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小学校からの腐れ縁だけどね。 ろくな女じゃなかったよ。
破天荒と言いや聞こえはいいが、やること成すことめちゃくちゃで、無責任で、いつも周りの人間が必死で尻拭いしてるってのに、本人はどこ吹く風って顔してやがる。
田舎が嫌だって散々言って、高校卒業してすぐ街を出て行って、でも数年もしないで戻ってきて。
子供つきでさ。 よくある話ですよ。
相手の男? 誰だか知らんとさ。
またそんな時だけ頼ってきやがってね。 りょうちゃん、りょうちゃんって、昔のまんまのしたったらずのさ、甘ったれた猫みたいな声でさ。
悪びれない顔してさ。 俺、あいつの娘のおむつだって変えたことがありますよ。
で、また数年経つとフラッといなくなって帰ってきての繰り返しよ。 起業しただの、留学するだの、夢みたいな話ばっかでね。
会う度にだんだんお互い老けていくんだけど、なんだかそれもパラパラ漫画みたいで妙におかしくてね。
そんで、かれこれ1年もおとさたなかったと思ったら警察から電話が来てさ。
事故りました、だもん。 夜中に娘のナプキン買いに出たってさ。
あいつ好きのもん重かったから娘もそうだったんでしょうね。 何母親みたいなことしてんだよって思わず笑っちまったけどね。
ツヤも告別式も行きましたよ。 バカ女の死に顔を見てやろうと思って。
正直ほとんど覚えてないけど娘が気丈にずっと立っててさ。 横顔がどことなく似てて
血だなぁなんて思ったっけね。 そんで家に帰って交電返しのノリやら緑茶やら戸棚にしまってたら
涙がボロボロこぼれてきてさ。 暇かよ、みたいなね。
泣けたんだよね、意外なくらい。
ああ、もしかして俺はあのバカ女に惚れてたんだなぁってさ。
肌迷惑で厄介で台風みたいな女でしたけど、 惚れてたよ。
なんだかんだで一生付き合うと思ってた。 これからあいつのいない世界を生きていくんだって思ったら
太陽がなくなっちまったみたいで怖くって。
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大の男が声上げて泣いたよね。小汚いアパートの一室で一人でバカみたいにさ。 ろくな女じゃなかったよ、本当に。
だけど、 俺の人生の一部だった。
冗談抜きにそう思うよ。
