映画『ベニスにシス』の紹介
ミスメラ?
ベニスにシスっていう映画を見返したんですよ。
ベニスにシスって知ってますか?
すっごい昔に見た気がするんだけど、
こないだあらすじを人に話したら、
ベニスの商人とごっちゃになってて、
シェイクスピアノ?
うん。今僕はゆっくり分かってないってことが分かりました。
ベニスにシスっていうのは、ルキノ・ビスコンティ監督が撮った、
イタリアのベニスが舞台の映画なんですけど、
とある音楽家が療養のためにベニスを訪れるんですよ。
その音楽家はちょっとスランプに陥っていて、
自分の芸術みたいなものを見失っちゃってるんですけど、
その療養先のベニスで、めっちゃくちゃ美しい男の子を見つけて、
その子に夢中になっちゃうんですよ。
その男の子は、映画の中だと美の化身というか、
メタファーみたいな存在なんですけど、
その男の子に魅了されることによって、
美しさとはこういうものなんだ、みたいなものに気づきつつ、
そのおじさんは死ぬっていう映画なんですけど。
美の暴力性と個人的な感情
今ので伝わったかな。
私、それ多分最初に見たの中学生ぐらいの時だったんですけど、
このおじさん、私だってめっちゃ思ったんですよ。
中学生ぐらいの時に?
でも私だと思うと同時に、このおじさんキモっていう気持ちもあったんですけど、
でもロマンに端的して、その世界に浸っているみたいな状態を、
私は求めているんだっていうふうに思ったんですよ。
でも大人になってから見返したら、
その映画の中で、美しさっていうのは人道的なものとかではないんだっていう話をしてて、
美しさっていうのはすごい暴力的で、ただそこにあるだけの努力とかではなし得ない、
そこにただいるというだけで完成されているものが美なんだみたいな。
それに端的しなければ、芸術っていうものはなし得ないんだみたいな話をする場面があるんですけど、
それを見て、マジで?って思って、
人道に戻らない美しさってないんですか?って思っちゃったんですよね。
それを思った時に、私って大人になったんだってすごい思って、
もう私にとって、ただすごく綺麗なものとかに投水して飛び込むこと?
ただそれだけじゃ全然浸水できないなって思ってしまって、
じゃあこの世界に美しいものないんか?みたいな気持ちになったらすごい悲しくなりましたっていう話。
実はあれなんだよね、この話僕たち銀座の10階っていうバーでしたんだよね。
美しさと悪の関係
10階っていう地下2階?3階?にある穴蔵みたいなバーで、
壁に骸骨がいっぱいあって、端美系の本とか画集とかがいっぱい置いてあって、
四ツ谷志文の球体関節人形みたいなのがありましたよね。あれが志文の作品かどうか知らんけど。
球体関節人形が飾ってあったりとかして、すごい端美的な雰囲気の美しいバーで、
千尋さんが邪悪ではない、悪を含まない美ってないのかっていう話をしてて、
僕がないって言って千尋さんを泣かせたんですよね。
いやいや、もうちょっと正確に言うと、その話してたのは10階の近くにあるカフェレストランみたいなところでしてて、
悪を含まない美はないって言われた後に10階に行って、
さっきの結論と全然違うようなところに来ちゃったなっていう気持ちにはなってました。
でもまあ、ないって言われてちょっと泣いちゃったのは事実。
えーん、いやだよーって言ってたね。
でももう、これは人道に基っているなって思ったら、
それを心の底からいいものだと思えなくなっちゃったから、
じゃあこの世界に美しいものってないのかなって思ったら、絶望的な気持ちになった。
世界で一番美しい少年っていう映画を見ました?
あーそれ、見てないんですよ。見よう見ようと思って。
ベニス・ニンシスで美少年がタジオっていう役なんだよね。ポーランド貴族の。
タジオの役をやったビョルン・アンドレッセンっていう人がいるんだよね。
で、その人がこの映画に出て世界的な美少年になったことで、
結構人生大変だったっていう映画なんだよね。僕も見てないんだけど。
だからチロさんの話って二重の悪を含んでいるっていうか。
タジオ美しいと考えることそのものに、タジオの人生を破壊した悪が含まれちゃってるんだよな。
映画の中でも美には悪があるっていう話をしていて、一貫してるんですよね。
美しいものは悪によって作られているっていう。
あの映画で言っていることをそのまんま現実でもやってたっていうことになるんですよね。
私のこの世に対する感覚みたいなのの中に、
めっちゃ綺麗なものとか美しいものがこの世にあるって思えるだけで、
ちょっと生きててよかったなって思えるみたいな感覚があるから、
なんか綺麗なものが存在してて欲しいんですよ。だからないって言われると泣いちゃう。
美はあるんじゃないですか。美しいもの自体は。
私には人造に基る美しいものはそれに投水できなくなっちゃったから、
美しいって思って、美しいものを作って、
美しいって思って、もうそれだけで心が満たされるみたいな状態にはなれない。
美しいものを見たらその裏にある悪を想像せずにおられなくなったからね。
ストーリーだと思えばいいんです。演出。
美しいものを作る演出だと思えばいいってこと?
