1. SCP話
  2. #159 SCP-2040-JP - ようこそ..
2023-06-20 21:08

#159 SCP-2040-JP - ようこそ未来へ【リクエスト】

spotify apple_podcasts youtube
紹介SCP/Tale

Author: mojamoja
Title: SCP-2040-JP - ようこそ未来へ
Source: http://scp-jp.wikidot.com/scp-2040-jp
Year of creation:2020
CC BY-SA 3.0

SCP財団とは: https://ja.wikipedia.org/wiki/SCP%E8%B2%A1%E5%9B%A3

©︎SCP財団 http://ja.scp-wiki.net/

#SCP #SF #朗読
00:05
アイテム番号 SCP-2040-JP
オブジェクトクラス セーフが修正され、決定
特別収容プロトコル SCP-2040-JPの周囲1kmを封鎖し、一般人を侵入させないでください。
研究員は、SCP-2040-JPの横に併設したサイトに常駐し、
SCP-2040-JP-A群を記録装置で監視してください。
Eクラス職員が監視を行う場合、事前に配布したICカードを使用して、サイト内の監視室に入室させてください。
外周からの目視に関しては、その限りではありません。
現在、収容プロトコルの改定を会議中です。
そのため、次案A発生前の収容プロトコルを記載していますが、不明な点がある方は、実行する前に戸田管理官に連絡してください。
今後、同様の異常が起きた際の対応、並びに研究次第では、他オブジェクトの収容に利用可能な特異性であることを考慮し、
この報告書の閲覧はセキュリティクリアランスを必要としません。
説明。
SCP-2040-JPは、県立中学校を中心に発生した時空間異常です。
SCP-2040-JPは、半径500メートルの球状の発生源不明の陸場に覆われており、
SCP-2040-JP内部への侵入はいかなる方法であってもできません。
SCP-2040-JP内には18名の教職員、75名の生徒、1名の委託業者の合計94名が取り残されていますが、
現在までに救出はできていません。
以降は、SCP-2040-JP-A群と表記。
SCP-2040-JP-A群の詳細な情報は別紙参照。
SCP-2040-JP内部は時間が遅延しており、
SCP-2040-JP-A群はそれぞれの様子から異常に気づいていないと推察されています。
SCP-2040-JP内と外の時間の流れの差は大きく、
SCP-2040-JPの境界へ向かって歩いているSCP-2040-JP-A-26が今の速度を維持すれば、
03:06
境界に接触するまでに200年以上かかる計算です。
1987年3月17日にSCP-2040-JPが発生しました。
卒業式後の下校時刻であり、目撃者が多数いたことと得意性が広範囲であったため、全員への記憶処理が困難であることから、
SCP-2040-JP-A群の家族や関係者をEクラス職員として雇用し、SCP-2040-JPの監視を行わせました。
Eクラス以外の市民に関してはカバーストーリー、地盤沈下による崩壊を留守しました。
雇用したEクラス職員はいずれも協力的であり、就業直後は時間の停止と思われていた得意性が時間の遅延であることに最初に気づいたのもEクラス職員でした。
事案A
2018年3月14日、一般人がSCP-2040-JPの様子を撮影し、それを動画共有サイトに投稿した事案が発生しました。
侵入した一般人は日頃から廃墟や立ち入り禁止区域に無断で立ち入る旨の動画を投稿していたようです。
該当の動画は拡散直前に動画共有サイト運営内の財団エージェントによって発見され、侵入者の記憶処理のみで大きな混乱は起きませんでした。
これによりサイトへの立ち入り調査が行われ、SCP-2040-JPのずさんな収容が判明し、サイト管理者及び担当博士が降格となりました。
事案B 戸田博士が公認の管理者として決定し、サイトへ着任の挨拶へ向かった際に事案Bが発見されました。
以下は戸田博士が作動させていた映像記録装置による記録です。
SCP-2040-JPまでの道案内としてEクラス職員
他のEクラス職員と区別するため、以降の記録は佐々木氏と記載が同行。
日付 2018年3月15日
戸田博士
佐々木さんはいつもこんな坂を登っているのですか?
佐々木氏
いつもじゃありません。私も学校まで足を運ぶのは5年ぶりです。
そうなのですか?
仕事が忙しくなりまして、それに報告用の確認は吉田の婆様が日課の散歩がてらしていましたが、去年の春頃に腰をやって寝たきりになってしまいまして。
06:08
固定カメラでの記録は今も継続していますし、前任の博士はそれでも良いとのことでしたが。
