地球上で最も高い場所、エヴェレストの頂上を極めたと、ちょっと想像してみてください。
へえ。
凍てつく寒さの中、達成感に浸りながら、ふと夜空を見上げる。
でもそこで気づいてしまうんです。
ここは本当の頂上じゃない、空の向こうにある、えーと、宇宙へのただの中間地点に過ぎないんだと。
なるほど。
今日深振りしていくのは、まさにその圧倒的な絶望と野心から始まる物語です。
はい。今回読み解いていく資料は、大田垣康雄による名作SF漫画、そしてアニメ作品のMOONLIGHTMILEの解説やレビュー記事ですね。
そうですね。
あの、宇宙開発というテーマを扱いながら、これは決して遠い未来の夢物語ではないんですよ。
国家間の泥臭い覇権争いですとか、過酷な環境での生存戦略がリアルにシミュレーションされた、極めて生々しい人間ドラマの記録といえます。
よし、これを紐解いていきましょうか。
今回のミッションは、まだこの作品を知らないリスナーのあなたに向けて、宇宙という絶対的な死の世界に挑む対照的な二人のお得の生き様と、そこで展開される自生学的なサバイバルの全貌を分かりやすくお伝えすることです。
えー、ぜひお使いしたいですね。
物語の幕開けは、いきなり宇宙空間ではなくて、なんと不気のエベレストなんです。
そうなんですよね。そこがまた面白いところで。
二人の若き天才クライマー、サルアタリゴロウとアメリカ人の親友ロストマンが、最後の挑戦に臨むところから始まります。
彼らは大学生にして、すでに世界5大陸の最高峰を制覇してしまうほどの、まあ規格外の男たちなんですが。
いや、すごいですよね。
でもこのエベレストで、予期せぬ自然の猛威に直面します。山頂付近で、その、なだれが発生して、フランス登山隊の女性が巻き込まれてしまうんです。
本当に恐ろしい瞬間ですよね。5大陸を制した強靭な彼らでさえ、その極限の環境下では、彼女を救出できず、無力感の中で彼女の正義を見取ることしかできなかった。
すべてを征服したと思って矢先に、人間の小ささを思い知らされる残酷なシーンです。
でも私が本当に恐ろしいなと思ったのは、その直後の彼らの反応なんですよ。
と言いますと?
亡くなった彼女の遺品である指輪を山頂に掲げた時、2人の視線の先に国際宇宙ステーション、つまりISSと月が重なって見えるじゃないですか。
はい、はい、ありましたね。
普通の人なら、そこで、ああ、宇宙って遠くて綺麗だなって感傷に浸ると思うんですけど、彼らの脳内では全く違う科学反応が起きたんですよね。
RPGで世界地図を全部クリアしてしまって、ふと上を見上げたら、あ、宇宙っていう隠しステージがあったみたいな感覚というか。
ああ、その例えはすごくわかりやすいですね。
ここで非常に興味深いのは、彼らのなんというか、アルピニストとしての認知の歪みなんです。
認知の歪みですか?
彼らにとって、宇宙は科学者が探求するフロンティアではなくて、純粋に人類最後の未踏法、つまり、次に物理的に登るべき山としてロックオンされてしまったんですよ。
なるほど。地球の重力を振り切る動機が、なんか狡猾な理想とかじゃなくて、あそこに一番高い場所があるからっていう根源的な征服欲だったんですね。
そうなんです。ただ、その究極の山をどう登るか。目標は同じ月なんですけど、二人が選んだアプローチが見事なまでに対照的で面白いんですよ。
テロリストのミサイルと宇宙の深空、常に二人の死の恐怖に挟まれながらのサバイバルなんです。
ここで、リスナーのあなたもちょっと想像してみてください。
もし自分がこの時代の宇宙飛行士だったら、いつ体を貫くかわからないデブリの恐怖と、国家間の軍事衝突によるテロリストの脅威、どっちが怖いでしょうか?
いやー、息が詰まりそうですよね。
本当にそうです。
だからこそ、人間はこの極限環境を生き抜くために、相棒となるテクノロジー、自分たちの身体を拡張する機械に頼らざるを得ないんですよ。
ここからが本当に面白くなるところなんですが、この作品、メカニックの描写がたまらないんですよね。
わかります。
日本の二足歩行ロボットムーンウォーカーとか、ガンダム世代が設計したようなアリメ的な見た目なんですけど、現実的な歩行テストの泥臭さもちゃんとあって。
そうですね。本作のロボットたちはピカピカのヒーローメカではなくて、極めて機能的なんです。
他にも、ソロ版の弾のような操縦石を持つパワーローダーとか。
ありましたね。
あと、アメリカ軍が極秘開発した無人ロボットガーディアン。
これなんかは、テクノロジーと人間の関係性のある意味で極端な例を示しています。
ガーディアンは、脳波シンクロシステムを使って遠隔操縦する戦闘用ロボットですよね。
人間の脳波とダイレクトにつなぐって聞くだけでかなり危なそうですが。
ええ、実際に深刻な問題を引き起こす設定になっています。
機体が受ける衝撃や負荷が、操縦者の脳に直接フィードバックされる仕組みなんです。
え、それって。
戦闘時のタイムラグをゼロにするために、巨大な金属の塊が受けるダメージを、生身の人間が強制的に知覚させられるんですよ。
まるで現実ファントムペインの逆バージョンじゃないですか。
失われた手足が痛むんじゃなくて、外部の巨大な機械の痛みが自分の体に流れ込んでくるなんて。
人間の限界を超えるためのテクノロジーが、逆に闘業者の精神と肉体を破壊していくっていう矛盾ですね。
その一方で、全く別のアプローチを見せるテクノロジーも闘業します。
それが、アイドルジャーナリストのマギーが持ち込んだアシスタントロボット、パグ。
ああ、パグ。
はい。音声認識や自律制御を備えた類稀なる性能を持つ小型ロボットなんですが、月での爆破ケロの際に工作員によって完全に破壊されてしまうんです。
そこでのゴローの行動がめちゃくちゃ熱いんですよね。
ええ。
壊れたパグに電気ショックを与えて、無理やり再起動させるんです。
ただの機械の修理じゃなくて、まるで心臓マッサージで相棒を蘇生させているかのような執念で。
そうでしたね。そして復活したパグは、最終的に自らを犠牲にして隠し鳥機能などの記録を残しつつ、ゴローの命を救うんです。
ガーディアンが人間の神経を擦り減らすテクノロジーだとすれば、パグとゴローの関係は、機械と人間が極限環境下で厚い絆を結ぶ展開ですよね。
生き残るためには、無機物とさえ運命共同体にならざるを得ないという宇宙開拓のリアルを感じます。