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あんたはなんも知らんだろうが、 昔はもっと自由だった。
生き物ってやつは、今よりずっと美しかった。 先日、ふらりと入った居酒屋で、とあるご老人に会いました。
俺は見たんだ。 海の底で宝石のように輝く蛇よ。
空を悠々と泳ぐ鯨の尾ひれに絡まる 夕日のきらめきよ。
ランプに照らされた彼の目は、今ここにないものを、 遥か遠く見つめるように、透き通った琥珀色をしていました。
みんな俺のことを、頭のおかしい奴だと言ってる。 だが俺は知ってる。
変わっちまったのは、この世界の方なのさ。
やがて酔い潰れて眠りについた彼の上着のポケットから、 海をそのまま映しとったような、
深い深い群青色の蝶が一羽、 ほのかに凜粉を散らして静かに飛んで行きました。
