イントロダクション
YCAMぐるぐるラジオ Season2、8月16日水曜日、山口情報芸術センターYCAMからお届けしております。現場にいるのは、YCAMの教育普及担当の昆野です。よろしくお願いいたします。
そして、本日はゲストとして全国各地で爆音上映を行っている映画批評家でロック評論家の樋口康人さんにオンラインから参加いただいております。樋口さん、よろしくお願いします。
大丈夫かな、樋口さん。よろしくお願いします。
声がどこまで出るかちょっとわからないです。
樋口さんは体調がなかなか難しいながら、それを推して今日ご出演いただくということでよろしくお願いします。
はい、このラジオではYCAMのスタッフがナビゲーターとなって、YCAMに訪れる樋口さんのような様々なクリエイターをゲストにお招きして、一緒にテクノロジーのこととかアートのこととか生活のことについて様々な問いを立てたり、悩みを相談したり、そんな頭をぐるぐる動かしている様子を配信しております。
これ見ていただくと、YouTubeで見ていただいている方もいるかなと思うんですけれども、シーズン2、2023年度からYouTubeでの公開収録の様子の配信を行っております。
今もしインフォメーションスペース前にいらっしゃって、これから移動するよみたいな、これから家帰るんだけどこの配信しばらく見れないのかみたいな方は、YCAMのウェブサイトの方からYouTubeのページすぐ飛べますので確認してみてください。
また本日収録される内容は、デジタル配信サービスのSpotifyで、ポッドキャストの形式で順次公開予定です。これまでの全ての回、樋口さんにも2022年の回にも出ていただいてますよね、一度ね。
覚えていらっしゃいます?
去年ですね。
2022年度の回から、今年の回、過去の回、全てSpotifyの方で聞いていただくことができますので、お使いのブラウザなどで、YCAMぐるぐるラジオって検索してみてください。
じゃあ今日のお品書きいきたいんですけれども、ゲストインタビューはもちろん樋口さんにお話をいろいろ聞いていくんですが、YCAMや山口にまつわる様々な方をゲストにお招きして、普段の活動とその裏側を教えてもらうコーナーとなっております。
爆音映画祭とは
で、爆音映画祭っていう言葉がもしかしたら初めて聞くよって方もいるかもしれないので、後で詳しいことは樋口さんから伺いたいと思うんですけれども、私の方から少しご説明すると、樋口さんが国内外で開催している、樋口さんの会社がと言った方がいいかな、国内外で開催しているライブコンサート向けの大規模かつ高品質なスピーカーを用いて、繊細な大音響で映画を鑑賞する上映イベント。
ですよね。
はい。
大丈夫ですかね。
そこら辺、そうは言っていますけど、爆音なので、でかい音でガツンと行くっていう。
場合もあると。
はい。
基本的には、じゃあその繊細な段を送って、映画を上映するイベントとなっております。
これYCAMでは2013年から毎年の恒例イベントとしてずっと行っているんですけれども、
今年も9月15日から18日にかけて、YCAM爆音映画祭2023を実施予定でございます。
なので今日は樋口さんをゲストにお招きして、活動とかそういうお仕事、爆音自体を始めたきっかけだったりとか、
YCAMとの慣れそめみたいなものだったりとか、YCAM爆音映画祭2023への意気込みとか考えていることとか、
伺っていけたらなと思っております。
今日ちょっとそれだけではなくて、ぐるぐる相談室というコーナーもやっておりまして、
そちらではいつもYCAM、このラジオ宛に届いた疑問・質問・お悩みを解決するというよりは、
ゲストでお招きした方と一緒にシェアして、一緒に一回考えてみる、ぐるぐるしてみるというようなコーナーなんですけれども、
本日は樋口さんと一緒に過去のゲストの方からいただいた疑問・質問・お悩みを中心に一緒にぐるぐる、
体力とお時間の許す限り一緒にぐるぐるしていけたらなというふうに思っております。よろしくお願いします。
お願いします。
樋口康人さんの経歴と活動
それでは早速、ゲストインタビューの方からいきたいと思います。
まず簡単に樋口さんのプロフィールを私の方からご紹介したいと思います。
樋口康人さん、映画批評家、ロック評論家。
ビデオ、単行本、CDなどの制作・販売をするレーベル、VOIDを1998年に設立。
2004年から東京吉祥寺バウスシアターにて音楽用のライブ音響システムを使用しての爆音上映シリーズを企画。
2008年より爆音映画祭を開始。批評集、映画は爆音で囁くも発売中です。
改めてよろしくお願いします。
お願いします。
何回もよろしくお願いしますって言っちゃってるんですけど、ここからいよいよ質問の方を聞いていければなというふうに思ってます。
いっぱい事前に受け取ったんですけど、英語構成や何か。
昨日一昨日めちゃくちゃ具合悪くて、何も読んでないので、その場で答えます。
新鮮な気持ちで答えていただければなと思います。
まず本当に大前提になっちゃうんですけど、そもそもVOIDを設立する前って樋口さんって何してた人なんですか?