悪を見ないって話です。
それが無理だから、美しいものなくなっちゃったんだな、ないのかなって悲しい気持ちになってる。
私にはそれを見て見ぬふりができない。
じゃあ、悪になるしかないんじゃないですか。
私が?
前話したときの延長で聞いてるから、ニュアンスがちょっと違う感じですよね、今。
前の話は千尋さんが今日ぐらい整理された感じじゃなくて、
悪のない美は存在しないのかっていうちょっと探求モードの感じだったから、
それに対して僕がいや、存在しないと。
千尋さんこれはどうだって言ったら、こういう事情で存在しないみたいな話をずっとしていて。
そっか、そうだったっけ。
美か善かを選ばなきゃね、みたいな話をしたっていう。
だから山芋さんの悪になればいいんじゃないですかは、そんなに美が良ければ、
善を捨てて美を選べばいいじゃないですかっていう話なんだと思うんだよね。
山芋さんっぽいな。
前回その話、僕が入れたのは、風立ちぬの話をしたんだよね。
風立ちぬっていう映画は、みんな堀越二郎と那穂子だったっけな。
那穂子の恋の物語だと捉えられがちなんだけれども、
あれは美しいものに執着した男女が限界までアクセルを踏んでぶっ壊れるっていう映画なんだって。
それがなんでそういう映画であるっていうことがわかるかっていうと、
堀越二郎は子供の時からずっと夢を見ていて、その夢の中ではカプロニーだったっけな。
っていうイタリア人の飛行機の設計してる人っていうのが出てくると。
これがゲイテのファーストっていうところのメフィストフェレスの役で、
ファーストとメフィストフェレスの関係っていうのが堀越二郎とカプロニーの関係なんだっていう。
カプロニーってやつは悪魔なわけで。
何の悪魔かっていうと、飛行機を作れということを言い続ける悪魔なんだよね。
カプロニーが二郎に言うのは、君はピラミッドがある世界とない世界どちらがいいかねって聞くんだよね。
ピラミッドっていうのは飛行機を作るっていう、飛行機を作るだけじゃない、宮崎駿が作ってるからアニメとかもそうなんだろうと思うけど、
何か創造物っていうのを作り出す時に、クリエイターっていうのがいる時に、
クリエイターにクリエイトをさせるために多くの犠牲が払われるっていう話をしていて、
その人たちは名も残らなければ何のクリエイティビティも発揮していないことにされてしまい、
クリエイターが作る何かみたいなものの引き換えにされてしまうっていう話で、
それがピラミッドがある世界とない世界どちらがいいかねっていう話になるんだと思うんだけど、
それに対して堀越二郎は、僕は美しいものがある世界を望みますだけな、好みますだけなって言うんだよね。
それはつまりピラミッドがある世界がいいっていうの同義なわけで、
そこで堀越二郎はファーストに魂売ってるわけだよねっていう話をして、
美っていうのはそういうもんでしょうっていう話を千尋さんにしたんですよね。
だから千尋さんもファーストに魂売りゃいいじゃないですかっていう話をしたんだよね。
いやだよ。
風立ちぬでは一緒の設計し仲間がいるんだよね。
千尋 ああ、いましたね。なんだっけ名前。
東大から三菱重工に一緒に行ったやつがいて、
そいつがあの映画の中で両親と言われているらしいんだけど、
堀越二郎が本庄っていう友達がいるんだよね。
堀越二郎がなんか親が夜勤かなんかでなかなか帰ってこないのを、
子供たちが駅で待ってるっていうのを見かけて、
シベリアっていうカステラで羊羹かなんかを挟んだ食べ物があるんだけど、
それを買って与えようとするんだよね子供たちにね。
子供たちがそれを受け取らないっていうシーンがあるんだけど、
で本庄がそのような二郎の振る舞いみたいなのに気がついて、
それは偽善だって言うんだよね。
俺たちが作ってる飛行機さえ作らなければ、
彼らはいくらでもシベリアを食えるっていう話をしていて、
飛行機を作るっていうプロジェクトが何を犠牲にしているのかっていう話をするわけだよね。
で二郎はそれにピンときてないっていう話をしてて、
自分が何を犠牲にしているのかっていうのにピンときていないっていう話なんだと思うんだけど、
純粋だからか。
美に見入られてるかもしれない。
おまけにその美に見入られて作ったゼロ戦で出撃していったものは誰も帰りませんでした。
とか言ってるってことだから、
やべえ話なんだよなあれは。
ヤバい話ですね。
でも私当時見たときはやっぱまず最初に思ったのは美しい話だなとは思った。
ヤバいけどヤバいからこそ美しい。
何かを作り出すという視点から見るとすごく、
ああそうだねって思いながら見てた。
だってさ、
メイキング見た?
