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#96 ロケ地めぐり:『エマ』の邸宅ハートフィールドからヒロインの性格を読み解く
2026-05-29 19:40

#96 ロケ地めぐり:『エマ』の邸宅ハートフィールドからヒロインの性格を読み解く

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🎙️ ようこそ、英国ドラマタイムへ! 
イギリスの歴史ドラマをもっと楽しむためのポッドキャスト。

 

前回ご紹介したジェーン・オースティンの小説『エマ』。

今回は、映画やドラマで描かれたヒロイン・エマの邸宅「ハートフィールド」を徹底比較します!

 

単なるロケ地の紹介にとどまらず、 「なぜこの家が選ばれたの?」 「この空間がエマという人物をどう見せている?」 という一歩踏み込んだ“読み解き”をお届け。

 

今日本で見ることができる3つの作品

・1996年映画『エマ』(グウィネス・パルトロウ主演)

・2009年BBCドラマ『エマ 恋するキューピッド』(ロモーラ・ガライ主演)
 ・2020年映画『エマ』(アニャ・テイラー=ジョイ主演)

 

それぞれの建物や演出に隠された、驚くほど異なる「エマ像」を一緒に旅してみましょう。

皆さんの好きなハートフィールド」も、ぜひコメントなどで教えてくださいね!

 

 

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サマリー

本エピソードでは、ジェーン・オースティンの小説『エマ』に登場するヒロイン、エマの邸宅「ハートフィールド」を、3つの異なる映像作品(1996年映画、2009年BBCドラマ、2020年映画)から比較分析します。それぞれの作品でハートフィールドのロケ地選定や演出が異なり、それがヒロイン・エマの性格解釈にどう影響しているかを読み解きます。夢のように美しい理想郷、生活感あふれる温かい家、そして人工的なドールハウスといった多様なハートフィールドを通して、エマの多面的な姿が浮かび上がります。

