第百三十九話『不安と寄り添って生きる』-【東京篇④台東区竜泉】作家 樋口一葉-
2018-04-28 13:30

第百三十九話『不安と寄り添って生きる』-【東京篇④台東区竜泉】作家 樋口一葉-

小説『たけくらべ』で有名な女流作家・樋口一葉の記念館は、台東区竜泉にあります。
「台東区立一葉記念館」。
彼女が居を構え、名作を産みだした、ゆかりの場所に立つ建物は、外見は現代風なデザインですが、中に入ると一転、町屋の板壁を模した造りで、あっという間に時間をさかのぼります。
名作『たけくらべ』の舞台は、まさしく竜泉あたりです。
吉原の廓(くるわ)に住む14歳の美登利と、僧侶の信如(しんにょ)の、淡い恋を描いたこの作品は、当時の子どもたちの様子や街の風情が色濃く映し出されています。
17歳で父を亡くした一葉は、家計を担う一家の大黒柱になりました。
小説家だけの収入では足りずに、この地で、荒物、雑貨、駄菓子を売る店を始めたのです。
しかし、商売はうまくいかず、結局引っ越してしまいますが、台東区竜泉での暮らしが、彼女の創作の原点でした。
彼女の小説からは、町の匂いが漂ってきます。
彼女の小説の登場人物たちは、本当にそこに生きているように命が吹き込まれています。
森鴎外、菊池寛、島崎藤村らは、一葉の作品を高く評価し、絶賛しました。
人気のすごさは、彼女の日記にしるされた言葉でもわかります。
「雑誌の編集者は、今や競争で私に執筆を依頼する。夜にまぎれて、私が書いた表札を盗むものもある。雑誌は飛ぶように売れた。すでに三万部売り尽くし、大阪だけで、一日で七百部売れた」。
それでも、一葉の心には、いつも不安がありました。
「しばし机にほおづえをついて考える。誠に私は女なのだ。つまらない作品を当代の傑作と言われるということは、明日はおそらく、ののしりの言葉が並ぶかもしれないということ。このような世界に身を置き、まわりには友人も、自分をわかってくれるひとなどいない。私はまるで全くひとりだ」。
不安と闘いながら、わずか24年間の人生を駆け抜けた、樋口一葉がつかんだ、明日へのyes!とは?

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