1. SCP話
  2. #76 SCP-2408-JP - 明日、よう..
2022-06-25 44:20

#76 SCP-2408-JP - 明日、ようやくユキが降る・Tale-JP - 東京事変

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紹介SCP/Tale

Author: O-92_Mallet
Title: SCP-2408-JP - 明日、ようやくユキが降る
Source: http://scp-jp.wikidot.com/scp-2408-jp
Year of creation:2020
CC BY-SA 3.0

Author: Ryu JP
Title: Tale-JP - 東京事変
Source: http://scp-jp.wikidot.com/tokyo-incidents
Year of creation:2020
CC BY-SA 3.0

SCP財団とは: https://ja.wikipedia.org/wiki/SCP%E8%B2%A1%E5%9B%A3

©︎SCP財団 http://ja.scp-wiki.net/

00:05
スピーカー 1
アイテム番号 SCP-2408-JP
スピーカー 2
オブジェクトクラス Euclid 特別収容プロトコル
スピーカー 1
SCP-2408-JP周辺区域における都市再構築現象の発生頻度の高さが理由となり、
オブジェクト領域は実質的に一般社会から隔絶された位置に存在しているとみなされています。
したがって、SCP-2408-JPには、収容手順14-ヘイム、都市内隔離領域標準的収容が適用されています。
特別収容プロトコルは、SCP-2408-JP-1が発信する画像の法則性解明に重点を置いて構成されています。
SCP-2408-JPの山頂には、常に3機以上の合体ドローンが待機しています。
SCP-2408-JP研究チームに所属する職員は、合体ドローンを経由して、
スピーカー 2
SCP-2408-JP-1から傍受した通信データを解析し、復元された画像をBEPのSCP-2408-JP記録ファイルへと保存します。
スピーカー 1
ドローンが再構築現象による被害を受けた場合、新規のドローンをSCP-2408-JPへ輸送する任務を、
スピーカー 2
サイト81GB所属の運輸部門が担当します。
スピーカー 1
東京内で活用可能な安定した収容資源の乏しさから、再構築現象に備えた防御は、Cクラス以上の職員が滞在・通過する領域に対してのみ実施されます。
スピーカー 2
説明
スピーカー 1
SCP-2408-JPは、東京都ロックの都市再構築現象発生区域の中央部に出現した標高およそ2230mの山岳です。
2017年以前の東京都武蔵野市が構設のほとんどない気候であったことに反し、
SCP-2408-JPは1年を通じて常に-5℃未満の寒冷な気候で安定しており、
標高200m以上の区域の大半は暑い積雪によって覆われています。
雪原の下に埋まっているのは多摩地区の建築物に多用されていたとみられる木材、鉄骨、コンクリートの集積物であり、
スピーカー 2
通常の山肌を構成するような岩盤は認められません。
スピーカー 1
東京都ロック内の多区域における都市構造大社スパンが最長でも32時間であることと、
03:04
スピーカー 1
対照的に、SCP-2408-JPは2018年1月31日から少なくとも2年以上、
山岳から他の地質構造への再構築現象を見せたことがない点において得意的な領域です。
SCP-2408-JP-1はモンゴロイドの特徴を備えた30代の人・男性型実体であり、
ブランド不明のトレンチコートを主軸としたモノトーンの要素を常に身につけています。
実例は、SCP-2408-JPの9号目となる標高およそ2000mの地点から海抜30m以下の平野までを連続した滑空によって移動することが可能であり、
これは実例の左手に保持されている黒色のコウモリ傘が受ける空気抵抗によるものであると推測されます。