風立ちぬの。
すごいよ。多分YouTubeにその動画あると思うんですけど、
主人公の堀越二郎の声優を決める会議で、
多分その声優をキャスティングする係の人が3人ぐらい右側に座ってて、
この人はどうでしょう、この人はどうでしょう。
で、左側には水木駿と鈴木敏夫が座ってて、
宮崎駿がなんかずっと渋谷さんが座ってて、
この人はどうでしょう、この人はどうでしょう。
で、左側には水木駿と鈴木敏夫が座ってて、
宮崎駿がなんかずっと渋谷さんが座ってて、
ずっと渋い顔してんの。
ずーっと渋い顔して、
庵野の顔が浮かぶんですよ、とか言うわけ。
で、それで右側の担当者の顔が凍りつくわけよね。
厳しい顔になるわけ。
で、宮崎駿が、うーん、そうだなあ、うーん、
庵野はどうかなあ、とか言って、
だんだん宮崎監督の中で、
庵野秀明を声優に起用する庵野が固まっていくわけよ。
うーん、やばいですね。
庵野なんかどうだろう、ねえ、鈴木さん。
庵野はどう思いますか、とか言いなさける。
もう決まってるじゃん。
美と善の探求
鈴木敏夫が、うーん、いいかもしれませんね、とか言うわけ。
それを聞いてる時のスタッフの表情みたいなのが、もうほんとすごいわけよ。
そのようにして作り出されてるから、あの映画は。
で、その映画を見て、千代さんは美しいって思ったわけよね。
当時は思いましたね。
それはピラミッドを美しいのと思うのと同じだもんな。
そうなんですよ。でも私その頃、すごいブラックなデザイン会社で働いてて、
なんか切羽詰まって何かを作るみたいなことが今よりも多かった時なんですけど、
すごいもう半泣きになりながら作ったものの方が良かったりとかっていうことが、
たまにあったからこそ、分かるなって思ったのかも、当時。
いやだから、善を諦めて美に生きればいいんじゃないですか。
うーん。
探せないのかな。両方とも存在するもの。
あるかな。
悪のない美、ないよって言われて、マジでやだって思ったんですけど、
でもあるかもしれないって思って、それがどんな美しさなのかっていうのを、
探し続けるみたいなことしかできないなって思った。自分には。ないかもしれないけど。
あるとしたら自然とかじゃないですか。
うーん。
でも人間が作り上げる美っていうのは、悪を前提としてるんじゃないですか。
悪があるから本物の美しさなんじゃないですか。
千代さんが探してる美は本物じゃないんじゃないですか。
ひどいよ。
今のひどいよの言い方良かったですね。
山芋さんの悪によって生み出された美だったね、今のひどいよ。
今の美しいかな。
ひどいよ。
今すりつぶされた声が出てきそう。
人間が作るっていうことはそういうことなんじゃないですか。
でも自然って言うとあるがままだから、そこに善悪みたいなのは存在しないっていう前提があって、
そうしたら自然の美しさっていうのは善悪がないみたいな。
でも人間がやることっていうのは善悪がない。
でも人間がやることっていうのは善悪みたいなのがある世界で、
その中で美っていうのは悪があって本当の美しさができるっていうことだとしたら、
美であることは悪だし、悪であることは美なんじゃないですか。
自然と人間の美
でもあるかもと思って探し続けることはできますよね。
できる。
そう思って絵を描くということしかできないなって帰ってから思いましたね。
これだって思ってもやっぱりすごい悪が潜んでたってなるかもしれないけど、
じゃあやっぱりこうかもみたいに探し続けるしかないのかな。
そうかも。
やだな。
何がやだんですか?
