00:03
このコーナーは、公益財団法人自然農法国際研究開発センターの提供でお送りします。
さて、今週も先週に引き続いて三木さんにお越しいただいています。お願いします。
よろしくお願いします。
先週は、近代農業と有機農業を二項対立にするべからずというようなお話を伺いましたが、
今週は農業の中で、例えば雑草と作物を対立させないとか、そういう考え方があると思うんですけど、その辺を伺いたいと思っています。
はい、よろしくお願いいたします。
雑草との共存
稲作をやっていて、岩堀さんからも伺ったんですけど、雑草がとにかく有機農業にとっては収量が減る要因となると伺ったんですが、雑草はどのように付き合っているんですか?
そうですね。
やっぱり、雑草の生き方を知るところから始めなきゃいけないんですよね。
いけないなと思っています。
例えば、ちょっと前、いろいろと混乱したと思うんですけども、3年、4年、コロナ禍っていうのがありまして、新型コロナが出たときは、まずどんなものかわからないから、みんなすごく怖がってたと思うんですよね。
そうですね。
私も怖かった。
でも、結局どんどん研究が進展していって、見える化していって、どのように付き合っていくか。
どういったらいいのかっていうのが見えてきているっていう中で、皆さんも過ごし方が身についてきたりとか、生活様式を変えていったりとかいうような、要は共存というか付き合い方っていうものを多分皆さん持って生活してらっしゃると思うんですね。
それは農業技術で、いわゆる先ほどおっしゃられた雑草との付き合いにおいても、似たような考え方っていうのはやっぱりあるなって思ってます。
なるほど。
はい。
似たようなというと、雑草を一概に敵と見なさずに共存する方法があるということですか?
そうですね。
例えば、雑草の嫌な部分だけでまず先に申し上げると、先ほど一番問題なのは収穫量を減らしてしまう。
それ以外には収穫の邪魔をする、あとは虫が寄ってきている原因になるとか、あとはお米と混ざって品質が下がる、見た目が悪くなるとか、
異物が入るというので嫌になるわけですね。
これを何とか対処するために、お金や時間をかけるということで、これが結局経営的に大変だよねって。
それをほっといたら、今言った悪い部分がどんどん増えますよね。
完全なる敵になっちゃうわけですね。
そういうことになります。
はい。
雑草の対策ポイント
で、じゃあ雑草害とかね、病気とかも害虫の問題とかも共通する部分がある。
3つのポイントで整理することができるんですね。
1つは主因というもの。
主因。
はい。主因というのは主な因子ということですね。
主な因子。
まず雑草であれば、雑草の種がそもそもあるのかどうか、あるいはその雑草の種が多いのか少ないのか、そういったところが主なものということで主因というふうに捉えます。
その次に誘因って言って誘われる因子ですよね。
はい。
これに関して言いますと、その雑草が発芽だったり成長するのに好ましい環境であるかどうか、例えば水分がどうかとか、温度がどうかとか、光がどうかとか、そういう環境は整ってるかどうかってことによって発芽とか成長量っていうのは変わってきます。
最後に素因という部分なんですけれども、これは敵対する。
敵対すると言ったら変ですけれども。
一緒にやっていく。
稲と雑草との力関係。
要は稲が強ければ、稲がその強い分、雑草を稲が抑える。
稲が弱ってるような状況であれば、その分は雑草が逆に大きく強くなる。
要は我々も、例えば健康な時っていうのはなかなか風邪とか病気にはなりにくいんだけど、ちょっと疲れてたり睡眠不足が続いてて弱ってる時っていうのは結構罹患しやすい。
ウイルスに負けるわけですね。
っていうような。
そういう関係なんですね。
で、これが有機栽培の場合は、化学肥料を使う栽培の場合は農薬を使えるので、まずその主因そのものをたたけるわけなんですよね。
種とか発芽とかそういうとこ。
そうです。
ところが、農薬を使わない栽培はそれができないので。
そうか。全然違いますね。
はい。
そう聞くと。
そうすると、環境だったり、雑草が発生しやすい環境だったり。
うん。