定期報告の頻度を増やしますか?
あーどうでしょう。一応自分で現状を確認してから判断しましょうか。
そうですか。
何か不満でも?
いえ、そうではありません。ただ、今まで担当になった人たちも似たようなことを言っていたもので、
それで報告の頻度を増やしてもすぐに減らすように指示があり、その担当者は長くて3年で他の研究所に移動していってしまいましたから。
それはなぜです?
無駄だからですよ。
無駄?
あの空間には変化がないんです。
いや、前任の残した資料では時間の遅延であると書いてありました。
対象たちは動いているのでしょう?
1年で数センチの移動を変化と言えるんですかね?
それは変化ですよ。
前の博士が言っていました。あなたたちの組織じゃ、もっと危険で刺激的なものをたくさん管理しているんでしょう?
その質問にはお答えできません。
詳しく知りたいとか思ってるわけじゃありません。
ただ、それらに比べれば時間がゆっくり進むようになった学校なんてつまらないものでしょう。
その程度の不思議なことにかまっている暇があるなら、もっと危険なものを対処できるように研究したいはずです。
私ならそうします。
我々が他のオブジェクトの研究を優先したから、だから一般人に侵入されたと?
別にそこまでは言ってませんし、責めてるつもりもありません。
ただ、僕は夢を見ていたんです。
科学は人を幸せにするのだと。
ですが、実際には世界は常に危険にさらされ、いつ滅んでもおかしくない状況で、今を維持するのに精一杯なのだと。
未来を夢見ることも難しいのだと、知ってしまったんです。
そうならないためにも我々が活動しているんです。
それこそ、時間の遅延を研究することで、危険な物品の進行を抑えることができるようになるかもしれません。
その研究ができないんですよ。
教会の中には入れない。
09:00
変化はないから観察も無駄。
おそらく変化があるであろう教会と中の学生の接触だって200年は先なんです。
そもそも変化があるってのも予想でしかない。
教会と接触することで教会は消滅するのか、教会の範囲が広がるのか。
もしかしたら世界は滅んでて、教会がタイムカプセルになるかもしれない。
少なくとも今この瞬間にできることなんて何もないんです。
戸田博士
沈黙
佐々木氏
来年、年号が変わるじゃないですか。
時間が止まったのが1987年でギリギリ昭和です。
中の人たちはね、平成を知らないんですよ。
みんなが時間に取り残された30年の間に何が起こったのかを知らないんです。
生徒会長の妹さんは今度孫が生まれるそうですよ。
え?
三組の藤田さんはおいっ子が海外で古典を開くようなカメラマンになりましたし、
新婚だった古文の水嶋先生の旦那さんは再婚して幸せな家庭を築きました。
戸田博士
沈黙
佐々木氏
出入り業者の宮永さんは津波で実家を亡くしています。
校長先生の奥さんは最後まで校長先生が出てくることを願っていました。
戸田博士
沈黙
佐々木氏
それをみんな知らないんです。
知らずに昭和のあの日の真っ只中にいるんです。
それをみんなが知るのはさらに年号がいくつも変わった後の数百年先なんです。
僕らにできることなんて何もなくて、
ただ楽しそうにしているみんなを外から見てるしかないんです。
みんなそれが辛くて町を離れていきました。
吉田の婆様も寝たきりですし、今も活動している人なんてほとんどいませんよ。
では、なぜあなたはこの町に残っているんです?
え?
資料に記載されていました。
あなたは他の現地協力者と違い、家族が巻き込まれたわけではない。
クラスメイトが巻き込まれただけだ。
ならば、なぜあなたはこの町に留まっているのですか?
すごいですね。
どれだけ昔の資料まで読み込んでいるんですか?
私は必要だと思ったからそうしたまでです。
12:01
今回の事案は我々と現地協力員であるあなたたちとの情報共有が密ではなかったために起こったと考えています。
今後の収容プロトコル、いえ、彼らを保護するためにも、
あなたたちの声を聞きたいのです。
あなたはきっと笑います。
笑いません。
ラブレターを。
はい?
ラブレターを出したんです。
同じクラスの委員長に。
ラブレター?
今みたいな携帯端末も当時はありませんでしたから。
文房具屋で買ったレターセットに中学生の拙い文章で一生懸命書きました。
春からは別の高校に通う予定だったので、思いだけでも伝えておこうと。
それを読んだ委員長が出てくるのを拘問で待っていたら教会が出現したんです。
委員長は今も下駄箱で私の書いたラブレターを読んでいるんですよ。
30年もかけてね。
戸田博士
沈黙
佐々木氏
別に委員長に告白の答えを求めているわけじゃない。
ただ、一目見たいんです。
願わくば、出てきた彼女を助けたい。
四十を過ぎたおっさんが中学生の女の子を思って、科学者になる夢を諦めて、
やりたくもない仕事をしながら、この寂れた街で老いて死んでいく。
