00:00
中川 浩孝
コミュニケーション力を究めるゴールデン・トライアングル。 仕事でコミュニケーションを扱う3人が、これまでの経験や最新の話題を語りながら、コミュニケーションとは何かを一緒に考えていくポッドキャストです。
田中 愼一
みなさんこんにちは。コミュニケーションを極めると自分が見えてくる、世界が見えてくる。 コミュニケーションの世界に携わってはや40年以上。コミュニケーション命、シン・田中こと田中愼一です。よろしくお願いします。
高木 恵子
SEからPRコミュニケーション業界に転職してはや四半世紀以上、高木恵子です。
中川 浩孝
外資系企業でマーケティングを経験してきたアメリカ在住中川浩孝です。
石破首相の就任と国民の期待
田中 愼一
今、みなさんとちょっと事前に打ち合わせたところ、やはり石破総理っていうか、まだ新任総理ですけども、彼の動きっていうところが一つのテーマなのかなと。
彼の場合は、総理になる前、選ばれる前での言動と、総理になってからの言動が一致していないというところで、非常に国民的な失望感っていうもの。
期待があっただけにそれが全部失望に変わっていくっていう現象、事象が先週までの事象だったのかなと。
ただ、先週の末に基本的には公認問題ということで、基本条件はあるにしても、
いわゆる不正を基本的に働いた議員に関しては公認しないという判断をしたっていう。
あれは結構マスコミ的にも行動が急激に変化したなと。
今までは言行不一致っていうところで、失望だったっていうのが、え、何、公認しないんだって感じで。
それに伴い自民党の中でもものすごい反発が出てきてる。特に安倍派と言われてる方々が。
ところが一方で、いやいやって支持する自民党員の動きもすごい活発化してきてるんですよね。
これが非常に面白い現象だなっていうのは、似たような現象を過去に僕は何回か実体験してるんですね。
実体験っていうのは、現場でそれを実際に向き合っていたっていう実体験ですね。
だから人から聞いた話とかそういうんじゃなくて、自分自身が本当に実体験したっていうのがあって、
そこが一つちょっと面白くて、みなさんと少しシェアして、
みなさんの意見をいろいろと聞きたいなっていう感じが今日のテーマかなって今考えてます。
ヒロちゃんはアメリカに在住でいらっしゃるんで、
ここ最近の数日間のマスコミの動きとか、石破さんへの評価っていうのは、
ある意味アメリカから一歩下がって見てるわけなんですけども、
我々実際それを経験しているけいこさんや僕の場合、
やっぱりどうですかけいこさん。
今僕はこの現象っていうのは、今見えてる現象っていうのは、
2005年の郵政民営化選挙、あるいはもっと極端に言うと小泉さんが総理になったとき、
そこあたりで経験した現象にすごく似てるなっていうのを感じるんですね。
けいこさんどう感じられました。
高木 恵子
まあその現象、同じ現象かどうかはまだ一つの事象でしか
今石破さんが仕掛けてないからなんともわかんないんですけど、
最初の本当就任演説のときは、
公認するって一応発言したにもかかわらず、
本当数日間で非公認しますよって言ったわけですよね。
なんかこれってすごいだから私は作戦、
本当石破さんの戦略みたいにすごい感じて、
やっぱり就任演説のときは、
自民党内のいろんな声、
やっぱり選んでくれた彼らの顔を立つっていうのも重要で、
彼らの言いなりじゃないけど、彼らのアドバイスに従って多分、
こう話をしたんだと思うんですよね。
ただ当然のように国民やメディアから、
いろんなバッシングに行くほどの、
いろんな反発が起きて、ほらほら見てごらんよ。
世の中国民はこうだよって言うのを見せるのがすごい、
自民党内を説得する私はすごい材料になるっていうのをわかった上で、
何回石破さんはそれをやったのかなと思って。
で結局ほらほらこんななったら選挙に勝てないよっていう、
一言がもう自民党内を説得する多分一番の材料。
でもそこにはすごい賭けがありますよね。
だって自分のレピュテーションも下がるわけだし、
でもどうなるね、どう転がるかわからないのをやってのけて、
でもほらやっぱこうじゃない。だからこうしなきゃいけないよって言って、
もう本当なんか一晩で考えというか、
全部コロッと変えるっていうこの潔さっていうのは、
もうなんか全部ちょっと石破さんの私は戦略かなっていうふうに私は、
まあテレビ越しのニュースですが、
私はね田中さんはね直接そばで小泉政権の時に見たって感じたっておっしゃってるけど、
私はテレビから見ててもなんかそういう今回は石破さんの戦略的ななんかすごい動きなのかな、
これはみたいな感じで見てました。
田中 愼一
確かに君子豹変すってよく言いますよね。
あそこまで手のひら返しで言う人っていうのは、
かなりある意味サプライズっていうか。
高木 恵子
すごい。
田中 愼一
あれ、ヒロちゃんはどうですか?
