左利きの世界
この番組は、おかしな日常のずれに巻き込まれたあなたを、元の世界へ戻すための番組です。
なんでもないように見える日常が、少しずつ、少しずつずれていく。
それは、あなたのせいではありません。
世界の方が、勝手にずれてしまっただけです。
ようこそ、異世界ラジオへ。
パーソナリティは、異世界管理局のエンヤがお送りいたします。
早速ですが、今日も異世界へ迷い込んだ方からのご報告が届いております。
ラジオネーム、ホットココアは森永波さんからいただきました。
最近、明らかに左利き前提の社会に迷い込みました。
駅の改札が全部左タッチ式。
コンビニのお釣りも左手で返され、
自販機のボタンも左寄りに。
ついには、自分でも左手でベットボトルを開けるようになり、
このままでは左利きの住人として永住してしまいそうです。
ホットココアは森永波さん、ご報告ありがとうございます。
これは、左利き世界ですね。非常に厄介なズレです。
改札タッチの左右反転は、リバースゲート現象と呼ばれ、
主に寝不足、スマホの見過ぎ、または歩きスマホによって発動することが知られています。
解決策としては、改札は右手でタッチせようとせず、
両手でバンザーイして通り、または左手は添えるだけ。
それでも戻れない場合は、左手専用カフェに入り、
明治のホットココアを飲んでください。
それがこの世界からの脱出方法になります。
無事に帰還されることをお祈りしております。
反転世界の体験
はい、続いての案件です。
ラジオネーム、お風呂上がりに眉毛が消えるさんからいただきました。
鏡の自分が瞬きをしていませんでした。
手を振ると、相手はあくびをする。
ヒゲを剃ろうとしたら、相手は眉毛を剃りました。
これは反転世界ですか?
ちなみに、寝起きではなかったので、寝ぼけているわけではなかったです。
お風呂上がりに眉毛が消えるさん、ご報告ありがとうございます。
これは、ミラーズゾーンへの反動起点相の兆候と考えられます。
特徴としては、反応速度が遅れたり、感情表現がずれたりする虚像が出現すること。
解除のためには、鏡の前で、「どっちが本物だ?」と問いかけてください。
鏡の自分が困惑したら、すぐに電気を一度消し、再点灯してください。
これで、あなたが本体であることが確定し、動機が戻ります。
もし、相手から返答があった場合は、鏡に住んでいる別個体なので、また改めてご連絡ください。
はい、本日最後の案件です。
ラジオネーム、「自動ドアに気づかれない男さん」からいただきました。
喫茶店でモーニングを頼もうと、席に座って呼び鈴ボタンを何度押しても誰も来てくれません。
店員さんに直接話しかけても、完全に無視をされます。
仕方なくお店を出ようとしても、自動ドアのセンサーにも反応しませんでした。
私の存在がずれているのでしょうか。
自動ドアに気づかれない男さん、ご報告ありがとうございます。
これは、認識半透明化現象に該当する可能性があります。
原因としては、睡眠不足、自己否定、空調の設定温度が低すぎる、などが考えられます。
解除方法としては、世界の中心で自分の名前を叫んでください。
声に出して、存在を再定義することが鍵となります。
その後、体が心から温まるスープを飲めば、再動機完了です。
あなたは確かにそこにいます。大丈夫です。
今回は3件の日常のずれに対応いたしました。
不思議な違和感は、世界からのメッセージかもしれません。
異世界脱出ラジオでは、今後もあなたの報告を受け付けております。
どうか無事に帰ってきてください。
それでは次回の配信でまたお会いしましょう。
ごきげんよう。
