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ながら聴きラジオ 『キコアベ』
おはこんばんちは、あべのえです。
9月7日水曜日、ながら聴きラジオ 『キコアベ』へようこそ。
この番組は、われわれ社会人演劇カンパニー アーベイが、
あなたのための心地よい ながら聴きラジオを目指す番組です。
宮崎の皆様、聞こえてますか?アーベイです。
略して、『キコアベ』ということで、
宮崎の良いところを知るための、と言いながら、
相変わらず食べ物の話ばかりする オープニング、お付き合いください。
皆さんは、宮崎と聞いて、何を思い浮かべますでしょうか?
マンゴー?東黒丸元知事?
高地方?巨人軍のキャンプ?宮崎牛に冷や汁?
私はですね、お腹にとっかりくるけどやめられない
おかずランキングベスト5には絶対入れたい
おかげ、梅茶が!な、チキン南蛮ですね。
元祖のお店として有名なのは、オグラとナオちゃん。
1年中暖かく、日常時間の長さを誇る宮崎のキャッチコピーは、
日本の日向、宮崎県。
さあ、こちらもどげんかせんといかん、コアベ。
今日は、Bさんのブタ三分子、秋田川隆之介の父をお送りいたします。
それでは今日も、最後までお付き合いいただけますか?
コアベ、スタートします。
騒音のない世界さんの9月の新譜、レプリカに乗せてお送りする、
ながら劇ラジオ機コアベ。
9月1日は防災の日でしたね。
皆様、お忘れではありませんでしたでしょうか。
吐くいう私はすっかり忘れておりましたけれども。
今日は、防災についてちょっと気になる話題を取り上げてみようと思います。
防災訓練の際、AEDの使い方講習があったりしますけれども、
皆さんは、いざという時に使える自信はありますか?
女性にAEDを使うのをためらう男性は4割、という調査結果が出たというお話です。
テレ朝ニュースからの引用です。
AED、自動体外式除細胴器を使用するには、
上半身を裸にして素肌にパッドを貼る必要があると言われています。
女性の服や下着を脱がせることに抵抗を感じる男性が多い、というのです。
町の男性に話を聞きました。
女性が気を悪くするんじゃないか、とか考えちゃうと思います。
セクハラと間違えられへんかな、みたいのが心配ですね。
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何してんの、と思われたら困るので怖いです。
後から何か言われるんじゃないかって、
そういう懸念を抱いてまで果たしてやるかなって言うと考えちゃいますね、とのこと。
一方、女性はどう思っているのでしょうか。
そういう緊急時、有事の時にはそんなに気にはしないと思います。
救ってもらえるならしてほしいなと思います。
みなさん感謝すると思うのでぜひやってあげてほしいです、とのこと。
専門家は、女性の場合、必ずしも上半身を裸にする必要はないと言います。
日本AED財団石見拓専務理事は、
服を全部脱がさなくても、少しずらして、
ブラジャーとかを避けて、心臓を挟む形にパッドを貼り付けることができるかなと思います。
とにかく重要なのは早く電気ショックをすることなので、
女性にAEDを使うことを優先していただきたい、とおっしゃっています。
いやー、これは時代のせいなんじゃないかな。
良かれと思ってやったことがあだとなって帰ってきたなんてニュースはよく見ますもんね。
ちょっと迂闊に手を出せないというか、恨まれるくらいなら最初から何もしないっていうか。
でもこれって怖いですよね。
もし自分が道で倒れた時、周りに4割の男性しかいなかったらと思うと、
見て見ぬふりをされるかもしれないわけです。
女性の皆さん、どうお感じになられますか?怖くないですか?