傘のサイズが日常生活で雨除けに使用されるものと同等であることに反し、
実例が有する滑空能力は翼長10m級のハンググライダーを使用した状態に匹敵しているように観測されます。
この他に、SCP-2408-JP-1は2015年にApple社が発売したモデルのスマートフォンと類似した外見の小型情報端末を所持しています。
SCP-2408-JP-1とのあらゆるコミュニケートの試みは現在まで成功しておらず、
実例が有する瞬間的な消失能のために身柄の確保も全て失敗に終わっています。
実例を撮影した断片的な映像記録は、
2017年12月17日に武蔵野市内で行方不明となった気象予報士山岸剛氏、当時29歳と告示するプロモーションをSCP-2408-JP-1が有することを示していますが、
山岸氏の所持品の中にSCP-2408-JP-1が所有している各種の異常物品は含まれていなかったことが判明しています。
SCP-2408-JP-1の主要内情勢は、後述するイベント2408-JPおよび画像2408-JPを通して、東京内の超常気象を予測するかのような振る舞いを見せることです。
SCP-2408-JPの管理に当たっての目標は、本オブジェクトから獲得可能な情報を用いて、東京現実崩壊性広域災害の発生予測制度を向上させることにあります。
イベント2408-JP並びに画像2408-JPの概略は、本報告書のホイを、完全な記録はWebのSCP-2408-JP記録ファイルをそれぞれ参照してください。
06:13
スピーカー 1
ホイ1 イベント2408-JP概要
SCP-2408-JP内部では、約23時間の周期で以下に述べるイベント2408-JPが発生します。
イベント2408-JPは、SCP-2408-JP領域内にSCP-2408-JP-1が出現し、消失するまでの約40分間の工程の総称であり、イベントの結果として講述する画像2408-JPが出力されます。
イベント2408-JPの主要なタイムライン
1. SCP-2408-JPの9号目にあたる特定領域に、SCP-2408-JP-1が出現する。実例の出現する瞬間の詳細な映像記録の撮影は、当該領域で常に発生している吹雪の影響により難航している。
2. SCP-2408-JP-1は左手のコウモリ傘を展開し、数歩から十数歩の助走の後に離陸する。実例が履いているのがビジネスシューズでもあるにも関わらず、実例は震度10m以上の雪原を走る際に通常発生するであろう抵抗を受けていないように観測される。
3. 滑空中のSCP-2408-JP-1は右手で情報端末のカメラを構える。実例は、SCP-2408-JPから肉眼で見渡すことが可能な範囲の東京の空と、山裾に広がる東京構造群等を撮影している。
4. SCP-2408-JP-1の飛行ルートは、吹雪の風向きによって多数のバリエーションに分岐するが、いずれの場合でも実例がルートの中途で墜落することはない。
SCP-2408-JP-1の服装は、氷点下の環境における保温性が不十分であるように見え、実例がシバリングを行う場面が頻繁に観察される。
4. 約30分間の滑空の後、SCP-2408-JP-1は、SCP-2408-JP-36のいずれかの地点に着陸する。実例の着陸地点に法則性は見受けられないが、実例が着陸前にSCP-2408-JP領域内から脱出する事例は極めて稀である。
5. SCP-2408-JPは傘を閉じ、情報端末を操作する。この時点で、情報端末からは5G規格の無線通信用の電波が発信され、財団の標準的な盗聴設備を用いて防受することが可能である。
09:10
スピーカー 1
送信されている情報は件名と本文が空白で、1から6枚の画像以下、画像2408-JPが添付されている電子メールの形式を取っているが、本来の送信先は空欄として表示されており、追跡には成功していない。
6. 情報の送信を終えたSCP-2408-JP-1はトレンチコートをひるがえす動作と共に消失する。消失地点には雪によって形作られた足跡のみが残される。
物理的手段によってイベント2408-JPの進行を妨害する任意の試みは、SCP-2408-JP-1の即時の消失、並びにイベント2408-JP全工程の再試行の発生を招きます。
