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Book Bridge Lab Presents 文学サロン・アルボレ
この番組は、大人の読書教室Book Bridge Lab代表の古原)がお送りするポッドキャストです。
奥田英朗とイラブシリーズの紹介
さて、今回も前回同様、奥田英朗コメンテーターについて紹介していきたいと思います。
と言っても、この作品自体に触れるのは、もうちょっと後になるかと思います。
さて、このとんでも精神科医ラブシリーズの第一作が、
In The Pool 2000年の作品です。
単行本が出たのが2022年で、この単行本自体に入っているのが
In The Pool 立ちっぱなし コンパニオン フレンズ いてもたってもの5作になっています。
ここまでが2000年から2022年にかけて、約3年、2年くらいにかけて書かれたものなんですが、
この後、まだまだ連載続きまして、そこからですね、たぶん1年経ったようですね。
いてもたってもが2002年で、次が2003年の空中ブランコっていう作品です。
そこからの5作、2003年から2004年にかけて書かれた、この続編が収録されているのが
空中ブランコという単行本です。
こちらが2004年に出されているんですね。
こちらには、空中ブランコ ホットコーナー ハリネズミ 岐阜のずら 女流作家という5作が入っております。
だいたいこの辺りまではスムーズにトントントンと連載が進んでいたようですね。
もうちょっとこの後も大丈夫かな。
ということで、ここ、こういうふうに、なんていうんでしょう、
連載があって、それがそのままスムーズに単行本として出されるっていうのは非常に良いことですよね。
まず、連載自体がちゃんと続かないといけないし、
連載といってもね、週に1回、月に1回とかそういうわけじゃないんですけれど、
半年に1回とかね、1年に1回ペースではあるんだけれども、
出していって、それらがちゃんと1つの単行本として求められるっていうのは、
結構意外と難しいというか大変なことではあるんですよね。
そんなふうにして、インザプール 空中ブランコというふうにどんどん出されていく、このイラブシリーズです。
イラブのキャラクターと診療
主人公がですね、イラブさんっていう精神科医なんですけれども、この人が非常に、なんていうんでしょうね、
とっぴな行動を起こしたりするんですね。
一つには特徴的なのは、注射が大好きなんですね。
注射が好きって言っても、注射をされるのが好きな人もいれば、
注射をするのが好きな人もいると思うんですけど、
イラブさんの場合はそれを見ているのが好きなんですよ。
看護師、だいたいこの作品は結構古いというか、2000年くらい前だと看護婦って言い方してますね。
看護婦のまゆみちゃんという方がいらっしゃって、そのまゆみちゃんがね、また面白いんですけれど、
なんていうんでしょうかね、すごい色っぽい格好をしていて、すごいサバサバしていて、
実際にはこの音楽をやっているっていうところもあってね、なんか非常に面白い人なんですよね。
このキャラクターについても、なんていうかこの作品の魅力になっているんですけれども、
このイラブとこのまゆみちゃんってこの2人がメインのキャラクターで毎回登場することになります。
それ以外のキャラクターは基本的にその回だけの登場になるんですね。
そのまゆみちゃんが毎回注射をするんですよ。もうとにかく注射するんです。
神経科にね、とりあえず来た。今だったら神経科って評判しているお医者さんってだいぶ少ないんじゃないかなと思いますね。
だいたい精神科か診療内科かですかね、とかが多いんじゃないですかね、だいたい。
もしくはね、そういうものが複数書かれているところもあると思いますけれども、
それはね、やっぱり偏見っていうものがある種薄れてきたところもあるかもしれませんね。
昔だったら精神科って言うと、もう本当になんか言ったら終わりだみたいな感じだったのが、
今だとたぶん、例えば認知症の方とかに対する理解も進んできて、
あと発達症の方に対する理解も進んできて、
例えば認知症の方とかに対する理解も進んできて、
あと発達障害ですよね、発達障害についての認知度もね、
まあ2000年くらいだったらもう全然発達障害っていう言葉自体がまずもうほぼない時代、
まあありましたね、2000年くらいだと、そうね、言葉としてはたぶんあったと思うんですけど、
そうかな、2007年に私大学に入っているんですけれど、
その時には少なくとも発達障害って言葉はありましたね、使われてました、学術的には。
だからまあ2000年くらいにはもう十分日本でも使われている言葉だったと思うんですけれど、
まあそういったものも大体精神科とかでね、いろいろ見てもらえたりもしますから、
大体精神科と標榜しているお医者さんが今多いですよね。
そんな中で、そうね、この当時は神経科、まあ今も神経科みたいなんですけれども、
神経科っていう名前でやっています。
神経科に行ってまずされるのが注射っていうのはこれはもう危ないですよね。
もう現代でも精神科行ってとりあえず注射打たれるって言ったらもう何事かと思うんですけれども、