単に物書き編集者。
テキストの方だったんですね。
そうですね。映画や音楽の原稿を書いたりとか、あと本の編集とかはいろいろやってまして、
雑誌でいうとフランスにあるカイエルシネマというのの日本版のカイエルシネマジャポンという映画の表紙があって、
それが1990年くらいに刊行され始めたんですが、それにずっと関わってたりして、
最後の方はそれの編集長とかもやったりしつつ、単行本の企画を立てたりしてやってたんですけど、
書くだけだとどうも体がうずうずしてしょうがないんで、いろいろあれこれすることにしたいなと思いつつ、
することにしたいなと。
一人でやってても面白くないんで、
とはいえ会社みたいなちゃんとした組織にしちゃうと、それはそれで大変なんで、
一人でいろんな人と合体しながら、いろんな会社と合体しながらできたらいいかなっていうので、
ボイドっていうのを作ったんです。
だからうずうずしてきた結果作ったものだし、
でもすごく固い会社というよりは、いろんな人と接点を持つために、まず掲げた矢を。
そうですね。だから説明が難しいんですよね。
そうですね。
例えば書籍作ってますとか、CD作ってますとか、映画の企画やってますとか、
そういうふうに一言で言えないので、
全部やってますもんね。
やりたいこと全部やってます。
そういうやりたいことを全部詰め込んだ結果が、さっきご紹介したビデオ、単行本、CDなど、
全部やってる会社。
ということになりますね。
その雑誌のほう、
カイエドシネマ。
カイエドシネマ、失礼しました。
カイエドシネマのほうは、日本で観光された当初から関わっててっていうことですかね。
本当に立ち上げには関わってないんですけども、
2、3本目から原稿を書き始めたのかな。
立ち上げは、もう亡くなってしまった梅本洋一さんっていう、
フランスの映画表をやってたり、大学でフランスの関係を教えてたりする方と、
当時フィルムアート社で編集者をやっていた詩人でもある稲川雅人さんっていう、
2人が中心になって始まった、
始まったというか、フランスのカイエドシネマと提携して日本版を作ろうということで始めた雑誌だったんですけどね。
映画表的なものを最初から。
そうですね。だから、ヌーベルバーグの人たちが立ち上げた表紙なんで、
映画業界では最も歴史のある表紙ではないかと思うんですけど、
まだフランスでも続いています。
ありがとうございます。
で、そこでテキストを書いてて、だんだんうずうずしてきて、ちょっとやりたいこと全部やろうと思って立ち上がった複雑な会社がポイント。
そうですね。
たぶんね、90年、アイ映画が立ち上がった頃くらいまでは、
まだ映画や文化、いろんなカルチャーに関して文字で読みたいって人が相当数いて、
雑誌として確実に成立してたんですよ。
でもその90年代の10年の間に、どんどんカルチャー誌の賠償が減ってきて、
雑誌ではなかなか食っていけなくなったっていうことも大きかったと思います。
このまま文字書き続けてても、ろくなことにはならないっていうか、経済的な意味ですね。
大変なことが待ち受けているだろうっていうのは確実に目の前にあって、
その中でどうするかっていう決断でもあったということですよね。
ありがとうございます。90年から2000年って本当にそういう変化の過渡期というか、
あらゆるメディアがオンラインに移行したりとか、ウェブになったりとかっていうタイミングだったと思うんですが、
そんな困難でVoidを立ち上げられて、そこから爆音上映をする。
これ多分いろんなところで話されていると思うのであれなんですが、
爆音上映とか爆音映画祭自体を始めたきっかけって。
そうですね。ほら、もともと音楽の方もいろいろ関わっていたんで、音にも興味があって、
80年代はレコード屋の見せ版ずっとやってた。
見せ版。
10年間もレコードの仕入れと見せ版っていうのがほぼ毎日やってたんで、
音に囲まれて耳壊したっていう中で団体映画の方にシフトしてたっていうこともあったんで、
10年経ってまたちょい音の方がムズムズしてきたっていう。
いつもムズムズから始まるんですね。
そうですね。体の言うこと聞くっていう感じです。あんまり頭で考えない。
面白い。体が言っていることに結構傾聴するというか。
自分の頭で考えるってもろくなことは考えないので。
指先とか足とか腰とかが考えることをちょっと聞いて報道に移すっていう感じではあったんですけど、
それも爆音の直接のきっかけは本当にたまたまで、
2003年にニール・ヤングが久々の来日公約して、それを見に行って、
武道館だったんですけど、めちゃくちゃ良いライブだったんですけど、音も綺麗で。
ただ、80年代にNHKホールでライブ行った時の、
ほぼ耳鳴り、みんな3日間耳鳴りみたいな、