2. SCP-2408-JP記録ファイルより抜粋。600回以上にわたるイベント2408-JPの観測実験の結果より、イベント途中でSCP-2408-JP-1が発信する情報は、イベント終了から23時間以内に東京都ロック内で発生する頂上災害との関連性を有する内容であることが判明しました。
以下のリストは、オブジェクトから回収された画像2408-JPと、その後に発生した頂上災害の様相をひも付けて記録したデータの抜粋です。
なお、SCP-2408-JPを追跡中の合体ドローンが撮影した写真は、ほぼ全数は、吹雪によってホワイトアウトした視界のみを写していたことに留意してください。
発生した災害
スピーカー 2
三鷹市に存在していたすべてのネオンサインの破裂。市内は4色の巨大な高級に埋没し、約9000棟が全焼。
スピーカー 1
発生した災害
黄金石の地下およそ40m、配管等が埋設されていた層までが地表から剥離し、単一の周回を形成して空中へと扶養した。高度4500mまでは追跡可能であったものの、それ以降の瓦礫の行方は不明。
発生した災害
杉並区にて全数不明のイエネコとみられる動物が、アスファルト路面や建築物の壁面を破って出現。
残存する人工物を破壊しながら、同区域直上の石欄運より降ってくる多数の月子類を飼料していた。
都市再構築現象を挟みながら、同様の画像及び災害が前後26日間にわたって記録され続けた。
12:05
スピーカー 1
発生した災害
SCP-2408-JPを除く東京都6区の全域が重油の底に沈んだ。発生源は西東京市の疑似クレーター群とみられる。
SCP-2408-JPが影響を受けなかった原因が異常性によるものか、単なる標高差に依拠するのかは不明。
発生した災害
インシデント2408-JPを参照
インシデント発生前の最後のイベントで取得された画像
保委3
インシデント2408-JP
2020年3月22日のイベント2408-JP終了から7時間後、イベント発生予定時刻と明らかに異なるタイミングでSCP-2408-JP-1が出現しました。
通常のイベント時と同様の手順を踏んで滑空を開始した実例は、そのままSCP-2408-JP領域外部へと脱出して北東へと滑空を続け、練り幕で発生していた頂上災害に巻き込まれる形で消失しました。
この事案の前後に引き起こされた一連の異常事象の情報は以下の映像記録を参照してください。
映像記録2408-JP
撮影日時、2020年3月22日17時04分から17時36分
撮影者、斎藤八一GB管轄合体ドローン3号機
再生開始
17時04分
SCP-2408-JPの3格9号目、通常イベント時と同様の位置からSCP-2408-JP-1が飛翔したとの報告がなされる。
山頂より合体ドローン3号機が緊急発進する。
5分
ドローンが滑空中のSCP-2408-JP-1に追いつく。通常イベント時と異なり、実例は情報端末のカメラを起動していない。
吹雪により映像の視界は不良だが、確認できる範囲では実例の表情は高揚しているように見える。
吹雪により有効な映像が撮影できていないため中略。
23分
SCP-2408-JP-1は通常イベント時であれば着陸するはずの地点を超えて滑空を続けている。吹雪が弱まり始める。
スピーカー 2
24分
スピーカー 1
SCP-2408-JP-1に接近したドローンは実例の顔面を横写しにする。実例は明らかな歓喜の表情を浮かべている。
25分
15:00
スピーカー 1
SCP-2408-JP-1がSCP-2408-JP領域の境界に到達する。この時点で実例は未だ高度250m程度を保っている。極めて珍しいことに領域外は快晴であり夕焼けが広がっている。
26分
SCP-2408-JP-1がSCP-2408-JPを脱出し、北東の練馬区へ向けて滑空を続ける。
コウモリ傘が気流を受け、実例は再び高度を上昇させる。地表面に広がる再構築中の都市は様々な色の家屋が混ざり合って海のように見え、異常な雪豪を受けた建造物、車両、人が多数観察される。
27分
