だけなんですか?
- そうなんですよ。
- 例えば私がうっかりスピード違反で罰金を払っても、免許はもらえるってことですよね?
- はい、もらえます。先ほど言った特定の犯罪というのが、宅刑業法違反、暴力団体策法違反、そして刑法の障害、暴行、脅迫といった罪なんです。
- なるほど。暴力刑の犯罪と不動産絡みの犯罪だけがピンポイントでアウトなんですね。
- その通りです。暗記のコツとして、交金刑は犯罪の種類を問わずアウト、罰金刑は暴力刑と宅刑、防体法関連のみアウトと明確に境界線を引いておくといいですよ。
- なるほどな。でもなぜスピード違反の罰金はセーフで、暴行や脅迫の罰金はアウトなんですか?
- この線引きにこそ不動産というビジネスの特殊性が凝縮されているんです。不動産取引って密室で個人の全財産に近い巨額のお金が動くビジネスですよね。
- 確かに、家を買うときって何千万円というローンを組んで、小さな応接室で分厚い契約書に犯行をしますよね。あれものすごく緊張する瞬間ですよ。
- ええ、もしその密室で目の前に座っている業者が過去に暴力事件を起こしているような人物だったらどうでしょう?
- うわあ、それは怖すぎます。
- 1980年代のバブル期にはいわゆる血上げ屋が社会問題になりましたからね。ダンプカーで家に突っ込んだり、大勢で部屋に居座ったりして。
- ひどい時代ですね。
- ええ、恐怖心で地主から土地を巻き上げるような手口です。
- なるほど。密室で言葉の端ずみに脅しを混ぜられたり、机をバンと叩かれたりしたら、普通の消費者は恐ろしくて契約を断れないですよね。
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- だからこそ、国は不動産取引から暴力の匂いを極端なまでに排除したいんですよ。
- 障害や暴行で罰金刑を受けたということは、買ったなったら他人に物理的な危害を加えるリスクがある人間だと国から認定されたのと同じですから。
- なるほどな。消費者を暴力や脅迫から絶対に守り抜くっていう強い執念のスキャなんですね。
- ええ。そして第7号と第14号で、暴力団員または組を抜けてから5年経っていないもの。
- はいはい。
- さらに裏で暴力団員が事業活動を支配している会社。これらも徹底的に排除しているのも全く同じ理由からです。
- ここでもやっぱり5年の冷却期間がしっかり効いているわけですね。
- そうですね。これで過去の明確な事実に基づく2つの巨大なスケーナーを通過しました。
- お金のトラブルと犯罪の履歴ですね。
- はい。しかし次の第8号から第10号、そして第15号のグループに入ると、法律はアプローチをがらりと変えます。
- アプローチを変える?どういうことですか?
- これまでは過去の事実だけを見てきましたが、ここからは未来へのリスクと実務的な準備不足に焦点を移してチェックし始めるんです。
- 未来へのリスクですか?私がこのリストを見ていて一番気になったのは第9号なんですよ。
- 第9号ですか?
- はい。宅勤業に関し不正または不誠実な行為をする恐れが明らかなもの。これってものすごく主観的じゃないですか。
- まあ確かに他の条文に比べると非常に曖昧に見えますよね。
- ですよね。例えるなら、ナイトクラブの減衰動漫が客の顔つきや態度を見ただけで、お前中で喧嘩しそうだから入店をお断りって追い返すようなものじゃないですか。
- 面白い例えですね。
- 善価がなくても行政の裁量で弾けちゃうってことですか?
- まさにそのドアマンとしての役割を果たしているんです。法律というのは、どうしても過去の客観的な事実だけを基準にすると、網の目をすり抜ける真手の悪党が出てきてしまうんですよ。
- 真手の悪党ですか?
- はい。過去に逮捕歴はなくても、現在進行形でグレーな詐欺まがいのスキームを組んでいる人間が免許を申請してくるかもしれないですよね。
- ああ、なるほど。そういう連中を睡水がで防ぐための行政側の電化の砲塔なんですね。未然の防波堤というか。
- その通りです。さらに第10号の、心身の故障により適正に行うことができないものというのも、安全な取引を担保するためのものです。
- それはどういう理由ですか?
- 悪意がなくても、まともな判断や説明ができない状態なら、人生を左右する不動産取引は認じられないという厳しい判断ですね。
- 確かに。顔顔からしたら、しっかり説明してもらえないと困りますからね。
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- そして第10号。これは個人の人間性の話ではなくて、事務所に専任の宅地建物取引し、いわゆる宅建室を置いていないものという物理的な絶対条件です。
- ここで宅建室が出てくるんですね。
- はい。これは、いわば体制不備のチェックですね。いくら社長がクリーンな人間でも、国家資格を持ったプロフェッショナルである宅建室が常駐していないなら、そもそもビジネスを回すインフラが整っていないとみなされます。
- なるほど。薬局を開くのに、薬剤師が一人もいないのと同じですね。
- まさにそれです。体制が整っていないならビジネスを始めるなということですね。
- 暗記の際は、この第10号は個人の問題じゃなく会社の体制の問題だという別のグループに入れておくと整理しやすいですよ。
- OKです。体制不備グループですね。
- はい。さあ、いよいよ最後のセキュリティーゲートです。ここが一番厳しく、そして一番議論を呼ぶところかもしれません。
- ごくり。何ですか?