はじめに:『エマ』の邸宅ハートフィールドを比較
英国ドラマタイムへようこそ。この番組は、イギリスの歴史ドラマが大好きな私が、ドラマや映画のおすすめ、ロケ地の秘密、当時の暮らしまで深振りしてご紹介しています。
物語の背景を知ると、作品がもっと楽しくなります。
前回ご紹介したジェーン・オースティンの小説エマ、今日はその物語の映画やドラマのロケ地についてご紹介したいと思っています。
物語の中にはたくさんの邸宅が登場するのですが、今日はその中でも中心的な、ヒロインエマ・ウッドハウスの邸宅ハートフィールドを比較してみたいと思います。
同じエマなのに、映像作品によってその雰囲気が全然違うんですね。
ある作品は、夢のように美しい英国上流邸宅、ある作品は静かで暖かい田舎の家、
そしてある作品ではまるで巨大なドールハウス、今日は今、日本で見ることができる3つの作品を比較してみます。
まず1つ目は1996年の映画、2つ目は2009年のBBCドラマ版、そして最後は2020年の映画版を比較してみます。
この建物を見るだけで、エマの性格の解釈まで変わってくるというくらい、全く違っていて本当に面白いんです。
では比較に行く前に、まずはエマの住んでいるハートフィールドというのはどんな場所なのかというのをまず知っておきたいと思います。
この物語の舞台はイギリスのハイベリーという架空の小さな村です。
ロンドンから南西に25キロ、当時の馬車でいうと2時間くらいの距離にあります。
登場人物全員が顔見知りで、よそ者が来ただけで噂になるような狭くてのどかな世界です。
このハートフィールドはウッドハウス家が代々受け継いできたこの村で最も格式の高い邸宅。
今は父のウッドハウス氏が所有していますが、実質的には21歳の次女エマが管理しています。
というのも父は高齢で極度の心配症、体が弱いと自分で思い込んでいて、
わずか1キロ離れた隣の邸宅に及ばれするのも億劫に感じるほどの人なんですね。
エマはこの地方の裕福なジェントリーの家を切り盛りすることをとても楽しんでいて、
自分は財産も十分に持っている。だから結婚しなくてもいいんだ、なんて言っているんです。
そんなお父さんを抱えながら、21歳のエマが取り仕切るハートフィールド、
この家をそれぞれの監督がどう表現したのか、早速1996年の映画版から見ていきましょう。
1996年映画版『エマ』:理想化された夢の世界
ではまず1996年の映画、エマから見ていきたいと思います。
この映画でエマ役を演じたのはグイネス・パルトローです。
この映画のハートフィールドは一言で言うと、これぞみんなが憧れる理想のイギリスという雰囲気ですね。
柔らかい色使いで上品で軽やかでロマンチック、まるで絵画のようです。
外観に使われたのはイギリス南部ドーセット州にあるケイムハウスというカントリーハウスです。
そして内装には2つの名門邸宅が使われています。
一つはバークシャ州にあるストラトフィールドセイハウス。
ここはナポレンを破った英雄ウェリントン公爵に国家から贈られたという優秀正しい邸宅で、
現在も公爵家の地邸として使われています。
そのために年に数日しか一般公開されない市長な邸宅です。
映画ではダイニングルームのシーンに使われています。
もう一つはエマたちの本棚に囲まれたギャラリーには、
ロンドン近郊にあるサイオンハウスのロングギャラリーが使われています。
これだけの本格的な上流階級の邸宅を組み合わせて、
映画の中のハートフィールドが作られています。
ではここから今回の本番ですが、
なぜこの家がエマという人物を映し出しているのか、
という読み解けに入っていきたいと思います。
このグイネス版のハートフィールドは、とにかく夢の中のイギリスのように美しいんですね。
そもそもこの時代、ディージェンシー域のイギリスの室内装飾は、
パステルカラーの壁やシノワズリの壁紙、豪華な家具が基本です。
だからどの作品にもこういった要素は共通して出てきます。
でもこの映画の特徴は光の使い方です。
柔らかい視線光や逆光を多用することで、
全体的にふわっともやがかかったように撮られています。
時代の特徴である豪華な内装をそのままに、
それを美しい光でコーティングする、そんな映像になっているんですね。
これがエマのキャラクターとどうつながるかというと、
この美しくコーティングされた世界が、
私は何でも知っていて、自分の世界を完璧にコントロールできている、
と思い込んでいる世間知らずで甘やかされたお嬢様、
エマの真理そのものなんですよね。
この家を見ると、エマは自分がこの完璧で美しい世界の女王様だと思っているんだな、
ということが言葉で説明されなくても伝わってくる。
現実をそのまま映すのではなくて、
全てを淡く柔らかくコーティングしてみせることで、
エマの世間知らずな理想郷を表現している、そんなふうに感じるんですね。
そこがこの1996年の映画の空間づくりのすごさなんです。
さて続いては2つ目の作品です。
2009年BBCドラマ版『エマ』:生活感あふれるリアルな家
2009年にイギリスのテレビ局BBCが制作した全4話のドラマシリーズ。
こちらには日本語タイトルに、エマ恋するキューピットというタイトルがついていますが、
エマを演じたのはロモーラガライです。
