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2021-06-30 12:48

大阪の人の会話にありがちなこと。(よう知らんけど)【第64夜】

今夜は岸政彦さんと柴崎友香さんの共著エッセイ『大阪』をご紹介します。大阪出身の柴崎さんと大阪に移住してきた岸さん。外から来たから気づくこと、大阪を離れて気づく、大阪的なコミュニケーションの特徴とは……。

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みもれ真夜中の読書会、おしゃべりな図書室へようこそ。
こんばんは、KODANSHAウェブマガジンみもれ編集部のバタやんこと河童です。
おしゃべりな図書室では、水曜日の夜にホッとできて明日が楽しみになる、をテーマに、
皆様からのお便りをもとに、おすすめの本や漫画、紙フレーズをご紹介します。
さて、第64夜となりました。今夜のお便りをご紹介します。
ペンネームナオちゃんさんからいただきました。
バタやんは関西の人ですか?
時々関西弁のニュアンスが伝わってくる気がするのですが、違うかな?
田辺聖子さんのような大阪弁、または関西弁の小説をお願いします。
とリクエストいただきました。ありがとうございます。
あら、どこかに関西弁のニントネーションが混ざってしまっていたでしょうか。
ナオちゃんさん毎度、毎度お気に入りってやつですね。
あの、私の両親が大阪の人なんですね。
私自身は東京生まれの東京育ちなので、東京の人だと自分では思っていますが、
両親大阪人やったら喫水の大阪人やろって言われたりしたこともあって、
そう言われればそうなんやけどっていう感じです。
子供の頃は毎年帰っていたりしたこともあって、
大阪は第二の故郷的な気持ちではあります。
そんな今日ご紹介する勝手に貸し出しカードは、
まさに大阪というタイトルの岸正彦さんと柴崎智子さんの二例エッセイにしました。
大阪という本がどんな本かご紹介していきたいと思います。
大阪という本は今年刊行された比較的新しい本なんですけれども、
岸正彦さんと柴崎智子さんの共著エッセイとなっています。
岸正彦さんは大学で大阪に出てきて30年以上大阪に住んでいて、
外から来て大阪人になった人という言い方ができるでしょうか。
柴崎さんの方はもともと大阪のご出身で、
32歳になる直前に東京へ出てきて、
今も東京に住んでいらっしゃる大阪人というお二人なんですね。
どちらも年月で言えば30年ちょっと大阪に暮らしているわけですが、
もともとその町に生まれ育った人と別のところから移ってきて、
そこで家族を持って仕事をしている人とでは見え方がどう違うのかということだったり、
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30年前と今では大阪自体がどう違っているかといったようなことが、
興味深いエッセイとなっています。
柴崎さんは東京に出ていったというよりも、
今もまだ東京に長期出張している気分だというふうに表現されていましたが、
もしかしたら東京と大阪に限らず、
皆さんの中にもそこに住んでいる年月はもはや人生の結構長い期間になっているけれども、
ずっと長期出張気分っていう感覚の方、
意外と多いのかもしれないと思ったりしました。
柴崎さんの書かれている章の中で、
自分が大阪出身だって言うと初対面の人に大阪嫌いなんですよとか、
大阪の人って俺ダメなんだよねって言われたことが何度かあると書かれていて、
ひどい話ですよね。
そんなこと他の県で言われることあるんかいなと思いましたけど、
俺って岐阜の人ってダメなんだよねとか、
徳島嫌いなんですよとか面と向かって言わないよね。
大阪だからあり得るのかな。
人口も多いっていうのと、関西圏を含めてテレビとかの芸人さんの大阪弁や、
大阪的コミュニケーションと言いますか、
印象が強いからかもしれないですね。
そんな大阪的コミュニケーションについて、
しばさきさんがまた少し面白い分析をされていて、
なるほどなぁと思ったので、そちらもご紹介したいと思います。
しばさきさんの大阪的会話の解説をちょっと読みますね。
大阪にいる時は当たり前すぎてわからなかったが、
東京に来て理解できたこともいくつかある。
例えば大阪弁は会話を続けるためにある言葉だということだ。
どういう意味?会話って続けるもんやろうと大阪にいた時の私なら思ったに違いない。
大阪の人の会話は意味の伝達よりも続けること自体に意味がある。
とありまして、なるほどと思いつつ、東京の私には分かるような分からないようなというところなんですが、
駅前の立ち話の例がここに載ってまして、
どこ行くの?って聞かれて、ちょっと銀行へって言ったら、強盗しにって言って、
今だとマスクとかもしてるから、ちょっとその会話に信憑性があるかもですね。
どこ行くの?ちょっと銀行へ、強盗しに、強盗しになんでやねんか、
そうやねん、下見になとか、続けることに意味があって、
面白いかどうかっていうことはそんなに重要なわけじゃないけど、
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ちょっとボケを振られたら乗っかってあげる優しさってことなんでしょうかね。
