あ、そうなんですか。じゃあもう300枚あったんですね。
ありましたね、たぶん。
それは変な話。なんか何の制約もなかったらそのまま載せたかった感じですか?
まあ何の制約もなかったら載せたかったんですけど、そうすると一冊には到底収まらないので、
そうするとその出版社との今後の売上見込みの関係とか考えると、なくなく一冊にして、なくなく300ぐらい削ろうかって話ですね。
そんな中で今回本当に読ませていただいて、あっという間に読めたんですけども、
これはそもそもですけど、僕何かの取材記事で、
やっぱり書きたかった高渕の新しいイメージを打ち出せたっていうふうに柿原さんがおっしゃってたんですけど、
そんなこと言ったかなみたいなのが今書かれてますけど。
でもまあたぶん書きたかったイメージとかあったと思うんですけど、
今それを改めて伺うとしたらどういうことでしょうね。
書きたかった高渕のイメージですか?
もう人間的にはグズグズで、何の中身もないだらしない男っていう感じですよね。
ただ、そのだらしなくてグズグズな男が超優秀。
個人的に見れば超優秀って言われてた、
くすのぎまさしげとかニッタヨシサタとか、
五大御殿の次々迎会していくっていうところが、
まあ面白いかなって僕は思ってたんですよね、ずっと昔から。
こんな中身がなくて、個人として見ると、本当に人間として見るとグズグズなんですよね。
でも、なぜか彼が最終的には生き残っちゃったんだっていう感じのところは、
昔からずっと興味がありましたね。
そういう意味でね、ここにもまさにキャッチコピーで、
やる気なし、名刊なし、執着なしっていうことで、
高渕、なぜそんな人が人間、天下取れたのかって今の話につながると思うんですけど、
先ほど話したようにお恥ずかしながら僕歴史が弱くて、
やっぱり歴史小説の三英傑じゃないですか、信長秀吉、
柿根さんも信長も書かれててっていう中で、
高渕、確かに幕府開いたな、政治対象軍だなっていうのは、
僕ですら当然知ってるんですけど、
でもやっぱり真っ先にそれほど天下取ったのに、
中身はあんまり知らない人が多いというか、なんでなんでしょうね。
基本的にさっき言ったように、中身がブレブレなんで、
生き方自体もブレブレなんですよ。
そうすると、信長ってこういう感じだよねっていう確立したイメージがないんですよね。
だから室町幕府を開いた偉い人的な印象はあるんでしょうけど、
高渕っていう個人にまつわる印象は大半の人はないんだと思うんですよね。
そんな中で、書こうと思ったら着想にもつながると思うんですけど、
柿根さんは以前からちょっと興味は持ってたっていうのは、それはなぜですか?
なぜっていうと、昔読んで、高渕って本当はこんな格好良くない、
格好良いはずがないんじゃないかなと。
もっと格好悪いんじゃないかなと。
もっとグズグズなんじゃないのかなと。
そうすると、高渕が起こしたいろんな局面での決断に、
全て納得がいくんだけどなってことは思ってましたから、
信長とか、そういうパキッとした生き方をしてる、
主人公とはおよそ遠遠いところにいるのが高渕なんじゃないかっていう想像をしてました。
そういう高渕を描きたかったんですよね。
でもそういう意味では、信長とか秀吉とか家康とか、キャラクターも際立ってブレないイメージみたいなのがありますけど、
陰谷さんにしてみると、逆にグダグダであるかもしれない。
高渕がちょっと光った宝石みたいに、原石みたいに見えたんですか?
実は僕、歴史小説を書くときも、
絶えず今っていう時代とのリンクを考えて書いてるんですが、
今ってパキッとした生き方をする人には生きづらい世の中だと思ってるんですね。
何しろ、格好たる倫理観、価値観を持った人。
人生はこうあるべきだとか、何とかすべきだっていう生き方をする人っていうのは、
結局、時代の変化の中に溺れてしまうんじゃないのかな。
何しろ沈んでしまうんじゃないのかなっていう感覚があって。
劇堂の時代っていうことで言えば、これほど実は劇堂だった時代は割と僕ないと思ってます。
鎌倉末期から物町初期に向けて。
要は朝廷も含んでぐちゃぐちゃになってるっていう感じ。
そこの中で英傑と呼ばれた歴史上の人物は、次々と死んでいくなり、高尾寺に破れて滅んでいくなりするのに、
何の取り柄もない一見、高尾寺は淡々と生き残っていくっていう。
そこの人の世の面白さみたいな感じが、やっぱり興味があったんですよね。
その中で小説家として柿根さんが、やっぱり基本的に何か方法論として、
まずテーマがあって、テーマが入る素材があって、素材が入る登場人物。
この3要素で青邪神を作る。それは今も基本は?
基本変わらないです。
そうすると、やっぱりどうしてもこの作品、高尾寺、高尾寺って今も話に出てくると、
人物の話に寄ってるというか、今なってますけど、柿根さんの中で今のステップだとすると、
テーマっていうところでは最初どういう3要素だと?