気持ち悪いでしょう?
そんなことはありません。貴重なご意見です。
そろそろ見えてきますよ。
外に出ている二人が橋本さんと平手さんで、他の人は校舎の中に。
三人いませんか?
そんな、どうして?
報告では校舎外にいるのは二名だけのはずです。
あとの一人は誰ですか?
委員長です。さっき話した。
まだ下駄箱にいるはずなのに。
あれは手に何か持って…
手紙?
読み終えたのか?
いや、それにしても、なんで外に出ているのか?
走ってるんですよ。
え?
あの体の傾け方、手の角度、間違いありません。
教会の中の時間は一定です。
ならば、他の人より早く動いているとしか考えられません。
ですが、二人を追い越すにしても時間が…
たった五年で…
吉田の婆様は何も…
15:01
五年もかかったんです。
毎日見ていたからこそ、少しずつの変化に気づかなかったのでは?
だとしても、急に走り出した理由なんて…
顔を見ればわかります。
顔?
あなたに伝えたいことがあるんですよ。
手紙の返事を伝えたくて、思わず走り出してしまった。
三十年前のあなたの手紙が、彼女を走らせ、教会への接触を早めた。
あなたは結果的に、教会内のすべての人の時間を進めたんです。
そんな…今さら…三十年だぞ。
私は今まで何を…
あの笑顔に応えられるものか。
彼女は生きている、それなのに…
時間を止めていたのは、俺の方じゃないか。
以上のことから、SCP-2040-JP-A群が教会に接触するまでの時間が大幅に短縮されたことが判明しました。
接触により、SCP-2040-JPの得意性がどのような変化を起こすのか不明なため、
オブジェクトクラスを政府からケテルへと変更し、収容プロトコルも改定することになりました。
収容プロトコルの改定に伴い、人員不足が懸念されましたが、
佐々木氏が元Eクラス職員の再雇用を提案し、これを実行しました。
結果、およそ8割の再雇用を実現し、懸念は解消されました。
SCP-2040-JPの教会へ向かって走っているSCP-2040-JP-A14が今の速度を維持すれば、
20年以内に教会に接触する計算です。
2020年2月15日、SCP-2040-JPの得意性が消失しました。
記録装置によると、SCP-2040-JP内の茂みの中から一匹のイエネコが飛び出し、
揺れた茂みの歯が教会と接触しました。
イエネコ、SCP-2040-JP-A952暫定登録、現在の行方は不明です。修正され、確保しました。
SCP-2040-JPは茂みの奥に入り込んでいたため、その存在は今まで確認されていませんでした。
力場は消失し、特殊部隊が内部に突入して、SCP-2040-JP-A群を保護しました。
精神鑑定を含む各種検査を行いましたが、特に異常は確認できませんでした。
緊急召集されたEクラス職員たちから事情を説明されたSCP-2040-JP-A群は、大きく動揺をしたものの、おおむね自身たちに置かれた立場を受け入れました。
18:14
後日、SCP-2040-JP-A群には、社会復帰プログラムを受講させることが決定しました。
SCP-2040-JPは得意性が消失したため、許可が下り次第、オブジェクトクラスをケテルからニュートラライズドに変更する予定です。
SCP-2040-JP-A群に対する説明会での挨拶。
今は混乱していることだろう。受け入れるのは難しいかもしれない。
だが、私たちはただただ嬉しいのだ。
再びあなたたちと出会えたことが、言葉を交わせることが、何よりも同じ時間を共有できることが、
あなたたちが下校している間に世界はとても便利になった。
まるで漫画が現実になったような科学技術に、きっと驚くことだろう。
全部教える。
何があったのか、何が起こってしまったのか。
少しずつ、少しずつ、一緒に前に進もう。
ただ、まずはこれだけ言わせてほしい。
ようこそ、未来へ。
佐々木研究院補佐
時空間、時間のタグが付いています。
はい、こちら随分初期にやったオブジェクトなんですが、
確か第10回とか本当に初期の初期にやったものなんですが、
最近聞き始めてくださった方からDM、Twitterの方でDMをいただきまして、
これの一番最後の2020年2月15日の特異性が消失しましたから、
ようこそ未来へっていうところまでのところを当時読み飛ばしていたというか、
見落としていまして、ぜひ読んでくださいということで再録させていただきました。
教えていただきありがとうございます。
そうですね、ここまで読まないとこのオブジェクト記事の良さというのがやはりわからないですね。
ここのオブジェクトクラスが政府修正されてけてるのままになっているのもなんかミソですね。
ニュートラライズドにはまだ改定されていない状況。
ということで再度読ませていただきました。
ようこそ未来へ。
ではまた次回お疲れ様です。
21:08

コメント

スクロール