だからもう子供の頃はさ、なんて美しい人なんだって思って、
その映像みたいなのをループでずっと見続けて、その映像と私みたいな状態でいることがすごい喜びだったし、
そういうものがこの世にあるんだって思ったら、
それだけで前向きになれるっていうか、この世界捨てたもんじゃないじゃんみたいになれるのに、
もう今そういうものがあるんだって思えなくなっちゃったから、
自分が悪になるしかないって言われても、じゃあそうなりたいかって言われたら、いやそれも違うよなって思うし、わがままなのかな。
子供になるのはダメなんですか?
悪を見ないようにして美しさを短暫するっていうことはできますね。
堕落していくっていうことはできる。
それはできないんだよな。
じゃあ探し続ける?
なんでだろう?なんでこんな納得できないんだろうな。
探し続けるを選んだんじゃないですか。
悪にはなれないし、イノセントでもいられないなら、私は探し続けるなら分かるけど、何が嫌なんですか?
甘えだと思います。嫌だなーって思ってる。大変そうだし、みたいな。
ダダこねてるんだ。
いいじゃないですか。ダダこねたって。
こねましょ?別に。
ダダくらいこねたらいいじゃないですか。
誰に迷惑かけてるわけじゃねえ。美あれよって。善なる美あれよって話になる。
そうそうそうそう。なんでねえんだよってなる。
善なる美くらい用意しとけや、世界って話になる。
それそれそれ。ほんとそれ。なんでですか?
なんなんだよって話だってことですよね。
だって、自然が美しいっていうのは確かにそうだけど、自然は美しい代わりに過酷だからね。
生き物は死に喰われる世界だから。山は崩れるし、海は壊すし。
そういう過酷さの中で、自然は美しい。
そういう美しいメカニズムの中に美しさがあるという話だから、それはそれで過酷だからね。
まあねえ。あれよって話だけどねえ。ないから。ないけど、あるよっていう話だよね。
分かるよ。
でもねえ。
だからね まあねあれよっていう話だけどね
ないから ないけどあれよっていう話だよね
わかるよ ただこねてます 僕だって
仕事せずに金が欲しいって思うもん なんか言うと怒られるけどみんな思ってんだろって感じ
仕事せずに金欲しいだろって ただくらいこねさせろやって感じ
全なる日あるや っていう話ですよね
ただこねるんだったら堕落したほうが楽じゃないですか
そのチョイスイズユアーズで それを選ばなかったのは
あなたの話で それでだんだんこねてて
じゃあそっちを選ばなきゃよかったじゃないって話です 別に誰も強制してないし今からでも選べるし
何のために それを選んだんですかっていう
ただこねるという選択をしたってことでしょ
ただこねたいんだよ ただこねたい
まだ諦めきれないのかも
可能性をね 堕落するぐらいならただこねたいもんな
闇バイトするぐらいだったらただこねたいもんね そう厳しいなやっぱ山山さん
山山さん徹底を求めるね 山山さんはピュアですもんね
あれ?
そういうつもりじゃないんですけど まあでもそういう受け取られ方かって感じですか
え?どういうこと? 別にどっちかの方が楽だなって思うだけ
でも楽は求めてないんじゃない 善なる美を求めているだけで楽は求めてないんだよ
まあそうかも 確かに楽を求めているんだったら堕落するか悪なる美を自分で作り出すか
どっちかになるけど でも別に楽になりたいわけじゃないからただこねてるんじゃないですか
じゃあ ただをこねるのも善なる美を求める一つっていう感じですか
たぶん 善なる美を諦めてないっていうことでしょ
それならわかります
あともう一つ言うと悪になる 胆力がないなって思うのかも自分に
確かにね宮崎駿にはなれないもんな で悪に出したところで本当に美に到達できるか
わからんしな 世の中には醜悪な悪ばっかりだもんな基本的には
そう 美を生み出せるかどうかもう賭けだもんな
やっぱ美と善を双方追いかけるのが大変だっていう話かもしれないですよね
やだなぁ ただこねちゃう
どんまいどんまい
すいません中途半端なところで立ち止まってて
やっぱ人間がずっと積み上げてきたものだから今んとこなさそうですけどね
善なる美
ね なさそうだけどね
でも探すって言ってるんだから
頑張ってください
ああ
ないのか 善なる美を探すプランがないっていうわけだから
代わりに a プランがあるといいですね
50点かなぁ