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科学ってやっぱりどうしても難しいものって思われがちなので、
何かどうしたら科学を楽しく伝えられるかなって思って思いついたのが、
じゃあSF映画に科学を載せて伝えちゃおうっていうアイデアだったんですね。
黒木瞳の映画ここだけバナシ
今日も聞いていただきありがとうございます。
映画に携わる様々なジャンルの方々とここだけ話ししていきます。
今回のゲストは、大人気クリストファー・ノーラン監督の最新作
TENETの字幕科学監修をされました山崎 詩郎さんです。よろしくお願いいたします。
山崎 詩郎です。よろしくお願いします。
山崎さんは、本業は大学の先生でいらっしゃるということなんですけれども、
簡単に自己紹介をお願いできますでしょうか。
山崎 普段は東京工業大学という大学で、物理学系というところで物理の助教という仕事をしております。
特にすごく小さな世界の研究ですね。
身の回りにあるものをどんどんどんどん細かくすると、原子とか分子っていうのが見えてくるんですけども、
そういうもう10億分の1メートルぐらいの小さな小さな世界の研究というのをやらせていただいています。
原子分子とその映画TENETの字幕科学監修をされた、どう関係あるんですか。
山崎 あまり関係はございませんね。あえて言えばなんですけども、原子とか分子っていうのは
大平 どっちかというと化学の方ですよね。
山崎 化学と物理学の実は間ぐらいにある分野なんですね。
私はどちらかというと物理学よりからそういうのをやっているんですけども、
原子や分子のいわゆる取扱説明書みたいなのを作ろうというのが物理学の役目でして、
原子がどうしてこうやって動くんだろう振る舞うんだろうというのを量子力学と呼ばれる学問で説明するんですけども、
いきなり出てきましたね。
大平 量子学は私の最も興味のある言葉です。
山崎 言葉。
大平 何もわかりません。
山崎 量子力学と言っておけばOKっていう風潮もありますので。
大平 よく見る映画で量子学が出てきてですね。
それで量子学的には時空は超えられないっていう、物理の先生と対談したことがあるんですが、
時空を超えることは決してございませんって言われたんです。
ドラえもんは実在しないと。
山崎 実在しない。全否定ということですね。
大平 ですけれども、野蘭監督のテネットっていう字幕、科学鑑賞されたんですけれども、
その話に戻りますと、私もそのテネット拝見しましたけれども、やっぱり科学なんですよね。
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物理学、量子学、時空を超えますよね。
何か扉の中に入ると、過去に行ったり、現代に行ったり、いろいろ巻き戻したり、早送りしたりとか、
車が逆走したりとか、いろいろありますけれども、
これってやっぱり野蘭監督、計算しつくされた作品であったんですか?
山崎 そうですね。野蘭監督のテネットという作品で、時間を、我々普通は今時間を普通に進んでます。
ですので、電車じゃないんですけれども、巡行というふうによく呼ぶんですね。
で、野蘭監督の映画テネットでは、時間を逆向きに進む逆行というのが出てきまして、
例えば2000年から1999年に戻るみたいな、そういう感じの逆行というのが出てきまして、
その逆行がですね、なかなか理解しがたいんですけれども、
普通ビデオとかの逆再生だと思えば大体大丈夫ですね。
寺田 その逆行と現在と一緒の画面の中にいるんですよね。
山崎 そうなんですよ。
寺田 そこが奇妙なんですよね。
山崎 そうなんですね。
例えば今この瞬間に、私たちはみんな今未来に歩いて進んでって言いますけれども、
もし未来から過去に戻っていく私たち、黒木さんですとか私とかがいたら、
彼らと今この瞬間にすれ違っているわけなんですよ。
未来から来た自分と過去から来た自分が、今現在でぶつかってすれ違っているはずなんですね。
ということで、その瞬間に自分が二人いるということになってしまいますね。
寺田 そうですよね。
野蘭監督の作品は理屈とかで理解するのではなく感じるものだっていうようなことも聞いてますけれども、
そこで何を感じるかっていうことですよね。
そもそもテネットというのはどういった意味なんですか?
