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みなさま、こんにちは。市津谷安子でございます。
さて、少し間が空きましたが、本日はスタイフのような落語の回での第14席目を務めさせていただきます。
暑い夏に死神、いかがでしょうか。かき氷と大破っても仕方がありませんけど、少しでもキヤッとしていただければ幸いでございます。
ところで、その昔、ある人に尋ねられたことがございまして、
一体、安子さんはいくつまで生きるご予定でしょうか、と。
はぁ、ご予定はと言われましてもね、私が決められるものなのか、実はもう決まってるのか、決まってる予定だとしたら変更できるものなのか。
さて、モンブランテーパー、こうしようか。4月のさくら先生に聞いてみましょうかね。
でも、ふと思ったんですけどね、そもそもこの寿命の長さっていうそのもの違ってきてますよね、きっとね。
今や人生100年時代なんて言われてますけど、明治大正時代には平均寿命が40歳。
昭和に入っても最初の頃、人生50年だったんですからね。
もしその頃に生まれたとしたら、そうですね、神様にもうちょっと頂戴なとお願いしてるかもしれません。
それでお前さん、お金はできたのかい?
それがね、できないんだよ。
もう、それでも男かね。お前さんみたいな人はね、豆腐の角でも頭ぶつけて死んじゃえな。
情けね。お金か川だね。豆腐の角に頭ぶつけて死んじゃえって。
なあ、もう、あてつけに死んでやろうか。
そうだ、ああ、この川にドボンと飛び込んじゃえ。
ああ、待てよ、俺子供の頃井戸に起こったことあったよな。
あの時、水がばがばがばが飲んじゃって、あれは苦しかったなあ。
あんな思いすんだったら、生きてたほうがマシだな。
はあ、ほんと、金かかんなくて、すっと楽に死ねる方法ってのはねえのかなあ。
ほんとになあ。
教えてあろう。
誰だよおい。え?誰かいるのかよ。
俺だ。死神だよ。
死神?死神?向こう行けよ、向こう。お前となんか付き合いたくねえよ。
行けよ、向こう。行け。行けってんだよ。
相談に乗るよ。
やだんよ、ほんとに。俺があっち行くわ。
03:01
あ、待て待て。どうだお前さ。医者、やってみないか。
医者は儲かるぞ。
医者なんかできるわけねえじゃないか。薬一つ取れないんだよ、俺は。
薬なんかどうだっていいんだよ。病人が治れば立派な医者だ。
いいか。長煩いしている病人の枕元か足元には、必ず死神が一人ずつ座っているもんなんだ。
これは死神仲間の申し合わせになっててなあ。
枕元に死神が座っている病人。
こいつはもう寿命だ。治らねえ。手をつけちゃいけねえぞ。
足元に死神が座っている病人。こいつはまだ治る。
治すには死神をその場からのけてやればいいんだ。
で、のけるには呪文を唱える。
これからな、お前にその呪文を教えてやるから。
死神は人間には見えねえんだがなあ、お前だけには見えるようにしといてやろう。
なあ、いいか。一遍しかやれねえよ。聞いてて。よく覚えとけ。
アジャラカモクレンアルジェリアテケレツノパーと言って、ポンポンと二つ手を叩くんだ。
ポンポン。いいか。
なんですか。アジャラカモクレンアルジェリアテケレツノパーポンポン。これでいいんですかい。
あれ、死神さん切れちゃったよ。
ああ、そっか。呪文が聞いたんだな。
よし、さっそくやってみようか。
ごめんください。
あ、油屋さん。お金ないよ、うちは。
油屋じゃございません。表に医者ってあったんで、こちらお医者様でございますよね。
先生にぜひともお願いしたいんですが。
ああ、そう。じゃあ早速行こうか。
やって参りましたのは大棚。奥の部屋にすーっと通されてみると、死神がいい塩梅に足元に座っています。
あ、早速治しましょう。
治りますか。
治りますよ。
治ったらお金くれますか。
もちろんです。いくらでも差し上げます。
では、アジャラカモクレンアルジェリアテケレツノパー。
すーっと死神が痛くなり、旦那様はむくっと起きて、
ああ、腹が減った。なんか食べ物をくれ。
お金でもお持ちしましょうか。
いや、なんでもいいよ。うな丼でも食べたいな。
うな丼ですね。はい、ただいま。
評判というのはあっという間に広がるもので、これを機に方々から声がかかるかかる。
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そしてどんどんどんどんお金も入って、そうなると若い女を囲ったりして、
ねえ、先生、髪型見物行きたいわ。
よしよし、いいよ。連れてってやろう。
まあ、そんな生活してれば、今度はどんどんどんどんお金がなくなり、
死前には一文なし。
ああ、金がなくなると女もいなくなるんだなあ。
と、仕方なく家にいると。
先生、いらっしゃいますか。ぜひとも見ていただきたいんですが。
ほう、これはありがてえと言ってみれば。
死神が枕元に座ってやがって。
ああ、これはついてねえなあ。
あ、この病には治りませんよ。
と言うと、先生、そこをなんとかお願いします。
治していただければ五千両差し上げますから。
ご、五千両?五千両。
そりゃあ欲しいよなあ。だけど、こっち側に座ってるんだよなあ。
治らないんですよ。
あっち側だったらよかったんですけどねえ。
ん?待てよ。
あ、そっかそっか。いい考えがある。
あの、お宅には、こう、気の利いた力のある若い主ってのがいますかね。
まあ、四人ぐらいいればいいんですけど。
それだったらとすぐに四人がやってきたので、
布団の四隅に座らせた。
いいですか。
私が合図をしたらクルクルって回してもらいたいんですよ。
クルクルってわかります?
