1. ストーリーとしての思想哲学
  2. #89 ドストエフスキー4 聖書
2024-09-29 06:37

#89 ドストエフスキー4 聖書

サマリー

ドストエフスキーの作品における聖書の引用とその影響を探求しています。特に、ヨハネの黙示録やマルコによる副印書の例を通じて、思想と悪霊のアナロジーが紹介されています。

聖書とドストエフスキーの引用
ストーリーとしての思想哲学
【思想染色】がお送りします。
前回までで一応、ドストエフスキーがなぜすごいかの解説は終えたのですが、
どうしても話したくなっちゃったことが出てきたので、それを話します。
聖書の話です。
欧米の芸術作品には、かなりの頻度で聖書の言葉が出てきます。
だからといって、別に聖書がいいとか、日本人も聖書を学ぶべきだとか、そういうことを言うつもりは一切ありません。
でも、芸術作品がわざわざ引用してくる部分って、すごくね、いいフレーズだなーっていうのが結構あるんですよ。
ドストエフスキーもかなり聖書を引用します。
で、その中で僕がいいなーって思った部分を厳選して紹介してみます。
半分雑談なんで気楽に聞いてください。
まず、ヨハネの黙示録。
ヨハネの黙示録の中の、僕が好きな、いいなーって思ったフレーズを引用します。
私はあなたの行いを知っている。
あなたは冷たくもなく熱くもない。
むしろ冷たいか熱いかどちらかであってほしい。
熱くも冷たくもなく生ぬるいので、私はあなたを口から吐き出そうとしている。
これシンプルに詩として好きです。
人間、生ぬるいはダメだよねっていうのを、むしろ冷たいか熱いかどちらかであってほしいっていう詩的な表現で表しているのが、これがなんかいいなーって思ってます。
次にマルコによる副印書。
マルコによる副印書のアナロジー
これはちょっと長いんで要約しますけど、マルコによる副印書の中にレギオンっていう悪霊が出てくる場面があります。
レギオンとは集団とか軍団とかいう意味で、このレギオンっていう悪霊は大量の小さな悪霊がむちゃくちゃいっぱいいて、
そのめちゃくちゃいっぱいいる悪霊が合体して一つの大きな軍団になっているっていうタイプの例です。
この悪霊、レギオンに取り憑かれた人がマルコによる副印書に出てきて、そこにイエス・キリストが現れます。
悪霊は取り憑いた人の体に悪さをして叫び続けたり、意思で自分の体を傷つけたりさせていました。
レギオン自身も悪さをしているっていう自覚はあったと見えて、イエスが来るとね、もう謝り倒すんですよ。
で、この土地から出ていくのだけは勘弁してください。
代わりに近くに豚の大群が飼育されていたから、その豚の中に入るということでお許しくださいって言います。
イエスが許可を出して、レギオンは集団が分裂して小さな沢山の霊になって、一匹一匹の豚の中に入り込みました。
豚は全部で2000匹くらいいたんだけど、2000匹のそれぞれに小さな悪霊が入り込んだものだから、そのせいで豚たちは全員崖から海へ流れを打って駆け下り、海の中で溺れ死んでしまったという、こういう逸話があります。
このレギオンもね、ドステフスキーは共産主義などの思想になぞられているんですよ。
共産主義なら共産主義っていう巨大な一塊の思想があります。
それが小さな悪霊のように分裂して、何千万とかいう人間の一人一人の中に入り込んで、それで暴力革命のような熱狂へと突入していく。
このような状況をアナロジーとしてレギオンになぞらえているわけ。
だから、共産主義だけのことではないですけど、思想とはレギオンのような性質を、悪霊の性質を持っているということです。
共産主義以外の思想、フィーガニズムでも反出生主義でも別に何でもいいんだけど、ある程度以上の理論的強度のある巨大な思想というのは、悪霊のように分裂して人間一人一人の中に侵入をします。
そして、小さな悪霊に入り込まれた人間は、巨大な熱狂の渦の中に自ら入っていくことを運命づけられます。
まるでレギオンに入り込まれ、海の中へなだれ落ちて溺れ死んでしまった豚たちのように、そのような運命に突入していくよねと、これをレギオンという悪霊というアナロジーでなぞらえています。
まさにドストエフスキーの小説にも、悪霊というタイトルの本がありますけど、悪霊的な性質が思想というものにはあるよねということを、このマルコによる副印書の5話は示してくれます。
この悪霊のアナロジー、僕めっちゃ好きなので、しゃべりたくなっちゃって紹介をしました。
というわけで、ドストエフスキーについては以上です。
ちなみに余談なんですけど、今言った悪霊っていう小説は、僕が世界で一番好きな本です。
なのでぜひおすすめはしたいんだけど、ただドストエフスキーの作品って、最初の盛り上がるシーンが来るまでに200ページとかあるから、盛り上がるシーンにたどり着く前に挫折する人がとても多いです。
だからもしドストエフスキーに興味を持ってもらって読みたいってなったら、最初はページ数が少ない地下室の主義っていう本とか、あとは盛り上がるシーンが割と最初の方にある罪と罰なんかがおすすめです。
その上でドストエフスキーが面白いと思えたら、ぜひ悪霊も読んでみてください。
では今回はここまでです。次回もよろしくお願いします。
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