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Tale ハートリス探偵社 カポネのアウトフィットは、シカゴ南部を音が目なしに取りしきり、
みなが自分たちのつまらん商売だけ気にかけていられるように、緑の札束を手渡して回る。
ドル札、グリーンが十分にグリーンでなかったら。 その時は、あんたの腹に鉛玉が数ポンドばかりぶち込まれて、
代わりの役目を果たすことになる。 アウトフィットに無効を張る度胸を持った数少ない男の一人が、ハイミーウェイス。
二つ名を香水付きの強盗。 だが、度胸だけで可能なことはたかが知れている。
ウェイスのノースサイドギャングは、アルカポネのシアーズカタログと比べれば、 夫婦経営のこじんまりした店同然だ。
カポネには筋肉があり、金があり、そしてウェイスと違って、
風の街、ウィンディーシティにいるほぼすべての詐欺師を敵に回すような真似はしていない。 彼はウェイスを窮地に追い込んでいる。
だからウェイスも必死になっている。 そして必死の奴が上手い具合にことを進めると、
死体安置所、モルグがいっぱいになる、という寸法だ。 化学薬品が鼻につく場所だ。
俺はポケットから銀紙に包まれたガムを一枚出し、包装を解いて口に放り込む。 一方のデール・ウッド先生は、シカゴではまだ名の売れてない法医学者だ。
壁を覆うでかい金属板の方に歩いていく。 彼はそのうちの一つのロック機構を解除してから、俺の方を一別する。
本当にこれでいいんだな。 俺はガムを口の奥で噛み締める。
じゃあ、20ドルの話はなしでいいんだな。 一週間前、
カポネの部下の一人に不利な証言をする手筈になっていた垂れ込み屋の一人が、 急性の鉛中毒で病院に担ぎ込まれた。
脳みそにスラッグ弾が4発。 医者たちは朝までもつまいと思っていた。
すると突然、ハイミー・ウェイスがかかりつけの医者を連れて姿を見せたのだ。 そして2日後、
垂れ込み屋は法廷に姿を現して、 せせこましい胸の内を歌い上げた。
03:05
ストレスの多い芝居だったに違いない。 男は翌日、くたばった。
いわく、濃度脈流。 先生は取っ手を掴んで後ろへ引っ張る。
トレーが大きく不快なガタガタ音を立てて転がり出し、 アンチ台の上に横たわる布をかぶった死体を現にする。
2日前、カポネはウェイスが束ねるノース・ボーイズの一人の 風通しを良くするために専門家を送った。
目撃者はその男は倒れる前に20発以上くらったと主張した。 警察は口を閉ざし続けているが、
ミスター・ギャラントは死体が2時間経ってもまだ這い回っていたという現地を抑えた。
とうとう奴らはその忌々しい代物を火にかける羽目になった。
デール・ウッド先生はシーツをまくり上げる。 手間をかけなければならない。
理念の一部が死体の顔や胸にへばりついているからだ。 布の下にはミスター・チャールズ・モンゴメリー、
ウェイスの個人ボディーガードの焼けた遺体がある。 あまり気の進む仕事じゃない。
だが俺はなるべく少ない労力で多くのことを成す方だ。 俺は口から小さな塊を引っ張り出して死体に歩み寄り、
ガムをトレーの横に貼り付ける。 そして鏡込むとミスター・モンゴメリーの黒ずみ膨れ上がった頬を絞る。
焼かれた肉のかけらが指の下でひび割れ、裂ける。 バネが弾けるように顎が開き、まだピンク色をした口の中の悪い歯並びを見せつける。
先生が数歩後ずさりする。 目の隅で俺は先生が十字を切っているのを見る。
人間の舌で話されることを一度も考慮されていない言葉が俺の口から離れていく。
俺はそいつにミスター・モンゴメリーへの問いを付け加える。 あんたに人生を超えた生を与えたのは誰だ。
俺は頭を下げ、溶けた唇にキスして、彼の肺に温かさを吹き込む。 俺は手を彼の胸に当てる。
後ろに引いてから胸骨を押し下げる。 骨がきしみ、はじけ、何かが出てくる。
悪臭を漂わせる空気の本流が、しゃがれた囁きを伴って、 彼から吹き出す。
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Volodear 満足した俺はガムを回収して後ろに下がり、もう一度その塊を口に押し込む。
だがその時、デール・ウッドの叫びが聞こえる。 なんてこった。振り返る。
ミスター・モンゴメリーは生命の息吹を取り返したようだった。 彼の上半身は引きつけを起こしている。
自力で呼吸しようとしている。 俺は横合いの外科用トレイから骨のみをつかみ、
彼の目と目の間に叩きつける。 1インチほど沈み込んだ。
彼はまだ痙攣している。 俺は近くのハンマーを握りしめ、のみを打ってもっと深くへと押し込み始める。
7回目の打撃で引きつけはごく軽い痙攣程度まで弱まった。 16回目ともなるともうピクピク動くだけの調理済みの肉同然だ。
天の神よ。 デール・ウッドはボソボソと祈りの言葉を口にする。
一方俺はもう一度殴りつける準備万端でハンマーを掲げる。
