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2022-08-11 03:14

#31『木星から来ました』―それは危険な出自―【ミニラジオドラマ】

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”あなたの本当のご出身は?”


あらすじ

…パーティ会場にて見知らぬ相手に話しかけられた秘匿木星人は、非常に危険な質問に相対することになる。


ラジオドラマシリーズ『私的エクレアイズム』です。主に会話劇の形式で短編のラジオドラマを配信しています。楽しんで頂けたら番組をフォローして下さると幸いです。


ミニラジオドラマ『木星から来ました』

出演 北崎杏佳(秘匿木星人役)

脚本・制作 村楓午


カバーイラスト 大畑夏穂


9月下旬にもミニラジオドラマを1作準備しておりますので、楽しみに待っていて頂けると幸いです。


(c) 2022 村楓午

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ミニラジオドラマ、木星から来ました。
本当のご出身は?
パーティー会場でこう尋ねられた時、あなただったら一体どうしますか?
本当の。一見、ミックスルーツなどの方に向けられるマイクロアグレッションに聞こえて嫌な気分になりますが、
一向に揺るがない相手の眼球を見れば、それはおのずと私が地球外の羊だと見抜いた上での質問だと理解できます。
当然、向こうも地球外生まれです。しかし、出自を明かすことは時に危険をはらみます。返答次第で私は1秒後に死んでいるかもしれない。
果たしてそんな危険を犯してまで答える必要があるのでしょうか?
じゅっちゅうじゅっちゅありません。相手が地球外生まれでも決して心を許してはなりません。
毅然と、「一体何のことでしょう?」と返答します。と同時に、「はて?」感も出すのです。
ふにゃふにゃはやりすぎですが、はて、何のことやら感は出さなければなりません。
ただ忌々しいことに、この相手は私の答えには納得せず、しつこく小声で、
私は仲間です。安心してください、などと言ってきます。
しかし、どうしてそんな言葉を信じることができるでしょう?
もし、私とその相手の生まれた星が敵対関係だったら、または利害関係だったら、
即座に私は拘束されて拷問に遭うか、外交の道具にでもされてしまうでしょう。
友好関係という一覧の望みにかける?そんなことはしません。あまりに危険です。
ですから結論として、ここでも私は、「すみません、本当に何をおっしゃっているのかわからないんです。」と答えます。
相手が確実な証拠を握っていない限り、こうするしかありません。
さあ、相手はどう出るでしょう?さすがに疑念が生まれ、次の手を考え始めるかもしれません。
俊々の表情、この一瞬を逃してはいけません。すぐさまそこへとぼけたようにこう尋ねるのです。
ちなみにあなたの本当のご出身は?相手は一瞬固まるでしょう。しかし考えるはずです。
自分が明かせばもしかするとこの相手も…眼球が過方に移動しました。考えています。今、この相手は考えています。
そして口を開くとこう言いました。
女性です、と。
私はそれを聞くと思わず吹き出して、「冗談がお上手ですね。」と言い残し、そのパーティー会場を後にしました。
自然に自宅へと戻り、急いで荷造りを始めます。
残念ながら、私は身分を偽り新しい生活を始めなければなりません。
それは悲しいことではありますが、しかしながら命に代わるものはありません。
私はエアカーにありったけの荷物を詰め込み、遥か遠くの地に自動走行ナビを設定しました。
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そしてバックミラーに映った自分の姿に向かってこう答えたのです。
木星から来ました、と。
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