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グアノという言葉を聞いたことがありますか? これは海鳥の糞が長い年月をかけて積み重なり、岩のように固まったものです。
けれども、ただの糞ではありません。 インカ帝国にとって命を支える宝物でした。
インカの人々が暮らしてきたアンデスの高地は、山々に囲まれ畑を作れる土地も限られていました。
しかも、土は痩せていて、そのままでは作物がよく育ちません。
そこで彼らが大切にしたのが、海岸の島々に積もったグアノでした。
グアノには作物を元気に育てる力があり、トウモロコシやジャガイモの収穫を大きく増やしてくれたのです。
しかし、グアノはどこでもあるわけではありません。 遠く離れた海岸まで取りに行かなければなりませんでした。
それでもインカの人々は協力し合い、国の決まりで島を守り、決められた時期にだけ採取しました。
鳥を驚かせてはいけない。 巣を壊してはいけない。そんな約束まであったと言われます。
なぜなら、鳥がいなくなればグアノも手に入らなくなるからです。
自然の恵みを未来へつなぐ知恵がそこにはありました。
文字を持たなかったインカ帝国ですが、人々の心の中には、みんなで生きるという強い思いがありました。
遠くの海の小さな島のグアノが、山の上の畑を実らせ、多くの人の命を支えていたのです。
私たちが普段何気なく食べている一粒の作物も、見えないところで支えてくれているものがあります。
インカの人々が大切にしてきたグアノは、自然と人間が助け合って生きるということを教えてくれるように思います。
遠く離れた海と山が、命の輪でつながっているのですね。