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次に、怪談作家の宇津隆忠郎です。
今回は、メールで寄せられた怪談をお届けします。
お送りくださったのは、アメリカに住むジョニーさんです。
この方は、ウィジャという遊びをやったことから、怪異な現象に悩まされるようになりました。
日本でウィジャ盤といえば、カードゲームの遊戯王で、
僕らリョウが使うカードを思い出される方も多いかもしれませんが、
そもそもウィジャとは、欧米版のコックリさんのことです。
ウィジャについて少し説明しておきましょう。
コックリさんの場合は、紙に50音などを書いて、10円玉を使うやり方が一般的ですが、
ウィジャは専用の道具を用います。
ウィジャ盤と呼ばれる板と、プランセットと呼ばれる三角形、あるいはハート型をした指示器です。
この2つはセットになって、玩具店などで売られています。
ウィジャ盤には、アルファベット26文字と、イエス、ノー、数字が書かれています。
プランセットは、コックリさんで使う10円玉に該当します。
ウィジャ盤の上にプランセットを置き、その上に2人から3人の参加者が軽く手を置いて、
例に語りかけると、プランセットが盤の上を滑るように動き、例の言葉を1文字ずつ差し示していくのです。
ジョニーさんが、このウィジャを通してどのような体験をしたのか、メールを読む形でお届けします。
なお、この話に登場する3人は、メールでは名前が明記されていましたが、
ここでは、体験者のジョニーさん以外はイニシャルとさせていただきます。
いずれも女性の名前であることを念頭にお聞きください。
私は日本語がネイティブではないので、もしこの話が少し変に聞こえてもご了承ください。
私は生まれた時からアメリカのコネチカット州に住んでいました。
コネチカット州はアメリカの中でも特に古い州です。
歴史に恵まれ、都市伝説や怪談も多数あります。
これは私が高校生の頃の話です。
ある夜、2人の友達が遊びに来ました。
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何もすることがなかったので、トイザらスというおもちゃ屋さんに行ってみることにしました。
お店をぶらついているうちに、面白そうなボードゲームが目に入りました。
コックリさんのような見た目で、箱の表にウィジャ版と書いてありました。
面白そう!やってみたい!と、友達のJが言いました。
そういうゲームをやったことのない私は、最初は気が進まなかったけれど、
JとSが本気でやりたがっていたので、買ってみました。
家に着いたら、早速地下室に降りて、バンを箱から出しました。
バンを床の上に置いてから、3本のロウソクに火をつけました。
3人でプランシェットという板に両手を当て、
本当に大丈夫だと思う?と私が聞きました。
心配ないよ。ただのゲームじゃん。なんてことないよ。とSが保証してくれました。
早く質問しようよ。
Jから始めました。
この部屋には誰かいますか?
プランシェットはノロノロと、4を指しました。
家には3人しかいなかったのに、4という答えが出ました。
まだ生きているの?とSが聞いて、
プランシェットはノーを示しました。
プランシェットのスピードがどんどん上がってきました。
2人ともプランシェットを動かすのやめてくれない?面白くないよ。
と私が注意しましたが、動かしてないよ。とJが応じました。
じゃあ、自分でやってみて。
2人はバンから手を離し、自分であなたは良い例ですか?と聞いてみました。
ノーを示しました。
プランシェットは磁石が引っ張っているかのように、バンの上を滑っていました。
じゃあ、あなたの名前を教えて。とSが強く促しました。
ウィジャバンに有名な悪魔の名前が示されたので、
私は息を呑んで、その悪魔の名前を声に出して行ってしまいました。
するとプランシェットが急に動きを止めたかと思うと、
ソファーの下からムカデが這い出してきて、バンの上を通り過ぎていきました。
私たちはキャーと叫び、バンを片付けて家から出ました。
バンを捨てるなり燃やすなりしたかったんですが、
最も適切な処分の仕方がさっぱりわからなかったので、
家から離れたガレージにしまっておきました。
私は宗教は持っておらず、神様など信じられないのに、
一晩中恐怖でおばあさんのロザリオをつかみ、そのまま寝てしまいました。