中川 浩孝
私はごめんなさい、全然日本のニュース追ってなかったので、
アメリカのニュースではもちろんですが全く何も報道されていなくて、
日本の首相変わったくらいのニュースさえ私がニュースを見てる感じでは、
てかそんな毎日ちゃんとニュース見てるわけじゃないんですけど、
見かけなかったので。
高木 恵子
そうなんだ。
中川 浩孝
もうなんか全然知らないと思います。
なので何が起こってるか全くわかってないと思います。
田中 愼一
やっぱり日本っていうのは、実質的にはすごくアメリカと一番近いと思うんだけども、いろいろな意味で。
やはりアメリカ人の日本に対する関心度合いっていうか、
っていうのはやはりすごい、あの、
中川 浩孝
それはね、日本だけじゃないですよ。
アメリカは外国に対してあんまり興味がない国で、
内政であったりとか、今特にやっぱり大統領選中ってこともありますし、
あと今ハリケーンがねちょっとフロリダに近づいていたりとかするので、
今その辺のニュース、前回のハリケーンがすごく被害が大きかったので、
そういったニュースもたくさん大きいニュースがあるので、
今ちょっと外の世界について、もちろんイスラエルのことはそれなりに報道されるんですけれども、
それはイスラエルとアメリカとの関係が非常に強いっていうのもあるので、
それ以外のニュースは本当に今下火になっているというか、
あまり聞こえてこないっていう感じはあると思います。
田中 愼一
だから日本では騒いでも世界は騒がないっていう。
大統領選はアメリカでも騒ぐけど世界も騒ぐっていうね。
中川 浩孝
そうですね。世界のいろいろな影響を与えますからね。
田中 愼一
アメリカ以外の国のいわゆるみんなが経験している悲哀というか、
だからやっぱりまだ世界はアメリカ中心で動いてるっていう実態だと思うんですね。
実態でもあるし、アメリカ人はそう思ってると思うんだけど。
だからそこあたりは、同じトップを選ぶ選挙に対する関心度っていうのは違うんでしょうね。
今恵子さんが言ったいくつかのところでポイントで、
手のひら返しじゃないですけども、
君子豹変すっていうのは基本的にはフレキシビリティ。
君子はフレキシビリティだよってことを多分言うための表現だと思うんですかね、君子豹変す。
ただ重要なのは、もし仮にあれが偶然ではなく、
ひとつの必然としてその戦略が石破さんにあったとするならば、
多分あの手のひら返しっていうのは、つまり公認しないっていうカードを切ったっていうのは、
よほどの覚悟がないと、打てる手じゃないと思うんですね。
僕はさっきちょっと実際に似たような事象を経験したって言ったんですが、
過去の政治状況との比較
田中 愼一
これは僕が2003年から2005年かな、
国政選挙で当時の民主党のお手伝いをさせていただいたんですけども、
その時の敵がすべて小泉純一郎さんなんです。
彼が打つ手を、こっちは直に体で感じるっていうか、え?っていう。
その中でやっぱり彼のすごかったところっていうのは、サプライズを作る。
サプライズを、え?って思うと、突然北朝鮮に飛んだりですね。
とにかく、え?っていう。
もともと小泉純一郎さんは、もともと総理大臣になるとは誰も思わなかった。
自民党の変人と言われた人が、突然総理になっちゃったわけですね。