合図したらクルクルってね。
いいですね。
見ると死神がウトウトウトウトし始めました。
よし、今だ。
クルッと回して。
アジラカ・モクレン・アルジェリア・デゲレツノパー。
すっかり全開。
はい。
途中一杯引っ掛けて鼻歌混じりで、
うまくいったよな。
あの死神の驚いたつらったらなかったね。
そうだ。
これからみんなあの手を使えばいくらでも儲かるな。
バカ野郎。
おお、バカ野郎。
なんだ?
何がバカ野郎だよ。
こんな利口な奴捕まえてバカ野郎ってのがあるかよ。
なんだって。
俺の時にあんなことをしやがったんだ。
なんだ?
あれ?
一番最初に会った死神さんじゃねえか。
え?
さっきの死神さんはあなたでしたか。
いや、みんな同じ格好してるからね。
分かんなかったな。
そんなことはどうでもいい。
ちょっと、俺についてきな。
やだよ。
勘弁してくださいよ。
まあいいから、来なさい。
ほら。
さあさあ、この石段下りるんだ。
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え?
こんなとこに石段ってあったっけな。
気がつかなかったね。
早く来い。
暗くて中がよく見えませんよ。
いいから早くこっちへ来い。
さあ、急ぐんだ早く。
さあ早くこっちに入りなさい。
あ、なんだ?
急に明るくなっちゃったよ。
あらま、明るいわけだな。
ほぼにロウソクどっさり。
なんだこれ、ロウソクだらけだ。
青い炎、赤い炎、何ですかこれ。
これかい。
これはな、みんな人間の寿命だ。
長いのやら短いのやら色々ありますね。
あ、ほら死神さんほら。
ここに長くて一斉によく燃えてるのがありますよ。
これはお前のせがれの寿命だ。
へえ、うちのガキは丈夫なんだね。
その後ろに半分くらいになって
にくにくしく燃えてるのがありますよ。
別れたおめえの神さんの寿命だ。
はあ、はあ。
道理でにくにくしく燃えてると思ったよ。
で、その隣。死神さんほら。
今にも消えそうなのがありますね。
それ、それ、それ。今にも消えそうですよね。
どうなんですか。これもう消えるでしょ。
それかい。
それはお前の寿命だ。
あ?今何て言ったんですか。
お、お前の寿命?お前の寿命って
これもう消えちゃうじゃないですか。
消えたらお前は死ぬよ。
嘘だよ。死ぬって言ったってほらピンピンしてるし。
消えたら死ぬ。
消えたら死ぬって、だってもう消えそうですよこれ。
ねえねえねえ何とかしてくださいよ。
ねえ死神さん。
お前の寿命はな、もっと長かったんだが
金に目がくらんで寿命を取り替えたんだ。
もういっか、一回取り替えた寿命はもう元には戻せね。
そんなこと言わないで。ねえねえお願いしますよ。
この通りです。死神さん。
しょうがねえ男だ。
ここにな、燃え差しがある。
こっちの炎を写すことがうまくできればその分だけお前の寿命は伸びる。
早くこっちを貸してください。
早くしないと消えるよ。ほら。
早くしないと消えるぞおい。おい。ほらほら。
震えるな。消えるよ。消えるよ。
黙っててくださいよ。よけ。手が震えちゃうんだから。
ほーら消えるぞ。ほら早くしろ。ほらほら消えるぞ。おい。ほら。
消えると死ぬよ。
12:03
消える。消える。
お後がよろしいようで。
一途やあんこでした。