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2023-01-16 03:51

#73【青空文庫】お鍋とお皿とカーテン

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村山壽子「お鍋とお皿とカーテン」

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Murayama Kazuko titile:Pot, plate and curtain

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お鍋とお皿とカーテン
村山和子、これは先生が一年生にしてくださったお話です。
あるお家のお台所に、お鍋とお皿とカーテンが暮らしていました。
ところが、お鍋もお皿もカーテンも、毎日同じ仕事をしているのが嫌になって、台所から逃げ出すことにしました。
お鍋とお皿は、先に出口のところへ行きましたが、待っても待ってもカーテンが来ません。
早く来ないと、二人で行ってしまうわよ。
お鍋とお皿は、イライラしていました。
だって私、いくら足で踏ん張っても、頭が鉄の棒にくっついていて離れないのよ。
とカーテンは泣きながら、頭を鉄の棒から外そうとしました。
お鍋とお皿もカーテンの裾を持って、うんこらさ、うんこらさと引っ張りましたが、だめです。
そこで、お鍋とお皿のどっちかがカーテンをよじ登って行って、鉄の棒を外すことになりました。
お鍋とお皿がジャンケンをして、負けたほうが登って行くことにしました。
お鍋が負けました。
お皿は下で、大きな口をあけて見物していました。
負けたお鍋は、カーテンの脇腹をよじ登りました。
ところが、お鍋がよじ登るにつれて、カーテンは横腹がくすぐったくなりました。
そしてとうとう我慢ができなくなって、
くすぐったい!
と言って、お鍋をいきなりふりとばしました。
お鍋は、からんころん、からんころん、ころころ、ころころ、と台所の向うの端までころがって行きました。
そのかっこうがとてもおかしかったので、カーテンは、と大笑いしました。
お皿は、私だったらこなごなにこわれるところだったのに、
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まあ、よかった、と胸をなでおろしました。
お鍋はもともとたいへん恥かしがり屋さんでしたから、
カーテンに笑われたので顔をまっ赤にして、
戸棚の中へかけこんだ霧、
いくらカーテンとお皿が呼んでも出てきません。
こんなわけで、
お鍋とお皿をカーテンは逃げ出さないで、
いまもお台所で役に立っています。
もし逃げ出していたら、
くずやさんにひろわれて、
かなしい身の上になっていたでしょう。
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