助けてもらえないかもしれない確率が4割もあるって。
ねえ。
いやー、もう邪魔ならね、ブラジャー放り投げていただいて、私は構いませんので。
はい、全然。
男性の皆さん、一秒を争う緊急時にはぜひ命を優先していただけたらと思います。
お願いいたします。
最近というか、ここ3日4日くらいのことなんですけれども、
どうにも体がピリピリして、そこかしこかゆくなっていてですね、原因がわからなくて困っております。
これ何なんですかね。
夏場によく経験する気がするんですけれども、
痺れとかはなくて、体調保診とかにもかかったことはないんですけれども、
自律神経とか、ストレスとかかなーくらいしかね、見当つかないんですけれども、
やっぱりストレスかなー。
アレルギーかな?ストレスなんだろうな。
来週ちょっと長めの休みを取っているので、少しゆっくりしたいんですけれど、
うーん、無理だろうな。
もしこんな症状をお持ちの方、わかる方いらっしゃいましたらね、
ぜひ原因、何かに行けばいいのか教えてください。
なにとぞー。
さあ、今日は雑談はこの辺にいたしまして、
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Bさんの豚さん文庫に参りましょう。
ジングルの後すぐにお届けいたします。
ステイジューン。
今年の夏はキクアベ。
暑い。
あー、みんなね、暑い暑いって言うから暑いんであって、
気持ちとしては、なんか暖かいなー、今日。
ぐらいで思っていると気が楽になるよ。
というわけで、キクアベ。
七。
芥川龍之介。
自分が中学の4年生だった時の話である。
その年の秋、日光から足尾へかけて、
3泊の修学旅行があった。
午前6時30分、上の停車場前へ集合。
同50分発車。
こういう箇条が、
学校から渡す当車番のすり物に書いてある。
当日になると自分は、
ろくに朝飯も食わずに家を飛び出した。
電車で行けば停車場まで20分とはかからない。
そう思いながらも、なんとなく心がせく。
停車場の赤い柱の前に立って、
電車を待っているうちも気が気でない。
あいにく空は曇っている。
ほうぼうの工場で鳴らす汽笛の音が、
ネズミ色の水蒸気をふるわせたら、
それがみな霧雨になって、
降って気はしないかとも思われる。
その退屈な空の下で、
高架鉄道を汽車が通る。
被服所へ通う荷馬車が通る。
店の扉が一つずつ開く。
自分のいる停車場にも、
もう2、3人人が立った。
それがみな、
寝の足りなそうな顔を陰気らしく片付けている。
寒い。
そこへ割引の電車が来た。
こみ合っている中をやっとつり革にぶら下がると、
誰か後ろから自分の肩を叩くものがある。
自分は慌てて振り向いた。
おはよう。
見ると、乗せいそうであった。
やはり、自分のようにコンのヘルの制服を着て、
街灯を巻いて左の肩からかけて、
朝のゲートロを履いて、
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腰に弁当の包みやら、
水筒やらをぶら下げている。
乗せは、自分と同じ小学校を出て、
同じ中学校へ入った男である。
これといって得意な学科もなかったが、
その代わりに、これといって不得意なものもない。
そのくせ、ちょいとしたことには器用なタッチで、
流行り歌というようなものは、
一度聴くとすぐに節を覚えてしまう。
そうして、修学旅行で宿屋でも泊まる晩なぞには、
それを得意になって披露する。
詩言、さつまびわ、楽語、講談、
おわいろ手品、何でもできた。
その上また、身振りとか顔つきとかで、
人を笑わせるのに独特な妙を得ている。
したがって、クラスの休憩も、
教員館の評判も悪くはない。
もっとも自分とは、互いに生き気はしていながら、
察して親しいという間柄でもなかった。
早いね、君も。
僕はいつも早いさ。
のせはこう言いながら、ちょいと小鼻をうごめかした。
でもこの間は遅刻したぜ。
この間?
国語の時間にさ。
ああ、ばばに叱られたときか。
あいつは、工房にも筆の誤りさ。
のせは、教員の名前を呼び捨てにする癖があった。
あの先生には僕も叱られた。
遅刻で?
いいえ、本を忘れて。
じんたんは、いやにやかましいからな。
じんたんというのも、
のせがばば教員につけたあだ名である。
こんな話をしているうちに、停車場前へ来た。
乗ったときと同じように、
混み合っている仲をやっと電車から降りて停車場へ入ると、
時刻が早いので、
まだクラスの連中は2、3人しか集まっていない。
互いにおはようのあいさつを交換する。
先を争って、
待合室の木のベンチに腰をかける。
それから、いつものように、
勢いよくしゃべりだした。
みな、僕という代わりに、
俺というのを得意にする年配である。
その、自ら俺と称する連中の口から、
旅行の予想、生徒同士の品質、
教員の悪評などが盛んに出た。
イズミはチャクいぜ。
あいつは教員用のチョイスを持っているもんだから、
一度も下読みなんとしたことはないんだとさ。
ヒラノはもっとチャクいぜ。
あいつは試験のときと言うと、
歴史の年代をみな爪へかいていくんだって。
そういえば先生だってチャクいからな。
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チャクいとも。
ホンモナンズはレシーブのアイとイイと
どっちが先へ来るんだか、
それさえろくに知らないくせに、
教師用でいい加減にごまかしごまかし
教えているじゃないか。
どこまでもチャクいで持ちきるばかりで、
一つもろくな噂は出ない。
すると、そのうちにノセが、
自分の隣のベンチに腰をかけて、
新聞を読んでいた職人らしい男の靴を
パッキンレイだと批評した。
これは当時、マッキンレイという新型の靴が流行ったのに、
この男の靴は一体に艶を失って、