これ自身がサプライズで、何と言っても、
総理になるための選挙演説の中で自民党をぶっ壊すって言葉を言ったんですよね。
これはたぶん最初で最後で、誰もそれ以降、自分が所属する組織をぶっ壊すって言い切って、
当選した人っていないんですよ。
彼はやはりそういう意味で、サプライズというものを手のひら返しをやってる。
でも、その当時は思わなかったんですけど、
数年後に、選挙にもう携わらなくなってから、一度お会いする機会があって、
そのときにいろいろ話を聞いて感じたことは、
あの人は何が一番すごいかというと、覚悟を持ってるんですね。
だから彼は、手のひら返しは一見あれって思って結構かっこよくて、
みんなびっくりするんだけども、
手のひら返しができるかできないかってリーダーの資質の問題で、
一番の資質は直感的に覚悟を持てるか持てないかっていう人で、
覚悟を持っていないリーダーっていうのは、やっぱり動きに出てきちゃうんですよね。
だから手のひら返しみたいな、今回みたいなやり方っていうのは、
偶然であるならば、つまり戦略があってやったわけじゃないのならば、
それはあの人の幸運なんでしょうね。
そういう運があるっていうことで、見ていいと思うんだけど、
問題は手のひら返しした後、それをどれだけレバレッジできるかってことですね。
これからがたぶん石破総理の腕の見せ所っていう、
これからどういう手を次から次打っていくか。
たとえば似たような事象が小泉さんのときにあったのは、
2005年の郵政選挙っていうところで、郵政を民営化するぞっていう話があって、
それに対してほぼ自民党が割れちゃったんですよね。
ほぼどっちかというと反対派のほうが多かったと思いますけども、自民党の中で。
あえて郵政民営化っていう旗印を掲げることによって、
自民党を分断するんですよ、小泉さんは。
で、面白いもんで、これは昔から彼が使う方法なんですけども、
いわゆる敵を大きくすればするほどですね、味方が増えるっていう。
つまり、反対勢力がわーってほざけばほざくほど、
実はそうじゃないだろっていう方の自民党員の声が高くなるんですよ。
小泉さんのやり方っていうのは、3年間向き合ってやったんですけども、敵としてね。
彼のやり方っていうのは、彼の議論しているポイントを全部見るとですね、
ギリギリにフィフティフィフティのとこで勝負するんですよ。
つまり、半分反対、半分賛成。
で、そこで勝負をかけるんです、あの人は。
で、あえて敵を強くすることによって自分の味方を強くするっていう。
で、五分五分のとこで必ず勝負する。
だから彼はいろんなトピックがあるんだけども、
そういうふうに世間を騒がせるような、サプライズさせるような状況を作るっていうことが非常に強い。
だから自民党総裁になったときも自民党ぶっ壊すって感じで、
ほとんどの自民党員がえぇーって言ったのに対してでも総理になっちゃったでしょ。
郵政民営化もえぇーってやりながら、
基本的には味方のほうを強くするだけじゃなくて、
抵抗勢力って言って色を塗るわけですね。
だからその色を塗った抵抗勢力ってのは、
別に自民党の反対、郵政民営化反対の議員たちだけじゃなく、
民主党も含めて一緒くたにしちゃうんですよ。
これが抵抗勢力で日本をダメにしてるっていう形で、
民主党は攻撃しないんですよね。