たくさんあるエマの映像家の中でも、原作の小説に一番忠実な設定だと言われています。
だからこそハートフィールドのロケ地にも地に足のついた本物が選ばれています。
外観や内装に使われたのは、イングランド南東部ケント州にあるスクワリーズコートというカントリーハウスです。
ここは17世紀後期に建てられた邸宅で、
1731年から大土家という一つのファミリーが代々所有して、今も実際にそこで暮らしている現役のカントリーハウスです。
現在は広大なブドウ園も運営されていて、ワインのテイスティングも楽しめるような場所になっているようです。
館内には一族が何百年もかけて集めてきた絵画や見事な家具、磁器やタペストリーがぎっしり詰まっています。
これだけ聞くとやっぱり豪華なお屋敷なんだなと思うのですが、
実は映画の中で見ると最初の映画グィネス版とは全く違う印象を受けます。
一言で言うと、本当に人が暮らしている家だなという感じがするのです。
本当に人が暮らしているんだなという変な表現かもしれないのですが、なぜそんなふうに見えるのか。
画面に映るハートフィールドは柱や家具の木の色が濃くて、部屋が少し狭く見えます。
壁の色もとても深みがあって、廊下はちょっと暗め。
そして何よりもお部屋の中に家具や調度品がぎっしり置かれているのです。
先ほどの映画とカメラの撮り方も比べると全然違います。
グィネス版は高い天井や広い空間をヒートアングルで美しく見せる、邸宅を見せる感じだったのに対して、
こちらのBBC版は人物をわりとアップで近くから撮ります。
部屋の全体像をあえて見せすぎるのではなくて、
登場人物の後ろにある暖炉とか手元にある机を象徴するのです。
私たちは建物そのものよりもその家で繰り広げられている会話とか、
そういったものに自然と目が行きます。
そこが生活している空間というふうに感じるところなんです。
実はここにちょっと面白い裏話もあって、
専門家の人たちによるとBBCのドラマは映画とか他の作品と違って、
芸術的な改編を加える予算があまりなくて、
歴史的な邸宅をそのままセットとして使わざるを得なかったというのです。
でもこれが何百年も家族が暮らしてきた家が持つ独特の空気感とか生活の匂い、
雑然とした温かみ、
そういうセットでは出せない本物のイギリスらしさが画面からにじみていることになったそうです。
そしてこれがエマのキャラクターの読み解きにどうつながるかというと、
このBBCのドラマ版のエマは理想郷のお姫様ではなくて、
地方の狭いコミュニティの中で現実の人間関係に揉まれながら生きている
等身大の地主の娘なんです。
お父さんが好む温かい暖炉のそばでぎっしり詰まった古い家具に囲まれて暮らすエマ。
このリアルなハートフィールドを見るだけで、
このエマは地元のハイベリーという村を本当に愛していて、
この狭くても暖かい世界を切り盛りしているんだなという感じがじわじわと伝わってきます。
このちょっと奇跡的な本物化、これがBBC版のハートフィールドの面白さです。
さていよいよ最後の3つ目です。
2020年映画版『エマ』:人工的で様式化されたドールハウス
2020年の映画エマ。
こちらのヒロインを演じたのはアニア・テイラー・ジョイです。
この映画のハートフィールドのロケ地に使われたのは、
イングランド南部、イースト・サセック州にあるウォール・プレイスです。
とても優秀あるカントリーハウスなんですが、
この映画はとても特徴的なんですよね。
一言で言うと、この映画のハートフィールドは、
美しいけれど、どこかちょっと変なんです。
一つ目にご紹介したグイネス版の映画のような、
夢の中のような優雅さとも違う。
二つ目のBBC版のドラマのような、
現実的な家庭の温かみとも違う。
かなり意図的に人工的で、様式的で、
どこかクスッと笑えるコメディのように作られているんです。
その雰囲気を作っている圧倒的な特徴なのが、やっぱり色ですね。
画面を見ると、ミントグリーン、ピーチ、淡い黄色、水色、
まるで高級なお菓子箱を開けたような、
ポップな色彩が目に飛び込んできます。
パステルカラーなら最初のグイネス版の映画も
そうだったんじゃないかと思うかもしれませんが、
2020年版のこちらの映画は、もっとそれがデザインされすぎているんですね。
自然に美しい家というよりかは、
18世紀のおしゃれな趣味を、あえてこれでもかと演出した世界に近いんです。
お屋敷というよりかは、まるで現代のおしゃれなボティックホテルや、
最先端のアートを見ているような、そんな感覚になります。
ちなみに、この鮮やかすぎる色彩に、
やりすぎなんではと感じる人もいるかもしれないんですが、
実は監督によると、当時の人々は古びた色の中で暮らしていたわけではない。
鮮やかな色彩は歴史的に正確だと語っています。
あの派手なパステルは、歴史交渉に基づいた意図的な選択でもあったようです。
今回、このロテ地のパールプレイスのインスタグラムを見ていたのですが、
2019年の投稿に、とても興味深いことが書いてありました。
階段のあるホールの壁を、ウエッジウッドの陶器を思わせるような青色に塗り替えたと書いてあったんですね。
映画の中で登場するあのホールも確かに青いんです。
ということは、映画のために塗り替えたのかなと思ったのですが、
