クリエイティブ・コモンズの解釈のエントリーの中で取り上げた話題の続き。
クリエイティブ・コモンズでライセンス提供されている楽曲のうち、「NoDerivs(派生禁止)」の条件がついたものをポッドキャストのなかでBGMとして使ってよいものかどうか、トークがメインのBGM使用は改変にあたるのではないかとのこと。
結論的には、ポッドキャストでのBGM使用はOKだろうと思います。
- Lucky / Dalton Grant
- Wataridori 2 / Cornelius
- Keep The Blues Alive / Blues On Board
ポッドキャストは編集著作物ではないだろうか
どうもトークのバックで流すだけが作品の改変にあたるよいうのが納得いかない。
ここでいう改変というのは、クリエイティブ・コモンズのライセンスの中の話なので、MP3ファイルに手を加えたというような話ではなく、もちろん著作権法のうえで改変作品にあたるかどうかということでだ。
クリエイティブ・コモンズ リーガル・コードをよくよく読んでも、いまいち曖昧なとこが出てくる。やはりこれだけではダメだ。ちゃんと日本の著作権法も見てみることにした。
とはいえ、なかなか分かりづらい。そこで視点を変えてみることにした。
僕の配信するポッドキャストもクリエイティブ・コモンズで配信しているのだが、仮にすべての著作権を手放さないことにした場合、著作権法によって守ってもらえるのかどうかを考えてみた。
まず、ポッドキャストのファイルが作品として保護されるかどうか。著作物として認められるか。そこで、著作物として認められる条件を見てみる。
第2条 この法律において、次の各号に掲げる用語の定義は、当該各号に定めるところによる。
1.著作物思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。著作権法
文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものということだ。そして、創作的じゃなきゃならない。
ポッドキャストはMP3ファイル。一見は音楽と同じようだが、そこに音楽的な創作性があるだろうか。ただバックに流して上で喋っているだけだ。リズムに乗せて、感情表現するならともかく、まったくシンクロしていない。これは音楽的とは言えないし、創作的とも言えない。
では、ポッドキャストは著作物にならないか。しかし、講演などは著作物として守られるようだ。ただし、それは音としてではなく、話した内容の言論が著作物として認められるらしい。小説や脚本や作詞なんかと同じだ。だから、喋った音を録音した場合、その音は実演家によって実演されたということで、それは著作隣接権によって守られることとなる。
ただし、話す内容にオリジナル性が必要。事実の伝達だけでは著作物としては認められない。
ただし、事実の伝達にすぎない雑報や単純な時事の報道は言語の著作物に該当しません著作物関係 言語の著作物(小説、脚本、論文、講演等)
楽曲という著作物に話した内容という著作物が重なっているわけだが、これが改変され、二次的著作物となっているだろうか。問題はそこだ。二次的著作物となって認められ、例えば新たな楽曲としてJASRACなんかに登録できるだろうか。
ただ、やはり音楽性は認められない気がする。音楽の分野ではなければ何になるだろうか。
11.二次的著作物著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案することにより創作した著作物をいう。著作権法
ポッドキャストでは音楽と言論は別々に別れている気がする。二次的著作物と呼ぶには、そこには元となる曲に手を加え、創作性のあるものに変化されていなくてはならない。ちゃんと1個の作品となり、著作物として主張できるレベルには見えない。
では、ポッドキャスト自体は著作権では守られないのか。二次的著作物の他にも著作物として認められるものはある。
12.共同著作物2人以上の者が共同して創作した著作物であつて、その各人の寄与を分離して個別的に利用することができないものをいう。著作権法
共同で作ったとは言いがたい。しかも各人の寄与を明確に分離できる。作詞者と作曲者以上にはっきりと別れる。
(編集著作物) 第12条 編集物(データベースに該当するものを除く。以下同じ。)でその素材の選択又は配列によつて創作性を有するものは、著作物として保護する。著作権法
これではないだろうか。素材の選択と配列でもって創造性を有するもの。ここで、喋っている自分と編集作業をした自分を分けて考えたほうが分かりやすい。
ポッドキャストに含まれる言論は喋った自分の著作物だ。そして、ポッドキャスト自体は編集した自分の編集著作物になるのではないだろうか。そう考えるのが一番妥当な気がする。
CCでの編集著作物
「NoDerivs(派生禁止)」の条件に戻ろう。
クリエイティブ・コモンズ リーガル・コードの中の第1条 定義 aにはこうある。
「二次的著作物」とは、著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、または脚色し、映画化し、その他翻案することにより創作した著作物をいう。ただし、編集著作物又はデータベースの著作物(以下、この二つを併せて「編集著作物等」という。)を構成する著作物は、二次的著作物とみなされない。また、原著作者及び実演家の名誉又は声望を害する方法で原著作物を改作、変形もしくは翻案して生じる著作物は、この利用許諾の目的においては、二次的著作物に含まれない。クリエイティブ・コモンズ リーガル・コード
編集著作物は二次的著作物とみなされない。はっきりと言及してある。さらに、第3条 ライセンスの付与 aにおいて
本作品に含まれる著作物(以下「本著作物」という。)を複製すること(編集著作物等に組み込み複製することを含む。以下、同じ。)、クリエイティブ・コモンズ リーガル・コード
と編集著作物に組み込み複製することを明言している。
また、第5条 制限のなかにも編集著作物に対する言及はあり、
本条の制限は、本作品が編集著作物等に組み込まれた場合にも、その組み込まれた作品に関しては適用される。しかし、本作品が組み込まれた編集著作物等そのものは、この利用許諾の条項に従う必要はない。クリエイティブ・コモンズ リーガル・コード
作品と編集著作物を別個に分けて考えているようだ。
ここで、作品が丸々入っていないものはいけないんじゃないかという意見があるかもしれないが、それはデータベースの著作物となって、また別だろう。
制限の最後に次のようなものがあった。
もし、あなたが、本作品を組み込んだ編集著作物等を創作した場合、あなたは、許諾者からの通知があれば、実行可能な範囲で、要求に応じて、編集著作物等から、許諾者又は原著作者への言及をすべて除去しなければならない。クリエイティブ・コモンズ リーガル・コード
編集著作物に組み込んで作品の紹介をしてはいいが、その言及を許諾者なんかが気に食わない場合、削除を要請できるようだ。ただし、作品そのものを削除しなきゃいけないとは書いていないのが面白い。
とりあえず、こんな感じ。まだ、書き足りない部分はあるが、時間がないので今日はここまで、また書きます。