空から何らかの実体が落下してくる。実体は人型でモンゴロイド系の若年女性のように見える。数秒後、女性と同一の外見を持つ人型実体が徐々に個体数を増しつつ高下するようになる。
それぞれの実例は地表面に接触しても衝突せず、その場で地表面に溶け込んでいくかのように観測される。
SCP-2408-JP-1は人間の雨の中を飛んでいる。
28分
空には薄い雲がかかる。
降下してくる人型実体の数が100体を突破し、さらなるペースの増加を続けている。
そのうちの数体は合体ドローンの回転翼に衝突して破壊されるが、ドローン側の被害は飛行能力に影響が及ばない範囲内である。
スピーカー 2
地表の再構築中の都市群の中に人型実体の特徴が組み込まれるようになり、むき出しのコンクリートと鉄骨が少しずつ肌色へと変化していく。
スピーカー 1
29分
SCP-2408-JP-1の高度は約300メートル。
都市の再構築現象が一時的に停止する。
肌色のコンクリート、黒色のタイヤ、白色の漆喰などがモザイクアートのように組み合わさり、一つの人の顔面を模した構造体が2万平方メートル程度の面積に広がっている。
顔面は成人人女性のもののように見える。
SCP-2408-JP-1の拙者は実例が涙を流していることを示している。
30分
SCP-2408-JP-1が突如としてコウモリ傘から手を離す。
傘は地上の顔面の中心へと向かうように飛んでいく。
SCP-2408-JP-1は顔面の口に見える地点へ落下していく。
31分
コウモリ傘が急速に拡大していき、地表の顔面を空から隠すように広がっていく。
18:02
スピーカー 1
高度を下げたドローンは3分ほど中断していた都市の再構築が再開したことを記録する。
SCP-2408-JP-1の姿はすでに確認できない。
32分
合体ドローンがコウモリ傘の作り出す影の中に侵入したため、映像が薄暗くなる。
建築物により作られていた単一の顔面は都市の再構築に伴って分割され、より小さな複数の顔面へと分かれていくように観察される。
それらの顔形は2種類に分けることができる。
一方は占国の成人人女性の顔であり、他方はSCP-2408-JP-1を模した顔である。
33分
上昇を続ける空中のコウモリ傘が少しずつ閉じていく。
傘の影からはみ出した地表面は再びその構造を変化させ、元の様々な色の家屋の集積体へと戻っていく。
影の中にある2種類の顔面はその高さを増すように再構成され、一部からは人の腕や足のように見える建造物の周回が飛び出すようになる。
34分
コウモリ傘が完全に閉じる。地表面に落ちる影はごく狭い範囲のみとなり、そこには全高320m程度の2本の肌色の扇頭が構築されている。
塔を構成する建築資材は互いに複雑に絡み合っている。
35分
スピーカー 2
コウモリ傘が地震と同系の光の塊へと変化し、消失していく。
スピーカー 1
光は崩壊していく塔を照らす。遠景にはすでに沈みゆく太陽が見える。
36分
異常な塔は消失し、さらなる、あ、単なる建築資材の塊へと分解される。
コウモリ傘が存在していた空中には虹が出現する。
この時点をもってインシデント2408JPの全工程が終了したとみなされる。
再生終了
インシデント2408JP中の一連の映像記録は練馬区の地表に降り注ぎ、
顔・形・様の異常建築物構造体を形成した女性人実体が、
インシデント前日に記録された画像2408JPにおける被写体の女性と同一であることを示唆しています。
対象の女性は2017年12月17日に東京都練馬区で行方不明となったアーティスト、
園美由紀氏、当時25歳であるとみられ、
21:03
スピーカー 1
彼女は山岸氏、説明セクションを参照と婚約していた事実が確認されています。
HOY-4 インシデント後のSCP-2408JP
インシデント2408JPの発生以降、およそ12日間にわたるイベント2408JPの欠落が認められました。
2020年4月3日を境として新たなイベント2408JPが発生するようになりましたが、
インシデント前からの著名な変更点として、以下の2点が確認されました。