私も割と大人になって、中学生とか高校生とかになって、
大阪の親戚の人たちだったり大人がいっぱい集まる場にいると、
このお茶の会話はどこに落ちがとか、どこまで続くんだろうって思ってたんですけど、
柴崎さんの解説によると、大阪の会話はバレーの試合ではなくエンジンパス、
ピッチャーとバッターではなくキャッチボールとありまして、
だから誰かがスパイクを決めちゃいけないんだっていうことが理解できました。
トスを回し続けないといけないってことですね。
会話の途中の知らんけどっていう言葉に東京の人は怒ることがあるというふうにキスさんも書いてらっしゃるんですが、
怒るっていうのはどういうことかっていうと、
多分知らなかったのっていう知らんけどって言われるとね、
じゃあ今までの話は何だったんだって真面目に聞いてたのにって、
東京の人はなることがあるってことだと思うんですが、
柴崎さんは要知らんけどを入れることで、
無責任にトスを回し続ける、会話を回し続けることができる、
あるいは知らんのかーいとか、来てきたんとちゃうんかいみたいに適度に突っ込んだりして、
テキトークが続けやすいっていうような効果を、要知らんけどの効果効能をね、解説されていました。
最近は要知らんけど、東京にも結構浸透してきたので、
ボケと突っ込みの決まり文句っぽく扱われている感じが、私はしてるんですけど、
私の解釈としては、文外観なのに熱く語ってしまって、
ちょっと照れくさいとか、すいませんみたいな気持ちを込めて、
要知らんけどって最後につけるのが発祥語源なんじゃないかなと勝手に思っています。
もともとの使われ方ね、普段ふざけてるのにマジになっちゃった自分にちょっと照れるみたいなことで、
要知らんけどってつける。
特に男の人かな、あんまり女の人っていうのを聞かない気もするけど、どうなんでしょうね。
この人、あんなんやけど、本当はこうなんちゃうとか言った後に、
要知らんけどって言ったりするのかな、みたいなのが正しい使い方なのではと。
いや、こういう文外観なのに勝手に語っちゃったっていう後がまさに、
要知らんけどをつけるところだと思います。
そんな今日はこの大阪という本から紙フレーズをご紹介して終わりたいと思います。
1年から同じクラスの友人が私を呼び止めた。
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私は振り向いた。
彼女は言った。
大丈夫?
私は聞き返した。
何が?
どっか行きそうやで。
私は何も言葉を返せなかった。
ただこれで家に帰れると思った。
大丈夫?
これは柴崎さんが高校2年生の時にちょっと家出を考えてたっていう感じなんですかね。
なんで家を出ようと思ったかとかは書かれてないんですけど、
学校で普通に過ごした後にどっか行っちゃおうって思ってたっていう時に、
友達が多分何かいつもと違う感じに気づいて声をかけたっていうシーンなんですけど、
これ大阪弁のどっか行きそうやでっていう言葉の重すぎず軽すぎず心配している
絶妙なニュアンスはなかなか東京の言葉では出せないなと思ったりして、
大丈夫?どっかに行っちゃいそうだよ。
だと何て言うんですかね。
なんかセリフっぽいですよね。
新海監督のアニメの世界の青春みたいなの出てきちゃいそうですけど、
本当にどっか行っちゃう。
違う次元に、同次元に入っちゃいそうだけど、
大丈夫?どっか行きそうやでっていうのは、
心配しすぎずでも肘をちょっと軽くつかんでくれているような優しさを感じますね。
このあたりの思い出話の描写なんかも、
柴崎さんの短編小説をたくさん読ませてもらっているような、
さすが作家さんっていう感じで、
ご実家が美容室、パーマ屋さんっていう感じの商店街の美容室らしいんですけど、
その思い出話だったりとか、
大阪の出身とか関西の出身じゃない人も、
何か懐かしさにキュッとするようなお話、情景が詰まったエッセイです。
なおちゃんさんの元のリクエストは、
田辺聖子さんのような小説っていうことだったので、
大阪弁が堪能できる小説としては、
柴崎さんの町同士っていう、
大阪の少し郊外で、
世代の違う3人の女性が、
ご近所さん同士、
心を通わせるっていうとか、単純に聞こえてしまうんですけれども、
ちょっと鬱陶しいなと思ったりしながらも、
一緒に暮らしていくようなお話です。
それから岸政彦さんの図書室という短編集も面白いので、
お勧めしたいと思います。
ぜひよかったらチェックしてみてください。
12:00
リクエストありがとうございました。
皆さんも最後までお付き合いいただきありがとうございます。
さて、そろそろお時間になってしまいました。
真夜中の読書会おしゃべりな図書室は、
こんな感じで皆さんからのお便りをもとにしながら、
いろいろなテーマでお話ししたり、本を紹介したりしています。
ミモレのサイトからお便り募集しているので、
ぜひご投稿ください。
また来週水曜日の夜にお会いしましょう。
おやすみなさい。
おやすみ。
12:48

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