第百三十八話『自分の役割を全うする』−【東京篇③葛飾柴又】俳優 渥美清−
2018-04-21 13:59

第百三十八話『自分の役割を全うする』−【東京篇③葛飾柴又】俳優 渥美清−

ひとは、誰もが、ある役割を担うことになります。
好むと好まざるとにかかわらず。
会社では部長や課長という役職を背負い、家では、父や母、夫や妻という顔を持ち、舞台が変われば違う役を演じる俳優のように、いくつもの仮面とともに生きていく。仮面には、役割がついてきます。
ここに、一度つけた仮面を、生涯はずすことが許されなかった役者がいます。
渥美清。彼は、フーテンの寅さんで人気を博し、日本を代表する名優として語り継がれていますが、一時期、その車寅次郎という役割から逃れようとしたことがあります。
渥美清イコール寅さんというイメージを払拭したかったのです。
悪役にもエントリーされました。
横溝正史原作の金田一耕助もやりました。
でも、結局、街を歩けば、「寅さん!この間の映画も、よかったよ!」「寅さん、今度はいつ、柴又に帰るんだい?」と声をかけられるのです。」

ある時期、彼はもがくのをやめました。
「これが自分に与えられた役割ならば、それを全うするしかない」
以来、寅さんのイメージを壊すような役は、断りました。
どんなに親しいひとにも、プライベートをいっさい知らせず、自宅も明かしませんでした。
映画の撮影終わり、ハイヤーでおくられても、自宅のずいぶん前で、「あ、このへんでいいや、ここでおろしてください」とクルマを降りました。
徹底した自己管理と、ストイックな日常生活。
晩年、体は満身創痍で立っていられず、すぐに小道具のトランクに座ってしまうほどでしたが、周囲に悟られないように歯を食いしばりました。
亡くなるときも、「オレのやせ細った死に顔を、誰にも見せたくないんだ。お願いだから、骨にしてから世間に知らせてくれないか」と遺言を残しました。
今もひとびとの心に生き続けるフーテンの寅さんを演じきった、俳優・渥美清が、人生でつかんだ明日へのyes!とは?

感想

まだ感想はありません。最初の1件を書きましょう!

13:59

コメント

スクロール