──石田さん、ご自身の、今の、普段の座右の目ってないと思うんですけど──
──今の、この取材、今日時点の何か、ご自身を表す指針になるような言葉ってありますか?
──何でしょうね。今だとね、これ古い相場格言なんですけど──
──もうはまだなり、まだはもうなりって言うんですよ。それがやっぱりちょっと近いかもしれませんね。
──もうはまだなり、まだはもうなり。
──もう大丈夫だと思った時には危なくなっているし、まだまだいけるって言う時には、もうそのブーマは終わっている。
──だから、そこら辺のところはいつもそういう感じがしますね。生きていて。
──なんか、やはりそうやって、ご自身を非常に客観的に、もう一人後ろから見ているっていう、石田さんのイメージあるんですけども──
──そういったものは元々持ってらっしゃるんですか?自分を客観視にできる。
──ああ、そういう癖はあったみたいですね。でもそれはやっぱり小説家にとってはいいことでもあって悪いことでもあるんですよ。
──ああ、そうなんですね。
──この前、ちょっと前ですけど、北方健都さんと話をしていて、同じ雑誌にエッセイを書いたんですよ。
──それは自分の好きだった小説家を語るっていうエッセイなんですけど、僕が書いたエッセイの北方さんが言ってましたもんね。
──石田、お前評論界だよな。
──そうやって冷静に論理で何かを分析し合うっていうのは、やっぱり作家としては良くないところもあるんです。
──それよりもっとその当時の主観であったり感情であったりね、心が動くっていうことも大事なので。
──今、石田さんご自身の冷静に見られる部分とか、上手く評論できる部分という話がありましたけども、
──やはり全般的にいろんな作品を読ませていただくと、どうしたらこんなに爽やかな人を引き込む文章を書けるのかなって。
──何でしょうね。
──才能なんでしょうけどね。
──いやー、これは分からないですね。要するにそれは文章がどうのっていうよりは、作中に現れる作者の個性だと思うんですよね。
──なんで柴さんがね、龍馬が行くでああいう爽やかな、誰もが好きになってしまうような坂本龍馬っていう像を作るじゃないですか。
──あれはやっぱり柴さんのキャラクターなんだよね。キャラクターに関しては、生きることができても作ることはできないんですよ。
──要するにキャラクター造形はこうすればいいっていうような、いろんなテクニックがたくさんあるんだけど、それを全部やったとしても、
──元から持っている自分の手持ちのキャラクターの中にない人物っていうのは作り出せないし、全部やっても成功するキャラクターなんてそう簡単に作れないんですよね。
──この部分に関してはやはりみんな天性なんじゃないですかね。意地悪な人は意地悪な人物を作るし、爽やかな人は爽やかな人を作ってしまうと思います。
──それは天性のものであると同時にその人の限界でもあるんですよね。それは柴さんの小説が全て精神小説であるって言われるのと同じでね。
──実際今回の40なんかもそうだと思うんですけども、作品が変わっても、いろんな作品が変わっても、小説を通して石田さんの本を読ませていただいていると、
──暗い世の中に少しだけエロを送っているみたいなメッセージは受けるんですけども。
──それは意識してやっている部分はないんですよね。意識せずにやっていて、正直言ってもちろん今の時代ですから大変なこと悪いこといっぱいありますよ。
──でも少なくとも僕の周りで頑張っている奴はそんなに不幸そうではないし、そこそこ楽しそうにみんな人生を送っているよっていうのはちゃんと言いたいですね。
──小説ですから社会の中にある悪の部分だけを作って書くっていう手もあるんだけど、でもそれはやっぱり今の世界を見てみたらバランスとしてはちょっとずれているんじゃないかという気がします。
──やっぱりここまで来ていても日本はやっぱりとっても豊かですし、このポッドキャストのビジネスではないけれど、新しいビジネスのチャンスはちゃんとありますよね。
──医者さんご自身がずっと大切にしてきていることとか物っていうのはちょっと抽象的なんですけどありますか。
──やっぱり自分自身の感覚を大切にするってことじゃないですかね。自分が感じてそれはいいなとかこれは嫌だなっていう。そこの部分で嘘をつくとやはり後で大変なことになりますから。
──例えば小説なんかはそれで書き始めてしまって1年2年ってかかるわけですからね、終わりまで。
──だからそう考えるとやはり自分の中にあるセンスだったり判断基準みたいなのを揺らしてはいけないなと思いますね。
──それは当然小説家でなくても今生きる私たちもそこの部分はやっぱり揺らがない方がいいんじゃないか。
──日本人の場合は結局どんなに逆立ちしてもお金貯めだけで仕事ができる人っていないんですよね。
──これは例えば銀座で日本一美人が集まっているクラブとか行きますね。そういうクラブの女の子も基本的にはお金では付き合わないですよ。
──もちろんものすごくお金出してくれる人もいるんだけど、そういうときにお金だけでいける人っていうのは本当に何十人しかいない。
──それは男性も女性もそうで、そういうときに何が基準になってるかっていうと自分の好き嫌いだったり、自分はこういう人間ではないなっていう思いだったりしますから、
──そこの部分はあんまり負けなくていいんじゃないですかね。
──結構いろんな最近ビジネスショーとか評論家の方の話聞いてても、こういう厳しい時代だからこそ逆に今石田さんおっしゃったような自分の好きなこととか大事にしてやっていっても十分チャンスがある時代なんじゃないかなっていう声もあるんですけど、石田さんご自身はどうお考えですか。
──逆に今はそういうものしかチャンスがない時代になりましたね。
──だからその流通の組織を全く作り変えてしまって、それこそジーパン一本500円とか1000円で売っていいようなことができないのであれば、逆に個人としてできるのは本当に自分の好きなこと。
──それはおもちゃの収集だったり、世界中のキットだったりでも何でもいいんですけど、そういうものの方がビジネスのチャンスは近いですよね。