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2025-09-22 03:09

#213【青空文庫】図書館幻想

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宮沢賢治「図書館幻想」

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Miyazawa Kenji title :Library Fantasy

サマリー

宮沢賢治の「図書館幻想」では、灰色の広い部屋で出会った不思議な存在である「だるげ」との会話が展開され、彼が西の空を見つめながら歌う幻想的な風景が描かれています。

幻想的な図書館の出会い
図書館幻想 宮沢賢治
俺はやっとのことで、10階の床を踏んで汗を拭った。
そこの天井は途方もなく高かった。
全体、その天井や壁が灰色の陰影だけでできているのか、
冷たい漆喰で固め上げられているのか、わからなかった。
この大きな部屋に、だるげがいるんだ。今度こそ会えるんだ。と俺は考えて、ちょっと胸のどこかが熱くなったか、溶けたかのような気がした。
高さ2畳ばかりの大きな扉が半分開いていた。俺はスルリと入っていった。
部屋の中はガランとして冷たく、背の低いだるげが手を額にかざして、そこの大きな窓から西の空をじっと眺めていた。
だるげは灰色で、腰にはガラスの実を厚くまとっていた。そして、じっと動かなかった。
窓の向こうには、くしゃくしゃにちじれた雲が、いたいたしく白く光っていた。
だるげは、にわかに冷たい透き通った声で、高く歌い出した。
西空のちじれ羊から、俺の数形は照り返され。
天の海と窓の日覆い、俺の数形は照り返され。
俺は空の向こうにある氷河の棒を持っていた。
だるげはまたじっと額に手をかざしたまま、動かなかった。
俺はこらえかねて、ひと足そっちへ進んで叫んだ。
白亜系の砂岩の車総理について、
だるげは振り向いて、冷ややかに笑った。
03:09

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