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2026-01-08 04:58

令和8年度診療報酬改定|支払側が求める「6つの重点事項」と適正化の方向性

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中央社会保険医療協議会(中医協)は、令和7年12月26日の総会(第639回)において、令和8年度診療報酬改定に向けた各号意見を取りまとめました。本稿では、健康保険組合や事業主の立場を代表する支払側(1号側)委員が提出した意見書の内容を解説します。支払側は、賃上げと物価高への確実な対応を求める一方、医療費適正化の徹底と病院機能の再編を強く主張しています。

支払側の意見は6つの重点事項で構成されています。医科については、入院医療における病院機能の分化・連携・集約化と、外来医療におけるかかりつけ医機能報告制度と整合した評価体系への移行を求めています。歯科については、口腔機能管理の対象範囲拡大とメリハリのある評価を主張しています。調剤については、敷地内薬局の定義厳格化と門前薬局の適正化を要求しています。在宅医療については、短時間・頻回な訪問看護の是正を求めています。賃上げと物価への対応については、検証可能な仕組みの創設を主張しています。なお、意見書には個別事項として医療DXや救急医療等の11項目も含まれています。

基本的考え方:適正化と持続可能性の両立

支払側は、診療報酬改定の基本姿勢として、賃上げと適正化の両立を求めています。

診療報酬本体の引上げ財源は、その大部分を賃上げと物価高への対応に充当することが大臣折衝で合意されました。支払側は、この合意を踏まえ、医療サービスの対価としての正当性を担保するため、確実な賃上げときめ細かい物価高への対応を行い、その結果を検証できる仕組みにすべきであると主張しています。

一方で、国民皆保険制度と医療提供体制の持続可能性を両立することも重要であると指摘しています。そのために必要な適正化策として、外来受診の抑制、残薬対策、短時間・頻回な訪問看護の是正、門前薬局や敷地内薬局の合理化を挙げています。これらの適正化を通じて、メリハリのある診療報酬により政策課題の解決に取り組むべきであるとしています。

医科・入院医療:病院機能の再編と集約化を促進

入院医療については、病院機能の分化・連携・集約化を強力に推進するよう求めています。

高度急性期については、選択と集中が必要であると主張しています。専門性の高い人材や高額な医療機器は基幹病院に集約化し、重篤な救急搬送の受入れや難易度の高い全身麻酔手術等を集中的に実施する拠点的な急性期機能を確立すべきであるとしています。この拠点的機能を担う病院は、物価・賃金上昇による影響を最も大きく受けるため、財源を重点配分すべきであると述べています。

急性期一般病棟については、評価体系の見直しを求めています。急性期一般入院料1について、救急搬送受入れと全身麻酔手術の基準を導入し、実績が一定以上の場合のみ看護配置7対1の拠点的な急性期一般病棟として認める等、評価を細分化すべきであるとしています。看護配置7対1と10対1の差分を多職種配置で補充する場合には、看護職による病棟マネジメントと業務負担のモニタリングの仕組みを実装すべきであるとしています。

DPC/PDPSについては、全ての急性期病棟への参加義務付けを求めています。急性期医療の標準化を徹底する観点から、現在は任意参加となっているDPC制度への参加を義務化すべきであるとしています。標準病院群については、救急搬送の受入れ件数が少ない病院で包括範囲出来高点数が特に低い傾向を踏まえ、細分化して基礎係数を設定すべきであるとしています。

地域包括医療病棟については、令和6年度改定で新設したコンセプトを維持すべきであると主張しています。平均在院日数の基準やADL低下患者5%未満の要件は一律に緩和せず、限定的な対応にとどめるべきであるとしています。ただし、内科系症例において医療資源投入量が十分に評価されていない実態を踏まえ、内科系疾患の高齢者救急の受入れを阻害しないよう、きめ細かな評価体系に見直すことは合理的であるとしています。

医科・外来医療:かかりつけ医機能と適正化の推進

外来医療については、かかりつけ医機能の評価体系の見直しと各種管理料の適正化を求めています。

かかりつけ医機能については、機能強化加算の抜本的な見直しを主張しています。現行の地域包括診療料や在宅療養支援診療所等と紐づいた仕組みから離れ、かかりつけ医機能報告制度と整合的な仕組みへと、名称を含めて発展的に組み替えるべきであるとしています。一次診療が可能な診療領域や疾患の範囲、研修受講、学生実習・研修医の受入れ、BCP等を指標とし、機能の充実度に応じた評価体系とすべきであるとしています。