とにかく抵抗勢力っていうところを攻撃する。
その抵抗勢力っていうのは自民党も含まれる。
こういうやり方でやって、その後基本的には刺客を送り込むんですよね。
反対した議員に対して刺客を送り込んで、全員一つずつ落としていくっていう。
今石破さんっていうのは、基本的には非常にその時と似てて、
今回公認しないということで、その大半がみんな安倍派ですよね。
もし彼に小泉純一郎さん的なやり方をするんだったら、
次の選挙で落とすための刺客を送り込む。
そこまで僕は過激に彼はやらないと思うけども。
でもそのぐらい、今の公認は許さないって言って作り上げたモメンタムっていうのは、
放っておくとなくなっちゃうんです。
高木 恵子
そうですよね。
田中 愼一
次の一手を打たないと。
その次の一手もサプライズじゃなきゃいけないからある意味。
要するに、そんなことまでやるの?っていうぐらいの。
それが刺客を送ることなのか、あるいは別の手を打つのかわからないけども、
そういう発想を持って今回の公認を認めなかったと言うのであれば、
これはかなり面白い事象になってくるし。
そうじゃなくて偶然であれば、たぶんそのモメンタムはすぐ消えていくと思います。
高木 恵子
そうですね。
中川 浩孝
でもね、あともう3週間くらいしかないんですよね、選挙まで。
ということは、刺客候補までは選べないですよね、きっと3週間くらいしかないですよね。
世論との対峙
田中 愼一
たぶん時間的にないでしょう。
小泉純一郎さんはもともと半年かけて、
武部幹事長と2人だけで、幹事長はその当時、
だけで全部鉛筆を塗り塗りしながらやってた。
高木 恵子
すごい。
田中 愼一
だから誰にもそれを明かしてないんですよ。
中川 浩孝
それはすごいですね。
田中 愼一
だからそこまで考えてないとは思うけども、ちょっと要注目なんで、
次回のポッドキャスティングでもそこあたり引き続き面白いかもしれないですね。
中川 浩孝
確かにもう選挙戦もうすぐ始まっちゃいますもんね。
田中 愼一
小泉さんと同じ状況に石破さんは置かれてて、
石破さんにとっては派閥はないし、
もともと今じゃ派閥に頼れないし、あったとしても。
いずれにしても、彼の唯一の勝ち馬になるための味方につけなきゃいけないのは世間しかないんです。
世論以外の何者もなくて、小泉さんは基本的には派閥とは本当に無関係な人で、
一匹狼だったのが、なんで総理になれたかというと、
初めて自民党総裁選で世論を味方につけて勝ったんですね。
派閥をぶっ壊してね、逆にね、形成して。
だから今すごく石破さんに似たような状況で、
あの人はやはり世論を味方につけないと絶対やっていけない。
だからそうなったときに、実は覚悟しなきゃいけなくて、
自民党の中で支持を得るのか、それとも世間の支持を得るのか。
高木 恵子
すごいな。
田中 愼一
目の前にいるのは自民党員ですからね。
自民党の連中が陳情しに来てるに決まってるんですよ。
目の前にいろいろな形でやられてる中で、
世間に対してシフトできるかどうかっていうのが、そこはもう覚悟の付け次第だけど。
ただ小泉さん、もう一つの共通点は、ある意味石破さんも一匹狼でしょ。
だから覚悟しやすいはずなんですよ。
派閥とかグループとかを持っていると、
先ほど恵子さんが言ってた呪縛?
