厚生労働省は、令和8年度診療報酬改定で「精神病棟看護・多職種協働加算」を新設します。精神病棟入院基本料等の急性期の入院料は、これまで看護職員の配置だけを評価し、精神保健福祉士、作業療法士、公認心理師(以下、3職種)の病棟配置を評価していませんでした。この記事では、新設される精神病棟看護・多職種協働加算の趣旨、対象入院料と点数、施設基準を解説します。
精神病棟看護・多職種協働加算は、看護職員と3職種を併せて配置した精神病棟を1日につき最大357点で評価します。第1に、新設の趣旨は、多職種の配置による質の高い精神医療の提供の推進です。第2に、対象は、精神病棟入院基本料と特定機能病院入院基本料(精神病棟)の13対1・15対1、および精神科急性期治療病棟入院料2の3つです。第3に、施設基準は、看護職員と3職種を合算した人員配置、3職種1名以上の配置、平均在院日数の3つを要件とします。なお、点数は対象入院料ごとに異なります。
1. 新設の趣旨:多職種配置による質の高い精神医療の推進
精神病棟看護・多職種協働加算は、多職種の配置による質の高い精神医療の提供を推進する観点から新設されます。改定資料の「第1 基本的な考え方」は、急性期等の入院料における3職種の病棟配置について新たな評価を行うと明記しています。つまり、この加算は、看護職員以外の職種を病棟に置く体制そのものを評価する点数です。
多職種の配置は、入院医療から地域生活への移行を進めるうえで、繰り返しその必要性を指摘されてきました。良質かつ適切な精神障害者に対する医療の提供を確保するための指針(平成26年厚生労働省告示第65号)は、医師、看護職員、精神保健福祉士、作業療法士等の多職種チームによる質の高い医療の提供を求めています。精神疾患の回復期には、精神保健福祉士による環境調整、作業療法士によるリハビリテーション、公認心理師による心理的ケアの必要性が高まるからです。
多職種の配置は、実際の調査でも効果を示しています。中央社会保険医療協議会(中医協)に提出された調査によると、精神病棟入院基本料を届け出る病棟のうち、3職種を各1名以上配置した病棟の平均在院日数は353.9日でした。3職種の配置がない病棟を含む全体の平均在院日数429.2日と比べると、約75日短い水準です。在宅復帰率も、全体の63.8%に対し、3職種を各1名以上配置した病棟では70.2%と高い傾向を示しました。
2. 対象入院料と加算点数:13対1で357点、15対1で196点
精神病棟看護・多職種協働加算の対象は、3つの入院料です。第1に、精神病棟入院基本料の13対1入院基本料と15対1入院基本料が対象になります。第2に、特定機能病院入院基本料のうち精神病棟の13対1入院基本料と15対1入院基本料が対象になります。第3に、精神科急性期治療病棟入院料2が対象になります。いずれも、地方厚生局長等への届出を行った病棟の入院患者について、1日につき所定点数に加算します。
精神病棟入院基本料では、13対1で357点、15対1で196点を算定します。点数は、急性期病院A、急性期病院B、精神病棟入院料の3区分に分かれますが、いずれも13対1が357点、15対1が196点で共通です。
特定機能病院入院基本料では、13対1で355〜357点、15対1で90〜92点を算定します。点数は、特定機能病院A・B・Cの3区分に分かれます。13対1は、Aが356点、Bが357点、Cが355点です。15対1は、Aが91点、Bが92点、Cが90点です。精神病棟入院基本料の15対1(196点)と比べると、特定機能病院の15対1は半分以下の水準にとどまります。
精神科急性期治療病棟入院料2では、入院期間に応じた3段階の点数を算定します。30日以内の期間は123点です。31日以上60日以内の期間は107点です。61日以上90日以内の期間は58点です。入院が長引くほど点数が下がる逓減制であり、早期退院を促す設計といえます。
3. 施設基準:合算配置・3職種1名以上・平均在院日数
精神病棟看護・多職種協働加算の施設基準は、3つの要件で構成されます。第1の要件は、看護職員と3職種を合算した人員配置です。第2の要件は、3職種のうちいずれかを1名以上配置することです。第3の要件は、平均在院日数の上限です。3つの要件の水準は、13対1と15対1で異なります。
13対1入院基本料の場合、合算した人員配置は10対1以上が必要です。具体的には、1日に看護を行う看護職員、作業療法士、精神保健福祉士および公認心理師の数が、常時、入院患者数10またはその端数を増すごとに1以上でなければなりません。この規定にかかわらず、作業療法士、精神保健福祉士または公認心理師の数は1以上とします。平均在院日数は60日以内が上限です。
15対1入院基本料の場合、合算した人員配置は13対1以上が必要です。具体的には、看護職員と3職種の数が、常時、入院患者数13またはその端数を増すごとに1以上でなければなりません。この規定にかかわらず、3職種のうちいずれかの数は1以上とします。平均在院日数は100日以内が上限です。
特定機能病院入院基本料の場合、精神病棟入院基本料と同じ施設基準を適用します。13対1は精神病棟入院基本料の13対1の基準を、15対1は同じく15対1の基準を、それぞれ満たす必要があります。
精神科急性期治療病棟入院料2の場合、15対1の基準のうち人員配置の2要件のみを適用します。適用されるのは、合算13対1以上の配置と、3職種のうちいずれかを1名以上配置する要件です。平均在院日数の要件は適用しません。
4. まとめ:看護職員以外の病棟配置が点数になる
精神病棟看護・多職種協働加算は、看護職員と3職種を併せて配置した精神病棟を1日につき最大357点で評価します。新設の趣旨は、多職種の配置による質の高い精神医療の提供の推進です。対象は、精神病棟入院基本料と特定機能病院入院基本料(精神病棟)の13対1・15対1、および精神科急性期治療病棟入院料2です。施設基準は、看護職員と3職種を合算した人員配置、3職種1名以上の配置、平均在院日数の3つを要件とします。すでに3職種を病棟配置している医療機関は、届出の可否を早期に確認することをお勧めします。
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サマリー
令和8年度診療報酬改定で新設される「精神病棟看護・多職種協働加算」は、精神保健福祉士、作業療法士、公認心理師を含む多職種チームによる質の高い精神医療を推進します。この加算は、入院医療から地域生活への移行を加速させ、平均在院日数の短縮や在宅復帰率の向上に寄与することが期待されています。しかし、厳しい施設基準や専門職の人材確保の課題から、資金力のある大規模病院が有利になる可能性や、地方の小規模クリニックからの専門人材流出といった懸念も指摘されています。
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