現在は白に戻されているそうです。
私はあの映画に登場したブルーの壁がとても好きで、ちょっと惜しいなと思っています。
さらにこの映画の面白いのが、部屋の使い方とカメラの演出です。
この映画、空間の奇妙さをものすごく計算して作っているなと思うんですが、
例えば部屋のドアが大きく見えたり、広い部屋の中に登場人物がポツンと立っている。
その人物たちが左右対称に配置されていたり、
部屋の中がシーンと静まり返っていて、会話の間がやたらと長い。
美しい部屋のはずなのに、このちょっとシュールな映像のせいで、
見ているこちらは、なんだか人間観察のコメディを見ているような気分になってくるんですね。
ジェーン・オースティンの小説が持つ、イギリス上流階級の社交のぎこちなさとか、
滑稽さを建物の使い方で、露骨に見事に表現されているように思います。
じゃあ、この美しくてちょっと奇妙な空間は、エマというキャラクターをどう読み解くヒントになっているのか。
これが、この2020年版の映画において、とても面白いところなんですが、
ハートフィールドは単なる素敵なお屋敷だけではないんですね。
ここは、エマが閉じ込められている豪華な箱庭やドールハウスのようなものなんです。
外の世界から完全に隔離された、お菓子のように可愛くて豪華なミニチュア模型。
エマはその中で、まるでお人形で遊ぶように周囲の人間関係を、
あの子とこの子、人をくっつけちゃおうなんてコントロールしようとしているんですね。
だから、このエマは自信満々で、とっても支配的で、
他人の感情を何でも分かったような気になっているけれども、実は内面はかなり幼い。
その彼女の未熟さや世間知らずな子供っぽさを、
このおもちゃのような人工的な建物の美しさが強烈に強調しているように思います。
部屋ごとにパキッと壁の色が変わるのも、家具の配置がとても美しく整っているのも、
ここが1作目や2作目でご紹介した、現実のイギリスの田舎ではなくて、
階級社会をぎゅっと縮小したミニチュアの世界だから、
こういう風な雰囲気になっているんだなと思うんですよね。
建物をリアルな家として取るのではなくて、あえてドールハウスとして扱う。
このスタイリッシュで現代的な表現が、2020年版のハートフィールドのすごさであり、面白さなんです。
まとめ:ロケ地から読み解くエマ像の違い
さあ、ここまで3つの絵馬のハートフィールドを巡ってきましたが、いかがだったでしょうか。
ここで一度すっきりと整理してみたいと思うんですが、
同じヒロインの同じ屋敷を描いているのに、これだけ解釈が違ってきました。
まず1作目、1996年の映画、エマ。
こちらは夢のように、もやがかかったロマンチックな理想像でした。
2作目の2009年のBBCドラマ、エマ恋するキューピットでは、
本物の生活感が滲み出る温かくてリアルな家でした。
そして3つ目、2020年の映画、エマでは、
人工的なほど完璧に整えられた豪華なドールハウス。
こうやって並べてみると、ちょっとわかりやすいですね。
監督や演出家が、エマをどんな女性として描きたいのかというのが、
選ぶロケ地や色使いで、ここまでガラリと変わってくるんですね。
これが最初にお伝えした建物を見れば、その作品のエマ像がわかるというところなんです。
私はこの3つどれが一番好きかって聞かれると、
ちょっと一つ選ぶことはできない、難しいなと思うんですけれども、
皆さんはお好きなハートフィールドあるでしょうか。
ぜひ教えていただけると嬉しいです。
お知らせ:オンラインお茶会と次回の予告
最後にお知らせです。
英国ドラマとカントリーハウスをもっと深くもっと楽しむ
オンラインお茶会の第6回目を開催します。
今回のテーマはレディーズメイドとカントリーハウス。
英国の歴史ドラマや映画に登場する
奥様やお嬢様のすぐそばに寄り添うレディーズメイドたち。
あの人たちは実際にはどんなお仕事をしていたんでしょうか。
実は今から約130年前のイギリスに生まれて35年間もない間、
実際にレディーズメイドを務めた女性が書いた貴重な本があるんです。
今回はその本を教科書にして
リアルな仕事ぶりや彼女たちの人柄を紐解いていきたいと思います。
さらにドラマや映画に登場するメイドたちとも見比べながら
あのシーンはそういうことだったんだなという発見を
皆さんとたくさん共有していきたいなと思っています。
難しい知識は一切不要です。
お気に入りのお茶を片手にゆったりおしゃべりをしながら楽しむ
そんなカジュアルな時間です。
開催日は6月20日土曜日の夜8時から9時
お申し込みを締め切りは6月13日までとなっています。
詳しい内容や参加のお申し込みは
この放送の概要欄にあるリンクをぜひチェックしてみてください。
お参加お待ちしています。
さて次回は同じジェン・オースティンの作品から
ノーサン・ガービーを取り上げます。
お天馬で空想好きな主人公キャサリンが
憧れのお屋敷に招待されて
ここからがオースティンならではの仕掛けです。
ゴシック小説への愛と突っ込みが詰まった
ちょっと変わった一作です。
どうぞお楽しみに。
19:40

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