選挙で応援してもらった人たちに対する配慮っていうのは当然出てくるから、
そこで覚悟できないんですよ。
だからある程度、たぶん初めの数週間、1週間、2週間ぐらい、
言行不一致で責められていたっていうのは、
恵子さんが言ったとおり、やっぱり選挙でお世話になった人たちのことでなかなか覚悟がつかなかった。
っていう事象として解釈すると、なるほどなって分かりますよね。
高木 恵子
そこが事象なのか、それこそも戦略なのかね。
そう、だから結局言葉で言っても説得って当然できないから、
もう何て言うんですか、世論からバーっとこうなんだなんだって、
当然最初は自分自身に降りかかるわけじゃないですか。
言ってることが全然違うだろう、お前なんだって。
それはもう明らかに想像つくじゃないですか、自分が責められるって。
それすごいリスクですよね。
でもバーって言われて、やっぱり世論こんなになっちゃったじゃん。
君たちが言ったことを僕は言ったとおりにやったのに、
これじゃ選挙勝てないよねって。
こうなったらもう当然自民党内はもうね、
田中 愼一
だから逆に今、自民党内の反発がもっと強くなればいいんですよ。
高木 恵子
どうなるんだろうね、どうなるんだろう。
田中 愼一
要するに安倍派はもう完全反対に入ってるんで、
今国民から見えてるのは汚い自民党なんですよ。
それが石破を救うんです。
中川 浩孝
まさに小泉さんのときですよね、ほんとそうですね。
田中 愼一
とにかく自民党がやっぱりやつらね、自分たちのことしか考えてないんだ。
不正を働いた連中が、公認されないって言ってみんな反対してる。
要するに声を出し始めてるから、もっと彼らに石破を責めてほしいんですよ、石破としては。
つまりそれを見ている国民の視野からすると、
旧安倍派を中心として反対勢力が声を出せば出すほど、
石破を批判するほど、
国民の側からすると、石破ってなるわけですよ。
しかも今、いくつかの大物自民党議員、不正に関係なかった大物自民党議員から、
どんどん声が出てますよ、逆に支持の。
そうすると、もしかしたら国民の視点から見ると、
石場だったら自民党を変えられるかもしれないなっていうね。
ここまでハラスメントを起こしながらも。
そのイメージが出来上がるといいんですが、これもっと徹底しないとダメで、
もっと安倍派が怒るような政策を打ち込んでいって、
もっとより反石破を大きく演出させるっていうか、国民に見せるっていう。
ここが次の一手だと思います。
ここを打たないとね、絶対にもったいない、すごく。
だからそうなると、参謀がついてるのかついてないのかが。
あとは、その参謀がついてるかどうかと、もう一つは覚悟できるかどうか。
だって自民党員ですからね。
そこをスパッと切れる小泉さんっての、あれ一匹狼だったから変な小泉だからできたんですよ、覚悟が。
選挙戦略の考察
田中 愼一
でもある程度、変人石破っていう側面もあるわけで、今までずっとマイノリティでやってきたわけだから。
そこで覚悟してもらうっていうのは、だから参謀と覚悟、これ二つ絶対重要でしょうね。
中川 浩孝
石場さんの政策って、他の今までの自民党の政策と大きく違うところってあるんですか?