そういう豪快な音は2003年のやつはなくて、
それは割とライブ自体があるコンセプト、ストーリーに沿って行われるライブだったっていうのと、
ニール・ヤングも耳壊してて一時、でかい音が出せないっていうこともあったりとか、
そういうことでそうなったんですけど、
なんとなくでも耳鳴り懐かしいなと思いながら、
バウステアターに遊びに行ったんですよ。
バウスも来日記念でジム・ジャムシュが撮った、
Ear of the Horseっていうニール・ヤングのライブドキュメンタリーを上映してたんで、
そっちは当時のでかい音の頃のライブのドキュメンタリーなんで、
そっちも見てみるかと。
行ったらバウスの連中が遊びで、
通常の映画のセッティング、映画の上映のスピーカーではなくて、
バウステアターってライブもやってたんで、
ライブ用のスピーカーをスクリーンの横に立てて、そこから流してたんですよ。
本当にお遊びじゃないけど、ちょっとやってみようかみたいな感じで。
それも面白くて、でももっといけるよねっていう。
レイバースのスタッフを、
ちょっとこれ本気でこのスピーカーをフル活用して、
ちゃんと上映しないかって話を。
それで面白く、この映画は絶対面白くなるし、
そうやってデカウトでやることで面白くなる映画もあるんじゃないかっていうんで、
その翌年の2004年の5月1日の夜に、
オールナイトで上映を企画したんです。
最初は爆音っていう名前ではなくて、
ソニック・ウーズって言ってたのかな?
音のシミみたいな、ちょっとカッコつけて。
ソニック・ウーズ?
ウーズ。
それでイヤ・オブ・ザ・ホースと、
今度はYCAMでもやるんですけども、
そうですね、今年のラインナップに入ってますね。
ジム・ジャムシュのヨニーレップが主演しているレッドマンと、
あとマーティン・スコセッシュのウンドゥンっていう、
ダライラマーの物語があって、
これがお経と音楽がすごいんじゃないかっていうので。
もう一個パンクムービーの当時のヒット作、
映画音響の進化
一部でのヒット作だったんですけど、
ストレート・トゥ・ヘルっていう、
当時のイギリスのエルビス・コステローとか、
ジョー・ストラマーとか、フォーグスとかの、
ここら辺の連中がいっぱい出ているパンクムービーを、
アグエスタンですね。
それをやったんですよ。
それがどれも面白くて、
クンルンとレッドマンとか、
別にいわゆる音楽のドキュメンタリーでもないし、
そうですよね。
それがめちゃくちゃ面白くて、
なんでかっていうと、
監督がバランスよくミックスするわけなんですけど、
その中の音楽以外の部分の音っていうか、
風の音とか、馬の鳴き声とか、走る音とか、
そういう音楽以外の映画についている、
いわゆる環境がめちゃくちゃ面白くて、
それがはっきり体に刻みつけられることによって、
映画の見え方が全然変わってくるっていうことを、
その晩、見に来ていた人たちもみんなそんなこと言ってたし、
俺らもそういうのを感じたので、
それ以来、音楽ドキュメンタリーが定番としてあるにしても、
なんか面白そうな音を、
そういう環境音やそれ以外の音を面白くつけている映画があったら、
それを上映してみようっていうことで始まったという感じでしたね。
ありがとうございます。
そっかそっか、だから本当に最初期から音楽だけじゃなくて、
そういう、なんて言ったらいいんだろうな、
音、環境音ですかね、さっきおっしゃっていたことだと。
だからその次にも、これ面白いからまたやろうって言って、
やったのが、オリビア・サイヤスのデーモンラバーとか、
ロダールの右側に気をつけろ、
ベルトルッチのパリの5月革命の話、なんだっけ、タイトル忘れちゃった。
そこら辺やって、それがめちゃくちゃ面白くて、
みんな結構人も入って。
どの映画も音楽映画というかライブドキュメンタリーとかではなくってことですよね。
全然ないんですけど、ロダールの右側に気をつけろはね、
リタ・ミツコってバンドのアルバムの収録風景を記録して、
記録しつつ別の物語に進むってやつなんですけど、
そのアルバムに入っている音楽をロダールがまためちゃくちゃに解体して、
この曲のベース音の上に別の曲のギターを絡ませるとか、
そんな風なことをしながら進めていくんで、もうみんな大喜びで。
なんてバカなことやってるんだって。
もう最高でしたけどね。
だから本当は今回のワイカムの爆音でもやりたかったんですけどね。
フェンリーが。
ゴダールね。
なるほどなるほど。
今ちょうどミックスとかの話になってきたから、
ちょっと合わせて聞きたいんですけど、
私の話になっちゃうんですけど、
私教育不器用に来る前、映像担当だったので、
爆音調整とかでご一緒してたじゃないですか。
テクニカルスタッフとして。
結構その時に樋口さんが、