このイダブスさんはもう注射大好きなんですよ、注射を見ているのがね、
注射をこう打たれている姿を見ているのがすごい大好き。
まあどこが好きなのかっていうと、注射のね、その範囲のところをじっと眺めているところからすると、
何かその、ね、なんかそこが面白いんでしょうね。
なんかその打たれている側の表情とか打っている側の動向とかじゃなくて、
やっぱり打たれているところをじっと興奮しながら眺めているから、
ある種のフェティズムなんでしょうかね。
なんかそういう注射フェチなところがあるんですね、イダブさんには。
なんていうところから、まあそこは導入でして、実際には、
うーん、なんて言うんでしょうかね、イダブさんのこのイダブ一郎っていうキャラクターがですね、
なんていうか、周りを巻き込みながらいろんなドタバタを繰り広げるということにはなっていくんです。
まあ基本的にはもうほとんどそれで、なんていうかね、もう、うーん、
大体、セオリー通りにいくというか、もう安定のね、
大体最初に、うーん、何か異常を感じ始めた人が、
ここを受診する、何気なくこのイダブ総合病院の神経科を受診することになって、
で、それで、これはもう、うーん、この医者大丈夫かと思いながらも、
そのまま通い続けることになり、通っていくうちにだんだんと、
イダブに対して、うーん、秘密を打ち明けたりとか、悩みを相談したりとかし始めて、
で、イダブはね、それに対してね、適切な対応してるってよりは、
なんかもうあんまりなんか適当な感じも見えつつ、
でも、チラッとね、ちょっとこう、医療用語とか、
なんかちょっと精神科医らしいところも出してくるんですね。
で、そんなこんなで、最終的には、なんか問題が解決していくというか、
症状が収まるケースが多いんですけれども、
必ずしもね、その症状が完全に収まる感慨になるとか、
そういうことがね、目的地でもなくて、やっぱりなんか最終的に何かね、
前に進めたりとか、ほっとするとか、
なんかそういう終わり方をしていくんですね。
なので結局、まあハッピーエンドです。
もうとにかくハッピーエンド。
で、こういう展開もだいたい毎回一緒なので、
割と安心して読めるんですよね。
もうとにかく最初から、なんかこの人は、
なんかどういう心の病を抱えてるんだろうとかね、
まあ心の病って言っても、
だいたいこう、自覚症状が出るのが身体的な症状だったりするんですね。
なんか震えが来るとか、これができないとか、あれが怖いとか、
まあなんかそういうものがいろいろ、あとこれがやめられないとかね、
そういうなんとかフォビアとか、なんとか依存症とか、
そういうものが出始めるんですよ。
だから読んでる側は、何が、今回どういうことになってる人が主人公なんだろうとかね、
そういうところを考えながら、
で、実際イラブさんとは出会うことでどうなっていくのか、
どう変化していくのか、
これまたね、おいおい述べたいと思うんですけど、
結局ね、すごい患者さんが変化していくんですね。
患者の成長と治療の視点
何かその患者さんが、心のつっかかりとか生きにくさを抱えているものが、
不思議とイラブと言うことによって、いつの間にか解決していくっていうね。
そこには外的病院ってよりはやっぱり内的病院、
その本人自体が変質していくんですよ、変わっていくんですね。
で、その変わり方も何かもう急に劇的に変わるっていうんじゃなくって、
少しずつ回を重ねるごとにというかね、
このイラブと会ったりとか、何か行動を起こしたり、
あとは周りの変化に、周りが自分に対してどう考えているのか、
どう接しているのかってことに気づき始めるんですね。
そういうものを積み重ねていくことで、ちょっとずつ変化していくと。
精神医療っていうとね、なんとなくこの薬を飲んで治すイメージがあるし、
実際そうなんですよ。精神科医がやることってカウンセリングってよりは、
薬を飲んで処方することなんですね。
イラブさんも全然薬も処方するんですよ、さらっとね。
で、結構その場面はさらっと描かれます。
まあでもそういうもんですよね。
薬っていうのはね、割とそれで全て解決するものでもないけれども、
やっぱりその薬を服用することでかなり楽になる部分とか、
とりあえずの一旦の症状が治まるとかね、
目の前の問題解決にはかなり身体的症状については有効だったりするんですよ。
っていうのが非常に結果的に示されているんですよね。
ですからもうなんでしょう、こう精神医療とか、
『女流作家』のテーマ
その心理、臨床心理とかに縁がある人というか、そこに親しい人からすると、
結構本質的というか、なかなか相当理だなというかね、
確かにこういう側面はあるなって思わせられることが多いんですよね。
たぶんあとはその2000年くらいの時代、背景からすると、
ある種の偏見があった時代にこれが描かれたことで、
こういう症状あるある、自分もあると思った人がいっぱいいたと思うんですよ。
そういったものがね、たぶん楽になった人も多いんじゃないかなと思うんですよね。
何かが怖いなんとかフォビアとか、何かがやめられないなんとか依存症って、
それで生活に一時止し困ったことがなくても、
でも多くの人が思い当たる死があると思うんですよ。
そういう時ってあると思うんです。
