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2025-06-14 03:28

熱帯魚/ハリネズミ文庫

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熱帯魚


作:ハリネズミ文庫@hariharibook 様

BGM:魔王魂


https://x.com/hariharibook/status/1856654297917776118?s=46&t=63z_TUXdJxoQvBp-LsRI6g


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#フリー台本

#ハリネズミ文庫


【活動まとめ】 https://lit.link/azekura

サマリー

東京の狭いワンルームに住む主人公は、水槽の中の熱帯魚を見ながら、閉じ込められた日常の中で自由を求める感情を抱いている。

水槽の中の生活
東京の狭いワンルーム。 それが私の水槽だった。
どこか無機質で、ただ生活するだけの空間。 窓の外には高層ビルが並び、昼も夜も変わらないネオンの光が差し込む。
私はその光の影の中で、ひっそりと息を潜めるように生きている。 部屋の隅に置かれた水槽の中で、ひときわ鮮やかな赤と青の熱帯魚が静かに泳ぐ。
その小さな命は、この無彩の部屋に唯一の正気を与えていた。 いつからだろう、彼をじっと見つめることが私の日課になったのは、
小さな背びれを揺らしながら、窮屈そうにガラスの中をぐるぐると回る彼の姿を見ていると、不思議と自分も水槽の中で暮らしているような気持ちになる。
毎朝決まった時間に起き、電車に揺られ、オフィスで与えられた仕事を淡々とこなし、また帰宅する。
その繰り返しの中で、私は自分が何を求めていたのか、何を目指していたのかを、いつの間にか忘れてしまった。
熱帯魚はガラスの壁に鼻先をぶつけるように泳ぎ、また戻る。 まるで自由を求めるかのように。
その度に私の中で何かが小さくざわつく。 水槽に手を伸ばし、そっと水面を撫でる。
冷たく澄んだ水の感触が指先に伝わり、ふと心が沈まる。 だけど私の胸の奥には重たい石のような感情が沈んでいる。
私はこのままでいいのだろうか。 この水槽のような部屋で、
ただ生きるだけで満足しているのだろうか。 もっと自由に泳いでみたい。
そう心の中でつぶやいた時、熱帯魚がくるりと身をひるがえし、私を見つめた気がした。 その小さな目にどんな感情が映っているのかはわからない。
ただ彼もまた、自由を知らずにここで生きているのだと思うと、どうしようもなく切なくなる。 私たちは同じだ。
ガラスの向こう側に広がる世界を知らないまま暮らしている。 けれどきっとこの小さな水槽を飛び出した先には、私がまだ見ぬ
広い世界が待っているはずだ。怖くてもいい。 一歩踏み出してみよう。
この狭い水槽から抜け出し、私だけの自由な水の中を泳いでみたいと、 心から願う。
03:28

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