生活習慣病管理料については、適正化と減算の導入を求めています。長期処方・リフィル処方をより積極的に活用して、状態が安定した患者の受診間隔を延長し、通院負担を軽減すべきであるとしています。療養計画書を定期的に交付していない場合やガイドラインに沿った検査を実施していない場合、継続受診率が低い場合には減算を導入すべきであるとしています。

外来管理加算については、廃止または包括化を求めています。地域包括診療加算や特定疾患療養管理料等との計画的な管理の重複評価は依然として解消されておらず、是正すべきであるとしています。算定要件である「丁寧な問診や詳細な診察、懇切丁寧な説明」等は再診料に含まれる当然の行為であり、加算としての評価を廃止すべきであるとしています。

歯科:口腔機能管理の拡大とメリハリある評価

歯科については、ライフステージや患者の特性に応じたメリハリのある評価を求めています。

口腔機能管理については、対象範囲の拡大を認めています。高齢者の口腔機能低下症や小児の口腔機能発達不全症について、機能的な特性だけでなく、通常と異なる特別な管理を行うのであれば、学会の診断基準に基づき口腔機能管理料や小児口腔機能管理料の対象範囲を拡大することは合理性があるとしています。

歯科疾患管理料については、初診減算の廃止と再診時評価の適正化を求めています。歯科医師の手間が初診と再診で変わらないのであれば、初診減算の廃止と合わせて再診時の評価を適正化すべきであるとしています。継続的な歯科疾患の管理という趣旨が徹底されるよう、算定対象となる患者像を明確化し、初診時に管理計画を患者に説明して理解を得ることも必要であるとしています。

歯周病治療については、財政中立での統合を求めています。患者に違いが分かりにくい歯周病安定期治療と歯周病重症化予防治療は財政中立で統合するとともに、実質的に3か月毎のメンテナンスとして運用されている状況を改め、病態に応じた治療を運用面で担保すべきであるとしています。

多職種連携については、医科との連携強化を求めています。周術期等口腔機能管理計画を変更する際も評価することや、医科のリハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算や生活習慣病管理料における歯科受診勧奨の受け皿となった場合の評価が考えられるとしています。

障害者歯科については、専門施設による重点的な対応を新たに評価する場合には、口腔保健センター等の専門施設が障害児や障害者に対して歯科医学的管理を実施した場合に限る等、適切な運用を担保すべきであるとしています。へき地等の特に人口が少ない地域の患者に必要な歯科医療を提供する観点から、巡回診療車の活用も考えられるとしています。

歯科治療のデジタル化については、推進を求めています。業務の効率化や貴金属価格の影響を受けないようにする観点から、光学印象やCAD/CAM冠の活用を拡大する等、歯科治療のデジタル化を推進すべきであるとしています。

調剤:門前・敷地内薬局の適正化と薬局機能の強化

調剤については、門前薬局や敷地内薬局の適正化と、かかりつけ薬剤師機能の見直しを求めています。

敷地内薬局については、定義の厳格化を求めています。医療モールを含めて特別な関係にある場合には、全て特別調剤基本料Aを適用することを原則とすべきであるとしています。医療モールにある薬局は、処方箋枚数が上位3番目までに限らず、モール内にある全ての医療機関を集中率の分子に含めるべきであるとしています。

調剤基本料については、門前薬局の損益率が高いことを踏まえた適正化を求めています。将来的に薬局の立地が変わっていく中で調剤基本料を一本化することが望ましいが、当面は経営効率に応じた評価の徹底が必要であり、調剤基本料2を適正化すべきであるとしています。調剤処方箋600回超かつ集中率85%の小規模薬局については、特に損益率が高い大都市の場合は調剤基本料1から除外し、薬局の集約化・大規模化につなげるべきであるとしています。

後発医薬品調剤体制加算については、減算の仕組みへの移行を主張しています。後発医薬品の使用は相当程度まで上昇したことを踏まえ、加算の仕組みを継続する妥当性は低いとしています。地域の医薬品供給拠点機能を評価する他の加算があることを踏まえ、減算を中心とする仕組みに切り替えるべきであるとしています。