翌朝、窓の外の母の悲鳴で目が覚めました。
家を出ると、ポーチの前に死んだ小兎がいました。
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切り落とされた首が体から数インチ離れたところにありました。
おぞましい光景でした。
当時、アメリカのコネチカット州の都会で暮らしていましたので、
狼や狐などはおらず、動物の仕業ではないと思います。
その後、数週間にわたって私はひどい病気にかかりました。
ベッドから出ることさえできませんでした。
おまけに毎晩恐ろしい夢を見ました。
その夢では老婆が薄暗い押入れに潜んでいて、ずっと私を睨んでいました。
死ぬかと思いました。
たまに寝ている最中、ラジオのスイッチが勝手に入り、
非常に汚い喉尻言葉を怒鳴っている男性の声がラジオから聞こえてきました。
ラジオのプラグを抜いて電源を切ると、廊下から誰かの足音が聞こえるようになりました。
ウィジャバンを使った日から不思議な出来事が始まりました。
例えば、犬が地下室に降りていくと、薄暗い廊下を見つめて吠え、すぐに上に逃げてきます。
それから小動物を地下室で飼うと、1週間以内に死にます。
ある朝、1匹のハムスターが何かに噛まれたように背中から血を流して死んでいました。
10年間ずっとその家に住んでいましたが、その時までそのような事件が起こることはありませんでした。
悪魔のたたりだったかなと思ったんだけど、あれから十数年が過ぎ、もう私はその家に住んでいません。
新しい住人とは連絡が取れないので、まだその現象が起こっているか分かりません。
全部収まっているといいのですが。
一つだけ確かなことは、もう二度とウィジャバンを使わないということです。
ウィジャは欧米ではとてもよく知られたゲームです。
お話の中にもあった通り、有名玩具店では常に売られており、価格は20ドル程度。
ある記録ではアメリカとカナダで1年間に350万セットも売れたとあります。
またアメリカのホラー映画でも小道具としてよく用いられます。
名作エクソシストでは、少女が悪魔に取り憑かれるきっかけとしてウィジャを行う場面が出てきます。
原作でこの場面はさらに詳細に描かれており、物語の中でも重要であることが分かります。
また、日本では未公開ながらもアメリカではヒットした呪い襲い殺すや、サメ映画の一本ウィジャシャーク霊界サメ対戦など、ウィジャバンがキーアイテムとして登場する映画は多くあります。
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つまり、それほどまでにウィジャという遊びはアメリカ人にとって身近であり、しかもそれは霊界と交信するために使う道具だという認識もあるということです。
ウィジャの正確な起源は定かではありませんが、その歴史は古く、起源前550年頃の中国とギリシャでウィジャバンによく似た道具を使って死んだ人や見えない世界と交信したという記録が文献として残っています。
日本では江戸時代にはすでに町人の間で流行していたとする説や、明治期にアメリカの船乗りによってもたらされたとする説などがあり、コックリさんという名の由来も諸説あってはっきりとはしません。
ただ、ウィジャもコックリさんも使用する道具は違いますが、同じ遊びであることは間違いないでしょう。
しかしここで一つ明確な違いがあります。それは呼び出されるものの種類です。
ウィジャもコックリさんもどちらも死んだ人の霊魂が呼び出されて様々なメッセージを伝えてきます。
ところがたまに悪しき存在が出てきて呼び出した人に災いをもたらすことがあるとされます。
コックリさんの場合、それは悪霊の類であり、非豪な死を遂げるなどして現世に激しい恨みを持つ死者の魂であるとされます。
一方、ウィジャの方は悪魔です。
ここでいう悪魔とは、キリスト教における神を冒涜する存在のことで、人を誘惑し堕落させ害をなす、サタンとその手先のことを言います。
怨念に凝り固まった死者の霊と悪魔では、その成り立ちが全く違います。
日本とアメリカで出てくる存在がこれほどまでに違うということは、体験した人の持つ姿勢観や文化からの影響を多大に受けていることは確かでしょう。
この姿勢観や文化を形成する根幹にあるのは宗教です。
宗教は哲学であり、人が生きていくための指針にもなります。