- 第11号から第13号、連帯責任のルールです。
- 連帯責任。自分自身は完全にクリーンでも、周りの人間のせいでアウトになるケースですね。
- ええ、そうです。第11号は未成年の法廷代理人、つまり親などがこれまでの欠格自由に該当する場合。
- はい。
- 第12号は法人の役員や支店長などの政令で定める主要人に該当者がいる場合。そして第13号は個人の業者の主要人に該当者がいる場合です。
- ここで私はちょっと強烈に切り込みたいんですけど。
- どうぞどうぞ。
- 先ほど冒頭で出した例ですが、全国展開している巨大な不動産会社があったとしますよね。
- ええ。
- 従業員が何百人もいて、みんな真面目に働いている。でも、ある地方の支店長が3年前にバーで喧嘩をして罰金を払っていたことが発覚した。これ、第6号に該当しますよね。
- はい。暴行の罰金側に該当しますね。
- これだけで、この巨大な法人全体が免許を下ろしてもらえない、あるいは取り消されるんですよね。
- はい。法律上はそうなります。法人そのものが欠格自由に該当することになりますから。
- ええっと、それって他の999人の真面目な社員からすれば、あまりにも理不尽じゃないですか。
- まあ、そう感じるのも無理はありません。
- たった一人の過去のいざこざのせいで、会社が潰れてしまうかもしれないんですよ。なぜ国はここまで極端で、邪つき容赦のない連帯責任を課しているんですか。
- その理不尽さへの驚きはごもっともです。でも、この厳しさこそが、宅券業法の肝なんですよ。
- ちょっと、裏社会の人間がどうやって合法的なビジネスに侵入してくるか、その手口を想像してみてください。
- 裏社会の手口ですか。
- はい。彼らは自分が暴力事件を起こしたり破産していて、表だって免許を取れないことは百も承知です。
- だとしたら、どうやって不動産屋をやるんですか。諦めるわけじゃないですよね。
- もちろんです。過去が真っ白でクリーンな人間を見つけてきて、高い給料を払って、お飾りの社長として座らせるんですよ。
- ああ、なるほど。
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- あるいは、何も知らない未成年の子供の名義で会社を立ち上げる。そして、裏社会の人間である自分は取締役に名を連列したり、現場の支店長として実権を握って資金や物件をコントロールするんです。
- うわあ、あくわがしわい。表向きの顔だけ綺麗にメイクアップして、中身は裏社会の論理で動く隠れミノにするわけですね。
- その通りです。国は過去にそういうダミー会社を使った巧妙な手口を死ぬほど見てきているんです。もし法律が、社長さえクリーンならOKという甘い基準だったらどうなるか。
- あっという間に反社会的勢力の資金洗浄の温床になっちゃいますね。
- ええ。だから、申請書の表紙に書いてある代表者の名前だけじゃなくて、会社の神経を隅々まで徹底的にスキャンするんです。
- 役員はもちろん、現場を仕切る支店長とか、未成年の場合はその後ろにいる親まで調べるんですね。
- はい。トカゲの尻尾切りは絶対に許さない。組織の中枢や現場のトップに一人でも毒が混ざっていれば法人全体をアウトにする。
- なるほどな。
- この厳しすぎる連帯責任こそが、悪党に抜け道を与えないための最強の防波堤なんです。
試験勉強をする皆さんは、1号から10号を個人の罰、11号から13号を身内の罰、つまり連帯責任とラベリングして覚えてみてください。
- すごくわかりやすいです。いやあ、この第5条第1項の15個の条文、最初は本当にただの無味乾燥なリストだと思っていましたよ。
- ええ、最初はそう見えますよね。
- でもこうやって紐解いてみると、ただのルールの羅列じゃないですね。消費者保護っていう一つの巨大な城を守るための深いお堀だったんですね。
- 素晴らしい表現ですね。最初は経済・行政処分という過去の記録を洗い出し、次に犯罪と暴力という危険性を排除する。
- はい。
- そして未然のリスクと体制不備をチェックし、最後に連帯責任で裏社会の隠れ者を叩き潰す。
- その4つのグループわけですね。
- はい。この4段階の高性能なセキュリティゲートと5年という魔法の数字、これらを意識すればリスナーのあなたの頭の中でも平面的だった条文が立体的なシステムとして整理されたはずです。
- いや、本当にすっきりしました。さて、このディープダイブも終わりの時間が近づいてきましたが、最後にリスナーのあなたに一つの思考の種を投げておきたいと思います。
- はい。
- 私たちが普段利用するコンビニエンスストラのオーナーが過去に破産していたかどうかなんて誰も気にしませんよね。
- ええ、気にしませんね。
- あるいは、あなたが使っているアプリを作ったIT企業の取締役が過去に暴行罪で罰金を払っていたとしても、その企業が国から営業を停止されることはありません。
- そうですね。聞いたことがありません。
- なのになぜ、家や土地を扱う不動産ビジネスだけが、これほどまでに人間の過去の汚点とか不正をする恐れに対して、執念深いまでに厳しいのでしょうか。
- それはやはり、不動産というものが単なる高額なものではないからです。家を買う、借りるということは、その人の人生の拠点を決めるということです。
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- そうですよね。
- たった一度の取引の失敗や悪意ある業者の詐欺が、一人の人間のあるいは一つの家族の数十年の人生を文字通り完全に狂わせてしまう危険性をはらんでいるんです。
- だからこそ、国はあえてこの分厚く冷徹な壁を築き上げて、私たち消費者を守り抜こうとしているんですね。
- ええ、そういうことです。
- リスナーのあなたが次に街を歩いていて、不動産屋さんの店先に飾ってある金色の看板、あの免許証の標識を見たとき、彼らがただ単に役所に書類を出しただけではなくて、
この十五の厳格な関門というすさまじいセキュリティーゲートをくぐり抜けてきた選ばれし業者であるという事実をぜひ思い出してみてください。
あの看板の重みがきっと少し違って見えるはずです。