第二十七話『自然に映るもの』-詩人・北原白秋-
2016-03-05 10:52

第二十七話『自然に映るもの』-詩人・北原白秋-

軽井沢の森に響く、鳥のさえずり。
そして湯川のせせらぎの音。ここには、静謐(せいひつ)な風が吹いています。
星野温泉の入口あたりに、ある詩が刻まれた石碑があります。
「からまつの林を過ぎて、からまつをしみじみと見き。
からまつはさびしかりけり。たびゆくはさびしかりけり」
『落葉松』というその詩を書いたのは、日本の近代文学に多大な影響を与えた詩人、北原白秋。
彼は、1921年の夏、星野温泉で開かれた自由教育夏季講習会に講師として参加するために、軽井沢にやってきました。
そこで見た落葉松の芽吹きにひどく感動した白秋は、歌を詠んだのです。
『落葉松』の最後は、こんな4行で締めくくられます。
「世の中よ、あわれなりけり。常なけどうれしかりけり。
山川に山がわの音、からまつにからまつのかぜ」
白秋は、この詩に関して次のように注釈をつけています。
「読者よ、これらは声に出して歌うべき、きわのものにあらず、ただ韻(ひびき)を韻とし、匂いを匂いとせよ」
すなわち、彼はこう言いたかったのでしょう。
「いいかい、くれぐれも表面的なリズムに惑わされてはいけないよ。大事なのは、底辺に流れるボクの心なんだ。声に出さなくていい。まずは感じてくれ。ボクの哀しさ、人生に対峙する姿勢を」
落葉松の道を、ゆっくり歩く白秋の背中が見えます。
彼は、この歌に何をたくしたのでしょうか?
彼が人生からつかみとった、yesとは?

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