山崎 テネットはですね、実はテネットという映画で作られた造語なんですけども、
英語で書きますとT-E-N-E-Tとなりまして、
右から読んでもテネット、左から読んでもテネットっていうふうに、
実は解文って言うんですかね。
逆から読んでも同じように読めるというものでして、
それは一種の今回の映画の象徴ですね。
右から行っても、つまり時間を巡行しても逆行しても、
両方とも世界はちゃんと成り立つようにできているという、
意味合いを込めてテネットというタイトルをつけたと思ってまして。
山本 漢字で言うなら山本山ですね。
まさにそれです。それは言わないようにしておこうと思ったんですが、
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まさにそれなんですね。
山本 そういうことなんですか。
山本山は時間の逆行だったということになるかもしれません。
山本 昔別の法があったか、
ゼロ歳から80歳。
80歳の人がゼロ歳になって途中ですれ違うという、
そういう映画があるんですね。
だから片家どんどん年をとっていく人生、
片家ずっと赤ちゃんに向かってゼロ歳に向かって生きているという男女が、
途中で交わって恋をして、
逆行する法がで、
僕は明日昨日の君とデートするというタイトルなんですけれども、
じゃあそういう逆行っていうのはそういう、
そうですね。
山本 まずその映画絶対僕見なきゃなって、
すごい脅迫観念に駆られているのが一つありまして。
お勧めしちゃった。
だから最初は何のことかわからなくて、
見ているうちにこういうこと、タイトルからしてわからなかったんですね。
僕は明日昨日の君とでしょ。
これおかしいですよね。
自分にとっては明日だけども、
女の子にとっては昨日になるということですよね。
だから何でしょうこの矢印がお互い逆向きに向いている矢印が、
まるで重なるかのような恋愛をしたっていう、そういうことになるとは思うんですけど、
でも私だったら逆行している女の子とかいたら、
たぶんすぐに好きになっちゃうかなって気がしますけどね。
もう自分が逆行したくてしょうがなかったですので。
ちょっと山内さん質問ですけど、大学の先生でらっしゃいますよね。
山本 一応そうなんですよ。
なのになぜ野蘭監督のテネットの字幕科学監視をされたんですか。
山本 全部話すとちょっと長いんですけども、一部話しますと、
大学でもちろん研究教育してるんですけども、
もともとその科学をわかりやすく魅力的に人に伝えたいっていう、
そういう強い思いを持っていまして、
科学実験教室パフォーマンスやったりとか、
あとは大勢の前で科学の講演会やったりっていろいろしてるんですけども、
特に科学ってやっぱりどうしても難しいものって思われがちなので、
何かどうしたら科学を楽しく伝えられるかなって思って思いついたのが、
じゃあSF映画に科学を載せて伝えちゃおうっていうアイデアだったんですね。
SF映画が大嫌いっていう人は世の中にほとんどいないと思います。
見てて楽しいですよね。
あり得ないからね。
山本 そうですね。
SFの中に例えばブラックホールですとか、ワームホールとか、
もっと言うとライトセーバーとか、
あと時間の逆行とか今回のようないろんなキーワードが出てくるので、
そういうキーワードをみんな聞いて楽しいなって見てくれてるので、
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じゃあそこで時間って何なんだろうとか、
時間の向きってどうやって決まってるんだろうみたいな科学を、
一緒にじゃあ説明してあげようかなってことで、
最初は実はインターステラーという別の映画だったんですけども、
インターステラーを説明しながら、
映画的にも楽しんでもらって、
ブラックホールとか相対性理論の説明もするっていう会を、
100回ぐらい実は今までやっていまして。
ちょっと聞きたいことが、
私は科学はうといんですけど、
量子学と聞くとちょっと胸が躍るんじゃなくて心が躍るんですけれど。
たとえばテネットで言うと?
テネットは実は量子力学はあんまり出てきてないんです。
あえて言うとテネットのセリフの中で、
陽電子は時間を逆行するっていうセリフが、
ニールという相棒のキャラクターから飛び出したんですけども、
そういう陽電子っていうのがありまして、
普通電子って聞いたことありますか?
電子っていうのは電気を流すものっていう感じなんですけども。
電気を流す?
そうですね。
そうですね。
ちょちょちょ、自己完結しないで。
電気の元ですね。
電線にこの電気が流れてますね。
中に電子っていう粒が流れてるんですけども。
電子の粒が流れてるのが電気。
そうですね。電流。
電気の粒ってプラスの電気なのかマイナスの電気なのかって聞いたこととかありますか?