SCP-2408JP-1の外見がモンゴロイド系のヒト・シンセイジのものに変化しました。
ただし、コウモリ傘と情報端末は以前と同一の物品が使用されているように見受けられます。
新たなSCP-2408JP-1の身長が以前の個体の30%程度であるにも関わらず、
実例にはそれらの物品の適切な使用が可能であるように観察されます。
イベント2408JPの経過に目立った変更点は存在しませんが、
イベント時に回収される画像から、翌日の頂上災害予測が
正しく導出される確率が最大で70%低下していることが判明しました。
それ以降のイベント発生ごとに、シンセイジのSCP-2408JP-1の外見は
通常のヒトと同様の速度で成長していることが確認されています。
オブジェクトから得られる画像が示す災害予測精度の変化に関する調査は、
依然として継続中です。
予知、人間型、写真、場所、天候、建造物、生殖、移動、通信のタグが付いてます。
はぁ、疲れた。
都市再構築現象。
あー、なんかテイルになるのかな、これ。
リンクがあって、テイルですね、JPのテイルにある。
スピーカー 2
東京事変っていう。
どうしよう、ついでに、ついでにっていうのもあるんだけど、読んでしまおうかな。
スピーカー 1
じゃあ、読んでみます。
東京事変。東京は壊れて消えた。
1998年の7月12日。その日にウェールは消え去って、
想像上の世界の話だと思っていた技術は世の中に急速に広がった。
東京もその新しい技術、今で言えばパラテックの恩恵を享受していたし、
経済の急成長によって2009年の世界恐慌すら耐え抜いた。
24:02
スピーカー 1
だからこそ油断していたんだと思う。
さらに言えば世界中の誰もが油断していた。
2001年9月11日のマンハッタン事件。
あの事件のように、人災として異常なテロが街を破壊することはあっても、
天災は克服したと大多数の人間は思い込んでいた。
そんなものはウェールがめくられる前の時代遅れの話だと思っていた。
だけど結局人類が天災を克服することはできなかった。
2017年の12月17日。そこから東京は壊された。
26年間も壊され続けた。
その日は終わらない悪夢の始まりだった。
新しい形の天災は東京を飲み込んだ。
2017年12月17日、6時、大阪某所。
室橋製薬工業会社員。
幕が破れた日から世界は大きく変わったと思う。
空を飛ぶ車は現実のものとなり、
スピーカー 2
情報は脳に直接インプットされ、遠距離の移動も次元炉によって一瞬で終わるようになった。
スピーカー 1
まるで幼き頃に夢見ていた未来がそこにあった。
都市圏では1000mやら2000mを超える超高層ビルが織りなす摩天楼が堂々と構えている。
そんな中で人々は摩天楼を繋ぐ空中回路を行きかっている。
しかしそんな様変わりした世界でも日常は続いた。
仕事も続いたし、むしろ仕事は増えていくばかりだった。
自分はまだ空が暗いというのに早朝から仕事の関係で大阪から東京へ向かっていた。
次元炉の構築で大阪、東京間のアクセスは20分以内で済む。
だから遠距離の移動は格段に楽になった。
陸も海も空も、あらゆる交通系は自動運転技術や交通管理システムで全部管理されている。
そのおかげで渋滞やら遅延なんて言葉も消えて、遅刻の心配をすることはもはやなくなった。
天候だって自動的に制御され、常に最適化されている。
天気予報だって必ず当たるから傘を忘れたりなんてこともなくなった。
噴火や震災だって地盤制御技術で過去のものになった。
数年で治せない病気もめっきり減ったし、ずっと治らないと思っていた妻の病気も治癒できた。
新しい世界は本当に桃源郷のようだった。
だがやはり長旅を伴う仕事が若干の気だるさを伴うものなのは何も変わらない。
自宅から東京方面次元路へ向かって進む自動運転の車の中で、自分はそんなことを考えていた。
2017年12月17日、7時30分、埼島8127
財団日本支部・研究員
その日の財団はいつものような業務で、特別緊急性の高い業務というものは存在していなかった。
27:05
スピーカー 1
少なくとも、今日中にいきなりKクラスシナリオの可能性が新しく出現しただとか、そんなものはなかった。