ピクピクピク 何事もない
と思った時に気がついた。 何かが彼の口の中でのたうっている。
最初は舌だと思った。だが色合いがおかしい。 弱々しい真珠のような白さ。
血色が悪すぎるし長すぎる。 俺は前に身を傾け、目を細めてもっとよく見ようと務める。
大切のあるワームが喉の奥から頭を突き出している。 膨れ上がった特大のさなぎのように見える。
そいつは身を伸ばしてはうねり、膨らみを先端から喉の奥に仕えている部分まで絞り上げている。
自由になろうとしている。 俺はミスター・モンゴメリーの口をハンマーで叩いて蓋をする。
デール・ウッドの顔色は悪い。 一番遠い壁にへばりついて俺と死体を凝視している。
よし。 俺は先生に呼びかける。
こいつの口を縫い合わせなきゃいかん。早めにな。 それと、ここの地下に焼却炉はあるか。
見切れにしてデール・ウッドに迷惑料を払った俺は警察署へと引き返し、 連中の電話でミスター・ギャラントから頂いた番号にかける。
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セプテンバーの声が答える。 ミスター・ハートリス、引き受けてもらえるかしら。
費用負担のために1日10ドル。仕事が完了したら300。 あとは100ドル前払いだ。今すぐに。
その条件は高すぎるんじゃないかしら。 高くつく山なんだ。俺に山ほど危険を犯すよう求めているんだからな。
俺は目を走らせ、偏偏側の刑事たちが誰も聞いていないことを確かめる。
ウェイスの新しい仲間が誰かを突き止めることはできるさ。 だが簡単じゃない。正体が誰であれ、危険な奴らだ。
もう手がかりを掴んだの? 驚いたような口ぶりだ。俺はそいつを堪能する。
セプテンバーはやすやすと感銘を受けるタイプじゃない。 ああ、スピリットじゃないな。
あんたと上司はサーキシズムについてどの程度知ってる? 電話線はしばらく沈黙する。
セプテンバー? サーキックの関与を疑ってるのね?
疑ってるどころの話じゃない。分かってる。 フォロディアという名前も掴んだ。聞き覚えはあるか?
またもや沈黙。 なあおい、お嬢さん。俺はドラマチックな沈黙ってやつにあまり慣れてないんだよ。
名前に覚えがあるのかないのか。 アイガーフォロディアのやり口はよく知ってる。
彼女は言う。 オフィスから彼女についての情報を送って講座にも送金する。
毎日報告してちょうだい。 彼女を発見してミスター・ウェイスへの関与があるかを突き止めて。
それ以外の依頼はないわ。この条件で飲んでもらえる? 飲める要素が全くないがそうするよ。
俺は受話器を置く。 ウェイスの密やかなパートナーがシカゴ・スピリットではないとわかったのはありがたい。
確かにカポネやウェイスのような連中はあんたの臓物をぶちまけさせるような所業に及ぶ。 だがリチャード・チャペルのような男になるとその臓物を腐らせてからミルクシェイクに混ぜて
家族の見ている前であんたに飲ませるぐらいのことはする。 しかしサーカイトの方がずっとマシとも言い難い。
恐ろしく長い歴史があるし人肉食行為を説明するにあたっては一風変わったとか 田舎風のとかいう言葉を使ってくる。
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何百年にもあるいは何千年にもまたがる王朝を築き上げた奴らだ。 唯一の取り柄は古すぎるということ。
統制のやり口は奴らをまごつかせる。 俺は一度電話の出方を突き止めるのに10分も悪戦苦闘していた奴を見たことがある。
一晩休んでから俺はポーランド人街を訪れた。 混み合った安アパートが通りの両側に並んでいる。
近くのフードカートからはザワークラウトとボイルドホットドッグの香り。 新聞売りの少年が角に立ち機能付けの新聞を今日のニュースと言い張って渡そうとしている。
俺はコートのポケットに手を伸ばして拳銃を握りしめる。 その重みに安堵する。
ギャラントソサイティは1800年代からアイガボロディアの動向に目を光らせてきた。 彼女に関するセプテンバーの資料は三門ホラー小説の寄せ集めのようなものだった。
マンドレイクの根の膨れた節から生まれる怪物。 タイからさらわれる生まれてすらいない子供。
刈り取られる時には血を流す、汚越する苗木になるためだけに血に染まった大地に巻かれる赤ん坊。 木の枝から芽吹く人間の頭。
とまあサーキックの基本的なアレだ。 ボロディアはロシアで生まれ、子供たちと孫たちをポーランドに残してきた。
入国審査書類は彼女を死がない株農家だとしている。 他のあらゆるものにとっては彼女はバーバヤーガだ。
セプテンバーの資料は彼女がラスプーチンの大盗から1918年のインフルエンザ大流行まで あらゆる事柄に手をつけてきたことをほのめかしている。
何者にせよ任命されたカルキストであることは間違いない。 サーキックではカトリック教会の数奇教に相当する。
