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おはようございます。コウブンです。
栃木県の片田川にある蓮城院というお寺で、副住職をしております。
怒りの本質と仏教的アプローチ
本日は、昨日に引き続いて、現代人のための仏教心理学についてのお話をしたいと思っております。
今日は第2回目で、昨日の放送では不安との付き合い方についてお話をさせていただきました。
今日は怒りのマネジメントについてのお話をしたいと思います。
最近のSNSの炎上とか、職場でのストレスであったりとか、家庭内での感情的な言動であったりとか、
そういった怒りに関する問題が増えているのではないかと感じております。
怒りという感情というもの、仏教ではとても重要な感情の一つと捉えています。
どのように重要かというと、この怒りというもの、仏教において三毒の一つであると考えています。
三毒とは何かと言いますと、三毒というのは三つの毒と書くわけではありますが、
この毒というふうに言っているわけですから、体に良くないものであるということなんですよね。
どのように体に良くないかというと、怒りは煩悩のもとであるというふうに考えるんです。
煩悩のもと、つまり私たちを苦しめる心の大元なんだ、怒りというのは大元なんだというふうに捉えているというわけなんですよね。
今日の放送では、その煩悩の大元の怒りについて、どのように対処していけばいいかということについてお話をしていきたいと思います。
まず、怒りというものの本質についてなんですけれども、怒りというものが生まれる過程を仏教では次のように考えております。
まず、ある出来事が起きる。そして、その出来事に対して私たちはこうあるべきという思い込みを持っている。
そして、理想と現実のギャップから怒りが生まれる。そういう流れで怒りというのが生まれるんだ、そういうふうに仏教は考えているんですね。
例えば、電車が遅延したときに帝国通りに動くべきだというような思い込みというのが怒りの種となる。
でも、このべきという思考こそが苦しみの原因なんだというところなんですよね。
興味深いことに、この仏教の洞察というのは現代心理学のABC理論というものに非常に似ているんですよね。
この理論というのは、出来事ではなくてその解釈とか信念というものが感情を生み出すんだというそういう考え方です。
この怒りを生まれる過程というものは、ABC理論に似ているところでございます。
怒りの対処法
では、具体的な怒りの対処法についてなんですけれども、これらは仏教の知恵と現代心理学の知見というのを組み合わせて考えていきたいと思います。
まずは速攻性のある対処法として、息を数えるという方法というのがあります。
数足感というように、仏教では呼んでおりますけれども、息の数を数える、呼吸の数を数えるということですね。
これは、呼吸を10回数えることで心を落ち着かせるという手法です。
心の中でいいんですね。口に出して数えなくても心の中で大丈夫です。
とにかく、怒りの感情が高まってきたときに10を数えてみるという方法ですよね。
そしてもう一つの対処法としましては、その場を離れるという方法。
お釈迦様は、怒りが起きた場面からは一時的に離れることということを推奨しておりました。
これは現代のクーリングオフと言ったらいいのかな、そういったものに考え方が似ております。
場所を変えることで、怒りの感情がよりヒートアップするというところを抑えるということなんですよね。
今ご紹介した2つは、すぐに速攻性のある方法ですけれども、
中長期的な取り組みとしては、根本的な対処の方法としては、慈悲の心を育てるというのがあります。
簡単に言うと、みんなが幸せでありますようにという考え方を常に持っておくということなんですよね。
怒りの感情というものが、みんなが幸せでありますようにという心を持つことで起きにくくなるということですよね。
科学的な研究でも、慈悲の瞑想であったりとか、そういった心というものが怒りの制御に効果があるということが確認されているというわけなんです。
日常生活での実践のポイントとしましては、まずは怒りを感じたら、今怒りを感じているなというような自分の心を観察すること。
それが大切であるということですよね。
これは、自分の心をまるで第三者が見るように、他人が見るように、そういった俯瞰した視線、遠くから見つめるような心構えをすることで、怒りの感情というものに振り回されない、ヒートアップしていかないということですよね。
感情そのものが生まれるというのは否定はしておりません。感情が生まれても、生まれたら生まれたでその感情に引っ張られないということですよね。
次に、相手もまた苦しみを持つ存在なんだという、そのように相手の心に思いを向けるということ。
これによって、相手が自分に対して何らかの怒りに怒るような言動であったりとか行動であったり、そういったことを向ける背景というもの。
そういったものを考えることで、相手の感情とか背景を理解すること。
それによって、より自分が感情的になるのではなくて、落ち着いた判断ですね。落ち着いた対処法ができるのかなと、そういうふうに思うわけでございます。
このようなことを、自分が怒りという感情が出てくる場面でより実践していただければ、日常生活がより穏やかになるかなというふうに思います。
日常生活が穏やかになれば、そういった苦しい感情、自分にとってよくない感情ですよね、心地よくない感情というものに支配される時間が少なくなってくる。
結果的に人生が良くなっていくのかなと思います。どうぞ実践してください。
では、今日は怒りとの向き合い方についてお話をさせていただきました。
皆さんの日常生活ではどんなときに怒りを感じますでしょうか。またどのように対処してますでしょうか。
そんなことをコメントでお話してくだされば大変嬉しいです。
今日はここまでとしたいと思います。
炎上院副住職の幸文でした。ではではまたね。