1. ストーリーとしての思想哲学
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2024-03-24 07:29

#62 シャーデンフロイデ なぜ人は他人の不幸を喜ぶのか?

人の不幸は蜜の味。なぜ人は他人の不幸を喜ぶという「悪徳」を備えているのかという話です。

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ストーリーとしての思想哲学
思想染色がお送りします。
今回は、なぜ人は他人の不幸に喜びを感じるのかというテーマです。
日本語には、人の不幸は蜜の味という慣用句があります。
これは欧米ではシャーデンフロイデと呼ばれる概念と対応しています。
シャーデンフロイデっていうのはドイツ語で
他者が不幸、悲しみ、苦しみ、失敗に見舞われた時に生じる喜びや嬉しさといった心良い感情のことを指します。
ちなみにシャーデンは損害、フロイデは喜びという意味です。
日本でも欧米でも同じ概念があるということは
人の不幸を喜ぶという現象は全人類的に普遍的に備わっていることになるかと思います。
では、なぜ人は他人の不幸を喜ぶのでしょうか?
シャーデンフロイデの機能、他人の不幸を喜ぶことの進化的基盤という日本の論文によると
この現象を進化的な観点から分析しています。
進化的というのは、動物としてのホモサピエンスが進化してくる際に獲得してきた生物的な機能という観点からということです。
サピエンスという動物は群れを形成して、その群れを維持することで生存してきた生き物です。
シャーデンフロイデが群れの維持に必要だったという観点からの分析なわけですが
まず、動物が群れを維持するとはどういうことか?
語弊を恐れずに言うと、動物が群れを作るのはその方が強いからです。
強いと生存に必要な資源の獲得ができます。
資源とは、魚がたくさんいる川とか、果物がたくさんなっている森とか、黒曜石がとれる岩場とか、あらゆるもののことを指します。
集団として資源の獲得をするということは一致団結するということであり、それぞれの個体が集団全体のために代償を払うことが不可欠になります。
そして、資源が獲得できた暁には、その資源の再分配が行われることになります。
この集団のために代償を払う、あるいは犠牲になる、そして再分配がなされるというプロセスが成り立つためには、集団の大多数が納得できる規範が必ず必要になります。
例えば、最も活躍した戦士には一番良い土地が与えられるとか、そうした規範がなければ、集団を信頼して身を預けることができないからです。
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こうした営みをずっと脈々と続けてきた人類は、規範が守られることにポジティブな感情を持ち、規範が破られることにネガティブな感情を持つようになったということです。
一人だけ資源を多く獲得する個体とか、利益を仲間に分けない個体、あるいは代償を払わずに利益だけを受けようとするフリーライダーは、集団にとって邪魔な存在です。
で、人は集団にとって邪魔だと感じる個体には怒りを感じるものですが、怒りに任せた物理的な暴力というアプローチ以外でも他者を攻撃することっていうのは可能です。
というのは、ジャングルとかに今でも存続している狩猟採取民を観察するとですね、フリーライダーに制裁を与えるためにゴシップやからかいという手法がよく用いられていることが確認されています。
つまり、バカにしたり笑い者にするという攻撃方法もあるわけですね。
だからシャーデンフロイデとは、集団にとっての裏切り者を的確に感知し、制裁行動を促進するための心理的装置であると考えられます。
実際、シャーデンフロイデのトリガーの一つとして、正義があると言われています。
人間は社会規範というものを持っていて、社会規範から逸脱した個体に対してゴシップやからかいという手法で攻撃します。
そうすることで、群れとしての社会規範を守ることができたという喜びが感じられるわけ。
このような人間の心理的装置っていうのは古代に作られたものですから、
じゃあこれを現代に当てはめると、例えば近所の人とかちょっとした知り合いがすごい良い生活を送っているとします。
何か良い家に住んでいて、車はベンツとポルシェを持っている。
でもこの人が投資詐欺に騙されて、1000万円ほど失ってしまいましたと。
こうした時、きっとシャーデンフロイデを感じる人っていうのは少なからずいるかと思います。
その時多分、今でも十分生活をしているのに怪しい投資に手を出すなんて欲をかきすぎたからだよとか、笑いながらバカにするという挙動が発生しそうです。
先ほどの進化的な説明を当てはめると、この良い生活を送っている知り合いとは共同体にとってのフリーライダーなんですよ。
なぜなら、この小金持ちの知り合いは、金を持っているからといってあなたに還元してくれるわけではありません。
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だから我々の古代からの心理的想知からすると、この知り合いは富を独占して利益を仲間に分け与えない個体であるというふうに見えるわけ。
もちろん、21世紀のコモンセンスからしたら、近所の人やただの知り合いに利益を還元しなければいけない義理なんてないんだけど、
ホモサピエンスの規範からしたら、それは利益を仲間に分け与えない行為であり、明確に規範に違反しているというふうに見えます。
規範に違反した個体が不幸な目に遭えば、その不幸な出来事によって制裁が下された、
つまりホモサピエンスの規範が回復されたということになり、喜びを感じると、こういう起助であるというわけです。
はい、人が他人の不幸に喜びを感じるのは、集団の規範の維持のための機能であるという話でした。
今回はここまでです。
次回もよろしくお願いします。
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