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2025-08-11 03:03

#207【青空文庫】茶話・父の遺産

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薄田泣菫「茶話・父の遺産」

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Susukida Kyukin title:Father's legacy

サマリー

このエピソードは、ロックフェラーの身なりと父の影響についての会話を通じて、遺産や家族の価値観を探求しています。

ロックフェラーの身なり
茶話 ススキダ・キュウキン
父の遺産。アメリカの大物持ちロックフェラーが、まだ年盛りの頃。
どこへ出かけるにも、みすぼらしい服を着て平気でいるので、仲のいい友達は気が気でなかった。
友達はいずれも、おめかしやそろいと着ているので、ある日のこと、我慢がしきれないでロックフェラーに注意をした。
5日中から一度は、ゆうゆうと思っていたが、君の身なりは、あまりじゃないかね。
ロックフェラーは、腑に落ちなさそうに、友達の顔を見た。 どういう意味なんだね。僕の身なりが、あまりだというのは。
友達は、情けなさそうな顔をした。 ロックフェラーが、生まれて一度も新薬全書を読まなかったと白状したところで、まさかそんな表情は、すまいと思われるほどの顔だ。
何を言うんだか。 ちょっと見たら、わかりそうなものじゃないか。
僕たちと比べてみたまえ。 君の身なりは、ずいぶんみすぼらしいじゃないか。
ロックフェラーは、やっと気がついたように、友達の身なりと、自分のとを比べてみた。
別に、みすぼらしくもないじゃないか。 ただ君たちのが、きれいすぎるんだよ。
あって。 と友達は、じれったそうに言った。
君は、われわれの仲間で、いちばん金持ちなんじゃないか。 そうかもしれんな。
と、ふごうは変わらず平気な顔をしていった。 それにしたって、僕は別にみすぼらしくも思わんが。
みすぼらしいよ。なんといったってみすぼらしいよ。 友達はやけになってわめいた。
第一、君の親父のことを考えてみたまえ。 親父さんは、どこへ出るにも、ちゃんとした身なりをしていたよ。
そうだったかな。 と、ロックフェラーは白い歯を出して笑い出した。
だが君、 今僕の着こんでるのは、その親父の服なんだよ。
親よずりの服だったら、ロックフェラーもどきに着られもしようが、 親よずりのハゲ頭だったら、どうしたものだろう。
今の児玉官庁などはさすがに高校もので、 あの年でかずらも着ないでじっと我慢している。
03:03

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