テーマというか、結局ある意味、自分の人生は自分では決められないって話ですよ。
そうです。この中にありましたね。お父さんが言ってますよね。
現実問題として僕らもそうで、僕らに決められることって、
おそらく今日の晩飯何食うかなってことぐらいですよ。
そうですね。
明日になったらわからないじゃないですか。雨降るかもしれないし、
ロシアがもっとエグい攻撃をするかもしれないし。
そうやって今の僕らの日常って、日本だけじゃなくて日本以外の全国にもひっくるめた、
いろんな蠢きの中で成り立ってるんで、蠢きですね。
なので実すると、割と自分に決められることはないだろうと僕は思ってます。
そこの中で、かっこたる生き方っていうのは割と美しいし、そういう小説があるのも知ってますが、
その生き方が現実的に今の時代だとかなり困難な生き方だと思うんですよね。
己を貫くとか、信念とか。
今の時代においては、実すると僕、そういうのは雑教物にしかならないんじゃないのかなって思うこともしばしばあります。
そういう中で、先ほど、現代のいろんなそういうことも踏まえてリンクしてるとおっしゃいましたけど、
それが何が先に行ってあったわけじゃないと思うんですけど、
柿根さんの中で、そういうものをやっぱり時代をまさに感じてる中で、
高渕のこともずっとフローして浮いてたのが、タイミングで、じゃあこれで行こうみたいな、やっぱり何かあったんですか?
もともと、文春さんという判断元では、この極楽説大将軍を書く予定ではなかったんですよ。
そうなんですか?
今、要は、小学科の週刊ポストで連載している《かぎろうの夏》っていうのを書く予定だったんですよ。
ただ、ある日、《かぎろうの夏》の打ち合わせの時に、
ポロッと僕が、足利高渕って極楽説大将軍って漢字だよね?みたいなこと言っちゃったんですよ、編集者の。
そしたら、それも決まりみたいな感じになっちゃって。
で、実は相当それ抵抗したんですよ。
抵抗したんですか?
書きたくないって。
なぜですか?
めんどくさかったからですよ。大変なの。目に見えてますし。
もちろん《かぎろうの夏》もめちゃめちゃ大変なんですよ、今も。
ただ、こっちはこっちで、また違う種類のすごい大変さがあるんですよ。
資料との整合性をつけるとか、そこから資料を本格的に読み込まなくちゃいけないとか。
あとは本当に、内面虚無な人間を書けるかどうかっていう問題もありますし、
力量の問題としても、書きたくなかったのは正直なところですね。
実際、予感は当たって大変でした?予想以上に大変でした?
めちゃめちゃ大変でした。
予想が100だとしたら、実際どのくらいでした?
150とか70くらい言ってますね。
それはかなりしんどかったですね。
しんどかったですね。
じゃあ実際、ポロッと言っちゃって、じゃあ行きましょうって言ってるから、そこをスタートだと、結局どのくらい?
そこからだと5年は経ってると思うんですけど。
それは柿根さんのような中でも結構かかってる方ですか?
いや、そんなもんですよ。話があって、だいたい5年後に本になってます。
だいたい僕のパターンは。
そうなんですね。
だって、資料を調べる時間も相当、やっぱり1,2年はかかりますから。
その中で、やっぱり歴史小説だと、他の今まで書かれてきた、
例えばワイルドソウルとかも実際2ヶ月取材されてたりとかあるじゃないですか。
僕大好きなんですけど、それとはまた違った意味での大変さ。
例えばワイルドソウルだったら、まだ当時日系一世みたいなのがたぶんまだ。
まだいらっしゃいますよね。
さすがに絶対こっちはいないですよね。
少なくとも話は聞けないですね。
そこを比べるのもちょっとナンセンスかもしれませんが、
ある種のこの歴史小説ならではの難しさであると同時にも、
現存してる方はいないから、そこはフィクションとして書けるみたいな、
その辺のバランスとか面白さ、難しさってどんな感じなんですかね。
実はこれ、僕がフィクションを入れ込む余地って、
足利隆氏が家徳を継ぐぐらいの人物設定でしかなくて、
あとはほぼほぼ私立通りに書いてます。
それを僕なりにアレンジして書いてるっていうのが。
家徳を継ぐまでの人物設定っていうところのフィクションは、
つまり、即筆の事なんとかは事実?
全部事実です。
全部事実なんですけども、例えば、海に遊びに行ったとか、
そういうのは僕の創作ですよね。
逆に言うと、どういう局面局面で事件をいっぱい起こしてると。
高内が判断してきたことがある、ブレブレで。
この人間は本当はどういう人間だったんだろうっていう、
最初の設定をそこで決めなくちゃいけない。
読めてないってこともありますけど、
個人的には新鮮だったのは、
本の中にも柿根さんが結構出てきますよね。
これはそういう話にしましたね。
あえて自分の多少主観を出すという小説にしました。
それは最初からそういうふうに。
それは理由を聞かれても困るってあるかもしれないですけど、
なんかあったんですか?
