エピソードの概要
こんにちは、マカ・ママレードです。
最近、ドラマ【古畑任三郎】を順番に見直してまして、気になったエピソードについて、感想を話していきたいと思います。
今回は、坂井正明がゲストの回、シーズン1の第二話です。
ここからは、古畑任三郎のシーズン1第二話について、物語の核心にすまる内容を話しますので、ご注意ください。
また、一番最後に、刑事懲る者とあるエピソードについて、ネタ割りで喋っていますので、そちらもご注意ください。
さて、この作品の見どころは4つあると思います。
1つ目が、懐中伝統を使ったコメディ。
2つ目が、ソリッドな作り。
3つ目が、論理的な解決。
4つ目が、プロフェッショナルとしての犯人。
順番に見ていきたいと思います。
1つ目は、懐中伝統を使ったコメディです。
犯人を罠にはめるという追い詰め方は、古畑と古畑がオマージュを捧げる刑事コロンボの双方でよく見られる展開です。
今作でも古畑は中村うこんに罠を仕掛けて、ボロを出させようとします。
古畑がわざと中村に、亡くなった懐中伝統が重要な手掛かりになると吹き込んで、中村を右往左往させるんですね。
それは、当事者である中村自身にとっては、自分の人生がかかった大事な局面ですが、
視聴者にとっては、必死に古畑にバレないように、懐中伝統を探したり隠そうとしたりする中村うこんの様は、コメディにしか見えません。
思い返せばですね、三谷光輝は、古畑以外の他の作品でも、その場を取り繕うために、てんやわんやと大騒ぎをする人間をコミカルに描いてきました。
そういった意味で、犯行を隠蔽しようと探偵と対立していく犯人たちは、三谷作品ではよく見るようなキャラクターなわけで、
刑事コロンボで見られるストーリーの構造がすでに三谷にぴったりのものだったのかもしれないと思いました。
ちなみに、コメディの役割を担うのは、シリーズ後半になってくると今泉が多いと思いますが、
この段階では今泉のキャラクターはそれほどエキセントリックなものではなくて、コメディリリースとしての役割は今作ではあまり大きくないなと思いました。
二つ目がソリッドな作りです。刑事コロンボが短くても約75分、長いと90分ほどに対して、古畑のレギュラー放送は1話が約45分です。
刑事コロンボでよくある話の流れが、一つ目の殺人を行う、そして共犯者やひょんなことからその殺人の事実を知った人物を口封じのために犯人が殺害というストーリーです。
今回は引き逃げの口封じをするために警備員を殺害するので、コロンボのドラマでいうところの第二の殺人を思い浮かべました。
もし今作がコロンボのシリーズの一編だったら、引き逃げの隠蔽工作みたいなシーケンスも本編に盛り込むのかもしれないと妄想をしたりしました。
コロンボよりもかなり短い時間の作品であり、コロンボの物語を圧縮したような作りになっていることが古畑隣三郎シリーズのスタイリッシュな作風につながっているのかもしれないと考えたりしました。
ただですね、短いと話のテンポ感は早くなりますが、犯人側のドラマとかを描き込むのが難しくなるので、コロンボと古畑、どっちがいいということでもないと思います。
3つ目の論理的な解決です。古畑でも刑事コロンボでも、論理で犯人に犯行を認めさせる展開が見られます。
その流れとしては大まかに、1、わずかな手がかりからとある事実を導き出す。
2、導き出したとある事実と犯人に関するとある事実を照らし合わせる。
3、犯人を断定するとなります。
そして今作でもこの流れで犯人を導き出しています。
すなわち今の流れでいうと、1、すっぽんが上がったままになっていたことから、死体を上げるために犯人がすっぽんを動かした。
また犯人はすっぽんの上げ方は知っているが下げ方は知らない人物であることがわかる。
2、中村うこんはすっぽんが上がる時にはすっぽんに乗っているが下がる時には舞台上にいるため、下がる時にはすっぽんのスイッチの操作は見ていない。
そしてすっぽんに乗るのは中村うこんただ一人。
3、犯人は中村うこんであるという流れで中村うこんを古畑は追い詰めています。
こういった論理的な推理は、わかりやすい証拠を一発で出すよりも、インパクトとしては弱いものになるのかもしれませんが、
有無を言わさず納得させられる、完全に解き伏せられる快感、気持ちよさがあると思います。
論理的な推理の流れ
刑事コロンボの方でも、論理で相手を落とす具体的な展開を一つ説明したいのですが、
その作品のネタバレに関わるので、それについてはこの感想の一番最後で触れます。
先に4つ目のポイントの話に移りたいと思います。
4つ目がプロフェッショナルとしての犯人です。犯人はプロの役者です。
歌舞伎役者ならではの知恵を使って自己を偽装しますが、
結果的には役作りとしてお茶漬けを食べるために劇場に残っていたこと、
それに役者であるからこそすっぽんの下げ方を知らなかったことが災いして犯行がバレてしまいます。
自身のプロとしての技術を使って犯行に及ぶも、そのプロとしての自分にしっぺ返しを食らうというのが綺麗な構造になっていて見応えがありました。
というわけで古畑のシーズン1、第2話について4つポイントをお話ししましたけど、
最後に今作と同じように論理的な解決を見せたコロンボの作品についてお話ししたいと思います。
この後のお話はそのエピソードのタイトル名とその作品のネタバレを含みますのでご注意ください。
はい、というわけでお話ししたい作品はケージ・コロンボの自爆の紐です。
この作品のストーリーを簡単に述べますと、ジムを経営するマイロは、
自身の不正会計を告発しようとする亀井源のオーナーを殺害、トレーニング中の心臓発作に見せかけようとするというものです。
ここからネタバレになりますが、自爆の紐では解決編で、
まず、被害者が履いていた靴の紐の結び方から誰かに着替えさせられたことがわかる。
そして、被害者が一人で職場に残っている時間から鍵は閉められていて密室状態。他には人はいなかったはず。
しかし、マイロは電話で被害者が着替えていることを聞いたと言ってしまっている。
つまり、その晩唯一被害者が着替えていることを知っている。
すなわち、着替えさせた人であることを自らバラしてしまったということがわかるという流れの謎解きを見せています。
これは最初の方に述べた1、わずかな手掛かりからとある事実を導き出す。
2、導き出したとある事実と犯人に関するとある事実を照らし合わせる。
3、犯人を断定するという流れに当てはまります。
つまり、被害者が履いていた靴の紐の結び方から、密室状態の建物で被害者を何者かが着替えさせたことがわかる。
このとある事実と、マイロが電話で被害者が着替えた事実を聞いたと言っていたという事実を照らし合わせる。
すると、マイロが被害者を着替えさせた、つまりマイロが犯人であると断定できるという流れになります。