その上、先の方がぱっくり口を開いていたからである。
パッキンレイはよかった。
こう言って、みな一時に失笑した。
それから自分たちは、
いい気になってこの待合室に出入する
いろいろな人間を物色し始めた。
そうしていちいち、
東京の中学生でなければ言えないような
生意気な悪口を加え出した。
そういうことにかけてひけを取るような
おとなしい生徒は、
自分たちの中に一人もいない。
中でもノセの形容が一番辛辣で、
かつ一番快逆に富んでいた。
ノセノセ、あのお上さんを見ろよ。
あいつはフグが腫らんだような顔をしているぜ。
こっちの赤棒も何かに似ているぜ。
ねえノセ、あいつはカロル五世さ。
しまいにはノセが一人で
悪口を言う役目を引き受けるようなことに。
するとそのとき、
自分たちの一人は時間表の前に立って
細かい数字を調べている
妙な男を発見した。
その男は羊羹色の背広を着て、
体操に使う吸管のような細い足を
ネズミの荒い縄のズボンに通している。
フチの広い昔風の黒い中折れの下から
暗白の毛がはみ出しているところを見ると、
もうかなりな年配らしい。
そのくせ首の周りには白と黒と
甲子島の派手なハンキチを巻きつけて、
ムチかと思うような柑橘の長い杖を
ちょいと脇の下へ挟んでいる。
服装といい、態度といい、
全てがパンチの差し柄を切り抜いて、
そのままそれをこの停車場の人混みの中へ
立たせたとしか思われない。
自分たちの一人は、
また新しく悪口の材料ができたのを喜ぶように、
肩でおかしそうに笑いながら
のせの手を引っ張って、
「おい、あいつはどうだい?」とこう言った。
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そこで自分たちは、みなその妙な男を見た。
男は少し反り身になりながら、
直筋のポケットから紫の内紐のついた
大きなニッケルの懐中時計を出して、
丹念にそれと時間表の数字等を見比べている。
横顔だけ見て、
自分はすぐにそれがのせの父親だということを知った。
しかし、そこにいた自分たちの連中には
一人もそれを知っているものがない。
だからみな、のせの口からこの滑稽な人物を
適当に形容する言葉を聞こうとして、
聞いた後の笑いを用意しながら、
面白そうにのせの顔を眺めていた。
中学の四年生には、
その時ののせの心持ちを推測する命がない。
自分は危うく、
あれはのせのファザーだぜ、と言おうとした。
するとその時、
あいつかい?
あいつはロンドン小敷さ。
こういうのせの声がした。
みなが一時に吹き出したのは、言うまでもない。
中にはわざわざ反り身になって、
懐中時計を出しながら、
のせの父親のスタイルを真似てみるものさえある。
自分は思わず下を向いた。
その時ののせの顔を見るだけの勇気が、
自分には欠けていたからである。
そいつは適応だな。
みなみな、あの帽子は日陰町か?
日陰町にだってあるものか。
じゃあ博物館だ。
みながまた面白そうに笑った。
どん天の停車場は日の暮れのように薄暗い。
自分はその薄暗い中で、
そっとそのロンドン小敷の方を透かしてみた。
するといつの間にか薄火が射し始めたと見えて、
幅の狭い光の帯が、
高い天井の明り取りからぼーっと斜めに射している。
のせの父親はちょうどその光の帯の中にいた。
周囲ではすべてのものが動いている。
目の届くところでも、
届かないところでも動いている。
そうしてまたその運動が、
声とも音ともつかないものになって、
この大きな建物の中を霧のように覆っている。
しかしのせの父親だけは動かない。
この現代と縁のない洋服を着た、
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この現代と縁のない老人は、
目まぐるしく動く人間の洪水の中に、
これもやはり現代を超越した黒の中織りを網田にかぶって、
紫の内紐のついた懐中時計を、
右の棚心の上に乗せながら、
依然としてポンプのごとく、
時間表の前に貯立しているのである。
あとでそれとなく聞くと、
その頃大学の薬局に通っていたのせの父親は、
のせが自分たちと一緒に修学旅行に行くところを、
出勤の道すがら見ようと思って、
自分の子には知らせずに、
わざわざ停車場へ来たのだそうである。
のせいそうは、
中学を卒業すると間もなく、
肺結核にかかってぶっこした。
その追悼式を中学の図書室であげたとき、
正帽をかぶったのせの写真の前で、
当時を読んだのは、
自分である、
君、
父母に、
孝に、
自分は、
その当時の中に、
こういう句を入れた。
エンディングのお時間です。
ながら劇ラジオキコアベ、
本日も最後までお付き合いいただきまして、
ありがとうございました。
いかがでしたでしょうか。
今日はBさんの豚三分子と、
ブラジャーを放り投げてもいい、
頼むからAEDしてください、
というお話をお送りいたしました。
朗読とBGMが妙にマッチしていて、
面白いお話がありましたね。
BGMは、
正帽のにこ、
というカタロニアの民謡だそうです。
それにしても、
着衣ってどういう意味なんでしょうね。
ちょっと言いたくなりますよね。
着衣ぜ!
さあ、
次回土曜日のキコアベは、
さざとくて何が悪いの、
Jさんの登場です。
それでは皆様、
今日も良い一日をお過ごしください。
あなたに時間がどれだけあるかというのは問題ではない。
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むしろ、
時間をどう使うかが問題なのだ。
サンキュー!
ケリー・グリーソン。
ナガラギキラジオ キコアベ
手揃いのラジオたちへ。
お相手は、
アーベイのAでした。
次回土曜日にまたお会いいたしましょう。
それではごきげんよう。
バイチャ!