かかりつけ薬剤師指導料については、廃止を求めています。かかりつけ薬剤師として実施した業務の内容を評価する仕組みに見直すべきであるとしています。

在宅医療:効率性を踏まえた適正化

在宅医療については、訪問診療・往診、訪問看護、歯科訪問診療、訪問薬剤管理指導の各分野で適正化を求めています。

在宅療養支援診療所については、よりきめ細かい評価体系への見直しを求めています。機能強化型については、在宅緩和ケア充実加算の要件を上回る実績がある医療機関が多いことを踏まえ、在宅緩和ケア充実加算を統合する形で、実績・体制・役割の違いに着目して評価を細分化し、更に積極的な機能の発揮を促すべきであるとしています。連携型の機能強化型については、24時間体制に協力する度合いに応じて評価にメリハリを付けるべきであるとしています。

訪問看護については、短時間・頻回な訪問看護の是正を強く求めています。高齢者住宅等に隣接する訪問看護ステーションにおいて、医療機関に入院中の患者への看護に似た形で短時間の訪問看護が頻回に続けて提供されることにより、加算が積み上がって医療費が高額化している実態があると指摘しています。効率性を踏まえて適正化する観点から、一連の訪問看護を包括評価する仕組みを導入すべきであるとしています。頻回な訪問看護が必要な場合には主治医の指示書に明記することを求めるべきであるとしています。

歯科訪問診療については、診療時間に応じた適正化を求めています。歯科訪問診療料について、同一建物に居住する多人数を訪問して1人当たり診療時間が20分未満の場合、適切な処置等が実施されていないと考えられるため、適正化すべきであるとしています。訪問歯科衛生指導料についても、同一建物の患者数が多いほど指導時間が短い傾向を踏まえ、時間区分によるメリハリのある評価体系に見直すべきであるとしています。

訪問薬剤管理指導については、時間外対応の要件化を求めています。訪問薬剤管理指導を実施している薬局に夜間や休日に連絡がつかず、他の薬局が代わりに対応する事例がみられることを踏まえ、訪問薬剤管理指導料の要件に時間外対応を位置づけるべきであるとしています。在宅薬学総合体制加算2については、無菌製剤処理の実績が極めて乏しく、高い加算を算定するために無菌調剤設備を設置している可能性があることから、施設基準から無菌調剤設備を除外すべきであるとしています。

賃上げと物価への対応:検証可能な仕組みの創設

賃上げへの対応については、検証が可能な手当ての仕組みを創設すべきであると主張しています。

看護職員処遇改善評価料やベースアップ評価料については、幅広い職種を対象とし、統合した分かりやすい報酬体系とすることを求めています。夜勤における人材確保に向けて夜勤手当の増額等の対応も考えられるとしています。月額給与の引上げに伴い賞与を減額する等の不適切な運用が生じないよう、正当な処遇改善を担保する要件を設定することも必要であるとしています。

物価上昇への対応については、費用構造の違いを反映した手当てを求めています。医療機関の機能等により物価高の影響が異なることを踏まえ、費用構造の違いを反映した手当てとすべきであるとしています。物価水準は常に変動するものであり、長期推移も念頭に置き、物価上昇率の見込み値と実績値に差異が生じることを想定した検討も必要であるとしています。

まとめ:メリハリある改定で持続可能性を確保

支払側の意見は、賃上げと物価への確実な対応を求めつつ、医療費適正化の徹底を強く主張する内容となっています。

医科の入院医療については、病院機能の分化・連携・集約化を促進し、急性期病棟の評価を実績に応じて細分化することで、拠点的な機能を担う病院への財源重点配分を求めています。医科の外来医療については、かかりつけ医機能報告制度との整合性を重視し、各種管理料の適正化と減算の導入を主張しています。歯科については、口腔機能管理の対象範囲拡大を認めつつ、歯科疾患管理料や歯周病治療の適正化を求めています。調剤については、門前・敷地内薬局の適正化と後発医薬品調剤体制加算の減算への移行を求めています。在宅医療については、短時間・頻回な訪問看護の是正に加え、歯科訪問診療や訪問薬剤管理指導の適正化も求めています。これらの意見は、2040年を見据えた医療提供体制の再構築と、国民皆保険制度の持続可能性確保を目指すものといえます。



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サマリー

2026年度の診療報酬改定の提案では、医療現場の賃金引き上げと効率化の両立が目指されています。病院機能の分化、連携、集約化が重要視されており、特に外来管理課の廃止やジェネリック医薬品への評価変更が提案されています。また、これにより在宅医療にも影響が出ています。