実はマイナスの電気なんですね。
ですけど、世の中にはプラスを持ってる電気の粒もありまして、
それが陽電子って呼ばれる。
詳しくはこれ以上話しませんが、
陽電子とかを扱う学問が量子力学とか素量子物理学って呼ばれてる学問になっています。
プラスの電流のことを量子力学というと。
プラスの電気とかを扱う学問が量子力学っていう感じですね。
うちのそれだけじゃないんですよ。今の例でして。
量子力学っていうのは、とてもとても小さな粒の性質とかを学んだり考えていく学問。
それをテネットにはあまり出てこないけど、
インターステラーでは量子学は切り離せない作品でもありますよね。
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そうですね。実はテネットでもその意味では出てます。
今話した陽電子というプラスの粒なんですけども、
時間を逆向きに進んでる粒だっていうふうにも言われているんですね。
普通身の回りにあるものは全部過去から未来に向かって進んでるんですけども、
陽電子と呼ばれる変わった粒は、
未来から過去に進んでいるというふうに捉えることもできるっていうふうに言われてまして。
誰が?誰に?
世界中の物理学者にです。
その陽電子プラスの電流は過去に流れている?
存在しているだけで過去に進んでるってことなんです。
存在しているだけで過去に進んでる?
そうですね。僕たち今、身体は止まってるじゃないですか。
今座ってるということ?
座ってます。
座ってるので動いてないってもちろんみんな思うわけですけども、
いやでも実は時間の方向には今動いてるって言えまして、
私今黒石さんも私も止まってますけども、
過去から未来に進んでるっていうふうに言うことができるんですね。
横に南とか北とか上下左右には動いてないんですけども、
時間の方向には今未来に勝手に進んでるという感じです。
身の回りにあるものはこのマイクとか鉛筆とかペットボトルも
すべて過去から未来に一緒に今一緒に動いている最中なんですけども、
でもそういう陽電子は未来から過去に行く。
なのでさっきの映画の要は彼女の動きと同じということですよ。
陽電子っていうのは存在してるんですか?
してるんです。
普段はどこにいるんですか?
普段はほとんどないんですけど、
実はお空に、空からもう100キロメートルぐらいずっと上の方ですけども、
宇宙からいろんな紫外線ですとか、太陽からの紫外線とか、
あともっと宇宙船っていう、宇宙からいろんなすごいエネルギーを持った粒が
いっぱい飛んで降り注いできてるんですね。シャワーのように。
そういうのが地球のベールである大気に突っ込むときに、
一時的にそういう電子とか陽電子とか、
いろんな普段見かけない粒を生み出すっていうことが起きてまして、
なので決して後頭無形な机上の空論ではなくて、
本当に今我々の頭上で一日に無数の数そういうのが発生してるということですね。
で、その陽電子は過去へ行っている。
実際には過去に行ってるわけでは本当はないんですけども、
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計算上は過去に行ってる粒子と区別がつかないっていうふうに言われていまして。
そういうところから、何て言うんでしょうか。
野蘭監督がいろいろ作られてきたロマンっていうか、
の中に量子力学がエッセンスとして入っているみたいなことなんですか。
そうですそうです。
野蘭監督はあくまでももちろん映画のストーリーを作る方ですけども、
そういうところに、例えば物理学の実感を逆に進んでいると呼ばれている、
陽電子というようなアイデアをそのまま使ってきて、
しかもよく私は素粒子の擬人化というふうな表現をしたんですけども、
陽電子みたいに時間を逆に進んでいるものを、
そのまま人物に置き換えちゃったのがテネットと言えるかもしれません。
テネットは普通人が前に見がいに歩いてますが、
とある仕組みを通ると逆向きに進むようになるっていうことですね。
そこが野蘭の天才的な部分かなって。
本当に映画のお仕事としてはテネットの字幕科学監視をされている山崎さんですけれども、
今回はテネットやインターステラなどを通して、
山崎先生に教えていただきたいなと思いますけれども。
そうですね。それが私の本望でして、
映画とかを通じて、映画90%だけどもちょっとだけ科学の話をそこに乗せて、
皆さんに科学をお伝えするっていうのは、まさに私がやりたかったことです。
でもやっぱり科学を映画に取り入れるっていう野蘭監督もすごい発想ですよね。
そうですね。もういろんな監督の作品私も見ましたけども、
あそこまで科学現象を映画に付け加えるのではなくて、
映画の背骨に当たるような一番バックボーンのところにそれを添えて、
人間ドラマはむしろそこに付け加えていくというような作り方が真逆ですね。
もう天才的だなと思いますね。
はい。来週と物理の授業となります。
黒き瞳の絵がここだけはなし。
今日は山崎さんでした。ありがとうございました。
ありがとうございました。