そうすると、これ我々の生活習慣と同じで、稲の生活習慣をどう整えて予防でやっていくかっていう考え方になってくるんです。
なるほど。
だから雑草対策っていうと、雑草が出てからどう対処するかということではなくて、出る前に生活習慣として彼らが頑張らないような環境をどうしていったらいいんだろうっていうふうに考えていくと、
うん。
彼らの生き方、暮らし方を学んでいかないと付き合い方が分からないと。
なるほど。
稲の生活習慣と栽培環境
そういうことになる。
敵の手の内を知らないといけないわけですね。
そう、そうですね。
相手の。
ええ。
ああ。
そうしたらやっぱり付き合い方というか、仲良くはできないかもしれないけども、付き合う術はあるなと。
なるほど。
そうか。付き合い方か。人間も同じですね。嫌いな人はどうしてもいるけど。
そうそうそうそう。でも仕事は仕事としてやらなきゃいけないからね。
そうそうそうそう。
うまくストレスをかけないでやるにはどうしたらいいか工夫するってことですね。
そうですね。
作物も同じわけですね。
なんでやっぱりそうですね。例えば嫌いな人を拒絶してやったところで、仕事は円滑に進むわけではないんで。
そうですね。思い当たる節があるなあ。
まあ言うは優しいでね。なかなか口で言うのは簡単かもしれませんけど。
そうか。じゃあその朱印環境、あ、朱印じゃない。誘因か。種が落ちてるのはもうどうしようもないですよね。
そうですね。有機農業からすると。
じゃあその誘因の雑草などが発芽するとか、成長する環境を作らなくするには三木さんはどういう工夫をしてるんですか?
そうですね。まず稲自体はやっぱりいい苗を作らないと健康的ではないですから、まずいい苗を作るっていうのは大事です。
でもその苗は後々田んぼで田植えをされて、土の中に植えられるわけですよね。
はい。
だから言ったらもう稲はそこから動けないので、そこで生活していくしかないんですよ。
はい。
そしたらその土が稲が元気に育つような土になってないと、稲に向いた土になってるべきなんですよね。
なるほど。
で、あとでまた機会があればお話しますが、雑草の喜ぶ土の状態と稲が喜ぶ土の状態ってのは微妙に違うんですよ。
そうなんだ。
だから逆に言うと、稲が喜ぶ土の筋道をきちんとつけられれば。
うん。
って言うと、逆に言うと。
うん。
今言った収穫ですね。
はい。
その収穫してから田植えするまでが、稲が好むような土に変えていく、整えていくチャンスなんですよね。
じゃあ今の季節大事ってことですか。
そういうことになるんです。
うんうんうん。
へぇー。
はい。
で、あとはですね、もう少し突っ込んだ話をすると、化学肥料っていうのはすごく便利なもので、温度が低くても養分がちゃんと効くようになってるんですね。
ところが、有機肥料とかになってくると、あるいは土からの栄養っていうのは、温度がかからないと、微生物の働きによって栄養が出てくるもんですから、時間がかかるんですよね。
分解やらなんやら。
そう。
温度があったかくなってくれば、微生物が働くから、栄養がたくさん出てくる。
で、その時に稲を植えてやると、ぐいぐい元気に育っていく。
なるほど。
寒い時期に植えたら養分効かないし、稲も寒いから風邪ひいちゃって、なかなか大きくならないし。
うん。
なるほど。
そうすると、さっき言った素因という部分の、稲の抵抗力、その強い弱いの部分の、植える時期によっては弱さを出してしまう。
なるほど。
僕はよく公園先、こういう仕事させてもらってるんで、技術指導とか公園とか行く機会が多いんですけど、僕の中で伝えていることは、まずいい稲の好むような土にしましょう。
で、いい苗を作りましょう。
うん。
で、そのいい苗といい土がタイミングよく出会うタイミングで、植えましょうと。
うん。
うん。
それさえすれば、あとは稲が自立力で、ぐいぐい健康に育っていくから。
はい。
有機農法の難しさ
あとは人間がやれることっていうのは、水管理でちょっと生育を調整したりしながら、快適に育てるような環境を少しでも、雰囲気を作り出すっていうことぐらいしかできないので。
なるほど。
ええ。
じゃあ、有機農法は結構、なんというか、繊細ですね。
そうなんですよ。