診療報酬改定の提案
さて、今回は、2026年度に予定されている診療報酬改定について、ちょっと深く見ていきたいと思います。これはまあ、病院とか薬局が受け取るサービスの肯定価格を決める、数年に一度の結構大きな見直しなんですよね。
ええ、非常に重要です。
で、今回僕らの手元にあるのが、健康保険組合とか企業、つまりお金を払う側が出した意見書でして。
はい。
これが面白いのが、医療現場の賃上げと、それから医療費全体の効率化っていう、なんか一見すると矛盾するような目標を両立させようとしてるんですよね。
そうなんです。この意見書から伝わってくるのは、もう非常に強いメッセージで、賃上げの財源は出しますよと。ただ、その代わり、医療の在り方自体を根本から見直させてもらいますと、そういうことなんです。
なるほど。
これはもう2040年を見据えた、持続可能な皆保険制度のための、かなり踏み込んだ構造改革の提案と言っていいと思います。
まず、メスが入るのが入院医療、つまり病院そのものっていう感じですかね。かなりドラシティックな提案に見えますけど。
おっしゃる通りです。キーワードは、機能の分化・連携・集約化ですね。
機能の分化。
はい。つまり、高度な医療機器とか専門の人材は、一部の基幹病院に集約しましょうと。で、重い救急とか難しい手術は、もうそこで集中的にやってくださいという考え方です。
役割分担ですか。聞こえは良いですけど、それって、例えば地方の患者さんからすると、これまで近所の病院で受けられた手術のために、わざわざ遠くの基幹病院まで行かなきゃいけなくなるみたいなことも。
まさにそこが今後の大きな議論のポイントになります。支払い側は、その代わり、集約された拠点病院にこそ、財源を重点的に配分すべきだと。
ああ、なるほど。
そしてその評価を標準化するために、今は任意なんですけど、DPC制度。
病名ごとに医療費を定額にするあの仕組みですね。
そうです。あれを全ての旧世紀病棟で義務化すべきだとまで言ってるんです。
なるほど。病院の姿がガラッと変わる可能性があるわけですね。じゃあ、もっと僕たちが普段お世話になる近所のクリニックとか薬局のレベルではどうなんでしょう?
ここもですね、かなり厳しい見直しが提案されています。象徴的なのが外来管理課さんの廃止要求ですね。
医療現場の効率化
外来管理課さん?
はい。丁寧な問診とか説明っていうのは、医者の当然の務めでしょうと。それは最新量にもともと含まれてるはずだから、追加料金はいりませんっていう理屈です。
うわあ、これは結構現場からすると挑発的に聞こえそうですね。薬局に対してもかなり課税当たりが強いとか?
ええ。特に病院のすぐ隣にある、いわゆる門前薬局。
ああ、やっぱり。
あそこは経営が楽すぎると指摘して報酬を引き下げるように求めてます。
なるほど。
あと面白いのが、ジェネリック医薬品の扱いで、今までは使うと加算、つまりご褒美だったのを、これからは使用率が低いと減算、つまりペナルティーを課す仕組みに変えようと。
飴から鞭への転換ですね。
ええ。時代が変わったということでしょうね。
その流れって、これからますます重要になる在宅医療の分野にも及んでいるようですが。
はい。そこも大きなポイントで、特に問題視されているのが、高齢者住宅なんかで見られる、短時間で頻繁な訪問看護です。
短時間で頻繁な?
ええ。例えば、ある施設では、看護師が10分程度の訪問を1日に5回繰り返す、みたいなケースが報告されてて、これだとケアがこぎれになるし、医療費だけが膨らんでしまうと。
うーん、それは非効率だと言われても、ちょっと仕方ないかもしれないですね。
そこで、個別の訪問ごとじゃなくて、一連のケアをまとめて評価する包括評価を導入して、こういう実態にメスを入れようというのが支払い側の狙いです。
全体を俯瞰してみると、これらの提案って、結局何を意味してるんでしょうか?
経営とか、医師の裁量に支払い側が本格的に介入しようという、構造的なパワーシフトの始まりとも言えるんです。
パワーシフト?
ええ。国民皆保険を持続させるためという大義名分の下で、強い危機感を持って変革を図っているわけです。
なるほど。データと効率性に基づいた、ある意味ではすごく合理的な提案に聞こえます。
ただ、もし本当にこの病院の機能集約が進んだら、地方とか敵地に住む人たちの医療へのアクセスって一体どうなっちゃうんでしょうか?
そうですね。
効率化の先にある地域医療の新しい姿、それをどうデザインしていくのか、これはもう私たち一人一人も考えていく必要がありそうですね。
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