1. ストーリーとしての思想哲学
  2. #29 イヤイヤ期がなぜ存在する..
2023-08-06 06:28

#29 イヤイヤ期がなぜ存在するのか試論

人間の幼児にはなぜイヤイヤ期があるのかという話題を入り口に、ソシュールという言語学者(哲学者)を紹介します。

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ストーリーとしての思想哲学
【思想染色】がお送りします。
今回は幼児のイヤイヤ期と言語学についてです。
イヤイヤ期ってありますよね。
人間の幼児の2歳前後の子供が、何に対してもイヤとかダメっていう
育児が特に大変な期間のことですけど、なぜそんなものがあるのでしょう。
指針期とか反抗期だったらわかるんですけどね。
反抗期がなかったらいつまでも親から自立できませんから、
自立するためにあるんだなぁと。
人間をホモサピエンスっていう一種の動物として見た場合においても、
これは合理的ですよね。
でもイヤイヤ期って、動物の生存において不利じゃないですか。
なぜこのような形質をホモサピエンスは獲得するに至ったのかというテーマについて
思論、つまり仮説を喋ってみたいと思います。
結論から言うと、言語を習得するために
やむを得ずイヤイヤ期が存在するのだと思います。
こういう話を切り口として、
ソシュールっていう言語学者兼哲学者の紹介をしていきたいと思います。
フェルディナンド・ソシュールっていう人がいて、
1857年生まれのスイス人です。
この人はすごい偉大な言語学者で、
近代言語学っていう新しい学問を打ち立てた人です。
まず言語とか言葉っていうのは、
それによって世界を切り分けて理解させる力があります。
すごい簡単に言うと、
例えば犬っていう名称があるから
犬を犬として捉えられるみたいなことです。
ちょっとわかりにくいですかね。
別の例も出しましょう。
チョウチョとガって似てますけど、
異なる名前が割り当てられているから、
別物であると僕たちも捉えています。
でもフランス語においては、
チョウもガもパピヨンって言うから、
これらは区別されません。
対応する言語があるからこそ、
概念としても区別ができるということです。
それで言語学においては、
この概念を切り分けて区別する能力は、
どのように獲得されるかが問題になります。
直感的には概念が先にあって、
犬だったら犬という存在が先にあって、
その存在に対して名前が与えられるという順番な気がします。
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このような何らかの存在に対して、
一対一対応する名前が与えられるんだっていう考え方のことを、
命名論と言うんですけど、
ソシウルは、人間はこんな風に命名論のように、
すっきりと一対一対応みたいな感じで、
シンプルに言語を獲得するのではないと指摘します。
ソシウル的な言語論を説明するのに、
よく使われる例えがあるんですが、
犬と狼と山犬を僕たちはどう区別しているのか。
もともと世界に犬という生き物、狼という生き物、
山犬という生き物が存在しているという、
命名論的な世界観ではなくて、
ただ他の動物との差異、
違いを認識しているに過ぎないんだってソシウルは言います。
僕たちは犬科の動物のことを、
猫ではなく、象でもなく、
うさぎでもない動物、
まるまるでもない動物という形で、
僕たちはこれを犬なんだという風に捉えています。
そしてさらに、犬ではない犬っぽい生き物を、
狼だっていう風に捉える。
さらに言えば、犬みたいに飼い慣らされてはいないけど、
狼でもない犬のことを山犬と呼びます。
こういう風に言葉っていうのは、
否定によって定義されるっていう風なことを意味しています。
人間の幼児の話に立ち返ると、
言語を用いた複雑な世界認識を獲得するためには、
まず否定するという能力を獲得しなければいけないということになります。
否定するという能力によって、
ある存在とある存在との間には違いがある、
差異があるということを認識できるようになります。
しつこいようですけど、
例えば山犬という概念を獲得するには、
これは人間ではない、
これは無機物ではない、猫ではない、
象でもない、うさぎでもない、
そして狼でも飼い犬でもない、
といった情報処理が必要になります。
これらの情報処理は無意識で行われるので、
無意識というレベルでこのような処理ができるように、
脳みそは否定するという能力を獲得しつつ発達しなければいけません。
そしてイヤイヤ期というのは、
まさに否定するという能力の獲得段階なのだと思います。
はい、今回は幼児のイヤイヤ期という割と身近なテーマを補助線として、
ソシュールの理論を紹介するという回でした。
今回は一旦切ります。
次回はソシュール的世界観について補足という形で一応続きます。
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次回もよろしくお願いします。
06:28

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