村の奇妙な記憶
北欧の、とある川のほとりの村には、どういうわけか、見たことのない風景や、聞いたことのない言語の記憶を、生まれつき持つものが少なくありません。
そのため、この村で生産される工芸品の数々には、それらをもとにした遺書がふんだんに盛り込まれており、
他の地域では決して見られないほど美しく独創的であるとして、昔から大変な高値で取引されています。
今では、付近の村にもそうした噂が広まり、出産前の妊婦にこの川の水を飲ませるため、はるばる汲みに来る人も多いとか、
とはいえ、なぜこの村の人間たちだけが奇妙な記憶を持つのか、というその秘密は、もちろん誰も知りません。
村人たちは、川が教えてくれる、と口を揃えるのみで、本当のところは彼ら自身も知らないからです。
彼らはこうしたインスピレーションを川からの贈り物と考えており、その上流へ足を踏み入れることを固く禁じています。