田中 愼一
あんまりないと思いますね。
中川 浩孝
そうなんですよね。そこがでも、小泉さんのときは郵政みたいな非常にわかりやすい一つのポイントがあったっていうのも、
国民の興味を引くっていう意味がすごく良かったと思うんですけど、
今回はもちろん綺麗な政治というか、政治を一回汚職を見逃さないとか、ちゃんと綺麗にするっていうのがもちろんあるとは思うんですけど、
その先に何があるのかっていうのがもう少しないと、私は弱いというか、それだけじゃやっぱり綺麗になったから、じゃあ何するのっていうのがあると思うので、
そこまでセットになっているといいなぁとは思っているんですよね。
田中 愼一
だからなかなか政策っていうのは、小泉さんの場合はそれを非常にうまく使って、
中川 浩孝
ちょうどそうなんですよ。いいものがあったんですよね。
田中 愼一
いいものを見つけたって言ったほうがいいかもしれないですね。
あの頃正直言って、本当の国民の視点から言うと、やっぱり年金とか子育てっていうのがもっと深刻な問題だったんですよ。郵政民営化よりも。
でもいかにも郵政民営化っていうのが、取り上げることが一番盛り上がる。
なぜかというと、盛り上がるって意味は、決してそれが本当に国民の課題を解決する政策ではなくても、
そこに巨大な敵が立ち上がって、その政策を潰すという構図というかイメージというか、
これを作り上げるのが小泉さんの強さですね。
中川 浩孝
だから聖域なき構造改革って、まさにとってもわかりやすいキャッチフレーズがあったじゃないですか。
田中 愼一
構造改革というか、郵政民営化をやっただけで、日本の構造改革ができないんですよ。
中川 浩孝
でもその一つのシンボルなんですよね。
田中 愼一
シンボル化させちゃったんですね、彼のすごさは。
そのために彼がやったことは、敵対勢力を強くしたんですよ。
これが、いわゆる抵抗勢力と言われてる連中が国民の敵ですよと。
郵政民営化をするかしないかが、まさに国民の敵に対して、
日本が戦えるのか潰せるのかという瀬戸際ですよと。
フィフティフィフティですよと。
このままだと日本は抵抗勢力にやられてしまいますよという、
このイマジネーションというか、これを訴え続ける彼の得意な非言語発信で。
しかも対話はさせない。
いわゆる党首間の対話をするとボロが出ちゃうんで対話ができない。
だからもうそれを全部断って、
全部一方的な選挙演説のシーンしか与えないんですよ、マスコミに。
そうするとマスコミはしょうがなくて、選挙演説のシーンしか放映しないわけですね。
そうするとやっぱり彼の強みである発信力が生きて、
国民の中にどんどんどんどん教えて、
あそこがやっぱり悪いのは自民党と民主党の抵抗勢力なんだ。
これ潰すには郵政民主化しかないんだ。これがリトマス紙なんだ。
これを潰せるか潰せないかが日本の将来に大きく禍根を残すんだっていうところまで持って行っちゃった。
小泉首相の強み
田中 愼一
魔術師的な、こんなふうに言うと怒られちゃう。
中川 浩孝
でもタイミング的にも最高に良かったのは、発信側のほうが強かったんですよね、当時って。
今みたいなソーシャルがまだあそこまでじゃなくて。
メルマガとか始めたじゃないですか、小泉さんが。
もう一方的に発信だけするっていう。
すごいタイミングが最高に良い時期だったんだろうなっていうふうに思ったりはしますね、やっぱり。
田中 愼一
あそこはやっぱり小泉さんの天才性と、あと少数だけど参謀がいたっていうことでしょうね。
特にマスコミ対応は、何だっけ、秘書をやってた何とかさんがいてですね。
彼は本当にメディアリレーションのプロというかね。
中川 浩孝
ああそうなんですね、そういう人もいたんですね。
田中 愼一
彼はもうずっと昔から小泉さんの側近として、秘書として、飯島さんだ、飯島さん。
飯島さんがいて、ここが完全にメディアリレーションを牛耳ってたっていうか、うまく。
例えば実際に、僕なんか間違いなく仕込んだと思うんだけども、
郵政民営化を問う議会の投票が間近になって、
基本的にはですね、どこだったかな、週刊誌2誌ぐらいに、
もし今解散したら自民党大敗北っていう特集が出ちゃったんですよ。