財団は弱くなってしまった。
1998年のイベントペルセポネで責任を問われて、2001年のマンハッタンカオスでいよいよ一部部門が解体された。
ベールもとっくのとうに消えて、オブジェクトは白日の下にさらされた。
異常はもはや日常だった。
だが、人間が手を出してはいけない範囲のことわりもそこにはあった。
人間が理解すらできないことわりがそこにはあった。
それは正しく異常だった。
それを財団は民衆から遠ざけた。
財団でも、今日起きたことについて正確に予測している人間なんていなかった。
むろんこういう事態も想定はしていたが、その想定は容易く超えられた。
少なくとも日本支部には誰一人としてその現象を予測している者はいなかった。
それは私たちが理解できないことわりだった。
そして、それは起きた。
2017年12月17日9時17分東京潮止め
中央テレビ臨時ニュース
緊急速報です。
人体発火現象、現実体不安定化、アノマリー出現多発、小規模次元崩壊、急速気温変化などの異常現象が同時多発的に観測されました。
決して異常なオブジェクトや不審なオブジェクトに近づかないでください。
そのようなオブジェクトを発見した場合は、指定の専門・専用番号にて通報を行ってください。
繰り返します。
2017年12月17日9時30分東京大手町
むろん橋製薬工業会社員
最初は本当に単純な誤報かと思った。
というより、メディアが何を報道しているのか理解できなかった。
あまりにも異常な報道に満ちていて、自分は夢でも見ているような気分だった。
報道では上下水道は逆行していて、川に戻っていくはずの排水は再び上水道に逆流し、上水道から出てくるはずの水は蛇口をひねっても出なかった。
それどころか蛇口に水は戻っていった。
それぞれ逆再生のように上下水道は反転していた。
また、お台場では高圧電流が噴火した。
粘性のある電流は埋め立て地のほとんどを飲み込みショートさせ、破壊した。
その場には当然火山など存在していない。
太陽も異常なほどきらめいている。
異常が日常となった今でも、それは異常としか言いようがなかった。
30:03
スピーカー 1
だけど正直な話、まだ信じていなかった。
何かの企画、誰かのいたずらくらいだろうとしか考えていなかったんだ。
2017年12月17日、10時30分、東京・浅草、財団日本支部エージェント。
その時自分は非番で浅草にいた。
だが、東京を襲った異常現象により緊急で任務を受けていた。
浅草は形状型による概念流による構造変化を起こしていた。
秋葉原と浅草は区画の乱雑な痴漢が起きたために、
ライフラインの破損やGPSの実質的な無力化、同時多発的な火災が起きた。
避難経路なども無意味と化し、事態をより深刻にした。
自動運転も危機エラーでもはや使い物にならず、交通系の何もかもが麻痺していた。
人々は次々と痴漢されていく別の地域に巻き込まれて消えたり切断されたりしてパニックだった。
財団やGOCは支援を行っていたが、
あまりにも唐突に現れ急速に拡大していくこの悪夢に対してはあまりにも無力だった。
このような災害は浅草だけでなく東京の全域で起こっていた。
2017年12月17日10時30分、サイト8時27分。
財団日本支部研究員。
現実性や時間線の観測を行って判明したのは、
それは自然災害の異常化という原因から発生していたということだった。
最悪だった。
今東京で起きている馬鹿げた第三次は異常になった世界での自然災害だった。
この第三次の原因は幼虫異断体のテロでもパラテックの暴走でもなかったのだ。
本当にただの自然災害と同じようなもの。
地震や台風と同じように、いつかまたどこかで起きるという最悪なもの。
さらに言うには、今までの自然災害と違って、この新しい異常な災害は今の財団では予測ができないということだった。
今回のインシデントの原因については震災の異常化だった。
とっくの昔に地盤制御で克服されたと思っていた地震災。
しかし存在していない地盤、プレートのような何かが致命的なまでに動いた。
それは地を揺らすことはできなかったが、発生したエネルギーは異常な方向へと加速的に変質した。