こういうことが怖い、こういうことがやめられない時っていうのがね。
でもそういうものって良くないんじゃないかとか、もしくはもうひどい病気なんじゃないかとか、
とにかくいろんな妄想に苦しめられることもあると思うんですね。
でもそういったものが、もしかしたらこれを読んだ人にとっては救いになった人も多いんじゃないかなと思うんですよね。
そういうこともありつつ、この作品が連載されていったと。
特に紹介したい作品としてはですね、
まず最初のね、イン・ザ・プールって作品は、
これは後ほど今度、このイン・ザ・プールって映画にもなってるし、
あとはアニメ化もされてるんですね。
その辺りで少しあらすじとかも詳しくお話しようかと思ってるんですけれども、
今回なのでその2作目の空中ブナンコっていう単行本の中からなんですけれども、
その最終作品が女流作家って作品で、
これがね、自分にとっては結構刺さる作品でしたね。
女流作家、これ作家さんが主人公なんですね。
主人公というか今回の患者さんなんです。
作家の苦しみ、産みの苦しみだったりとか、
そして売れ続けること、あとは作品を残すこと、
そういうクリエイティブな仕事をしている人にとっては、
共通の悩みっていうものが非常に共感できる作品なんですよね。
この作品はね、何て言うんでしょう。
今回その女流作家って作品自体では、
あんまり最終的に解決したかな、みたいなところもあるんですよ。
最終的に解決したかな、この作品も先ほど申し上げたように、
いろんなエンディングがあるんですけれども、
比較的これはもうなんか症状がすべて解決して、
すべてが良くなったみたいな感じの終わり方ではないんですね。
そういう感じではなくて、
まだまだ戦いは続くな、みたいな感じではあるんですよ。
そういう感じなんだけれども、
しかもこの女流作家さんの場合の症状っていうのが、
心肺症に近いんですよね。いろいろ気になっちゃうんですね。
これもいろんな診断名が付くというか、
いろんな診断名が付けられると思うんですけれども、
なかなか脅迫的な観念として、
場面設定とかキャラクターの設定とかが、
前の作品でも使ったんじゃないかってことは、
気になって気になって仕方がないっていうような状況になるんですけれども、
それがどう解決していくかっていうよりは、
いろんな状況と向き合う中で解決していく。
これもそうなんですけど、
イラブさん自身が直接何かをしたから、
そのことによって改善するっていうよりは、
イラブの奇妙な行いですね。
奇行に付き合っているうちに、
いつの間にか何か次の段階に進んでいけている、
みたいなところがあるんですよね。
これはなんとなくクリエイティブな仕事をしている人にとっては、
すごく刺さるところだし、
他の回と比べても、
エンディングの向き合い方がちょっと違うっていうかね、
感じがいたしました。
でも毎回意外と違います。
何て言うんだろう。
もちろん安定してハッピーエンド思考ではあるんだけれども、
どこかね、何でしょう。
それぞれ違う道を見つけていくというか、
人生の中でそれぞれに関して、
精神疾患とか特にそうだと思うんですよ。
精神疾患のエンディングってね、
やっぱり一人一人違うし、
どこを終わりとするかによって切り口も変わるし、
人生の中で繰り返すことも多いから、
なかなかエンディングって言うと難しいんですけど、
でもそれぞれのエンディングとか、
それぞれの終え方とか、
病との付き合い方とかね、
そういうものがあると思うんです。
そういうこともわかるんですよね、
この作品を読んでいると。
そういった点でも、
この精神医療っていう側面も意外と描けてるというか、
逆に臨床の側にいる人からしても、
少し共感できちゃうところがあるんじゃないかなと思いますね。
よろしければこの作品、
女流サッカーって作品もぜひ読んでいただきたいと思います。
精神医療とエンディングの多様性
こちら空中ブランコ、これは2004年に単行本、
2008年に文庫も出ております。
そうですね、この作品どれ読んでも大丈夫です。
どこから読んでも大丈夫だし、
基本的にっていうか、ほとんどまず繋がりないです。
それぞれの話は独立してますので、
どこから読んでも、どの作品から読んでもいいし、
最初の方読まなくても大丈夫だしね。
どこの単行本から、どこの文庫本から読んでも大丈夫ですので、
ぜひどれかから読んでみてはいかがでしょうかね。
今回もまずこのあたりにしておきましょう。
次回はおそらく今度インザプールの話をね、
いよいよしていきたいかなと思います。
コメンテータになかなかつながりにくいですが、
せっかくちょっといろいろこう、なんていうんでしょう。
結果的にコメンテータにつながることで、
わかることもありますので、
ぜひお付き合いいただければと思っております。
この番組ではお便りを募集しております。
番組の感想や質問など、どしどしお待ちしております。
宛先はメールアドレス、ローマ字で、
4週間はCHISYUKNでお待ちしております。
ぜひこれ文庫ね、今ちょうど売り出し中の作品ではありますので、
結構本屋さんで売っていると思いますので、
ぜひお買い求めいただいてはいかがでしょうか。
ではまた次回もお楽しみに。
ご案内は小原大輝でした。