週刊誌、文春じゃなかった気がするな。
なんかねそれが2本ぐらい出ちゃって特集で。
週刊誌って結構政治家の方々影響を受けるんですね。
高木 恵子
ああそうそうそうですね。
田中 愼一
で一挙にですね、これ今解散したらやばいことになるぞと。
そういう雰囲気を自民党の中で作り、
で一方、民主党のほうは、これ解散すれば勝てるぞという意識が。
僕は民主党側にいたからよくわかるんだけども、
なんかね高揚感が出てきて、えーって思ってね。
でそこをなんでそんな記事が出たのかなっていうのは非常に不思議でよくわからなかったんだけども。
結局今から解釈するとですね、小泉さんは解散したかったんですよ。
だってもともと準備してるんだもん。刺客まで。
だからたぶん間違いなくあの人の想定では、
衆院で否決されると思ったんですね、郵政民営化が。
否決されてそれを機に一挙に解散に持っていくっていう。
だからあの人は2005年に勝負をかけてきたんでしょうね。
確かに民主党側にいると、あの人の支持率ってどんどん下がってるんですよ。
だから2年ぐらいあると間違いなく支持率はもうなくなるっていう。
という計算で、2006年に選挙をしようっていうのが民主党側の考え方で。
小泉さんのほうは、それじゃあ自分にとって不利だっていうことで、
もっと早く、つまり2005年に解散するっていう戦略だったと思うんですね。
基本的に小泉陣営のほうは、参謀強化を2年ぐらい前からやっていて、
それは2003年で負けたんですね。
いわゆる議席数を大幅に民主党が増やして、自民が大幅に減らした時期があって。
そのときに次の参院選で、これも負けるんですけどね、自民党のほうが。
そのときにちょうど世耕さんが衆院議員で受かるわけですね。
世耕さんはやっぱりメディアかなりプロですから、もともといたところで広報課長かなんかやってたはずなんで。
彼が参加してから、参謀部隊をだいぶ強化してきたっていうことで。
我々が一番初めてだったのが、PR会社を採用して体制を組み始めたっていうのは知ってたんで。
だから標的はたぶん2005年のときをもう合わせてたんでしょうね、解散っていう。
だから一番いいシナリオはたぶん、衆院議員で郵政民営化の票決があって、一挙に否決されるっていう。
なぜかというと抵抗勢力がいますからね、自民党内に。
だから当然否決に動くわけですよ、郵政民営化っていうのは。
否決に動いて、実際に否決されると思ったんだけども、通っちゃったんですね。
え?っていう話になっちゃって。
あのとき僕テレビ見てたんだけど、国会で否決されなかった通っちゃったっていうときの小泉さんの苦笑いが今でも印象に残ってる。
あれはその後お会いしたときに、あの人にそこの部分聞いたけど返事してくれなかったんだけど、笑ってたんですね。
参院に持って行っちゃったら通過しちゃうじゃんかと。
参院はその頃野党の方がまだ結構強かったと思ってたんですね。
結局参院で否決されたんですよ。
逆に民主党側からすると、民主党の議員が3人か4人賛成すればね、通しちゃったわけですよ。
通っちゃったら解散する理由がなくなるんですよ。
参院で通らなかったから解散っていうのもおかしな筋で、衆院は筋が通るんですよ。
参院は筋が通らないんだと僕は思ってたんです。
ところが解散しちゃったんですね、小泉さん勝手に。
まあもともと解散権は持ってるんだろうけども。
一挙に2005年で勝負が来て、その頃やっぱり向こうは準備してたもんだから、
一斉に選挙に突入すれば、
自民党内の対立と世論の影響
田中 愼一
刺客を全員投入しちゃって、一人一人に刺客を当てていくわけですよね。
それがどんどんどんどんなって、ほとんどテレビジャックっていうか、
もう自民党の話しか出てこないんですよ、その刺客ストーリーで。
だから本来はどんな選挙でも、今回もそうですけど、
マスコミは一応良識があって、フィフティフィフティに、野党50%。
野党というよりももっと野党に厚いんですけどね。
時間を与えて放映するんだけども。
こと自民党の中が2分しあったために、
ほとんどの映像が抵抗勢力の自民党のシーンと、そこに刺客を向けられた自民党議員ということで、