結果的にそれは、時間、空間、認知、生命、この世のすべてのあらゆる概念を揺るがせる概念震災となっていた。
電流は本来、存在しないほどの粘性をもって噴火し、流体力学は完全に反転し、液体は逆行、時空は簡単に歪み、地管され続け、東京の何もかもは揺らいでいた。
即座に関連報告書は作成され、異常現象がナンバーとクラスを暫定的に割り当てられた。
33:00
スピーカー 1
また、財団日本支部の職員も総動員で対処することとなった。
2017年12月17日、11時57分、東京内閣、内閣緊急対策室、職員。
東京都の自治体は大部分が機能停止した。ここまでの状況は過去に例がなく、対策室は混乱に満たされていた。
また、自衛隊の出動も都の要請によってすでに行っているとはいえ、都市が変容し続ける異例の災害の中での救助活動が困難を極めた。
対策もほとんど進めることすらできていない。あまりにも絶望的だった。
死者数、行方不明者数はすでに4万人を超えている。
さらに、文京区、墨田区、台東区、目黒区の4区とは連絡途絶しており、東京都を中心として千葉、茨城、埼玉、神奈川も異常に飲み込まれかけていた。
また、内閣及び公共等の正常性維持に極めて重要な施設の存在する千葉区も、すでに地感現象が確認されており、私たちは追い詰められていた。
だから私たちは、重要なものだけ最優先で他のところに移すという選択を取った。
もはや時間はなかったんだ。異常な災害の対策を指揮するための非難であり、被災者の皆様を置いていくわけでは決してない、と上辺だけの言い訳を述べつつ、政府や財団、GOCは東京を切り捨てた。
ここから先、見捨てられた東京の状況は悪化するだけだった。
2017年12月19日12時30分、東京・渋谷、GOC敗撃部隊隊員。
東京は脅威と化した。排除しようとした脅威はより大きい脅威に次々と飲み込まれて、GOC隊員は自らの行動基準に照らし合わせると、東京そのものを消し飛ばす必要がある状況に置かれていた。
逆流する水は流動性の車の大群の津波に飲み込まれ、車の大群は組み直され続けている東京のビル群に飲み込まれて、ただの鉄屑と化した。
さらにビルや都市の再構築現象は、時間が経つにつれ激しさを増している。
南にあったビルや構造物が左右上下から生えてくるのを見てそんなことを思った瞬間、目の前にあったあらゆるビルは、忽然と収縮して消えた。
消えたビルは東京、私たちの頭上4000m上にあった。東京都全域の上空に1から2kmはある大量のビル群が転移していた。
あまりにも大きすぎるその巨大建築物は落下の速度を遅く感じさせた、そして同時に生き残る術はないことも確信させた。
スピーカー 2
それがビルの豪雨が降り始めた時だった。ビルの豪雨は東京の何もかもをほとんど終わらせた。
36:03
スピーカー 1
2017年12月19日13時、東京室橋製薬工業会社員破綻と再構築を繰り返している東京。もはや自分のいた場所に帰る術は消えた。
東京はパニックを極め、いつしかGPSも地図も使えなくなった。
ヘリや航空機で何千人か何万人は脱出したが、今はもう来ない。自分の現在地点はもはやわからなかった。
今自分がいる場所すら次々と組み替わり、あらゆる概念は次々と壊れていく。
もう一度妻の声を聞きたい、などとひどく冷静な思考で変わり続ける東京らしき何かを見ていた。通信は何もかもダメになった。
基地局もおそらくは組み替えられてただのガラクタになったんだろう。
そうして気づいたら、がれきの雨が降り始めていた。いよいよもう生きて戻れる可能性すら限りなく低くなった。
自分が死んだらどうなるのだろうか。
がれきの雨が降り始めた東京でそんなことを思いながら変わる東京を眺めていた。
おそらくは東京にいるほとんどの人間がこんな感じなんだろう。
東京から逃げるにしても展望はなく、正常性維持機関すらも対処ができなくなり、何もできずに死んでいく。
これがどこまで広がるのかは知らないが、きっと前の東京もきっと前の大切な何かも戻ってきやしないことはなんとなく理解できてしまった。
