第二十九話『自分を掘りだす』-作家・志賀直哉-
2016-03-19 10:11

第二十九話『自分を掘りだす』-作家・志賀直哉-

軽井沢が、今のような避暑地として注目されてから、今年でおよそ130年。
明治から大正、昭和と、数々の作家、芸術家がこの地に足を踏み入れ、愛しました。
古くは、森鴎外や正岡子規が、歩いて、あるいは馬車がひく鉄道で碓氷峠を越えてきました。
1893年、明治26年に電気機関車が走るようになると、さらに多くの文人がやってきました。
徳富蘆花、尾崎紅葉、田山花袋。そしてその中に、志賀直哉もいました。
彼は、最初は旅人としてこの地を訪ね、のちに、友人だった室生犀星の別荘を訪れるようになりました。
室生犀星の旧宅は、今も記念館として軽井沢に残っています。
1951年。昭和26年の8月2日。こんな記述が残っています。
68歳の志賀直哉が、軽井沢にいる62歳の室生犀星のもとへやってきました。
2人は、およそ7年ぶりの再会です。
志賀直哉が軽井沢駅に降り立つと、
「やあ、志賀さん、こっちです、こっち」
迎えにきたのは、日本を代表する洋画家、63歳の梅原龍三郎です。
「おお、すまないねえ、わざわざ」
「いえ、お荷物、持ちましょう」
梅原は1913年にパリから戻って以来、白樺派の文人と親交をあたためてきました。
「いやあ、列車の中で偶然、評論家の長與善郎と会ってねえ、しゃべりすぎてノドがかれたよ」
志賀が話しました。
室生犀星は、志賀直哉の交遊関係の広さ、友人との快活なやりとりをうらやましく思っていたと言います。
文壇では常に賞賛と糾弾を同時に受けた、文豪、志賀直哉。
彼の心にいつもあった、人生のyesとは?

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