ほぼ7割ぐらいのテレビのカバレッジを、自民党絡みが全部抑えちゃうわけですよ。
民主党は脇に置けられちゃって、
基本的に自民党の中でのどっちが勝つかっていう、抵抗勢力か、それともそうじゃないのかっていう戦いを面白がっちゃって。
そういう報道ばっかりがあったんで、完全に自民党一色になっちゃった。
まさにそのときにSNSみたいなのはそれほどなかった時期に、
一方的にしかもテレビが一斉に流したっていうのは、やっぱりさすがというか、
それを演出した小泉さんの戦略っていうのは、痛いほどね。
こっちはそこに向かって向き合ったんだけど、結局勢いっていうのがあって。
やっぱり世論の勢いってのはとてつもなく怖いもんですね。
ザーッと流されて。一挙に敗北するわけですね。
だからあの経験をすると、小泉純一郎さんの参謀がしっかりしてたっていうことと、
我々が力に至らなかったこともあるんだけども。
あとはやはり小泉さん自身が各シーンシーンでサプライズを起こすっていうのは、
決して簡単な話じゃなくて、覚悟しないとサプライズが起こらないんですよね。
だからその覚悟をしたっていう形で、いろいろ学びのあった3年間でしたけどね。
そういうことを考えると、今回の小泉さんの今置かれてるシチュエーションと非常に類似できてるところがあるんで。
たぶん小泉純一郎さんだったら、ほくそえんでるっていうかね、出た出たって感じになるんだろうけど。
でもさっきみなさん指摘したように、準備がやっぱり重要なんで。
どこまで準備できてるか。だから準備、参謀、覚悟。
これが、やっぱり世論を味方につけるんであれば、そういうところを視点に置くっていうのが重要なんでしょうね。
でも今回の石破さんは勉強するに値する事象で、これちゃんと知っておくと、
これから世論を味方につけるのは別に政治家だけじゃないんでね。
企業もこれから社会貢献ということを全面的に打ち出していかなきゃいけない中で、
世論の支持っていうのはマストなんですよ。
だから政治の世界だけじゃなくて、あらゆる組織あらゆるものがですね、
やっぱり世論の支持を得るっていうことを考える。
世論の支持を得るための力学っていうのはそれなりにもいろいろあるんですね。
石破氏と今後の方向性
田中 愼一
やっぱりそういうものを世の中のリーダーの人たちは認識すべきですね。
つまり世論っていうものが今までのステークホルダー。
今までステークホルダーって、もともとお客様第一主義だった日本の企業が、
お客様と社員ですね、第一主義だった人たちが、
だんだんある時期、投資家に非常にフォーカスを当てるようになって、
その段階では三つのステークホルダーを意識してたんだろうけども、
今やそれ以上のステークホルダー、360度で考えなきゃいけないから、
そのステークホルダーの仲間に、実は突然世間という、つまり世論というのが
もはやステークホルダー化してるわけですよね。
企業にとっては。だからそこの支持をどう得るかって、これからやはりすごくね、
興味ありますね。そういうところをどうか。
だから今回の石破さんのケースっていうのは、やっぱりじっくり見て、
1週間後にまたどういう動きになってるか、ちょっとまた議論したいですね。
中川 浩孝
そうですね。でもまだまだ刻々と変わっていくというか。
田中 愼一
今は変わっていくっていうか、変わっていってほしいですね。
そこしか生き残るのはいけないと思うな。
高木 恵子
彼が何をするか。
このまま何をするかですよね、本当にね。
田中 愼一
変に誰かさんの支持を得たいっていうことを考えると、世間の支持は失いますから。
中川 浩孝
そうですね。
田中 愼一
だから誰に対してメッセージを出すのかっていうのを、
だから今のところ少なくとも石破さんは世間に対してメッセージを出したわけですよ。
自民党内では反発を食う。
でもあれは意図的に反発を食うように仕掛けたんだったら、それは非常に重要だし、
それ自身が国民に対する、世間に対するメッセージですから。
高木 恵子
そう、そう思いたいですよね。本当に。
そうなんですよ。
ちょっと面白くなってきた、日本の政治も。
田中 愼一
面白くなってきたね。