だけども大切な人には元気で生きていてほしいと思った。それだけだった。
きっと他の人も大体はそんな感じで東京で一生を終えたのだろう。
2018年1月7日18時群馬仮内閣
仮内閣東京事変対策室職員
2017年12月17日に発生し、未だ減少の続く東京を中心とする複合的な頂上災害は東京事変という名称となった。
財団による軽蔵シナリオの指定を受けて、世界各国から様々な正常性異議期間もやってきた。
しかし、壊滅した東京の影響で日本全体が危機的状況に置かれたのは事実で、日本は死にかけだ。
様々な国家からの支援である程度は持つにしろ、東京が壊れた以上、経済損失はあまりにも大きいものだった。
ビルの豪雨は止まない。ビルが落ちればまたそのビルは再構築され、また転移してまた落ちる。これの繰り返しだ。他の異常現象もまだ続いている。
2031年11月15日
サイト8127
財団日本支部サイト管理官
東京は滅びた。現在進行形で滅び続けている。
39:02
スピーカー 1
この滅びがいつ終わるのかは分からず、復旧の目処も立っていない。だから終わりの終わりを待つよりも、日本を新しくやり直すことを選んだ。
群馬に首都を移すことにした。
それはとても困難なことではあったが、結果的にそれはより優れた首都機能の構築や、サイト8195や財団日本支部本部などの最先端の正常性維持期間を招くことにつながった。
何百万人かを見殺しにした上に、未だにビルの豪雨は降り続けているが。
2043年12月27日
財団日本支部本部
編集者不明
インシデント東京事変
発生日時2017年12月17日
概要
東京都を中心とした南関東で同時多発的に発生した異常な現象群、またそれに伴う東京都の壊滅
被害
死者350万人以上、行方不明者600万人以上
原因
一種の変容した自然災害、頂上災害です。
原因となった団体や技術は既定世界、並行世界ともに存在していないことが確認されています。
対策
インシデントをKクラスシナリオと指定し、財団、GOC、その他の連合軍による被害の低減を目的としたいくつかの作戦を実行しましたが、有意な効果は得られていません。
また、異常な現象群は現在も継続して発生しています。
追記
2043年12月27日現在、26年間継続していた頂上災害は急速に収束したことが確認されました。
これを受けてKクラスシナリオ指定を解除し、現在は旧東京への調査活動が進められています。
スピーカー 2
という現象中に出てきたSCPということですね。
スピーカー 1
2人が融合したのはいつか、2020年3月22日だから東京事変が収束した原因というわけではないんですね。
男性型のSCPと女性型のSCPが融合されている。
ちょっとあれですね。
結界戦線のヘルサレムズロットみたいな印象にありますね。
異常現象が当たり前になった一部の地域。
強い壊れにくいドローンという認識でいいのかな。
42:01
スピーカー 1
2017年12月17日に野差市の市内で行方不明となった気象予報士山岸豪さんがSCPとなり、
異常気象を報告するSCPになったのか、
報告するSCPになったのかなったのかなったのかなって、
スピーカー 2
最後の最後に普段活動しているエリアから大きく逸れていって、
すごいテンション上がって喜んでいる写真が撮れて、
スピーカー 1
空から何らかの実体が落下してくる。
実体は人型でモンゴロイド系の若年女性のように見える。
スピーカー 2
これを言えば思い出しましたね。
地面に溶けていった肌色が都市の再構築現象と混ざり合って、
大きい人型女性の顔を形成すると。
これが行方不明となっていた、このSCPの元となった男の人の婚約者だったと。
スピーカー 2
やっと会えたね、みたいなことになるのかな。
そういう役割をさせられ続けていた、
何か取引とかがあったんですかね、異常存在との。
ちょっと感動系な印象だな。
スピーカー 1
テイル読むことになるとは思ってなかったので、ちょっと疲れました。
また次回。お疲れ様です。
44:20

コメント

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