音の、映画の音の作り方が変わってきたんだよね、
みたいな話とかをされて、
結構よく聞いていた気がして、
爆音上映、爆音映画祭の初期と現在で変わったことみたいなのを、
いろいろ聞きたいんですけど、
その中でもセレクションとか機材とか、
映画自体の音響トレンドって結構変わってるのかなと思って。
相当変わってると思います。
多分爆音始めた頃はまだフィルムだったんですよ。
そうかそうか、そうですね。
で、フィルムの音ってやっぱりやれることが限られていて、
ドルビーの制限もあるし、
ドルビーデジタルっていう音のシステムの制限もあるし、
その中でやっていたことっていうのがあって、
それを読み取る方式にしても、
読み取ってから劇場の各スピーカーに分離していくやり方っていうのも、
洗練はされていたんですけれども、
デジタル化による変化
多分その情報量としては、
ドルビーデジタルっていうくらいなので、
音はもうデジタル化された音の情報量なんですが、
その後、全部完全にデジタル化されて、
映像自体ですよね。
そうですね。
フィルムではなくなって、
DCPっていうデジタルデータに全部なったときの音の情報量っていうのが、
まず情報量自体が全然違うっていう、
だから、きめ細やかさっていうか、
色でいうとグラデーションがすごく細かいグラデーションが出るようになったっていう変化はまずあって、
その細かいことができるから、
より細かいことをやるようになってきたっていう。
爆音の方でもっていう。
そう。
音の役割の重要性と爆音上映
それは爆音もそうだし、映画作る方も。
なるほど。
ただ、それって金ないとできないので。
そうですよね。
予算のある映画はどんどん音が進化して、
予算のない映画はそのまんまみたいな感じ。
超大作的とかって言われるようなものが、
結構本当に音でチャレンジングなことをしてたりする。
そうですね。
クリストファー・ノーランとかが出てきて、
めっちゃくちゃ細かい音を、
サラウンドの壁のスピーカーの音を走らせてるんです。
走らせてる。
それまでだったら、
同じ音が一気に出る。壁からは。
同じ音が一気に出るっていうようなことしかできなかったのに、
ずらせてる。
だから、弾が背後から走ってくるとか、
背後に向かって走っていくっていうような時は、
壁のサラウンドのスピーカーから、
少しずつ音がずれて出てくる。
移動感があるっていうことですよね。
そういうようなこともやってるはずなんですよ。
そういうようなことが始まってからは、
音の空間がもう全然違ってるっていうか、
音が作り出す映画の空間が全く変わってきて、
だからあれですよね。
ちょうどデジタル化。
日本でもいろんな映画家が一気にデジタル上映始まって、
DCPっていうフォーマットで上映するようになったのが、
多分2010年くらいのアリス。
ティム・バートン。
ティム・バートンのアリス。
アリス・インバンダーランドですね。
あれのあたりなんですよ。
なるほど。だから3Dの上映と結構同時期になんですね。
まずそれでデジタル化は3Dから入ってるんですけど、
3Dがやっぱりうまくいかないので、
音で3D感を出そうっていう。
同じ3Dでも映像から音の方にハリウッドがシフトしてるんですよ。
だから2016、17年くらい。
そこら辺から一気に音の役割が重要になってきたんではないかというね。
ありがとうございます。
楽品で言うと何ですかね。
2016、17。
それこそクリストファー・ノーランのYCAMでも爆音上映した。
インターステラーとかね。
そうですね、インターステラーとか。
メッセージとかね。
メッセージとか。
ああいうのがポンポン出てきたあたりで、
ブレードランナー2049とか。
はいはいはい。
あれなんか、爆音でなくてもめちゃくちゃバランスの良くて、
機材もしっかりしているスクリーンで見ると、とんでもない音の空間になっていると思うんですよ。
俺、いまじかの試写室で見た時は、
ちょっと本当にこれもう爆音でやらなくてもいいんじゃないのっていうか、
もうこういう映画が出てきちゃったら爆音やる意味ないんじゃないかっていう。
あ、そこまで。
思ったくらい、もうめちゃくちゃバランスが良くて、
しっかり設計された音が出ていて、
本当にびっくりしたんですけど、
あのあたりからそういうのが当たり前にどんどんなってきています。
ちなみにそのいまじかの試写室では何をご覧になったんですか?
それはね、ブレードランナー2049だったかな。
じゃあ2017?
そのくらいですね。
あとはミッション・インポッシブルとか、
文革ハリウッド対策でそこそこ監督もしっかりしている人がやった映画は、
もう全部音はすごいですよね。
YCAMでも発表したのにできなかったブラックパンサーとかね。
ありましたね。悔しかったですね。