つまり、 彼女にとっての俺はハリークソったれフーディーニにとってのイカサマトランプ氏同然ということだ。
だがイカサマトランプ氏にも注意を払ってない相手をだまくらかすことはできる。 俺は店先やアパートの集まりを通り過ぎて、
その間の空間をジグザグに走る路地を抜けていく。 目を閉じ歩きながら息を吸う。
100から逆に数えていく。背後の香りや物音が小さくなって消えていく。 ほんの少しずつ世界が溶ける。
ここに住む大抵の人々は一つの都市しか見ない。 2つか3つ見える連中もわずかながらいる。
もし本当に賢い奴ならそれ以上に数え上げられる都市があることが、 無限に繋がるマトリョーシカ人形のように
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各々の上に重なり合っているのがわかるだろう。 俺は息を止め、シカゴの川を向いて目を開く。
路地は今や狂った形に曲がりくねっている。 ピンク色の血管が左右の壁を蛇行している。
隠された鼓動に合わせて脈打っている。 遠くでは重い黄色のスモックがスカイラインを覆い隠している。
先ほどまで死んだ野良猫だったはずの者は息を吹き返して唸りをあげ、 零れ落ちた腹綿を退屈げに水黒いしている。
俺は45後継を引っ張り出して歩き始める。 ヴォロディアは1921年にポーランドから移住した。
家族と時間を過ごしたかったのだと主張していた。 ウェイスが、彼もポーランド移民だ。
彼女の言うところの家族に含まれることに5ドルかけてもいい。 彼女を見つけるのはそう大変でもなさそうだ。
俺は45後継を袖の下に忍ばせて血管を辿り、その原点へと後を追う。 連中は角を曲がった先へ俺を誘う。
すべてのパンにぬらぬらと輝く内臓がぎっしり詰まったパン屋の先へ。 血のついた手で玩具を売っている男の先へ。
すべての血管は人群の建物に集まるように伸びている。 町の最貧築にある傾いた三階建ての釈屋だ。
近づくにつれて微かな心臓の鼓動を感じることができる。 一歩ごとに音は大きくなっていく。
裏口から滑り込んで階段を登る。 手すりはひびが入って割れた大太骨で作られている。
湿った滑らかな剣で弱えられている。 壁には一つのシンボルが幾度も幾度も掻き殴られている。
ねじくれた黄色の螺旋。 足元の床板が苦痛のうめきをあげる。
鼓動は耳に痛いほど大きい。 廊下に入る。
壁と床が青白い。脈打つ肉でできている。 根のような繊維が天井から垂れ下がっている。
全血管が収束しているドアは不恰好な急根状のものだ。 主要と包装で覆われ、それぞれが鼓動に合わせて脈打っている。
息を吸い込む。俺の周りの世界は震え、崩壊する。 俺はごく普通の廊下、ごく普通のドアの前に立っている。
他には誰もいない。 ドアに近づいてノックする。
返答なし。 もう一度ノックする。
奥さん、シカゴ市警のデール・ウッド巡査と申します。 いくつかお聞きしたいことがありまして。
18:02
まだ返答なし。 もう一度廊下に目を走らせる。
まだ誰もいない。 俺は一歩踏み込んで、ブーツのかかとを城前の真下に叩きつける。
三発の強固なキックで木材にヒビが走る。 五発目でそれが割れ、道を譲った。
ドアが勢いよく開き、俺は踏み込む。 アイガボロディアと俺の目が合う。
彼女は部屋の反対側にあるベッドに縛られ、 一ダースかそれ以上のくすぶる甲に囲まれている。
室内には真鍮の枠がついたガラスのシリンダーが山のように積まれている。 どのシリンダーにも炭鉱色の液体が満ちている。
大切のあるワームが液体の中に浮かんでいる。 俺がミスター・モンゴメリーの喉で見つけたやつと同じ種類だ。
数多くの医学書が床に敷き詰められ、 近くのトレーに手術器具が綺麗に並べられている。
甲は臭い消しのつもりだろう。 だがとてもではないが十分とは言えない。
アイガボロディアは喉元から骨盤まで切り開かれ、 肉ひだを針でピン止めされている。
内臓はまだ機能している心臓の鼓動に合わせて脈を打つ。 彼女の中にもっとたくさんの白種がいる。
もっと小柄なサナギが。 臓物の中でのたくり、よじれている。
彼女は縛られている場所から真っ黒な目で俺を見つめる。 彼女はウェイスを手助けしているやつじゃない。
彼女は利用されている。収穫されている。 誰かが彼女をここに遊兵してウジ虫もどきを栽培するのに使っている。
彼女のひび割れた唇がめくれて、牙んだ割れた歯を剥き出しにする。 口を開けて喘ぐような音を立て始める。
話そうとしているんだろうか。 舌は掘り上げられたかのような見てくれだ。
違う、話そうとしているんじゃない。 笑ってやがる。
俺は床に伸びている緩んだ仕掛け線を見る。 今せがたけ破ったドアにそれが取り付けられていた場所を見る。
そして右側の壁にボルト止めされた手榴弾を見る。 ピンの抜けた手榴弾を。
俺の周りで世界が炸裂し、俺は息を吸い込んで、 これまでに潜った以上のシカゴの深みへと潜っていく。