そのため、その共同体で暮らす人々の姿勢観や、彼らを取り巻く文化に大きな影響を与えます。
いくら無神論者や無宗教を気取っていても、その文化圏に暮らしていれば、考え方や物事の感じ方は、その文化圏で体制を占める宗教の内容に沿ったものになるはずなのです。
つまり、日本人なら仏教、欧米人であればキリスト教に影響されるということです。
例えば、近年アメリカではホラー映画の制作が活気づいています。
その中で、超自然現象を扱った作品のうちの大半に悪魔が登場します。
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資料館のシリーズやパラノーマルアクティビティシリーズ、ヘレディタリー、継承など、そのどれもが最後には災いを成している存在は悪魔であることが分かり、
人間と悪魔の対決という構図になったり、登場人物が悪魔に取り込まれるといった展開になります。
これには当然の理由があります。
キリスト教圏の人たちは、霊にはそれほど怖いとは感じません。
なぜなら、霊はかつては生きていた自分たちと同じ人間だからです。
しかし、人を堕落させる悪魔には強い恐怖の感情を抱きます。
ホラー映画は見ている人たちを怖がらせる必要があります。
アメリカ映画は当然アメリカ人向けに作られており、そのアメリカ人を怖がらせるには悪魔を登場させるのが最も確実な方法なのです。
逆に言うと、悪魔ではなく霊が登場するだけでは、それほどの怖さを感じません。
ということを念頭において考えると、ウィジャに教じる欧米の人たちは、
ひょっとすると恨みを抱いた霊が出てきても、日本人ほど恐れないのかもしれません。
そもそもウィジャは霊と交信する道具であり、それを目的として行われる遊びです。
そこに悪い霊が出てきたとしても、霊は霊であり驚くに値しません。
だとすると印象にも残らず話題に出ることはないことになります。
しかし悪魔が出てくると話は違ってきます。
今回紹介したお話でもジョニーさんたちは悪魔を呼び出してしまいました。
名前を問いかけるとある有名な悪魔の名前を名乗ったそうです。
それが何という名前だったのかまではメールには書かれてはいませんでしたが、
口にするのもはばかられるほど、忌むべき存在の名前だったのでしょう。
もっとも悪魔が名前を聞かれても簡単に答えることはないでしょうから、
その時に出た名前はデタラメだったのかもしれません。
しかしそれはどちらでも良いことです。
そこに出てきたのが悪魔だろうが、ただの霊だろうが、
それはジョニーさんたちに自分が悪魔であると信じ込ませることができたのです。
しかも後にジョニーさんの周囲では実際に様々な怪異や災いが起きました。
ジョニーさん自身は病のとこに伏した上、悪夢にうなされる日々が続きます。
特に興味深いのはポーチに捨てられたウサギの無残な死体や、
ラジオから聞こえてくる罵り言葉、飼っていたハムスターの悲惨な死など、
そこで起きた異変は、そのどれもが悪魔の仕業を思わせるものばかりだったという点です。
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私がこれまで取材した日本国内の怪異な体験では、ほとんど聞かれないものでした。
日本で聞かれるコックリさん絡みの怪異は、黒い影を頻繁に見るようになったとか、
金縛りに遭うようになったとか、誰もいない部屋から人の気配がした、
といった一般的な例体験の類がほとんどです。
まるで怪異な現象が、それを体験する人の属する文化圏に合わせて様々に変化しているようです。
となると、この場合はどうなるのでしょうか。
ジョニーさんと一緒にウィージャーをやっていたJさんとSさんは、
その名前からもアメリカで育った方のようですが、
もしもその中に日本で生まれ育った人が混じっていたら、怪異はどう感じられたんだろうかと。
やはり悪魔の仕業を思わせる現象が起きるのか、
それとも日本人がより恐怖するような幽霊的な現象に変換されるのか、興味はつきません。
このウィージャバンですが、今では日本でもネット通販で簡単に手に入ります。
値段は5,000円から6,000円といったところ。
興味のある方は購入して試してみてはいかがでしょうか。
なお、その際に何が起こっても、私たちの方では一切の責任は取りませんので、あしからず。
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