例えばこれは小田信長であるとか、
竹内光秀であれば、ある程度パキッとした言い方をしてるんですね。
統一感がすごくあって。
例えば小田信長だったら、「日本統一すると、
俺が文化を育ててこい、復興する、全部皆殺しだ!」
みたいな感じの言い方がありますよね。
そういう人間に関しては、僕は補足してあげなくてもいいんですよ。
一直線に、気を揉み込むように進んでいくんで。
ただ、高氏って、
こんだけ自分がない歴史上の人物って、
なかなかいないんで、
下手したら読者が戸惑うこともあるだろう。
そうすると、そこを補足する意味で、
多少の主観は入れるしかないのかなっていう判断でやりました。
面白いですね。ご本人がね。
もちろん、それを決して壊してないんですけど、
ストーリーテーラーみたいな感じで。
本当はそれはやりたくなかったんですけども、
そうしないとやらざるを得ないんですよ。
こんだけ外側のフィギュアの形が、
曖昧な人間を切り取るって、
そもそも切り取ること自体は超難しいんで。
そうすると、ある程度現代的な神の視点から、
多少セギュメンテーションしてあげた方が、
いいだろうなっていう予感はあったので。
これ順番で伺うと、やっぱりタカウジ、
そして弟のタダヨシ、そして諸直。
トライアングルがやっぱり非常に際立って、
3人とも主人公かな?みたいにも読めるタイプなんですけど、
そっちのつまりタカウジだけでは、
史実としては当然、その2人はもちろん支えてたと思うんですけど、
ストーリーとしても、その2人が、
まずある程度際立たせようっていうものがあって、
その上でも、ちょっと俺入ってかないと、みたいな感じだったのか?
基本的に、足利タカウジっていう人の、
描くのって内面がない人なんで、この人。
困難なんですよ、彼の内面を描くのが。
描いたところで、ただ単に、
あ、黄色だ!っていうのを黄色だと思う人間なんで、
あ、綺麗!っていうのを綺麗と思う人間なんで、
なんの食いつきどころもない、ツルッとした人間なんですよね。
ただ、そこが一番実は、彼の怖いところっていうか、特徴的なところで、
でもそれって、本人の内面を描写することによっては、
その凄みって出ないんですよね。
そうですね。逆にどんどん出てこない。
そうすると、最も身近で、死ぬまで付き合わなくちゃいけない関係性の人間。
そうすると、弟と羊の子の諸名になりますよね。
そっから、こういう虚ろの王みたいなやつは、空っぽの人間ですよね。
描写していった方が、よりタカウジっていう人間が立ち上がってくるだろうなって考えて、
それで、基本的には、この物なおと、
足利尊義の2視点のみで進めることにしました。
なるほど。
いつもインタビューをご視聴いただいてありがとうございます。
この度スタートしたメンバーシップでは、各界のトップランナーから戦争体験者に至るまで、
2000人以上にインタビューしてきた僕が、国内外の取材、
そして、旅の中で見つけた人生をアップデートするコンテンツをお届けしていきたいと思います。
ここでしか聞けない特別インタビューや、基礎トークにもアクセスしていただけます。
随時、これは面白い、これはいいんじゃないかっていうコンテンツもアップデートしていきますので、
そちらも含めてどうか、今後の展開を楽しみにしていただけたらと思います。
なお、いただいた皆様からのメンバーシップの会費は、インタビューシリーズの制作費だったり、
国内外のインタビューに伴う交通費、宿泊費、その他取材の諸々の活動経費に使わせていただきたいと思います。
最後に、なぜ僕が無料でインタビューを配信し続けるのか、少しだけお話しさせてください。
この一番の理由はですね、僕自身が人の話によって、うつや幾度の困難から救われてきたからです。
そして何より、国内外のたくさんの視聴者の方から、これまで人生が変わりました。
毎日済む勇気をもらいました。救われましたという声をいただき続けてきたからに他にありますね。
この声は、世界がコロナ禍に見舞われた2020年頃から一層増えたように思います。
これは本当にありがたいことです。
ただ、同時にそれだけ心身共に疲弊したり、不安を抱いたりしている方が増えていることに関わらない、その裏返しであると僕は強く認めています。
正直に言えば、各部僕自身も15年以上前に起業して以来、最大のピンチといっても過言ではない劇をこの数年送り続けてきました。
でも、こんな時だからこそ森に入ることなく、インスピレーションと学びにあふれる、まだ見ぬインタビューを送り続けることが、インタビュアーとしての自分の使命なのではないかと強く感じています。
世界がますます混迷を極め、先の見えない時代だからこそ、僕はインタビューの力を信じています。
これまでのようにトップランナーや戦争体験者の方への取材はもちろん、今後は僕たちと同じ姿勢の人、普通の人の声に耳を傾けたり、
ややもすると打ち抜きになってしまう、今こそ海外でのインタビューに力を入れていきたいと思っています。
そして、彼らの一つ一つの声を音声や映像だけでなく、本としてもしっかりと残していきたい、そう考えています。
そんな思いを共感してくださる方が、メンバーシップの一員になってくださったら、これほど心強く、そして嬉しいことはありません。
ぜひメンバーシップの方でも、皆さまとお耳にかかれるのを楽しみにしています。
以上、早川良平でした。