だから、先週お話しした通り、家の土台がきちんとしているっていうのが、いわゆる生活習慣、田植えをするまでの生活習慣を整える。苗にしても土にしても。
で、その土台がきちんとできていれば、その上に何か浴槽技術っていって、雑草を抑える技術をやったときに効果的に働くんです。
ところが、今日の話の通り、そもそも稲が元気がない状態で、
うん。
草を抑えるような対策をしても、稲が弱ってるから、また雑草が盛り返すわけなんですよ。
ああ、そうなんだ。
それがね、よく起こってるイタチごっこみたいな話で。
ああ、なるほど。
なんで、多分、多くの方が認識されてると思うのは、稲作ってのは田植え頃になったら、さあ稲作スタートだ。
そうですね。よく、なんだ、兼業農家さんなんかで見かけるのは、もうゴールデンウィークじゃないと、家族、東京に行ったら家族が手伝いに来てくれないから、もう毎年ゴールデンウィークに必ず来てくれるんですよ。
うん。
家族植えるみたいな。結構行われてると思うんですけど、あれは有機農業ではうまくいかなそうですね。
そうですね。そうすると、ちょうどやっぱり今の時期から、土台部分をしっかり作って、田んぼを田んぼらしく、田んぼは平らにしたり、あぜをきちんと作ったり、で、土造りをちゃんとして、稲が好むような状態を迎えてから、田植えを迎えるっていうふうにしないと、もうそもそも破綻してしまうわけですね。
そうですよね。
しかも、なんだろう。
盛り返しがきかなそうですね。
盛り返しきかないんですよ。
話聞いてると。
そうですね。なんで、雑草対策技術っていうのは、結局出た草をどうしようかって、例えば除草機を使ったり、深水管理っていって、水を水深を深く張ることによって、草を出にくくしたり、米ぬか除草といって、有機物を田植え後にまいたりとかいうことでやるんですけど、それって結局、出てきた雑草を抑えるだけであって、でも稲が頑張らなかったら、結局また盛り返すんですよ。
対象療法じゃうまくいかない。
うまくいかないってことですね。
そうですね。
薬ぶち込んで。
そう。
人間の体と似てますね。
そうなんですよ。
土台の健康がしっかりしないと。
はい。
なるほど。やっぱ生物ってことですよね。
生き物なんですよね。
人間と一緒ですね。
そうですね。
そうか。
稲と雑草の割合の比較
うちのセンターでは、そういったところを気をつけながら、どんな成果を出してるかっていうと、ちょっと伝わりにくいかもしれないんですが、稲が大きくなる頃。
だいたい7月の中旬ぐらいなんですけど、この時期に雑草の、ごめんなさいね、50センチ枠ぐらいですね、50センチ四方の稲と雑草をまとめて抜くんですよ。
雑草を取らない場所を作って、雑草を取らないところに50センチの枠を当てて、その中の稲と雑草を回収して、それの乾燥重量を見るんですよ。
乾燥させるんですね。
そうですね。
うん。
昔試験で、稲がダメになる管理と、稲が良くなる管理を比較したときに、今のやり方で雑草と稲をサンプル、採取して、乾燥重量やると比率が出るんですよ。
あ、稲と雑草の。
そうそうそうそう。
その50、立方、50なんでしたっけ。
平方センチです。
平方センチの中の稲、乾燥した稲と雑草の割合。
うん。そうすると、まずい管理をした場合は、僕の新記録だと、雑草の重量が8割。
え、そんなに。
稲が2割。
7月の上旬。
上旬で、上中旬で。
米取れないぐらいですね。
取れないですね。
うん。
実際それは収穫してみると、100キロぐらいしか取れないですよ。
わー。
江戸時代より全然ダメって。
やばい。
うん。で、良い管理をしてあげると、ここ最近でやってるのは、雑草が10%未満ですね。
おお、すごい。
で、稲は雑草を取らなくても9割以上になってるわけですよ。
すごいすごい。
そこは生活習慣を整えてるっていうだけで、それだけ逆転する。
おお。
で、その技術を。
まあ、我々は普及しているっていうことになります。
おお、かっこいい。すごい。その技術、来週伺っていいですかね。
あ、はい。
じゃあ、今週はここまでで。ありがとうございました。
はい、ありがとうございました。
このコーナーは、公益財団法人自然農法国際研究開発センターの提供でお送りしました。