第三百七十話『虚しさから逃げない』-【日本の文豪篇】森鴎外-
2022-10-01 12:07

第三百七十話『虚しさから逃げない』-【日本の文豪篇】森鴎外-

今年、生誕160年、没後100年を迎える、明治・大正期の文豪がいます。
森鴎外(もり・おうがい)。
『舞姫』『山椒大夫』『高瀬舟』など、学校の教科書や夏休みの課題図書としてもおなじみの作品群。
ドイツ留学を経て医学の道に進み、医者と小説家の、いわゆる「二刀流」を貫いた唯一無二の賢人です。
晩年は、陸軍軍医のトップとして人事権も掌握、一方でゲーテの『ファウスト』を翻訳し話題になるなど、政治と芸術、双方の知識人として、その名を轟かせていました。
そんな超一流のエリート、森鴎外。
しかしながら、彼の心は、長らく深い闇に包まれていました。
鴎外の書いた随筆『空車(むなぐるま)』には、そんな彼の内面の哀しさが書かれています。
立派な大八車。
しかし、何も積んでいない。
空っぽ。
空の車を、彼は、むなしい車、むなぐるまと読んだのです。
それは、まさに自分自身のことでした。
ドイツで学んだ衛生学。
日本でもっと研究に没頭したいと願っても、「君の研究より、まずはドイツの文献の翻訳をやりたまえ」と言われ、小説を書こうと頑張って出版社にかけあっても、「あなたの小説より、ドイツの優れた小説を翻訳してもらえますか?」と告げられたのです。
やりたいことが、やれない。
いつも理不尽な風に吹かれ、本来の自分から遠ざかってしまう。
そんな虚しさを、彼は小説にぶつけました。
思うように生きられない人生に、意味はあるのか…。
その答えを必死で探したのです。
鴎外の『妄想』という作品の中に、こんな一節があります。

「生まれてから今日まで、自分は何をしているのか。
始終何物かに策うたれ駆られているように学問ということに齷齪している。
自分がしている事は、役者が舞台へ出てある役を勤めているに過ぎないように感ぜられる。
その勤めている役の背後に、別に何物かが存在していなくてはならないように感ぜられる」

苦悩の中、虚しさから逃げなかった文豪・森鴎外が人生でつかんだ、明日へのyes!とは?

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