酪農の魅力と資金の話
こちらは、島根県出雲市にある小さな牧場から配信しています。
スーパーやコンビニ、皆さんがいつでもどこでも買うことができる牛乳。
普段飲んでいる牛乳の魅力や酪農の魅力を、酪農家がお話しする構想となっております。
牧場の日常や牛の鳴き声を聞きながら、お手元に牛乳、ホットミルクを準備して聞いていただくと、
よりおいしい牛乳を味わうことができると思います。
牛乳飲む?牧場配信始まりです。
川上牧場研修第45回。川上さん、よろしくお願いします。
はい、よろしくお願いします。研修生さん、これまでの研修では、酪農という仕事の心構えや準備について話してきたけど、
今回はいよいよお金の話をしていこうか。
お金の話?わあ、待ってました。でも正直なところ、一番不安なテーマでもあります。
ははは、そうだよね。でも夢を前に進めるためには、お金という燃料が不可欠なんだ。
資金計画は経営者としての覚悟が問われる領域だけど、自分の夢にエンジンを乗せるための設計図を描く作業でもある。
数字が苦手でも大丈夫。一つずつ分解していけば、きっと強い味方になるからね。
計図ですか?なんだかワクワクしてきました。
よし、その意気だ。じゃあ最初のポイントから見ていこう。
さて、研修生さん、酪農を始めるのにいくらかかりますか?って、たぶん一番気になることだと思うんだけど。
はい、まさにそれを聞こうと思ってました。ぶっちゃけいくら必要なんですか?
よい質問だね。でも実はそこから始めるのは少し早いんだ。最初に考えるのはいくらではなく、何に使うかなんだよ。
資金繰りの計画
何にですか?
そう、例えば土地や牛舎、これは牛の飼い方や働きやすさの骨格になる。導入する牛もその後の乳量や生産性を決める大事な要素だ。
他にも機械や最初の1年を乗り切るための飼料代、運転資金みたいにね。
なるほど。
何に使うかという目的がはっきりすれば、ここは中古で十分だな、ここは補助金が使えそうだ、ここだけは絶対にお金をかけようっていう判断ができるようになる。
最初はざっくりでいいんだ。できるところから始めよう。
目的が見えたら次は何を考えればいいですか?
次は資金繰りの計画だね。これは季節と5年っていう2つの時間軸で描くのがポイントだ。
季節ですか?
うん、落農は季節変動が危ないんだ。春は出産が多くて子牛のスペースが足りなくなったり、夏は暑さで乳量がガクッとのちたり、秋は収穫で燃料費がかさむし、冬は凍結対策の費用もかかる。
うわー、1年の中でも結構波があるんですね。
そうなんだ。だから、月ごとの収入と支出をグラフにすると、あ、この月が一番苦しくなりそうだなっていう資金ショートの谷が前もって見えるようになる。
5年計画っていうのもなんだかすごく難しそうです。
これも最初は大丈夫。最高のシナリオ、まあまあのシナリオ、最悪のシナリオの3パターンでざっくり試算してみるんだ。
特に最悪のケースでもこれなら耐えられるっていう設計書を作っておくと、有志の審査を受けるときにもこの人はしっかり考えているなって信材につながるんだよ。
計画はわかったんですけど、その大きなお金どうやって集めたらいいんでしょう。自己資金だけじゃとても足りそうにないです。
そこが今日の確信だね。資金を組み立てるには大きく分けて4本の柱があるんだ。
4本の柱。
まず1本目は研修生さんも言った自己資金。これは自分の汗の結晶だね。
まずは目標100万円。副業でも何でもいい、PC一台で稼ぐことだってできる時代だからね。
はい、頑張ります。
2本目は公的融資。国や自治体が低金利で貸してくれる制度だ。
特に青年等収納資金はなんと全期間無利子で返済が始まるまで毎だ5年も待ってくれる。創業期にはすごく強力な味方よ。
無利子で5年も?それはすごいですね。
3本目は補助金。これは条件に合えば返さなくていいお金だ。
収納準備金、経営開始資金という制度があって、研修中や経営開始後に年間150万円が最長で5年間もらえるんだ。
え?もらえるんですか?返さなくていいなんて。
ただしもちろん審査があるし、計画通りに進んでいるか報告する義務もある。
これも経営の一部だと捉えることが大事だよ。
そして最後の4本目が最近注目されている民間ファンディング。
クラウドファンディングとかですか?
