1. ストーリーとしての思想哲学
  2. #99 〈悪〉とはなにか?6 雑..
2024-12-08 07:05

#99 〈悪〉とはなにか?6 雑談的補足

サマリー

このエピソードでは、悪の概念を掘り下げる中で、ブランドや現代アートから導かれる人間性の必要性について考察しています。また、バタイユのエロテシズムの見解を交えて、悪と人間性の複雑な関係について論じています。

悪の概念の探求
ストーリーとしての思想哲学、思想染色がお送りします。
今回は、だいたい話し終えましたので、雑談的な補足をして終わりたいと思います。
まず、当人は、見事に成し遂げられることで、もの以上の光を発することがあるということでした。
本の中では、王公貴族が建物や衣服、祭典でこれ見よがしに示した富の当人などが例に挙げられています。
これを今風に変換すると、ブランド品で身を固めて豪邸に住むみたいな感じですかね。
ただまぁ、ルイ・ビトンやエルメスで身を固めてアザブジューヴァンや疲労のタワーマンションに住むみたいなのが、
もの以上の光を発しているかというと、なくはないと思うんだけど、そんなに強い光ではない気もします。
実利的な便利さを遥かにしのぐような強い光を発しているかっていうとね、
昔の日本人が、自社仏閣や大仏を拝むときに感じていたようなタイプの強い光は感じないんじゃないかなという話です。
和太夫が問題にするように、当人の見事さというところに着目するのであれば、
ブランド品を身にまとうとかはちょっと前時代的で、今の最先端の当人ではないかなという、そういう感じがします。
昔の日本人が、自社仏閣や大仏を拝むときに感じていたようなタイプの強い光を、現代人は何に感じているのかなという、こういう観点から考えると、
今だったら現代アートとか例としていいんじゃないかなと思います。
もちろん好みはありますけど、現代アートって構造が複雑だし、鑑賞するのにも勉強しないといけないし、
とにかく生存に必要ない行為をめちゃくちゃ積み重ねて成り立つものです。
生存に必要ない行為を積みに積んだ結果、僕たちはそこに十分な見事さを見出すことができるし、
それゆえに、アートはもの以上の光を発し、経緯性を獲得することになります。
この経緯性を権力闘争に利用すると、ブルデューのディスタンクシオンの話に繋がってきますよね。
そんな構造になっているという話です。
あと前回、当人の一つの現れとしてのエロテシズムという話を本当にちょっとだけ出しました。
バタイは悪の典型としてエロテシズムについても哲学的考察をしています。
今回はあくまで悪についてということでそこまで広げませんでしたけど、そのうちエロテシズムについてもやってみたいと思います。
ちょっとだけフライングしますけど、バタイはエロテシズムとは禁止への審判であると言っています。
禁止される行為とは善か悪かで言えば悪ですよね。
禁止されていることをやっているんだからそれはダメなことです。
じゃあ禁止ってなんだって言えば、そもそもは人間の生存を不利にするような行為が禁止されるわけです。
で、その禁止されていることをやる、審判する、ここにエロテシズムがあると言っています。
これも一つの当人の現れであり、善か悪かで言えば悪なんだけど、
でも僕たちは、悪の中に人間にとって不可欠な人間性があるという話を見てきました。
だからね、悪だからダメということじゃないんですよ。
裏切りと革命の関係
だからと言って、悪は素晴らしいということでもない。
この辺りに世界の複雑性というのが現れていると思うんですけど、やはりあくまでも悪は悪です。
だからと言って、世界から悪をマジで根絶しようとすれば、行き着く先は人間性が存在しない世界です。
はい、僕のイメージを、インマイオピニョンということでお伝えすると、
当人によってもたらされるもの以上の光とは、星に例えられると思います。
自社物価でも大仏でもアートでも、あるいはアイドルとかでもいいんですけど、
こういうのって、空に輝く一番星を人間の手によって作り出そうとする営みですよね。
星を見上げる名もなき人々がいて、その人々の人生とか思想とか哲学の指針となる輝く一番星をみんなで作り出そうとする。
作り出すことを見事に成し遂げた星は、星以上の星を発するみたいな、そんなイメージです。
あと僕はロシア文学好きなんで、最後にもう一個、概念をロシア文学に接続してみます。
裏切りという行為は言うまでもなく悪いことです。
友達を裏切る、会社を裏切る、共同体を裏切る、どれも利己的で醜悪な行いと言えます。
でも裏切りって悪いことだけど、見事に成し遂げられた裏切りって、裏切りって呼ばないんじゃないですかね。
裏切りとは呼ばず、例えば革命とか呼ばれるんじゃないですかね。
何かしらフランス人権宣言とか資本論とか、要命学とか朱子学とか、そういう強度の高い思想に基づいて、多くの同志とともに美しく心を燃やす、
そしてついには民衆を味方につけて既存の世界を見事に裏切ってみせる行為。
この見事に成し遂げられた裏切りは、もはや裏切りとは呼ばれず、革命と呼ばれ、悪であると認識されることさえなくなる。
社会を転覆させるなんて、理屈の上では完全に悪に属する行為なんだけど、
その見事さゆえに、僕たちはそこに革命により創造された新世界という輝く一番星を見出し、
陶酔した感覚を味わうことになる、というこういうことなのかなと思います。
はい、これで悪についてはおしまいです。
悪の存在しない世界は、星が存在しない世界に等しい、みたいな世界の複雑性について伝えられていれば嬉しいです。
というわけで今回はここまでです。また次回もよろしくお願いします。
07:05

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