その通り。自分の目上のストーリーや思いに共感してもらって応援という形で資金を集める。
昔はなかった新しい資金調達の方法だね。資金とファンを同時に獲得できるのが魅力だ。
でも川上さん、補助金がもらえなかったら計画が全部パーになっちゃいそうで怖いです。
いいところに気付いたね。それがよくある失敗なんだ。補助金だかりの肯定票は絶対にダメ。
当たればラッキーくらいに考えて、もし落選した時のプランBを必ず用意しておくこと。
二段構えで考えるんですね。
それとすごく大事な注意点が一つ。補助金は原則後払いなんだ。
え?後払い?すぐにもらえないんですか?
そうなんだ。制度によるけど採択が決まってから実際にお金が振り込まれるまで、
数ヶ月から1年以上かかるケースもある。だからその間のお金をどうするか、
つなぎ資金のことも頭に入れて、地元のJAさんや金融機関に相談しておく必要がある。
資金調達の方法と注意点
なるほど。知らないと大変なことになりますね。
その通り。だからこそ最初の情報収集と計画が命なんだ。
うーん、なんだか聞いてるだけで数字に頭がクラクラしてきました。私、数字アレルギーかも。
ははは、大丈夫。簡単な3つの習慣で克服できるよ。
本当ですか?
ああ。まず毎晩5分でいいから、スマホの家計簿アプリで使ったお金を確認する。
次に、週に1回は通帳を見て、よし、今週も1円でも黒字だって意識する。
そして、月末に簡単な収支を確認する。
それくらいなら私にもできそうです。
数字に触れる場を自分にとって楽しい時間に変えていくのが習慣化の鍵だよ。
さて最後に、これからの時代を生き抜くためのしなやか経営について、
金利が上がったり補助金が減ったりする可能性も考えて、
固定費はなるべく下げて収入源を増やす体質を作っておくことが大事になる。
多層防御の発想だね。
守りを固めつつ、せめても増やすみたいな感じですね。
まさにその通りだ。
じゃあ今日の研修の総まとめだ。
研修生さん、ポイントを覚えているかな?
はい。まず、お金はいくらじゃなくて何にから考える。
次に、季節と5年の2つの時間軸でキャッシュフローの他にを予測する。
そして、自己、公的、補助、民間の4本柱で折れない資金骨格を作る。
完璧だ。そして数字嫌いは習慣で変えられる。
はい。なんだか漠然とした不安だったお金のことが、具体的なやることリストに見えてきました。
その調子だ。じゃあ今日の最後に実践ワーク。
ノートを1ページ開いて、まずは自分の目上に必要だと思うものをブレインストーミングで全部書き出してみよう。
そしてそれに優先順位をつけて、さっきの4つの資金のどれで賄うか色分けしてみるんだ。
まずはそこから。書き出せば資金は動き始めるからね。
はい。やってみます。
夢を走らせるためにはお金の言語を理解する力が必要だ。
それは、牛と家族とそして君自身の未来を守るためのもう一つの言葉なんだよ。
もう一つの言葉。しっかり勉強します。
さて、次回の研修では、いよいよ土地、牛舎、設備を選ぶガンについて、
今日考えたお金をどう具体的に配分していくかの実践編だ。
牛も人も快適に働けるファームデザインについて、現場の図解も含めながらお楽しみにかるからお楽しみに。
わあ、いよいよ形になっていきますね。楽しみです。川上さん、今日もありがとうございました。
はい、お疲れ様でした。
この配信で紹介した各種制度の金利、要件、期間は年度や自治体によって変動します。
申請前には必ずお住まいの市町村、JA、日本製作金融庫庫などで最新の条件をご確認ください。
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